2019年9月17日 報道ステーション

2019年9月17日 報道ステーション

9月17日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・処理水の海洋放出についてさまざまな論点を取り上げて放送がなされていたか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):続いて、小泉環境大臣は先週に続いて福島県を訪問し福島第一原発を抱える双葉町の町長らと面会しました。先週、所管外と発言した汚染水などについての問題について小泉さんならではの持論を展開しました。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):就任後2度目の福島入りで大熊、双葉などの町長を訪問しました。繰り返したのは、この言葉です。

小泉進次郎環境大臣:皆さんとの「信頼」関係をより太く/地域の皆さんの「信頼」なくして進むことはないと/皆さんとの「信頼」をさらに強くしていけるようがんばりたい

ナレ:国と地元の信頼が問われたのが原田前大臣による福島第一原発の処理水を海洋放出するしかないという発言でした。今日、改めて真意を聞きました。

原田前大臣:やっぱり最終的には(海に)放出、希釈する方法しかないかなと。

ナレ:背景には汚染水の貯蔵タンクが限界に近づく中処分方法について政府内で議論が進まない状況を変えたいという狙いがあったといいます。

原田前大臣:誰かがが言わないと新しい次元、ステージに上がっていきません。捨て石というのは、誰かが犠牲になる、非難の対象になりながらも、正しいと思うべきことを世の中に発信していかなければならない。

ナレ:そのうえで小泉大臣に対して…。

原田前大臣:環境大臣としてこの極めて大事な問題に何の意見を持たないわけにはいかない。小泉さんがいずれの判断をされるものと思います。

ナレ:大臣本人も就任当日は所管外と断ったうえでこう話していました。

小泉進次郎環境大臣:福島の皆さんの気持ちをこれ以上傷つけるこのないような、そんな議論の進め方をしなければならないではないかと。

ナレ:ただ、今日は…。

小泉進次郎環境大臣:所管外というのは思いを持っていないということではありません。軽々に所管外の者が発言することで、結果として一番大切にしなければならない地元の福島県の方、漁業関係者の皆さん、その皆さんのことを傷つけることがあってはならない。これからも経産省の小委員会において議論がなされると思いますが、私も思いを持ってその議論を見たいと思います。

ナレ:こうした姿勢に大阪市の松井市長は…。

松井市長:所管外だとか、そういうことで難しい問題から批判をそらすような、そういうのは非常に残念です。(Q.海洋放出という選択肢がとられた時に大阪として協力する余地は?)ありますよ。持ってきてもらって(大阪湾に)流すのであれば。

ナレ:安全性が証明されれば大阪湾への放出に応じるという提案に…。

小泉進次郎環境大臣:市長の考えというのもあると思いますから、会う機会があれば考えも聞いてみたい。

ナレ:小泉大臣が訪問したのは福島第一原発事故による汚染土などを保管する中間貯蔵施設を抱える地域でもあります。政府は30年以内に県外の最終処分場へ運び出すとしていますがその候補地すら決まっていないのが現状です。中間貯蔵施設が事実上の最終処分場になるのではないかという懸念に具体的な対応が求められているのですが…。

小泉進次郎環境大臣:約束は守るためにあるものです。全力を尽くします。(Q.具体的に思っていることは?)私の中で30年後ということを考えた時に、30年後の自分は何歳かなと発災直後から考えていた。だからこそ私が健康でいることができればその30年後の約束を守れるかどうか、そこの節目を見届けることができる可能性のある政治家だと思います。しっかり形にするために全力を尽くしたいと思います。

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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(徳永アナ):後藤さん実際、汚染水に関しては小泉大臣は所管外になるんでしょうか?

後藤謙次氏(後藤氏):最終決定権は確かに経済産業省が持っているわけですけれども環境省としては例えばこれを公害問題と見れば明らかに環境省の管轄になりますよね。海洋放出、この問題についてもそうです。つまり環境省もこれにタッチせざるを得ないという意味では所管外と言い切るにはあまりにも距離が近いところにあると思いますね。

徳永アナ:ただ、思いを持って議論を見たいという言葉はその問題に対してかなり距離感というのを感じるんですけどね。

後藤氏:これが、いかにも進次郎流なんですね。つまり、はっきりものを言って話術も非常に巧みですから、我々なんとなく説得されているような気がするんですが具体的なことに対してはほとんど触れてないんですね。巧みに、将来の結論を見ながら、そこをするりとすり抜けていっている気がするんですね。特にこの汚染水の問題は賛否両論ありますよね。そしてこういう問題というのは緊急時は意外と決断が出せるんです。どさくさまぎれといっては語弊がありますがえいや!っていうこともあるんですけれども、落ち着いた環境の中で右に行くんですか左に行くんですか。これを決断するのが政治家にとって一番厳しいんですね。そのためには目標を定めて一歩一歩工程表をきちっと作ってそれを国民に見せながら住民たちを説得しながら国際世論も説得しながら進んでいくと。それができなければ結局、単なるある面で雄弁家に終わってしまう可能性もあると思いますね。

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【検証部分】
今回取り上げられているのは福島第1原発の処理水をどうするのかという問題についてです。
原田前環境相は海洋放出するしかないという見解を表明し、問題となりました。
この処理水の扱いについて多くの論点を取り上げて放送がなされていたかを検証していきます。

処理水を海洋放出することに反対という意見ももちろんありますが、海洋放出しても大丈夫だという意見もあります。
このように賛否が分かれている問題については、様々な論点を提示して放送を行う必要があります。

今回の放送では、原田前大臣の発言が問題となった、ということとその後大臣に就任した小泉新大臣がどのように対応するかということが主な放送内容となっていました。

また処理水という言葉と汚染水という言葉が区別されずに使われており、視聴者に誤った印象を与えかねない恐れあります。
汚染水は有害物質を含んだものですが、今回取り上げられているのはトリチウム以外の物質が取り除かれている処理水という言葉を使用するのが正しいのです。
このトリチウムという物質は希釈すれば海洋放出をしても環境に影響がなく、飲料水としても利用できるものです。

そのため、アメリカ・カナダ・フランス・イギリス・韓国など世界の原子力発電所の多くは処理水を海洋放出しています。

このような事実に基づく論点を提示せずに処理水の扱いを放送することは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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