2019年7月14日 サンデーモーニング(前編)

2019年7月14日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年7月14日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① イランがウラン濃縮を再開した件について報道された部分
② 輸出上の優遇措置廃止への韓国の反発について報道された部分
③ 番組の最後にて「今週の一枚」について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① イランがウラン濃縮を再開した件について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
①ダロック駐米大使の辞任について
トランプ大統領の姿が映し出され、「彼はイギリスの役に立っていない。我々は彼のことをあまり好きではない(字幕)」と話す映像が流され、ダロック駐米大使を批判したと伝えられる。ダロック氏はトランプ大統領は無能としたうえで、「ホワイトハウスは機能不全で、トランプ大統領は不名誉なかたちで職を降りるだろう」と伝えた極秘光電がスクープされたと伝えられる。イギリス政府はダロック大使を全面的に擁護する姿勢を示したが、ダロック大使は辞任に追い込まれたとナレーション。

②アメリカのイラン政策について
ダロック氏は「(米国のイラン政策が)近い将来に首尾一貫したものになる可能性は低い。この政権は分裂政権なのだから。」とイラン政策について厳しい見方を示したと伝えられる。アメリカの核合意離脱に端を発したイランとの緊張状態がさらに高まったとナレーション。イランは核合意で定められた濃縮度を超えるウランの精製を始めると宣言したのに対し、トランプ大統領は「イランは気をつけた方がいい」と警告。翌日、イランはウランの濃縮度が4.5%に達したと発表し、「必要になれば20%に高める」としたとナレーション。ペンス副大統領の演説映像に切り替わり、「我々の市民を守る準備ができている」と話す映像が流される。ダンフォード統合参謀本部議長は、ホルムズ海峡などの安全を確保するため「有志連合」の結成を進めていることを明らかにし、日本もアメリカ側から何らかの対応を求められる可能性があるとナレーション。イギリス政府はイランが国際法に反しイギリスのタンカー航路の妨害をしようとしたことを発表。ペルシャ湾に駆逐艦の派遣を決定したと伝えられ、VTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・ホルムズ海峡の航行可能な幅は約3kmで、年間約1700隻のタンカーが通過
・有志連合は、国連の決議を経ず、共通の目的を持つ国々が協議により結成
・過去にはイラク戦争、ソマリア沖海賊対処、イスラム国掃討作戦などで有志連合が結成されている
・日本もイラク戦争では人道支援のため、ソマリア沖海賊対処では警戒・取締まりのため自衛隊を派遣【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):アメリカとイランというもののね、関係をですね、日本人としてどういうふうに深く考えとくかっていう意味で、ちょっと書いてみたんですけども。このアメリカにとってイランっていうのはですね、トラウマなんですね。1979年にホメイニ革命が起こったと。で、それまでですね、シャー。パーレビ体制を応援してたアメリカにとっては衝撃だったわけですね。で、人質救出作戦に失敗して、ペンタゴンが満天下に恥さらしたっていうことでですね、議論してて今でもそのトラウマを引きずってんだなっていうことを感じます。で、その翌年からですね、ホメイニ革命の翌年からイラン・イラク戦争ってのが起こったと。なんと8年間も永遠と続いたと。で、このときですね、敵の敵の味方っていうロジックでですね、これイラン憎しでね、隣のイラク。サダム・フセインを一生懸命応援したのがアメリカだったわけですよ。で、今度はイラク。サダム・フセインが増長してですね、クウェートに侵攻したなんて事態が起こって、1990年、湾岸戦争ってのが起こったわけですね。で、そのとき、日本はですね、多国籍軍に支援って形でお金払えってことでですね、当時の90億ドル。1兆2000億円っていう金をですね、お金出して、その目的をかなりはっきりさせた割にはですね、結局あれは何に使われたんでしょうってことで、いまだに分からないっていう不思議な話なんです。で、2003年には、だんだん思い出す人もいると思いますけど、イラク戦争。で、いよいよですね、ショー・ザ・フラッグにこうしてですね、ブーツ・オン・ザ・グラウンドにこうしてですね、日本も動けってことになって、自衛隊が、インド洋だとかイラクに動いたっていうかですね。で、まあ有志連合って言葉がまたちらつき始めてるわけですけれども、この一連の流れの中でね。日本人としてしっかりしとかなきゃいけないのはね、つまりアメリカの戦争に巻き込まれることに関しては、しっかりした線引きしとかなきゃいけないってかですね。例えばね、アメリカのダブルスタンダードで、つまりイスラムの核はね、ダメだと言ってですね、イランの核に対してえらい神経質になってるんだけど、一方でイスラエルの核はそれじゃいいのかって話になるわけですね。日本っていう国はですね、非核っていうことにおいてやっぱり世界に冠たる存在じゃなきゃいけないっていうかですね。そういう意味におけるこのダブルスタンダード問題に対してどう考えるんだっていう論点と。それからもう一点ですね、やはり日本は、国連中心で国際社会ってものをまとめていこうっていうところに立ってて、自分自身も常任理事国になろうかってぐらいの意図をもってる国なんですから、やっぱり国連っていう仕組みに徹底的にこだわる必要っていうかですね。有志連合的な形でこの問題を解決してくんじゃなくてですね。で、そのためには、日本としてですね、例えばエネルギー戦略に関して、ホルムズに過剰にアメリカに依存してるっていう状況から脱してですね、例えばプランBっていうんですけれども、要するに中華とか、アジアの国々にも呼び掛けてですね、ホルムズの安定に関して、イランと向き合うだとかですね、そういう類の主体的な言葉とか構想っていうのがものすごい問われてると。こういう文脈でですね、この問題を考えておくべきだと思います。

