2019年9月19日 報道ステーション

2019年9月19日 報道ステーション

9月19日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・今回の判決について客観的な解説がなされていたか

まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):福島第一原発の事故をめぐり強制起訴された東京電力の旧経営陣に無罪判決が出ました。巨大津波は予測できたのかということが最大の争点だったのですが裁判所はどう判断したのでしょうか。

ナレーション(以下ナレ):保延ミツ子さんの夫・欣司さんは原発事故によって入院先の病院から避難を余儀なくされました。およそ10時間の移動を強いられ必要な治療が受けられないまま亡くなりました。本来やるべき津波対策をしていたら原発事故は起きず避難で亡くなる人もいなかったのではないか。今日、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣勝俣恒久元会長ら3人に判決が言い渡されました。

笠井理沙レポーター:3人の被告無罪という判決です。支援者からは不当判決だという声が相次いでいます。

ナレ:この裁判のポイントは巨大津波を予測できたか、有効な対策は可能だったかの2点。旧経営陣3人は事故を予見するのは不可能だったなどと無罪を主張しました。ただ、東電の内部では2008年、原発事故の3年前には国の地震予測をもとに最大津波、高さ15.7mと記された資料が作られ建屋に水が押し寄せる予測も立てられていました。津波対策担当の東電社員らもこう証言しました。

東電社員A氏:津波の高さが15.7mというのは考えていたより高いと話した記憶がある。

東電社員B氏:水位の結果を他のグループに適切に伝え、対策を実施する必要があると認識した。

ナレ:実際に15.7mという津波の試算をもとに20mほどの壁で建屋を取り囲む案などが検討されていました。当時、原発担当役員だった武藤氏も具体的な指示を出していたといいます。

武藤氏:防潮堤の許認可を調べろ。(東電社員の証言から)

ナレ:しかし、その後安全対策費が数百億円規模でかかることなどが報告されると一転します。

武藤氏:津波対策を保留して土木学会に検討を依頼しよう。(東電社員の証言から)

ナレ:検察官役の指定弁護士は対策を先送りしたと指摘。東電の担当者は当時のことをこう振り返りました。

東電社員B氏:津波対策を進めると思っていたので、予想外で力が抜けた。残りの数分は覚えていない。

ナレ:このやり取りがあった2008年当時東京電力は、中越沖地震の影響で柏崎刈羽原発が停止。火力発電の燃料費が急増するなどして赤字に転落していました。元幹部は対策工事のため福島第一原発まで停止する事態は避けたかったと東京地検の取り調べに供述しています。結局、大規模な津波対策は行われないままあの日を迎えました。今日の判決では、巨大津波を予測できたかについては…。

永淵裁判長:自然現象を相手にする以上、正確な予知・予測をできないということもまた明らかである。

ナレ:更に、有効な対策は可能だったかについては事故を回避するには原発を停止するしかなかったとしながらもそれは困難だったと認定しました。

永淵裁判長:自然現象について想定しうるあらゆる可能性を考慮して必要な措置を講じることが義務づけられるとすれば、原子力発電所の設置・運転に携わる者に不可能を強いる結果となる。

ナレ:この判決に検察官役の指定弁護士は…。

石田弁護士:裁判所が国の原子力行政をおもんばかり、絶対的な安全性まで求められていないと、そういう判断はあり得ないと思うんですね。万が一にも起こってはならないという発想があればああ言う判決にはならないです。

【スタジオ】
徳永アナ:今回の裁判の争点はこちらでした。巨大津波の予測は可能だったのかということだったんですね。判決では津波の高さ15.7mという試算のもとになった政府の長期評価に対して信頼性に疑いがあり予見の可能性は認められないとしました。更に原発の運用については津波という自然現象についてあらゆる可能性に対策を義務付ければ原発の運転はおよそ不可能であるとしました。後藤さんは今回の判決どのようにご覧になりますか?

後藤謙次氏:判決そのものはある程度、予想されたとはいえ感情的には割り切れない。そういう判決ですよね。原発というのは本来の上にも細心の注意を払って安全をまず最優先して動かす。そういう発電所なんですね。ところが、これでいきますとまさにこの部分ですよね。あらゆる可能性に対策を義務付ければおよそ運転は不可能だと。これだと運転を前提にしている。運転第一だと。まさに本末転倒と言っていいと思います。まさに被災者の皆さんの感情とは大きくかけ離れた判決といっていいと思います。

徳永アナ:今回、政府の長期評価は信頼性に疑いがあるという判決も出ました。

後藤氏:これも驚いたんですが、国の予測についてこれが信頼できないということになると今、さまざまな予測が出ていますよね。例えば、南海トラフ地震。こういう予測あるいは推定そういうものに対して全く評価、指摘、警告を無視するということになれば、そういうある程度の長期評価も無視してもいいんじゃないかという評価を下しても仕方がない。そんな判決でしたよね。

徳永アナ:そして、実際今回のことで犠牲になられた方もたくさんいらっしゃるわけですよね。

後藤氏:日本型社会の中ではとことん責任者を突き詰めるということはないんですが、本当の意味で責任者を突き詰めないと、本当の原因にもたどり着かないですね。そこは企業の大きな大事故ですから企業そのもの、つまり組織罰法人罰というものを日本は真剣に考えるそういう時期に来てるんだと思いますね。

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【検証部分】

今回検証する発言は以下の部分です。

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後藤謙次氏:判決そのものはある程度、予想されたとはいえ感情的には割り切れない。そういう判決ですよね。原発というのは本来の上にも細心の注意を払って安全をまず最優先して動かす。そういう発電所なんですね。ところが、これでいきますとまさにこの部分ですよね。あらゆる可能性に対策を義務付ければおよそ運転は不可能だと。これだと運転を前提にしている。運転第一だと。まさに本末転倒と言っていいと思います。まさに被災者の皆さんの感情とは大きくかけ離れた判決といっていいと思います。
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後藤氏は今回の無罪判決について、以上のような解説を行っていました。
この解説によると、今回の判決は
① 感情で割り切れるものでなければならないが、解離が見られる
② 被災者の感情とかけ離れている
ということになります。

しかし裁判において証拠や証言に基づいた判決ではなく、感情に基づく判決がなされることは正当なことなのでしょうか。
そうなってしまうと、その時、その事件ごとに異なった判決が出てきてしまう恐れも十分に考えられます。

またこの原発事故は地震という自然災害を原因とするものです。
東電の安全管理が全く等閑だったために発生したわけではなく、類を見ないほど大きな地震、津波が発生したために原発事故が発生したのです。

また今の日本は法律が定められており、その法律に違反した場合のみ罰せられる罪刑法定主義がとられています。そして、組織や法人を罰する組織罰や法人罰といった制度もありません。
つまり自然災害に起因する今回の原発事故に関して、その責任を求めたとき、東電の経営する個人に押し付けることになるのです。

それは妥当なことであるとは言えません。このような論点を提示せずに放送することは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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