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サンデーモーニング、2018年8月12日放送回の検証報告です。
今回の報告では、
・自民党総裁選について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。
伊藤友里アナウンサー(以下、伊藤アナ):お伝えいたします。9月に予定されている自民党総裁選。石破氏が安倍氏の対抗馬として名乗りを上げました。
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【VTR】
・石破元幹事長が、自民党総裁選への出馬を正式に表明
・石破氏は、森友・加計学園問題などを念頭に、「正直で公正な政治」を訴える
・国会議員票の約7割が安倍総理を支持
・安倍氏を支持するのは、細田派・麻生派・岸田派・二階派・竹下派・石原派
・石破氏を支持するのは、石破派・竹下派の一部議員
・石破氏が頼りにするのは全国の党員票で、そのカギを握るのは小泉進次郎氏であるという
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伊藤アナ:はい。今の自民党の流れについて、田中秀征さんがみるところでは、昭和30年の結成当時から、吉賀茂氏、池田勇人氏、田中角栄氏、宮澤喜一氏らの流れをくむ、保守本流と、自民党結成を主導した、岸信介氏や福田赳夫氏らの流れをくむ自民党本流。この2つの大きな流れがあるといいます。で、保守本流には、現在の岸田派・竹下派・石破派が。そして、自民党本流には、安倍総理も所属する最大派閥である細田派が当てはまるとみています。では、この保守本流と自民党本流、どういったところで、例えば、考え方が異なっているのか。秀征さんの分析では、まず憲法については、保守本流は、尊重する姿勢が強いのに対し、自民党本流は、改憲の姿勢が強いという違いがあるそうです。外交については、保守本流は、日米同盟とアジア友好、双方を重視する姿勢が強いのに対して、自民党本流は、日米同盟の強化を重視する姿勢があるといいます。集団的自衛権については、保守本流は行使に慎重なのに対し、自民党本流は、行使に積極的な傾向があるといいます。今回の自民党総裁選は、この保守本流対自民党本流の構図だと言いますが、岸田派は、安倍氏の支持。竹下派は、自主投票とするなど、自民党本流が、議員票のおよそ7割を固めているという情勢です。
司会 関口 宏(以下、関口):何か、こちら側(保守本流)が、こちら側(自民党本流)へ寄ってってる状況。で、石破さんの、なんかちょっと不利っぽい感じもありますが、まあ、秀征さんが仰りたかったのは、岸田さんが何でもっと頑張んなかったのって、多分言いたかったんだろうと僕は思っておりますが。いかがでございましょう。
姜 尚中(以下、姜):自民党総裁選は、実質的には内閣総理大臣を選ぶことになるわけですよね。
関口:そう。
姜:だからできる限りやっぱり党内で、いろいろな議論、それから候補者が出ていいし、まあある種の下剋上でも私はいいんじゃないかと思ってますね。ただ安倍さんとしては、これを圧倒的に優勢で勝たないと、連濁なる可能性もあって、ただですね、昔は、中曾根康弘っていう人と、宮澤喜一って人が憲法観を戦い合うような場面があったわけですよね。で、そこには鷹もいるけれども、鳩もあると。で、そういうこう、懐の広い保守があったんですが、今は、憲法一つとっても、まあ優先順位が違うとか、第9条の部分改正にいくのか全面改正にいくのか。こう選択肢がですね、グーッとこう縮まっている。で、それがやっぱり、岸田さんが、辞退したことにやっぱりつながってると思いますし、今の自民党の政策の幅が狭いっていうところが、かなり大きな問題じゃないでしょうかね。
関口:そうですか。はい、順番に行きましょう。
フォトジャーナリスト 安田 菜津紀:はい、この総裁選の行方自体はもちろんなんですけれども、じゃあ、これを通して、今、道半ばの問題がどうなっていくのかっていうことも気掛かりで、例えば、森友加計を通して掘り出された公文書管理の問題。あるいはその責任の取り方ということもそうですし、近いところですと、先日の杉田水脈議員のLGBTをめぐる発言について、じゃあ党内では具体的にどう指導したのか、具体性のない反省というのは沈黙に等しいと思いますし、沈黙というのは党内で差別を温存していってしまうかもしれない。私らがリーダーになるにしても、こうした宙吊りのままの問題を、どう地に足つけて取り組めるのかということも、見ていきたいところではないかと思います。
関口:そうですか。岡本さんいきましょう。
岡本 行夫:あの、1970年代に三角大福中と言われてた五大派閥の時代から、派閥ってのはこう、離合集散を経て、バラバラになってきたところもあるし、それから、一つだけまとまってきたところもある。それが福田派ですよね。それが今の細田派。そして安倍総理の派閥になってるわけで、そういう意味じゃ、さっき姜さんも言われたけども、党内で、それぞれの派閥で強い対抗軸が、政策にあったんですね。ですから、田中派・福田派に対しては、このリベラルの宏池会とかね、この宏池会を継いでるのは岸田さんですよね。岸田さんが下りちゃった。で、今までのように、派閥の領袖がそれぞれ総裁選挙に打って出るっていう構造もなくなっちゃった。そういう中で、やっぱりこの、総裁選挙の政策論争の不在っていうのが、これがまあ。皆で派閥化にしようって言ってきたからしょうがない面はあるんだけれども、寂しいですね。
