TBS「サンデーモーニング」、2020年1月19日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① オーストラリアの森林火災について報道された部分
② 相次ぐ国会議員の不祥事について報道された部分
③ 「風を読む」にて世界のリスクについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① オーストラリアの森林火災について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
オーストラリアで去年9月から大規模な森林火災が続いている。豪全土で北海道を超える面積が消失し、29人が死亡。生存が脅かされている動物を救うため、ヘリコプターで野菜を投下する「ワラビー作戦」が行われている。シドニー大学の研究者は、哺乳類など約10億匹が死んだと推測している。被害拡大を受け、アメリカやカナダが消防士や軍を派遣。日本からも航空自衛隊C130輸送機2機と隊員70人がオーストラリアに到着した。火災が続く理由として、去年のオーストラリアの平均気温が過去最高で、降水量が過去最少を記録したことと、火災積乱雲の存在が挙げられる。
オーストラリア各地では、政府に対し気候変動対策の強化を求める大規模なデモが行われている。オーストラリア東部では、ようやく雨が降り一部の火災が鎮火した。しかし、その雨が被災地で洪水を引き起こしている。一部地域では過去10年以上の降水量を上回るなど、地球温暖化によるとみられる極端な気象現象が起きている。一方、新たな火災が発生している地域もあり、4か月を超えても収束しないままである。
【アナウンサーによるパネル説明】
・今までで11万㎢が焼失し、こうした森林火災はアマゾンやカリフォルニア州等世界各地で起きている
・専門家は、温暖化が森林火災を引き起こして樹木が減少すると、二酸化炭素を吸収する役割が失われるのでさらに温暖化が進むという悪循環が起きると指摘
・温暖化は極端な乾燥だけでなく極端な大雨も引き起こし、こうした傾向は今後増える可能性が高い
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【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):オーストラリアの映像を見てるとゾッとするような怖さを感じる。これが地球温暖化によるものだとほとんどの専門家が言っているからそうなんだと思う。去年の日本の大雨も同様だとすると、これはもう天災ではなく人災。もし人災であるならば、人間の力で克服できるはず。そういう方向に舵を切る機会にしなければいけない。
元村有希子氏(要約):去年が世界平均過去2番目に熱い年だった。産業革命以降の熱い年の大半がこの10年間に集中している。温暖化が進めばこうなるという結果を見せられているような感じがする。IPCCでも温暖化が進めば山火事が増え極端現象が多きると予想している。このまま対策をとらないと今世紀末に3℃気温が上昇すると言われているが、VTRの映像はその今世紀末を見ていると考えた方が良い。
谷口真由美氏(全文):なんかあの、こういうのを見ていると、やっぱり政治というか、秀征さんが人災とおっしゃいましたけど、世界の政治家というかリーダーが何をしているんだろうかという気になるんですね。あの、グレタ・トゥーンベリさんが、まあ少女がですね、本当に怒って泣いて、皆に訴えているにもかかわらず、それをあざ笑うかのような政治リーダーの発言とか態度を見ると、人災であるならば、やっぱりリーダーがどうすべきか、もう待ったなしでやらなきゃいけないことっていうのがあるのに、戦争してる場合でもなければ大国間がさや当てしてる場合でもないという状況を、やっぱりそこを引いて我々はきちんと主張しないとだめですよね。
荻上チキ氏(要約):最近は気候危機とも言われている。いろんなリスクが増大していくことで私たちの生活に大きな変化をもたらす。一つ一つだけみると温暖化の影響なのかを証明することは難しいが、頻度や規模が大きくなっているため気候危機と関係があると科学者は指摘する。一方で、アマゾンやカリフォルニアの火災があってもトランプ大統領は気候危機を否定し、具体的なアクションを取る必要性を否定している。目の前の様々なリスクの全体像を見たうえで対応することに対して先進国は消極的であってはならない。ここはやっぱり前進してほしい。
青木理氏(全文):あの、強固の番組でね、あの、このオーストラリアの森林火災と、その温暖化問題を取り上げるってことを僕は聞いたので、ちょっとあの日本の新聞のデータベース調べてみたんですよ。オーストラリア森林火災、それから温暖化気候変動。すごく少ないんですよ。記事がない、記事が少ないんですね。だからやっぱりちょっと日本のメディアは我々も含めて問題意識の低さというのを反省しないと、しなくちゃいけないのと同時に、今皆さんからお話し出ましたけれど、世界的にはこの問題も気候危機だということで立ち向かわなきゃいけないっていう声がある一方で、まさにチキさんおっしゃったようにトランプさんなんかは、まったく否定したりするわけですね。で、これその企業活動の問題もあるんだろうえど、要するに科学者ももうディープステイトだと。影の政府だと、戦わなきゃいけないんだと嘘ばっかり言ってるんだっていう形である種こう、なんていうのかな、対立、分断をあおるような道具にしているところもある。で、これ、新年のこの番組でやったと思うんですけれども、一種の反知性化っていうかね、幼稚化っていうか、自分さえよければいいんだっていう方向に、こう流れたい人達と、いやまずいよって人達が今世界的にはせめぎ合っている中で、日本ではメディアの関心も低いんですが、まあご存じの通り政府の対応もものすごく遅れていて、ほぼアメリカに追随しているところが、その日本ではその豪雨もそう、僕と秀征さんの田舎の長野もそうだし豪雨もそうだけど台風もそうだし、いろんな被害が出ていて世界的にも被害が一番出ている国なんですよね。なのでやっぱり、僕らが政治やメディアにちょっとこの問題もう少しきちんときちんと取り組まなくちゃいかんよということを呼び掛けて、考えていかなくちゃいけない。今年はそういう年になると思いますけどね。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。
