サンデーモーニング、2019年1月6日分の検証報告(後編)です。
今回の報告では、
FCレーダー照射問題に対する韓国側の反論動画公開について報道された部分
アメリカにおけるキャラバンへの催涙ガス使用について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。
後編で検証するのは、
FCレーダー照射問題に対する韓国側の反論動画公開について報道された部分における
検証3「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに、
アメリカにおけるキャラバンへの催涙ガス使用について報道された部分
となります。
では、さっそく①の検証3をみてみましょう。(放送内容については前編をご覧ください)
3、青木氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):日韓の今のトップの政治的なスタンスの違いがかなり出てきているんですよね。文在寅さんっていうのは人権派弁護士出身で、貧しくて苦労して今進歩派というか、韓国では進歩派、リベラルですよね。で、過去の保守政権、韓国の軍人出身の政権に対するものすごい反発があると。一方のその安倍さんというのは、保守であり右派であり、過去の韓国の保守政界と結びついた岸信介さんの直系という。(中略)ビデオの公開なんかも、かなり首相の意向だったりとか、その首相の意向に対して韓国が反発したりとかってことがどうもあるってことになると、政治的スタンスの違いってのが、かなりここにきて出てきちゃった。(中略)やっぱり日本と韓国っていう隣国同士が、これで本当にどんどんどんどん溝が深まってしまうっていうことになってしまうので、やっぱり、繰り返し。皆さんの繰り返しになりますけれども、ここはひとつ冷静になって、韓国の主張もちゃんと見て、なぜこういうことが起きてるのかってことも含めて、あまり感情的にならずに見つめることが大切だろうなとは思いますよね。
要旨をまとめると、
・韓国の文在寅大統領は人権派弁護士出身で貧しくて苦労した結果リベラル、日本の安倍首相は保守右派で、この政治的スタンスの違いがビデオの公開などに首相の意向として表れている
・日本と韓国の溝が深まるのはよくないことなので、冷静になって韓国の主張を認めて、なぜこういうことが起きたのかを感情的にならず見つめるべき
というものです。
しかしながら、
・政治的スタンスの違いは「韓国海軍軍艦による日本の哨戒機への火器管制レーダー照射」という今回の問題とはまったく関係のない話である。日本はあくまで毅然とした対応をしているだけで、そこに安倍首相の政治的スタンスはまったく反映されていないし、その対応について文大統領が過去貧しくて苦労したリベラルであるという話は何の関連性もない。したがってこの主張は重要な論点から視聴者の目をそらさせるための詭弁でしかない。
・日韓の溝が深まることはあくまでこのレーダー照射問題に追従する結果であり、それ自体を目的化することは問題の解決を目指す姿勢としては不適切でしかない。韓国側の主張はあまりにも無理筋であり、そうした主張を冷静に受け止めよという主張はあまりに韓国側に寄ったものであると言わざるを得ない。
という、発言と相反する事柄が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
続いて、
②アメリカにおけるキャラバンへの催涙ガス使用について報道された部分
となります。では、放送内容を見ていきましょう。
【VTR要約】
・中米諸国からアメリカへ移住を目指すキャラバンの一部150人が、アメリカと国境を接するフェンスを越えてアメリカへの不法入国を図った
・これに対しアメリカの国境警備当局が催涙ガスを使ってキャラバンを制圧し、25人を拘束
・国境の壁建設をめぐって、連邦議会の下院では多数党である民主党が強く反発
・しかしトランプ大統領は、議会の承認なしに壁の建設は可能と主張
——-
【コメンテーターの発言】
安田菜津紀氏(全文):そうですね、あの移民難民の受け入れというのが、総じて本当に危険なのかということを今一度考えなければいけないと思うんですよね。例えば先日始まったばかりのこの議会の中では、23年前にソマリア難民としてアメリカに渡ってきた方が、ムスリム女性初の下院議員として実は議場に立っているんですよね。なので受け入れる受け入れないの二元論ではなくて、方法は模索できるということが一つ示されているんですよね。あの国境地帯では拘束された子どもが亡くなるということが相次いでいますし、そうした排除の姿勢そのものが危険であるということに改めて向き合う必要性があるのではないかと思います。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、安田氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
安田氏(抜粋):そうですね、あの移民難民の受け入れというのが、総じて本当に危険なのかということを今一度考えなければいけないと思うんですよね。(中略)なので受け入れる受け入れないの二元論ではなくて、方法は模索できるということが一つ示されているんですよね。あの国境地帯では拘束された子どもが亡くなるということが相次いでいますし、そうした排除の姿勢そのものが危険であるということに改めて向き合う必要性があるのではないかと思います。
要旨をまとめると、
・移民難民の受け入れが総じて危険なのか考えるべき
・受け入れる、受け入れないといった二元論だけでなく、方法を模索すべき。排除の姿勢そのものが危険
というものです。
しかしながら、
・移民難民の受け入れが危険だから排除しているのではなく、法的手続きに則っていない不法入国だから排除されているだけ
・違法入国を排除するのは当然であり、こうした発言は事実と異なる認識を視聴者に与え、法律を無視することを是正する危険な発言
という、発言と相反する事柄が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「移民難民を排除することは許されない」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「そもそもアメリカで話題になっている移民難民は不法入国だ」「キャラバンは不法入国者が強硬手段にでたもので、鎮圧は正当なものだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
①について報道された部分
については、前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。