西崎文子氏(全文):まず、イギリス大使の問題ですけれども、あれはあの、大使がああいう内容の者を本国に伝えたこと自体は、これは仕事の範囲内だと思うんですね。ですから、それがなぜ、タブロイド紙にリークされたのか。そこをもうちょっと考える必要があるんではないかと。ちょっと、イギリスとアメリカとイランとの関係があの、不安定化してるってことの証なのかどうなのかっていう問題はあると思います。で、それからもう一つのその、有志連合の話ですけれども、やはり私も寺島さんと同意見で、そもそもこの、緊張関係ってのは繰り返しですけれども、イランとの核合意をアメリカがトランプ政権から一方的に離脱すると宣言して制裁を始めたことがきっかけですよね。で、国連はそれに対しては、イランとの核合意を支持する立場をとっていたわけですから、有志連合っていったらやはり国連をバイパスして、無視っていうか、そこを逃れてやっていくっていうその色合いが非常に強いわけで。ですから日本としては、先読みして、有志連合っていうとつい、何をやればいいんだろうって思ってしまいがちなんですけれども、そうではなくて、やはり日本としてもうちょっと根本に戻って、アメリカに対してモノを言うべきかっていうことも考えなければいけないというふうに思います。

姜尚中氏(要約):トランプ大統領としては、「日本が一番ホルムズ海峡を通ってる原油に依存しているのだから、先頭に立ってやれ」という話になるが、元々緊張を激化したのはアメリカが核合意から離脱したことが原因なのでそうはいかない。有志連合は、今回は海賊対処ではなくイランに対するものなので慎重にやらなければならない。何より大事なのは外交。外交努力で何とか上手くイランを引きずり出してアメリカとも話をするような努力をやってほしい。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):まあ有志連合って言葉がまたちらつき始めてるわけですけれども、この一連の流れの中でね。日本人としてしっかりしとかなきゃいけないのはね、つまりアメリカの戦争に巻き込まれることに関しては、しっかりした線引きしとかなきゃいけないってかですね。例えばね、アメリカのダブルスタンダードで、つまりイスラムの核はね、ダメだと言ってですね、イランの核に対してえらい神経質になってるんだけど、一方でイスラエルの核はそれじゃいいのかって話になるわけですね。日本っていう国はですね、非核っていうことにおいてやっぱり世界に冠たる存在じゃなきゃいけないっていうかですね。そういう意味におけるこのダブルスタンダード問題に対してどう考えるんだっていう論点と。それからもう一点ですね、やはり日本は、国連中心で国際社会ってものをまとめていこうっていうところに立ってて、自分自身も常任理事国になろうかってぐらいの意図をもってる国なんですから、やっぱり国連っていう仕組みに徹底的にこだわる必要っていうかですね。有志連合的な形でこの問題を解決してくんじゃなくてですね。で、そのためには、日本としてですね、例えばエネルギー戦略に関して、ホルムズに過剰にアメリカに依存してるっていう状況から脱してですね、例えばプランBっていうんですけれども、要するに中華とか、アジアの国々にも呼び掛けてですね、ホルムズの安定に関して、イランと向き合うだとかですね、そういう類の主体的な言葉とか構想っていうのがものすごい問われてると。こういう文脈でですね、この問題を考えておくべきだと思います。

