2020年1月5日 サンデーモーニング(後編)

2020年1月5日 サンデーモーニング(後編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年1月5日放送回の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① IR汚職における新たな5名の国会議員浮上について報道された部分
② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分
③ カルロス・ゴーン氏の国外逃亡について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分における
検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
③ カルロス・ゴーン氏の国外逃亡について報道された部分
となります。

では、さっそく②の検証3をみてみましょう。

4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):自由とかね、人権というものを掲げている世界最大の超大国のアメリカの全く別の一面。ある種ものすごい好戦的で世界で一番戦争してきたっていう国家だっていうところが、今回もいろんな、皆さんお話しされましたけれども、例えばあの、ウサーマ・ビン・ラーディン。アルカイダだって、そもそもはソ連に対抗するためにアメリカが利用して、それが手に負えなくなったらっていうことで今度、掃討作戦に乗り出したっていうことですからね。だからもう今回の司令官と同じようなパターンと言えないこともないですよね。だから、そういうそのアメリカという国の一面が良く見えてしまうところもありますし、(以下略)

要旨をまとめると、
・自由や人権を掲げるアメリカの好戦的で世界で一番戦争をしてきた国だという別の一面だ。
・ビンラディンやアルカイダは元々アメリカが利用していたのに、手に負えなくなると掃討した。今回も同じパターンである。

というものです。

しかしながら、
・米国による世界各地での軍事活動を「好戦的」と一方的に断罪する姿勢は政治的な公平性を欠く。
・ビンラディンやアルカイダと米国の間にあった関係と、イランの正式な軍事組織である革命防衛隊と米国の関係とは全くの別物である。
・ビンラディンやアルカイダは湾岸戦争後にアラビア半島へ米軍が駐留したことを機に自ら反米思想に傾倒しており、「アメリカが切り捨てた」とする主張は事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

続いて、
③ カルロス・ゴーン氏の国外逃亡について報道された部分
となります。では、放送内容を見ていきましょう。

【VTR要約】
 保釈中だったゴーン被告が突然レバノンに現れた。会社法違反の罪などで起訴されたゴーン被告は、海外への渡航禁止や妻との接触禁止などの条件が付けられて保釈されていた。高野弁護士はゴーン被告が日本の司法に強い不満を持っていたことを明かした。ゴーン被告は関西空港からプライベートジェット機で日本を密出国し、トルコを経由してレバノンに入国したとみられる。密出国には米民間警備会社の関係者2人が関わり、大型の音響機器のケースに隠れてプライベートジェット機まで運ばれたという。トルコの検察当局もゴーン被告が非合法に出入国していたことを確認し、ジェット機のパイロットや運航会社の幹部ら5人を逮捕したと発表。トルコからレバノンに入国する際は、フランスのパスポートを使用していたとされる。海外渡航防止のためパスポートは弁護団が管理することになっていたが、フランスのパスポートは2通あり、うち1通は入管法上の形態義務から裁判所が携帯を認めていた。
 日本の検察当局はICPOを通じてレバノン政府にゴーン被告の身柄引き渡しを求めているが、ルハン暫定法相は合法的なパスポートが使われたとして法的違反は認められないと主張。日本とレバノンの間には犯罪人引き渡し条約が結ばれていないとして、身柄を引き渡しは拒否する意向を示している。8日にはレバノンで会見を行う予定である。

【アナウンサーによるパネル説明】
・密出国に関わった関係者のうち1は、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)出身
・トルコ検察当局によると、逮捕された運航会社の幹部は「レバノンの知り合いから助けなければ家族に被害がおよぶと脅された」と説明しているという
・ゴーン被告の出国計画は10月から練られ始め、複数のチームに分かれ複数の国で行動し、中には日本人の協力者もいたと報じている
・ゴーン被告は密出国に関し家族の関与を否定している

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):最も遵法精神を持っていなければいけない立場の人間が海外逃亡することで、グローバル経営者の実態や本質が見せつけられた。レバノンにはイランの支援を受けたシーア派民兵組織が存在しており、分断分裂状態にある。この法治国家といえるのかという部分にうまく逃げ込んだ。あまりにも強かで卑しい。

涌井雅之氏(要約):レバノンは本当に美しいところだが、その陰には陰謀が渦巻く要素がたくさんある。
日本の入管が何をしていたんだと思う。出て行くことが可能であるなら、テロリストが入ってくる可能性もある。そういう意味ではもう一度入管についてしっかり考えることがすごく重要。

