2018年7月22日 サンデーモーニング

2018年7月22日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、2018年7月22日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・野党の不信任案提出について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

橋谷能理子アナウンサー(以下、橋谷):今日、6か月に及ぶ通常国会が幕を下ろしますが、目立ったのは、政権の強硬な姿勢ばかりでした。

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【VTR】
・20日(金)、野党は内閣不信任決議案を提出
・立憲民主党の枝野代表は、過去最長となる2時間43分にわたり安倍政権を厳しく批判
・野党側が反発する中、参議院定数を6増やす公職選挙法改正案が衆議院で可決・成立
・自民党の船田議員はこれを棄権し、「定数増は国民からの理解されるものではありません」と伝えた
・野党側は、カジノ整備法案について、国会審議に諮らず政令などにゆだねる項目が331に達することなどを激しく批判
・しかし、カジノ整備法案も与党などの賛成多数で可決・成立
【VTR終】
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司会 関口 宏(以下、関口): 街の人の声も出ましたけどね、なんかもどかしい感じを皆もってるんじゃないかな。何なんだろうと僕はいつも思うんだけど。ええ、ちょっとこれを説明してください。

橋谷:通常国会で成立した主な法律です。働き方改革関連法、参院定数6増法、カジノ整備法などなんですが、世論調査を見る限り反対の方が多くなってるわけなんですね。それにもかかわらず、特にこの2つに関しては、審議時間を見ても、野党は不十分だったのではないかと反発しているわけです。一方、森友問題に関しては、なぜ国有地を格安で売却したのか。また公文書の改ざんや廃棄で何を守ろうとしたのか。加計問題では、安倍総理と加計理事長の関係が獣医学部新設に影響したのか。こういった疑惑の解明は進んでいません。野党はキーパーソンとして、安倍昭恵さんなどの国会招致を求めているんですが、与党は応じないまま、国会は閉幕してしまいます。

関口:これでいいんだろうか。でも、どうしようもないよなあっていう感覚を皆さんはお持ちなんじゃないかなと思います。どうでしょうか。

寺島 実郎(以下、寺島):あのまあ、一言で言ってしまえばその、自堕落な政治っていうかね、明らかにそのパネルを見ても、国民の意思とか、国民の知恵とかがですね、この国の最終的な意思決定につながってない状況にあるんだなっていう苛立ちを、誰もが思ってると思いますね。で、僕、このカジノ整備法案ってことについてだけ僕は発言していきたいんですけどね、日本がね、とにかく観光を軸において産業を活性化しなきゃいけないっていう流れの中にあることは確かなんですよ。で、去年、海外から2800万人の人がやってきましたと。それを6000万人にして、日本の一大産業にしたい思う気持ちはよく分かるんでね。で、今はね、観光が、ツアー客相手の爆買い期待で成り立ってるんだけど、これからやっぱりハイエンドのですね、付加価値の高い観光客を取り込んでいかなきゃいけないんですよ。で、そこでね、シンガポールモデルっていう言葉がよく使われるんだけども、シンガポールなんかもカジノやってるじゃないかと。観光で成功してる国ってカジノやってるじゃないかって勢いでですね、カジノもね、IRって言葉のつまり統合型リゾートってのは、付加価値の高い観光って意味なんですよ。で、カジノも、ひとつのコンテンツとしての候補ではあるんだけども、シンガポールが成功してるのはですね、カジノで潤ってるっていう部分じゃないんですよ。むしろですね、例えばその医療ツーリズムだとかね、医療目的の観光客を引き寄せてるだとか。あるいは国際会議だとかですね、で、そういう類の付加価値にものすごい知恵を出してね、そのうちの選択肢の一つとしてカジノも付け加えてるんだけども、それは何も大きな起爆力になってるわけでも何でもないと。で、いつの間にか、IRの議論が、どんどんどんどんカジノありきのですね、カジノ業者ありきの議論になっていってしまったってのがね。で、ここからね、各地域の人達が、全国津々浦々どこ行っても観光で旗揚げしたいっていう勢いになってるんだけども、考えなきゃいけない。本当のですね、知恵の出しどころですね。本当に、付加価値の高い観光ってのは一体どうするのか。で、日本人ね、これ、カジノやったらギャンブル国家になるって思ってる人いるんだけど、実は、 “世界広し”といえども、日本ぐらいのギャンブル国家ってないんですよ。全国津々浦々パチンコがありですね、競輪、競馬、競艇。皆、要するに、ある意味ではギャンブル国家なんですよ。本当に日本の観光はどうあるべきなのかってことをね、10時間じゃないんですよね。本当はね、そこのあの、40時間か。要するに本当に日本人の知恵を出してね、この国の産業に、観光するかどうかってときにあるんだってことをちょっと言っておきたいと思います。