関口:はい。亀石さん。
亀石 倫子:はい。やっぱり政策論争ではなくって、正直で公正という、そういうこう、スタンスでしか、違いを見せられないというところが残念に思いますし、3年に1回しかない総裁選ですから、私たちにとっては、まあ実質的には総理大臣が誰になるのかっていうことで、すごく関心が、国民の関心が高いはずのものなのに、自民党の中で出来レースのようになってしまっていて、それが非常に残念だなというふうに思います。
関口:青木さん。
ジャーナリスト 青木 理:僕、石破さんも何度かインタビューしたことがあるんですけど、政策的に言うと、そんなに違わないというかね。むしろ石破さんの方がタカ派的なところがあったりとかするんですよ。ただ、今回その、石破さんが最初に発した4つの言葉ですよね。正直・公正・謙虚・丁寧。これもう何を意味するのかってのはもう、誰も言わなくても分かるっていう状況なわけですね。で、確かに政策論争、僕大事なんですけれども、今もしかすると一番政治で問われてるのは、正直で公正で謙虚で丁寧っていうのが問われてるっていう意味でいうと、これはすごく大きな争点だと思うんですね。で、安倍さんの方はこれ、熱烈な支持者がいるっていうのは、これは圧倒的な強みなんだけれども、しかし、今の世論調査を見てると、どうも、安倍さんに対してもう信用できないと。不支持率の方が高いと。信用できないって人達が一方で同じくらいいる。これ、だから3選は確実なのかもしれないですけれども、この後、憲法の問題とか、日朝をはじめとする外交の問題。金融政策の問題。これ3選して、安倍さん、大丈夫なんですかっていうような、こう僕は思いがするし、一回失われた信頼って、そう簡単に戻らないですからね。だから憲法改正なんて言ってますけど、できるのか。かなり難しいんじゃないのってことを考えると、国民の立場からすると、戦後の財産をこの間食いつぶしてきたっていうかね、まあ、価値観によって違うんでしょうけど、覆してきたっていう面もあるわけで、果たしてこれでいいんですか。投票するのは自民党員の皆さんですけれども、国民全体のことを考えて、本当に、安倍さんでいいのか、どうするべきなのかってことを考えて投票していただきたいな。僕、投票権ありませんので、きちんと決めていただきたいなっていうふうには思いますよね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。
・この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
では、順を追って解説します。
今回の放送では、この自民党総裁選について全体を通して「石破茂衆院議員が勝つべきだ」という立場に立った主張が非常に多く出てきました。
いくつか発言の例を挙げてみましょう。
亀石氏(抜粋):まあ実質的には総理大臣が誰になるのかっていうことで、すごく関心が、国民の関心が高いはずのものなのに、自民党の中で出来レースのようになってしまっていて、それが非常に残念だな
青木氏(抜粋):ただ、今回その、石破さんが最初に発した4つの言葉ですよね。正直・公正・謙虚・丁寧。これもう何を意味するのかってのはもう、誰も言わなくても分かるっていう状況なわけですね。で、確かに政策論争、僕大事なんですけれども、今もしかすると一番政治で問われてるのは、正直で公正で謙虚で丁寧っていうのが問われてるっていう意味でいうと、これはすごく大きな争点だと思うんですね。・・・・で、安倍さんの方はこれ、熱烈な支持者がいるっていうのは、これは圧倒的な強みなんだけれども、しかし、今の世論調査を見てると、どうも、安倍さんに対してもう信用できないと。不支持率の方が高いと。信用できないって人達が一方で同じくらいいる。
青木氏(抜粋):国民の立場からすると、戦後の財産をこの間食いつぶしてきたっていうかね、まあ、価値観によって違うんでしょうけど、覆してきたっていう面もあるわけで、果たしてこれでいいんですか。投票するのは自民党員の皆さんですけれども、国民全体のことを考えて、本当に、安倍さんでいいのか、どうするべきなのかってことを考えて投票していただきたいな。
このように、「安倍首相はやめるべきで、石破衆院議員が勝つべきだ」という論調が前提で議論が進行していました。
しかしながら、当然石破茂議員が次期総裁・総理大臣として不適だと考える立場や、安倍総理が次期自民党総裁として、3期目の総理大臣としてふさわしいと考える立場もあります。このような立場を無視し、片方の立場に立った報道は、政治的に公平とはいいがたいだけでなく、議論においてそうした論点を欠いている恐れがあるといえます。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3項「政治的に公平であること」、ならびに同第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。今回の放送では、政治的に公平でない内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。