サンデーモーニング、2019年6月9日分の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① トランプ米大統領の訪英とノルマンディー上陸作戦記念式典参加について報道された部分
② スーパーシティ法案の提出と同日選について報道された部分
③ 「風を読む」にて天安門事件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① トランプ米大統領の訪英とノルマンディー上陸作戦記念式典参加について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
①トランプ大統領の訪英について
ロンドンでデモが行われる映像とともに、トランプ米大統領の国賓訪英について大規模なデモが行われたと伝えられる。これに対し、トランプ大統領は「大規模デモなんてフェイクニュースだ」と、どこ吹く風だったとナレーション。
トランプ大統領はメイ首相と首脳会談を行った後の共同記者会見で、
トランプ大統領(字幕):メイ首相はEU離脱が近い将来に実現するところまで進めてくれた。イギリスにとって良いことだ。
ナレーター:EUとイギリス国内に混乱をもたらしているイギリスの離脱を、良いことだと述べるとともに、離脱強硬派についても、こう語りました。
トランプ大統領(字幕):ポリス(ジョンソン前外相)は知っているよ。彼は良いね。いい首相になるだろう。
と、イギリスのEU離脱について異例の発言を行ったと伝えられる。
英メディアによるとトランプ大統領は、離脱強硬派のジョンソン前外相や、EU離脱党ファラージ党首らと相次いで接触したとナレーション。トランプ大統領は、メイ首相との会談では、EU離脱後の貿易拡大に期待をにじませたと伝えられる。
②フランス・ドイツの大統領の演説について
ノルマンディー上陸作戦の記念式典が行われる映像に切り替わる。仏・マクロン大統領は、演説の中で英仏との絆を強調しながらも、
マクロン仏大統領(字幕):ノルマンディーの約束とは、“自由を求める人々が団結するときどんな兆戦も克服できる。”このことを忘れないことだ。
と、アメリカ第一主義を追い求めるトランプ大統領を牽制するかのような発言を行ったと伝えられる。また、独・メルケル大統領もハーバード大学・卒業式でトランプ大統領の政策を暗に批判したと伝えられる。
【アナウンサーによるパネル説明】
①訪英前のトランプ大統領による発言について
・メイ首相の後継争いについて、離脱強硬派のジョンソン前外相を称賛し、「メイ首相の素晴らしい後任になるだろう」と発言
・EU離脱党のファラージ党首について、「イギリスが離脱交渉にファラージ氏を起用しないのは間違いだ」と発言
・イギリス国内からは内政干渉だという声も上がっている
②メルケル首相による発言
「壁を取り壊しましょう」「自国第一主義より多国間主義」「気候変動は人が原因」と訴え、トランプ大統領の政策を批判するかのような発言を行った。
【コメンテーターの発言】
田中優子氏(要約):メルケル首相の演説は素晴らしい。多様性の重要性は繰り返し述べるべき。メルケル首相の立場・主張はヨーロッパの中でも世界の中でも、とても大事だと思う。
田中秀征氏(要約):メルケル首相との演説の差があまりにも大きい。偉大な指導者がいなくなったということが、中国・ロシアもトランプ大統領と大差がない。
青木理氏(全文):これね、その。トランプさんはフェイクニュースだって言ってたんだけど、25万人くらい参加したと言われてるんですよ。あのデモに。で、僕もいろんなのTwitterの中で見たんですけど、例えば、トランプさんの人形で、「フェイクニュース」とか「俺は天才だ」っていうことをずっと繰り返す人形が出てきたりとか、ゴリラの格好させて檻に入れたりとか、ある種のお祭り騒ぎになったんですよね。で、それだけじゃなくて、例えば、有力紙のガーディアンなんかも、トランプさんの国賓を主に反対したりとか、野党の党首なんかも反対をしたりとか。かなりメルケルさんも含めて、トランプさんの言ってることの問題点ってのを、やっぱりきちんとこういうときでも指摘するんですよ。それと比較してって言っちゃうとあれなんだけど、相撲を観戦したりゴルフしたりグルメやったり武器爆買いしたりして、成功しましたって言っている国と、やっぱりなんか、民主主義の郷土っていうかね。イギリスもEU離脱ですごい大揺れなんだけれども、なんかこう言論の強度みたいなものが、ちょっと羨ましいなと。僕なんかは、思いながら見ましたけどね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、VTR内に事実と異なる認識を視聴者に与える恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、VTR内に事実と異なる認識を視聴者に与える恐れのある内容が含まれている