関口:はい。大崎さんいきましょう。

関西学院大学客員教授・元国連職員 大崎 麻子(以下、大崎):私もやっぱり、一つひとつの法案についてもう少しこう、多角的な審議をしてほしいなってことはやっぱりずっと見てて思いましたね。やっぱり寺島さんが仰ってた通り、IR法案に関しては、ギャンブル依存症にはすごく焦点があたっていて、で、野党が出した提案が附帯決議としてついたってことは、これはもう評価できることだと思うんですけど、でもそもそもこの、経済活性化を目的としてるって言ってるので、そうであればやっぱり、実際にどれほどの経済波及効果が見込めるのか、が非常に一つ重要な論点だと、もっと深く検証すべきだったんではないかと。で、あの、外国人観光客、特に富裕層の動向がどうなってるのかとか、国際的なカジノのビジネスの今の在り様、現状。それから、国際会議場のその需要ですね。そうした中で、日本がどういう強み、弱みがあるのかっていうことを、今まさに本当に議論が、これから自治体に移っていくので、そのときに、こういう論点をしっかり分析して、報道もして。でないと自治体が地方創生のつもりで誘致したとしても、やっぱり採算が取れずに将来負債になるっていうのは最悪のシナリオだと思いますね。

関口:チキさん。

評論家 荻上 チキ(以下、荻上):はい。議員定数の話でいきますと、私個人としては、議員定数の削減よりは、増やす方が好みなんですね。身を切る改革っていうのは、民主党政権下からずっと続いてる路線ではありますけれども、こうした緊縮路線っていうのは僕は反対でした。なので、議員を増やすことそのものは、ゴールとしては僕は賛成できるんですが、しかし手続きがあまりに良くないですね。急に出してきて、尚且つ自民党にとって有利な形で、日本の政治制度の将来をどうしようかという議論ではなく、短期的に決めてしまった。こうした決めすぎるってことはまず良くないですね。それをカジノの話に言えば、先程から外国人観光客を誘致するって話があったりしますけれども、国会でも散々、実はこの40時間の中で、野党からいろんなデータが出されて議論されてたわけです。そのデータというのは、要は、どんな試算を見ても、日本人の方が利用するっていうような結果になってるということ。それから、そうやって日本人利用させる、このカジノ法案の中では、例えば、金融の貸付制度というのが設けられていて、要は、負けた客にお金を貸すっていうことをやりたい放題になってしまうと。こうした法案の中で、依存症対策をやるといっても、ブレーキとアクセルが壊れたような状況になってしまうと。こういったちぐはぐさがどの法案でも残ったなっていうような印象があります。

関口:元村さん、いきましょう。

毎日新聞科学環境部長 元村 有希子(以下、元村):残念なのは、やっぱ党首討論が少なくなってるということもあります。2000年には、年8回開かれているのが、去年は0。今年は2回しか開かれなかった。しかも、中身がね、ああいう感じで。お互いに与党も野党も、歴史的役割は終わったなんて言っている。でも国民に議論の中身を見せるという一番大切な場なのに、それがないがしろにされている。で、そして野党が一番の見せ場と思っている、いわゆる予算委員会の集中審議などは、まあ野党が何となく、攻めあぐねている間に、森友も、加計も、うやむや。そして、なんかもう理不尽な法案がどんどん通ってしまうというような。結局まあ、摘出もあるんですけど、上手いことやっぱり与党が勝っちゃってるわけですよね。で、この半年間で私たちが学んだこと、得たものっていうのは、先程の街頭インタビューにもありましたけど、諦めと失望ですよね。で、これこそ一番、安倍政権が喜んでいる状況でありまして、それだけはやっぱり、諦めても失望してもいいんですけれど、次に前を向いてどう変えていくかってことをやっぱりちゃんと考えないと、本当に危ないと思いました。

