TBS「サンデーモーニング」、2019年9月1日放送回の検証報告(後編)です。
今回の報告では、
① 韓国軍による竹島での軍事訓練と文政権のスキャンダルについて報道された部分
② 「風を読む」にてブラジルの森林火災と地球温暖化について報道された部分
③ 京都アニメーション放火事件の被害者実名公表について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
後編で検証するのは、
② 「風を読む」にてブラジルの森林火災と地球温暖化について報道された部分における
検証3「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに、
③ 京都アニメーション放火事件の被害者実名公表について報道された部分
となります。
では、さっそく②の検証3をみてみましょう。
3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):ちょっと冷静になって考えてみると、ちょっと中長期的に考えてみると、何が得なのか、何が良いのかっていうのは誰でも分かると思うんですね。しかし、それができない。例えば温暖化の問題もそうですよね。それから、例えば、EUの離脱だってそうだと思うんですよ。長期的に考えたら、得じゃないでしょうと。あるいは、イランの核合意なんかもそうだし、それから、今日僕番組で申し上げましたが日韓だって、こんなもの揉めて得なことはないよねと。冷静になって考えてればと。ところがどうも最近になって自国ファーストとか自分さえよければとか短期的な利害とか、ちょっとスッキリしたいとかっていう、なんかある種の動物的な感覚みたいなものがすごく強まっちゃってるんですね。じゃなくて、人類はそうじゃないところで発展してきたわけですから、なんかこう、人類が人類たるべきを取り戻せっていうような感じ。
要旨をまとめると、
・温暖化の問題、EU離脱、イラン核合意など、冷静になって中長期的に考えられないことが一因となってこういうことが起きている。日韓問題も同じだ。
・こうした問題は自国ファーストの考えや自分さえ良ければという発想、そして短期的な利害、ちょっとスッキリしたいという動物的な感覚が強まっていることが影響している。
というものです。
しかしながら、
・地球温暖化の問題への取組やイギリスEU離脱、イラン核合意破棄などはそれぞれ実施に至る経緯や理由があって実施されていることであって、これを冷静でない、中長期的な思考ができていないとする主張には根拠がなく、事実に即しているとも言えない。また、日韓関係はこうした問題とは何ら関係ない。
・こうした諸問題が自国ファーストの発想や自己中心的な発想、短期的な利害や動物的な感覚が背景にあるという主張には何ら根拠がない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
続いて、
③ 京都アニメーション放火事件の被害者実名公表について報道された部分
となります。では、放送内容を見ていきましょう。
【VTR要約】
35人が犠牲となった京都アニメーションの放火殺人事件。警察はこの日、これまで明らかにしていなかった25人の犠牲者の名前を公表した。亡くなった男性の父親が会見で「石田敦志というアニメーターがこの京都アニメーションで確かにいたということを、どうか、どうか忘れないでください。」と涙ながらに述べた。これで犠牲者全員の名前が明らかにされた。警察は、「遺族が死を受け入れるまでに時間がかかっていると認識した。最後の葬儀を終え今日公表した」と説明している。
【コメンテーターの発言】
青木理氏(全文):ご遺族の気持ちもよくわかって、今回、名前を出さないでくれとおっしゃった方もいらっしゃったみたいなんですね。これ、メディアも反省しなくちゃいけないのは、メディアスクラム的な取材ってのもあるし、それからプライバシー意識ってのが高まってるってこともあるんですけれど、ただ今、おっしゃったように、その、忘れないためにも、あるいは、死者を数字で丸めちゃわないためにも、それから、メディアってのは、歴史のデッサンをするっていうんですけれども、事件の全体像を描いたりとか、真相を究明したりとか、その情報を社会に共有するためにも、やっぱり被害者のお名前ってのは必要なんですね。少なくとも警察はちゃんと発表しなくちゃいけない。じゃないと、例えば、桶川ストーカー殺人なんていうケースっていうのは、警察が不祥事を隠すために、被害者の名前を隠すなんてことも起こる可能性はあるんですね。なので、その、メディア側も自制ある取材が必要だってことを前提としたうえで、被害者、事件の被害者の方のお名前ってのはきちんと警察が発表するっていうことを社会的なコンセンサスにしてもらいたいなと思います。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):忘れないためにも、あるいは、死者を数字で丸めちゃわないためにも、それから、メディアってのは、歴史のデッサンをするっていうんですけれども、事件の全体像を描いたりとか、真相を究明したりとか、その情報を社会に共有するためにも、やっぱり被害者のお名前ってのは必要なんですね。少なくとも警察はちゃんと発表しなくちゃいけない。じゃないと、例えば、桶川ストーカー殺人なんていうケースっていうのは、警察が不祥事を隠すために、被害者の名前を隠すなんてことも起こる可能性はあるんですね。なので、その、メディア側も自制ある取材が必要だってことを前提としたうえで、被害者、事件の被害者の方のお名前ってのはきちんと警察が発表するっていうことを社会的なコンセンサスにしてもらいたいなと思います。
要旨をまとめると、
・事件を忘れないため、死者を「数字で丸めない」ため、事件の全体像を描くため、真相を究明するため、そしてその情報を共有するために被害者の名前は必要だ。
・桶川ストーカー殺人事件のケースで警察が不祥事を隠すために被害者の名前を隠すことがあった。少なくとも警察は被害者の名前を公表する必要がある。
・メディア側も自制ある取材をしつつ、被害者の名前を警察が発表するということを社会的な合意にすべきだ。
というものです。
しかしながら、
・事件を忘れないこと、事件の全体像、真相究明、情報共有といった事柄と、被害者の実名公表とはまったく関係がない。したがって、被害者の実名公表が必要だという主張は明らかな誤りである。
・京アニ放火事件の真相究明や全体像を描くことは警察の役目であってメディアの機能ではない。
・プライバシーの権利侵害が許容されるのはその事実を公表することに公益性がある場合で、政治家や著名人などがこれにあたる。したがって今回の京アニ放火事件において氏名を公表する正当性は全くなく、死者を「数字で丸め」てはいけないとする主張は誤りである。
・桶川ストーカー殺人事件にて行われた不祥事隠しは、被害者の実名公表によって回避できるものではない。したがって警察の不祥事隠しを防ぐために実名公表をすべきだという主張は誤りである。
・メディア側が自制ある取材をし、被害者の名前を警察が公表すべきだという主張は、メディア側が自制ある取材をするだろうという立場に偏った主張で事実に即しているとは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「事件を風化させないために実名報道は必要だ」「報道する自由、知る権利を考えれば実名報道は必要だ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「被害者の実名がないから事件が風化するということはない」「京都アニメーション側から個別取材の拒否、実名公表中止の要請があった。被害者遺族の意向より大切なものはないはずだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
① 韓国軍による竹島での軍事訓練と文政権のスキャンダルについて報道された部分
については前編の報告を、
② 「風を読む」にてブラジルの森林火災と地球温暖化について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。