青木理氏(全文):お二方がおっしゃったようにね、日本、それからトルコのその、違法化あるいは脱法化ということで司法制度をまあないがしろにしたっていう面ではもう許せないことですし、かつ、僕は取材して良く知っているので今回、日本のね、弁護団の人達が本当に努力していたので、彼らを裏切ったって意味でも僕はちょっと腹が立つんですが、ただこのゴーン事件に関して言うと一貫して日本の刑事司法の問題点っていうのも一方で、この照射してるっていうか浮き彫りになってきている。(関口氏:青木さんしょっちゅう言ってましたね)そう。だから、今回も人質司法。否認すると中々出らんない。100日何百日っていう単位で拘束されちゃうっていうだけじゃなくて、例えば代用監獄なんて言ってね、警察に逮捕されると警察の豚箱に入れられるわけですよ。こんなの先進国ではあり得ないんですね。それから、それ以外でも取り調べに弁護士が立ち会えないとか、それから検察が起訴すると90何パーセント有罪になっちゃうなんてこともほとんど実際裁判じゃなくて警察が司法やってるってことになっちゃってるわけでしょ。それ以外にも、例えば死刑制度があるっていうのも、これ犯罪人引き渡し条約って日本はアメリカと韓国しか結ばれてないんですけれども、その理由のひとつが、やっぱり日本は死刑制度があると。ヨーロッパなんかもう死刑全廃してますからね。そういう国とは引き渡し条約を結べないよねっていうことで、日本がそういう状態になっているところもあるんですよ。つまり、悔しいけれどもゴーンさんがおっしゃっていることから見えてくる日本の刑事司法の問題点というのも我々はやっぱり真摯に自分の手を見て直すべきところを直すっていう努力をしなくちゃいけないとも思いますよね。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):ただこのゴーン事件に関して言うと一貫して日本の刑事司法の問題点っていうのも一方で、この照射してるっていうか浮き彫りになってきている。(関口氏:青木さんしょっちゅう言ってましたね)そう。だから、今回も人質司法。否認すると中々出らんない。100日何百日っていう単位で拘束されちゃうっていうだけじゃなくて、例えば代用監獄なんて言ってね、警察に逮捕されると警察の豚箱に入れられるわけですよ。こんなの先進国ではあり得ないんですね。それから、それ以外でも取り調べに弁護士が立ち会えないとか、それから検察が起訴すると90何パーセント有罪になっちゃうなんてこともほとんど実際裁判じゃなくて警察が司法やってるってことになっちゃってるわけでしょ。それ以外にも、例えば死刑制度があるっていうのも、これ犯罪人引き渡し条約って日本はアメリカと韓国しか結ばれてないんですけれども、その理由のひとつが、やっぱり日本は死刑制度があると。ヨーロッパなんかもう死刑全廃してますからね。そういう国とは引き渡し条約を結べないよねっていうことで、日本がそういう状態になっているところもあるんですよ。つまり、悔しいけれどもゴーンさんがおっしゃっていることから見えてくる日本の刑事司法の問題点というのも我々はやっぱり真摯に自分の手を見て直すべきところを直すっていう努力をしなくちゃいけないとも思いますよね。

要旨をまとめると、
・ゴーン事件は日本の刑事司法の問題点を浮き彫りにした。否認するとなかなか出られない人質司法や「代用監獄」と言われている逮捕されると警察の豚箱に入れられるという先進国ではありえないシステム、検察が起訴すると90%有罪になる現状、死刑制度の存在による外国との犯罪人引き渡し条約締結の困難さなどがある。ゴーン氏がおっしゃる日本の刑事司法の問題点を真摯に受け止めるべきだ。

というものです。

しかしながら、
・ゴーン氏に係る疑惑や違法な密出国は、日本の刑事司法の問題点とは一切関係がなく、またそれによって正当化されることはない。
・フランスやドイツなどをはじめとする欧米諸国において、公訴の是非を判断せずに身柄を数ヵ月拘束できる仕組みが存在しており、その点で日本の刑事司法だけが特異だとする主張は事実に即していない。
・日本の裁判における有罪率が90%と高いのは、検察側が有罪だと確信できる事件のみが起訴に至っているから(起訴便宜主義)であり、推定有罪主義がまかり通っているという主張は事実に即していない。
・犯罪人引き渡し条約の締結が困難な理由が死刑制度の存在だとする主張には根拠がない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本はゴーン氏の指摘を真摯に受け止め刑事司法の問題点を考えるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「ゴーン氏に係る疑惑や密出国の言い訳に過ぎない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① IR汚職における新たな5名の国会議員浮上について報道された部分
については前編の報告を、

② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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