関口:そのもどかしさですね。松原さん

松原 耕二(以下、松原):今回の国会を見てて、ここまでですね、政府がきちんと説明しない。はぐらかす。あるいは間違ったデータを出してくる。質問に向き合わないっていうのは、果たしてあっただろうかと思うんですね。何故そこまで説明もしないのかと。これだけ法案も反対だったりする。さっきの街ロケでも皆おかしいと思ってる。それでもじゃあ何故、説明しないんだろうかと。根っこには何があるんだろうかと考えるとですね、もう既に、つまり、国民のコンセンサスを取ろうっていう気はないんじゃないかと。つまり、今のですね、制度ではまあ、だいたい最近の投票率でいうと、半分ちょっとが投票に行って。そのうち小選挙区制であれば、半分以上取れば、その、有権者の。50%以上いって、ちょっといってその半分を取れば政権を維持できるわけですね。そうすると、25%。政治をすれば、まあ何とかなるわけですね。政権を維持するという意味では。そういう意味では、まあ、岩盤のようなですね、ある種の業界層。あるいは保守層みたいな。それに株価を維持するとアピールできるという人達にやっとけば、75%コンセンサスを取らなくていいんじゃないかと。もう、そういうふうに思って政治をしてるというふうにしか思わないと説明がつかないんですね。だから先ほども、元村さんも仰いましたが、諦めになればなるほど、投票率が下がるとさらに15%政治。つまり、一部の人へに向けての政治にどんどんなっていくんじゃないかと。なんかトランプ政権とのですね、類似点みたいなのを、ちょっと感じてしまう気がしますね。

関口:今、25%取れば、いわゆる今の一強体制が・・・

松原:ざっくり言えばそうですね。

関口:これ見たって、だからそうですよね。ね、反対。賛成派この程度なのに、反対はこんなにいるのに通ってしまうという。

橋谷:諦めちゃいけないですよ。

関口:諦めちゃいけない。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の3点です。

1、元村氏の発言に、政治的に偏った発言が含まれている恐れがある
2、松原氏の発言に、事実と異なる内容が含まれている恐れがある
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、 元村氏の発言に、政治的に偏った発言が含まれている恐れがある
元村氏は今回の報道で以下のように発言しています。

元村氏(抜粋):で、この半年間で私たちが学んだこと、得たものっていうのは、先程の街頭インタビューにもありましたけど、諦めと失望ですよね。で、これこそ一番、安倍政権が喜んでいる状況でありまして、

この発言で元村氏は「安倍政権が喜んでいる」という表現を使っていますが、当然安倍首相がそうしたリアクションに対して「喜んでいる」ことを示す証拠はありません。安倍首相を悪だと印象誘導するための発言と取られても仕方のない発言です。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」ならびに同3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に、事実と異なる内容が含まれている恐れがある
松原氏は今回の報道で以下のように発言しています。

松原氏(抜粋):つまり、国民のコンセンサスを取ろうっていう気はないんじゃないかと。つまり、今のですね、制度ではまあ、だいたい最近の投票率でいうと、半分ちょっとが投票に行って。そのうち小選挙区制であれば、半分以上取れば、その、有権者の。50%以上いって、ちょっといってその半分を取れば政権を維持できるわけですね。そうすると、25%。政治をすれば、まあ何とかなるわけですね。政権を維持するという意味では。そういう意味では、まあ、岩盤のようなですね、ある種の業界層。あるいは保守層みたいな。それに株価を維持するとアピールできるという人達にやっとけば、75%コンセンサスを取らなくていいんじゃないかと。もう、そういうふうに思って政治をしてるというふうにしか思わないと説明がつかないんですね。

要旨をまとめると、以下のようになります。
・選挙というのは投票の半分の支持が取れれば政権を維持できる
・現在の投票率は50%なので、今の安倍政権は25%の層だけを気にしている
・その25%の層は今の安倍政権の動きを気にしないので、業界層や保守層、あるいは株価を気にしている人たちである

しかし、安倍政権に投票している層が特定の業界層や保守層、株価を気にしている人たちだけであるという根拠もありません。また、そもそも安倍政権が「選挙に影響がある(とされる)25%のためだけに政治をやっていればいい」と考えているというのも完全な憶測です。こうした憶測を「そう思わないと説明がつかない」などとあたかも事実のように話すのは視聴者に誤った印象を与えかねません。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

今回の放送では、この問題について全体を通して「今回の立法は強引だ」「参院6増案は自民党の党利党略だ」「安倍政権は国民の声を聴いていない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「立件民主党こそ内閣不信任案で議事妨害を図ったうえに3時間近くも演説するのはおかしい」「参院6増案は県の代表をしっかり置こうとする案だ」「安倍政権は優秀な内閣だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の立場に立った論点のみが放送されていました。
こうした報道は、放送法第2章第4条第3項「政治的に公平であること」ならびに同第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、政治的に偏っていたり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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