今回のVTRで、以下のような発言が取り上げられています。
トランプ米大統領(字幕):ポリス(ジョンソン候補)は知っているよ。彼は良いね。いい首相になるだろう。
マクロン仏大統領(字幕):ノルマンディーの約束とは、“自由を求める人々が団結するときどんな兆戦も克服できる。”このことを忘れないことだ。
これらの発言について、放送ではそれぞれ
・トランプ米大統領が離脱強硬派のジョンソン前外相を称賛
・マクロン仏大統領がトランプ米大統領の姿勢をけん制
という趣旨の発言として説明されていました。
しかしながら、
・トランプ米大統領はこの会見で他の候補についても言及し、よい候補になれると発言している
・マクロン仏大統領の発言はノルマンディー上陸作戦の記念式典に充てたもので、トランプ米大統領への批判だと捉えるのは明らかに無理筋である
など、今回の放送で取り上げた趣旨とは明らかに異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道でのVTRは事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):(反トランプデモに)、例えば、トランプさんの人形で、「フェイクニュース」とか「俺は天才だ」っていうことをずっと繰り返す人形が出てきたりとか、ゴリラの格好させて檻に入れたりとか、ある種のお祭り騒ぎになったんですよね。で、それだけじゃなくて、例えば、有力紙のガーディアンなんかも、トランプさんの国賓を主に反対したりとか、野党の党首なんかも反対をしたりとか。かなりメルケルさんも含めて、トランプさんの言ってることの問題点ってのを、やっぱりきちんとこういうときでも指摘するんですよ。それと比較してって言っちゃうとあれなんだけど、相撲を観戦したりゴルフしたりグルメやったり武器爆買いしたりして、成功しましたって言っている国と、やっぱりなんか、民主主義の郷土っていうかね。イギリスもEU離脱ですごい大揺れなんだけれども、なんかこう言論の強度みたいなものが、ちょっと羨ましいなと。
要旨をまとめると、
・イギリスの反トランプデモは非常に規模も大きく、ゴリラの恰好をさせたりとお祭り騒ぎだった
・有力紙のガーディアンや野党党首もトランプ大統領訪英に反対し、ドイツのメルケル首相もトランプ米大統領の問題点を指摘している
・民主主義の土俵がしっかりしている欧米と違い、日本は相撲観戦や武器爆買いといった形でトランプ大統領を批判できないのは問題だ
というものです。
しかしながら、
・ゴリラの格好をさせて檻に入れるなどといった行為は明らかに人格否定であり、またイギリス全土があたかも反トランプであるかのような印象を与える発言は事実に基づかないものである
・トランプ米大統領を批判する言説のみが民主主義の視点に立っているという主張は極めて主観的で政治的公平性に欠く
・トランプ米大統領は国賓として来日しており、接待があるのは当然のことである。またそうした接待の存在が日本がトランプ米大統領に対して無批判であるという根拠にはならない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ米大統領を批判する立場が民主主義的に正しい立場だ」「イギリスもドイツも反トランプの立場をしっかり取れる。これが日本と違い民主主義が根付いている国」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「トランプ米大統領はアメリカの民意によって選出されている」「欧米諸国のなかにはトランプ米大統領を支持する立場も当然存在している」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② スーパーシティ法案の提出と同日選について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 「風を読む」にて天安門事件について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。