2019年5月5日 サンデーモーニング(前編)

2019年5月5日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年5月5日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 上皇陛下退位・天皇陛下即位について報道された部分
② 女性天皇、女系天皇について報道された部分
③ 憲法改正に安倍首相が言及した件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 上皇陛下退位・天皇陛下即位について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
令和最初の一般参賀に参列する人々の姿が映し出される。憲政史上初となる退位礼正殿の儀が行われた旨伝えられる。明治憲法下では、天皇は国の元首であると規定されていたが、日本国憲法の制定により天皇は国民統合の象徴と位置付けられたとアナウンス。
その後、退位礼正殿の儀や令和へのカウントダウン、即位後朝見の儀が行われる様子が流されVTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・明治憲法では、天皇は国の元首であり、主権は天皇にあると規定していた。天皇は人の姿となって表れた現人神とされ畏敬の対象とされていた
・終戦後、昭和天皇は人間宣言を行い、新憲法では国民統合の象徴と定められた
・即位後朝見の儀では、上皇さまについて「いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心をご自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお勤めに真摯に取り組んでこられました」と述べられた

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【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(全文):イギリスのBBCが初めてヒューマンエンペラーっていう表現で、つまり人間の、という。それを前面に出してきたんですよね。だから、象徴天皇っていうのは結局人間天皇ってのとイコールで、象徴天皇制っていうのは長い歴史の中で考えると70年ぐらいの歴史しかないわけですね。ということは、これは完成形態はないわけで。したがってこれは常に途上にあって未完であると。しかし自分はこういう模範を出したいという形で平成時代の天皇がビデオメッセージで国民に問いかけたと。で、これは生前退位ということですけど、これはある憲法学者の言葉を使うと、脱出の権利を行使したと。つまり天皇であることを私はやめますよという脱出の自由がなければ、やはりそれは本来おかしいんじゃないかっていうのが憲この法学者の考え方なんですけれども。その自由を行使されたということは、これは多くの国民にとっては青天の霹靂だったと思うんですね。ですから、私は象徴天皇っていうのは、天皇制自体は文化的に見れば悠久の歴史をもっていても、70年の歴史の中で、これは絶えず進化していく。ですから、民主主義が未完の革命であるのと同じように、象徴天皇制も進化していくし、それは最後に決めるのはやっぱり国民であるということを、しっかり国民が認識しなければいけないと思いますね。
大宅映子氏(要約):元首と象徴以上にすごいのは、神様だったということ。それを分かっていて、象徴天皇をかたちづくるのは本当に悩まれただろうなとつくづく思う。神様だったことが分かっていないと、象徴もわからないと思う。

安田菜津紀氏(要約):国民生活への影響と照らし合わせて、この時期に改元が行われた意味も考えなければならないと思う。改元に伴い10連休となったが、役所も10日間ずっと開いていない。生活困窮者が追いやられないための体制を整えてから改元に臨むべきだったと思う。映像では祝賀ムード一色に見えるが、覆われがちな声もあるということを忘れてはいけない。

加来耕三氏(要約):象徴というのは、目に見える形を持たないものを、別の形で表すということ。象徴ということ自体分からないのにもかかわらず、国民はそのことをあまり考えない。上皇が示された象徴天皇というものを後追いして見てるだけという感じがする。国民も寄って考えなければならないと思う。

松原耕二氏(全文):そうですね。メディアの人間から考えると、時間があるときちょっといろいろテレビ見てても、祭り騒ぎすぎたかなと。もっといろんなことを、いま皆さんがおっしゃったようなことをね、考えさせるようなものをもっと伝えるべきだったろうなと自戒の念を込めて思います。もう一つ付け加えると、皆さんの話を付け加えると、新しい天皇陛下は11歳ですかね。10代で終戦を迎えられて、それまでの一種、神と崇められてた時代を経て、必死でまあ、象徴像を作られてきたわけですよね。で、ずっとその、慰霊の旅を重ねられて、平和の想い、例えば沖縄への想いなんかを繰り返し語られてきた。それが今の時代、なんか歴史を忘れ軽んじたり、あるいは歴史を修正しようという動きがものすごく顕著になってきてると思うんです。それを一種、前の天皇陛下のふるまいってのは、それを押しとどめる役割を果たしてきたように思うんですね。そういう役割をお願いっていうか、そういうことを担ってもらうのがいいかって議論はありますけど、でも結果的にそうだったような気がしてて。ですから、そういう意味でも、新しい天皇陛下が戦後生まれですから、どんなふうに戦争と平和を語るのかということを、ものすごく興味があるというか、そこを見定めてみたいというふうに思いますね。
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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
姜尚中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

