2019年11月10日 サンデーモーニング(中編)

2019年11月10日 サンデーモーニング(中編)

サンデーモーニング、2019年11月10日分の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 大学入試における民間試験導入の実施について報道された部分
② 日韓首脳の1年ぶりの対話について報道された部分
③ 日本大使館によるウィーン芸術展の公認撤回について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 日韓首脳の1年ぶりの対話について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

——–
【VTR要約】
1年ぶりに日韓両首脳が着雪しての単独歓談の時間を持ったと報じられるなど、出口の見えない日韓関係に変化がみられた。韓国側は「両政府は日韓の懸案は対話を通じて解決すべきという原則を確認した」と説明し、関係改善に前向きなニュアンスが目立つ形となった。一方、日本政府は「日韓請求権協定に基づく日本の原則的立場に変更はない」と伝えたと発表し、韓国側との温度差が露わとなった。
 火曜日、都内で行われた講演で文喜相国会議長が天皇陛下に謝罪を求める発言を行ったことついて謝罪。徴用工問題について新たな解決策を提案した。原告の元徴用工のための新たな基金を設立する考えを示し、その財源は日韓企業と個人から寄付を募るほか、解散した財団が残した資金を充てると述べた。この提案に対し、韓国国内からは原告などから反発の声が上がった。
文在寅大統領と文喜相国会議長がみせた新たな動きの裏側には、リーマンショック以来という経済の低迷とGSOMIA破棄撤回を求めるアメリカの動きがあると考えられる。

【アナウンサーによるパネル説明】
・鄭国防相は「安全保障に少しでも役立つなら、このようなこと(GSOMIA)はずっと維持されるべき」と述べるなど、政府高官からもGSOMIA継続を求める声があがっている
・アメリカからの圧力も強まっており、エスパー国防長官が韓国を訪問し直接GSOMIA維持を迫るとみられている
・在韓米軍の駐留費を担当するディハート代表も韓国を訪問し、例年の5倍に当たる約5100億円の在韓米軍駐留費を要求したとみられ、これもGSOMIA維持に対する圧力ではないかとの声も上がっている