谷口氏(抜粋):なんかあの、こういうのを見ていると、やっぱり政治というか、秀征さんが人災とおっしゃいましたけど、世界の政治家というかリーダーが何をしているんだろうかという気になるんですね。あの、グレタ・トゥーンベリさんが、まあ少女がですね、本当に怒って泣いて、皆に訴えているにもかかわらず、それをあざ笑うかのような政治リーダーの発言とか態度を見ると、人災であるならば、やっぱりリーダーがどうすべきか、もう待ったなしでやらなきゃいけないことっていうのがあるのに、戦争してる場合でもなければ大国間がさや当てしてる場合でもないという状況を、やっぱりそこを引いて我々はきちんと主張しないとだめですよね。
要旨をまとめると、
・グレタさんのような少女が本当に怒って泣いて皆に訴えているにもかかわらず、世界の政治家やリーダーはそれをあざ笑うだけで何もしていない。
・環境問題は待ったなしなので、戦争や大国間でのさや当てをしている場合ではない。
というものです。
しかしながら、
・グレタ・トゥーンベリ氏が少女であることや演説で怒ったり泣いたりしたことは、環境問題の現状とは何ら関係のないことであり、また彼女の主張を正当化するものではない。
・グレタ氏の演説について「現実を理解していない」などの批判が集まることについて「嘲笑うばかり」とする主張は事実に即しておらず、政治的に公平とは言えない。
・現在SDGsを始め世界各国の政府や民間企業が環境問題について具体的な取り組みを実施しており、世界の政治家やリーダーが何もしていないという主張は事実に即していない。
・環境問題と戦争とは何ら関係のない事柄である。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):あの、強固の番組でね、あの、このオーストラリアの森林火災と、その温暖化問題を取り上げるってことを僕は聞いたので、ちょっとあの日本の新聞のデータベース調べてみたんですよ。オーストラリア森林火災、それから温暖化気候変動。すごく少ないんですよ。記事がない、記事が少ないんですね。だからやっぱりちょっと日本のメディアは我々も含めて問題意識の低さというのを反省しないと、しなくちゃいけないのと同時に、今皆さんからお話し出ましたけれど、世界的にはこの問題も気候危機だということで立ち向かわなきゃいけないっていう声がある一方で、まさにチキさんおっしゃったようにトランプさんなんかは、まったく否定したりするわけですね。で、これその企業活動の問題もあるんだろうえど、要するに科学者ももうディープステイトだと。影の政府だと、戦わなきゃいけないんだと嘘ばっかり言ってるんだっていう形である種こう、なんていうのかな、対立、分断をあおるような道具にしているところもある。で、これ、新年のこの番組でやったと思うんですけれども、一種の反知性化っていうかね、幼稚化っていうか、自分さえよければいいんだっていう方向に、こう流れたい人達と、いやまずいよって人達が今世界的にはせめぎ合っている中で、日本ではメディアの関心も低いんですが、まあご存じの通り政府の対応もものすごく遅れていて、ほぼアメリカに追随しているところが、その日本ではその豪雨もそう、僕と秀征さんの田舎の長野もそうだし豪雨もそうだけど台風もそうだし、いろんな被害が出ていて世界的にも被害が一番出ている国なんですよね。なのでやっぱり、僕らが政治やメディアにちょっとこの問題もう少しきちんときちんと取り組まなくちゃいかんよということを呼び掛けて、考えていかなくちゃいけない。今年はそういう年になると思いますけどね。
要旨をまとめると、
・オーストラリアの森林火災と温暖化問題について、日本の新聞の記事数を調べてみたが、大変少なかった。問題意識の低さを反省すべきだ。
・世界的に環境問題への意識が高まる一方でトランプ米大統領などは環境問題の存在を否定しているが、これは企業活動が背景にある。科学者も「ディープステート(影の政府)が動いているので戦うべきだ」などと対立を煽る道具にしている。自分さえ良ければいいという方向に流れる人たちとそうでない人たちがせめぎ合う反知性化の時代だ。
・豪雨や台風など被害が世界一出ている国にもかかわらず、日本の政府の対応は非常に遅れていてほぼアメリカ追従だ。政治やメディアにもう少しきちんと取り組むように言わなければならない。
というものです。
しかしながら、
・「日本の新聞の記事数が少ない」という主張について、比較対象が明らかにされておらず事実に即しているとは言えない。また、これは日本がオーストラリアの森林火災と環境問題について関心が薄いという主張の根拠にはならない。
・トランプ米大統領の主張の背景に企業活動があるとする主張に根拠がない。また、あたかも科学者の多くが「ディープステート」の打倒を掲げているかのような主張は事実に即していない。
・日本の政府の対応がアメリカ追従で遅れているとする主張には根拠がない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「各国政府は環境問題について具体的な行動を起こすべきだ」「環境問題を最優先に考えるべき」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「現在でも国や民間企業によって様々な取り組みがなされている」「経済への悪影響など様々なバランスを考慮しなければならない」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 相次ぐ国会議員の不祥事について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 「風を読む」にて世界のリスクについて報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
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