姜尚中氏(抜粋):これは生前退位ということですけど、これはある憲法学者の言葉を使うと、脱出の権利を行使したと。つまり天皇であることを私はやめますよという脱出の自由がなければ、やはりそれは本来おかしいんじゃないかっていうのがこの憲法学者の考え方なんですけれども。その自由を行使されたということは、これは多くの国民にとっては青天の霹靂だったと思うんですね。ですから、私は象徴天皇っていうのは、天皇制自体は文化的に見れば悠久の歴史をもっていても、70年の歴史の中で、これは絶えず進化していく。ですから、民主主義が未完の革命であるのと同じように、象徴天皇制も進化していくし、それは最後に決めるのはやっぱり国民であるということを、しっかり国民が認識しなければいけないと思いますね。

要旨をまとめると、
・「天皇陛下に脱出の自由がないことはおかしい」という主張がある憲法学者によりされている。
・今回の生前退位とは、天皇であることをやめる自由を行使したことで、国民にとって青天の霹靂であったに違いない。
・天皇制は常に進化していくもので、それを決めるのは国民である。
というものです。

しかしながら、
・特定の憲法学者1人の意見が天皇制の正式な見解ではない
・日本国憲法第一章の規定により天皇の立場が規定されており、その規定に基づき選挙権や被選挙権といった一部人権が制限されるとする認識が正しいとされている
・今回の生前退位は高齢による公務遂行の困難を理由としたもので、天皇であることを辞める自由を行使したとする姜尚中氏の主張は明らかに事実に反している
・この70年の動向だけで天皇制が常に進化していくと断言するのは根拠に乏しく、またそれが国民によって変化するという主張にも根拠がない

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での姜尚中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):もう一つ付け加えると、(中略)ずっとその、(天皇陛下は)慰霊の旅を重ねられて、平和の想い、例えば沖縄への想いなんかを繰り返し語られてきた。それが今の時代、なんか歴史を忘れ軽んじたり、あるいは歴史を修正しようという動きがものすごく顕著になってきてると思うんです。それを一種、前の天皇陛下のふるまいってのは、それを押しとどめる役割を果たしてきたように思うんですね。(中略)新しい天皇陛下が戦後生まれですから、どんなふうに戦争と平和を語るのかということを、ものすごく興味があるというか、そこを見定めてみたいというふうに思いますね。

要旨をまとめると、
・上皇陛下は慰霊の旅を繰り返され、沖縄への想いなどを語られてきた。
・今の時代には歴史を軽んじたり、修正しようとする動きが顕著になっている。上皇陛下はこうした動きを押しとどめてきた。
・戦後生まれの天皇陛下が即位したので、どのように戦争と平和を語られるのか興味がある。

というものです。

しかしながら、
・上皇陛下は政治や歴史解釈に影響を与えることを目的に発言されたわけではない
・新しい歴史的事実が発見されたりし、歴史の認識や解釈が変わることは進歩として当然あり得る
・特定の立場に立った発言を期待するという発言は、戦後生まれの天皇陛下の言動を政治利用しようとする極めて悪質なものである

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「象徴天皇制について今一度考え直すべきだ」「お祭り騒ぎ過ぎた」「サービスが止まって国民が迷惑した、10連休にやる意味があったのか」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「象徴天皇制は堅持すべきだ」「皇位継承は国民的なイベントでお祝い事である以上当然だ」「10連休中も公共サービスは機能していた」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 女性天皇、女系天皇について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 憲法改正に安倍首相が言及した件について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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