——-

【コメンテーターの発言】
青木理氏(全文):GSOMIAとか韓国の内政の状況でどうも韓国が歩み寄ってきたんじゃないかという報道があって、それはその通りなんですけれども、日本側は65年の日韓請求権協定でもう解決済みだと突っぱねているんですけれども、果たしてそれでいいのかっていうのを、ちょっとおさらいしてみたいんですね。できるだけ客観的におさらいしたいんですけれども、この1965年に日韓国交正常化したんですけれども、このときは、ご存じのとおり朴正煕政権だった。この朴正煕政権というのは軍人出身でかなりの独裁政権だったんですね。独裁政権で民主化運動を苛烈に弾圧してたんですね。ところが、そういう朴正煕政権だったんだけど、朴正煕さんとか日本との関係も非常に深かったし、何よりもこの時もアメリカの要望ですね、アメリカの要望と、65年というのはベトナム戦争が前年にトンキン湾事件があって、ベトナム戦争が起きるような冷戦の最盛期、一番厳しくなっていくときだったので、とにかく反共っていうことに一つの大きな結節点にして、朴正煕政権と当時の日本の自民党政権が、まあ政治的妥協をしたのが、この日韓国交正常化だったわけですね。で、こういう政治的妥協だったので、いくつかマイナス面、デメリットが生まれた。何かといえば、例えば個人の人権っていうものはこれ、もうなぎ倒されちゃった。それからそれと同時に、補償って言うものは、個人に対する補償っていうのも、これ韓国政府の責任も非常に大きいんですけれども、なかなかされなかった。それから、日本の植民地支配であるとか戦争だとか徴用とかの事実究明とか責任追及ってこともあまりされなかったというマイナス面があったと。ただし、こう歴史とか外交っていうのは、そのなんていうかな、もうちょっといろんな色彩を帯びるもので、悪いことがあればメリットもあったわけですね。このメリットは何かといえば、まずは経済ですね。これ韓国は、その日本と国交正常化することで軽億ドルの経済支援、経済協力資金を得て、漢江の奇跡といわれる経済成長を成し遂げたと。で、これ韓国にとってはもちろんね、その非常に得だったんだけれども、実は日本も、以後65年以降日韓貿易ではずっと日本が黒字なんですね。つまり日本の資金がどんどん入っていくことで韓国も成長し、日本の企業も潤った。だいたい今でも2兆円くらいの黒字なんです。日本が。その累積黒字っていうのは一部の報道によると6000億ドルって言われてるんですね。今の金額だと単純に為替があるので単純計算できないんですけれども、60兆円くらい日本は潤ってきたんですね。つまりこの点に関して言うと日本と韓国っていうのはある意味ではwin-winの関係でもあった。それから交流ですね。交流っていうのはこれ、65年の日韓国交正常化の直後っていうのは両方の国の国民の行き来が1万人しかなかったんだけれども、2002年のワールドカップの頃になると400万人。実は去年1000万人なんですね。1000万人がいききしている。かつこれは皆さんご存じの通り政治とか社会とかの政治社会体制を同じ有している国っていうのはこれ、日本と韓国しかこの地域にないんですね。これほど大切な国なわけです。つまり、メリットとデメリットが65年以降生じたと。ところがこの民主化運動を背負った人たちが今ご存知の通り政権についているんですね。ということで、このデメリットの部分を非常に問題視する人たちが政権について、今日本の状況と葛藤が生じちゃってると言うことなんです。で、これ、これからそのトランプ政権がどうなっていくのかとか、中国覇権主義の姿勢を強める中でどうするのかとか、北朝鮮の核の問題、ミサイルの問題、拉致問題ということを考えると、この日韓が僕番組で何度も申し上げてきましたけれども、対立していて得なことは1つもないんですね。なので、ここのデメリットの部分を少しでも癒して解決をしつつ、このメリットをどんどん広げていくっていうことを、日本も韓国もしなくちゃいけない。ちょっと政権の価値観が違うので難しいんですけれども、そういうときに、韓国は若干苦しくなってきて歩み寄りを見せていると。そのときに日本は、大本を辿ったら日本が酷いことをしてしまったってことが原因ですし、このとき独裁政権との政治的妥協だということを考えれば、この65年で解決済みじゃないかっていうことで全部突っぱねちゃうっていうのは、それは日本としてもちょっと問題じゃないかと。だから日韓双方がここで歩み寄っていろいろ話し合って、このデメリットの部分を何とか乗り越えられないだろうかっていう努力を尽くす。そのためには首脳間の会談。あるいは首脳間の交渉しかないんじゃないのかなっていうのが現段階のところだと僕は思います。——-

佐高信氏(全文):1965年っていうのは私は学生時代ですね。で、今の説明がありましたけど、政治的な解決は確かにそうなんですけれども、やっぱり立法司法行政ってそれぞれ別なんですよね。だから韓国の裁判所が判決出すのは、それはそれで致し方ないところあるわけですよ。日本の場合は、今司法にまでこう、政治権力がかなり抑え、コントロール効かそうとしているから、言うこと聞くじゃないかみたいな感じになっているところあるんですね。裁判所なんて。でも司法と行政というのは一応別なわけですから、その前提で解決を図らないと両方とも下地がちょっとこう違ってますよね、ということを感じますね。まああの、隣の家は引っ越せないんですからね。だからそこはやっぱり基本的に仲良くするということが必要だと思いますね。