要旨をまとめると、
・イランに対して有志連合という言葉が出始めているが、日本はアメリカの戦争に巻き込まれてはならない。
・イスラムの核がダメでイスラエルの核が許されるのはダブルスタンダードだ。日本は非核の分野においては世界をリードすべきで、ダブルスタンダードは許されない。
・日本は国連中心で国際社会をまとめる意向を持つ国であり、有志連合的な形で問題の解決を図るのではなく、エネルギー戦略のホルムズ海峡依存脱却、中国やアジアの国々との連携を通して主体的な構想を実現していくべきだ。

というものです。

しかしながら、
・国際社会への挑戦を続けるイランに対して諸外国と連携して対処することは、「アメリカの戦争」に参加することとは明確に異なる。またこのようなレッテル張りは反米的な立場に偏っており、政治的な公平性を欠く。
・イランとイスラエルでは国としての信用度が大きく違うため、ダブルスタンダードだという指摘は当たらない。
・「ホルムズ海峡依存脱却」や「中国やアジアの国と連携した主体的構想」は、氏の主張する「国連主義」とは何の関係もない。こうした主張は「アメリカからの脱却・中国との連携=国連主義」というミスリードを視聴者に行うものであり、極めて悪質な偏向報道である。また、日米関係は日本外交の最も重要な軸であり、日米関係を捨てて中国との連携が必要だとする主張は事実に反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋):まず、イギリス大使の問題ですけれども、あれはあの、大使がああいう内容の者を本国に伝えたこと自体は、これは仕事の範囲内だと思うんですね。ですから、それがなぜ、タブロイド紙にリークされたのか。そこをもうちょっと考える必要があるんではないかと。ちょっと、イギリスとアメリカとイランとの関係があの、不安定化してるってことの証なのかどうなのかっていう問題はあると思います。で、それからもう一つのその、有志連合の話ですけれども、やはり私も寺島さんと同意見で、そもそもこの、緊張関係ってのは繰り返しですけれども、イランとの核合意をアメリカがトランプ政権から一方的に離脱すると宣言して制裁を始めたことがきっかけですよね。で、国連はそれに対しては、イランとの核合意を支持する立場をとっていたわけですから、有志連合っていったらやはり国連をバイパスして、無視っていうか、そこを逃れてやっていくっていうその色合いが非常に強いわけで。ですから日本としては、先読みして、有志連合っていうとつい、何をやればいいんだろうって思ってしまいがちなんですけれども、そうではなくて、やはり日本としてもうちょっと根本に戻って、アメリカに対してモノを言うべきかっていうことも考えなければいけないというふうに思います。

要旨をまとめると、
・イギリスの駐米大使の言動は仕事の範囲内であり、問題はどうリークされたかにある。こうした発言はイギリス・アメリカ・イランの関係の不安定化の証である。
・この緊張関係はイランとの核合意をトランプ米大統領が一方的に破棄したことに起因しており、国連をバイパスして有志連合の動きを取ることは許されない。日本は毅然とした態度で米国にモノを言うべきだ。

というものです。

しかしながら、
・イギリス駐米大使の報告書がそのまま英米関係が悪化したとする主張の根拠とはならない。
・そもそもイラン核合意は当時勢いを増していたISに対抗するための妥協的な措置であり、核開発を完全に止められない他弾道ミサイル開発に制限がないなど不完全なものである。したがってトランプ米大統領の合意離脱はISが弱体化した現在となっては妥当だという指摘もある。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西崎氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「有志連合という形でアメリカの戦争に巻き込まれてはならない」「日本はアジア諸国と連携して主体的に動くべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「IS掃討作戦やソマリア沖海賊対処など、有志連合が反国連・アメリカ的なものだという主張は間違いだ」「日本はあくまで日米関係を基軸とした外交を展開すべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 輸出上の優遇措置廃止への韓国の反発について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 番組の最後にて「今週の一枚」について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事