田中秀征氏(全文):65年から40年経って、廬武鉉政権で調査委員会まで作って検討した結果、認めたわけですよ。解決済みだというね、ことを。僕はそのときに万歳するくらい喜んだ。で、それは廬武鉉政権に今の大統領も一体化していたわけですよ、中にね。一番重要な部分に居た。で、それをね、あの時の喜び考えるとね、あとはとにかく、今までした、こちらがした、迷惑かけたこともいろいろあるし、いろんな反省して友好的に、あの一生懸命やっていこうっていう気持ちになった。で、そういうことがね、それどうなったのと。今彼の話の中にも、05年のね、そのことを十分彼は承知のうえなんだろうけども、それが出てこなかった。こういうことされたらね、ずーっと付き合いきれないですよ、実は。だから、今回おそらく、22の日に切れる、それまでに維持する可能性がうんと高まってる。そしたらね、必ずね、あの輸出規制を緩めろとか、こっちがやったんだからあんたたちやれっていう話になってくる。やっぱり徴用工の問題って違うんだよね。僕はかなりこれは政権と同じ姿勢ですよ。だからやっぱりね、あのここのところはビシッとしてやっていかなきゃいけないと思うし、あのその2005年にね、いわゆる左派の、リベラル派が認めたんだと、全面的に。そこがね、どうしても僕は忘れられないし、それやられたらたまらない。付き合いきれないですよ。そんなにしょっちゅう変わられたら。そういうふうに思うよ、僕はね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、佐高氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、佐高氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
佐高氏は今回の報道で、以下のように述べています。

佐高氏(抜粋):1965年っていうのは私は学生時代ですね。で、今の説明がありましたけど、政治的な解決は確かにそうなんですけれども、やっぱり立法司法行政ってそれぞれ別なんですよね。だから韓国の裁判所が判決出すのは、それはそれで致し方ないところあるわけですよ。日本の場合は、今司法にまでこう、政治権力がかなり抑え、コントロール効かそうとしているから、言うこと聞くじゃないかみたいな感じになっているところあるんですね。裁判所なんて。でも司法と行政というのは一応別なわけですから、その前提で解決を図らないと両方とも下地がちょっとこう違ってますよね、ということを感じますね。まああの、隣の家は引っ越せないんですからね。だからそこはやっぱり基本的に仲良くするということが必要だと思いますね。

要旨をまとめると、
・政治的な解決としては日韓請求権協定があるが、立法・司法・行政は別物であるため韓国の裁判所がこうした判決を出すのは致し方ない部分がある。
・日本の場合は政治権力が司法を抑えてコントロールしているので、裁判所が政治の言うことを聞く前提になっているが、そもそも司法と行政は別という前提に立って解決する必要がある。
・引っ越せない以上隣の国とは基本的に仲良くしていくべきだ。

というものです。

しかしながら、
・日韓請求権協定は国際条約であるため、韓国国内における判決を以て無効とすることはできない。
・徴用工判決を下した韓国の最高裁長官が高裁判事の経験がないにもかかわらず文政権の意向で任命された人物であることを踏まえれば、韓国政府が司法判断に口出しできないという主張は事実に即しているとは言えない。
・日本の政治権力が司法をコントロールしている、裁判所が政治の言うことを聞く前提があるといった主張には全く根拠がなく、事実に即していない。
・地理的に近い位置にあることが、徴用工問題をはじめとする韓国が引き起こした問題に日本が譲歩しなければならない理由にはならない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での佐高氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日韓請求権協定は政治的妥協の産物なので日本は韓国と協議すべきだ」「韓国側が日本に歩み寄っているんだから日本も応じるべき」という立場に立った意見ばかり出てきました。

しかしながら、今回の放送では
田中氏(抜粋):65年から40年経って、廬武鉉政権で調査委員会まで作って検討した結果、認めたわけですよ。解決済みだというね、ことを。(中略)今彼(青木氏)の話の中にも、05年のね、そのことを十分彼は承知のうえなんだろうけども、それが出てこなかった。こういうことされたらね、ずーっと付き合いきれないですよ、実は。だから、今回おそらく、22の日に切れる、それまでに維持する可能性がうんと高まってる。そしたらね、必ずね、あの輸出規制を緩めろとか、こっちがやったんだからあんたたちやれっていう話になってくる。やっぱり徴用工の問題って違うんだよね。僕はかなりこれは政権と同じ姿勢ですよ。だからやっぱりね、あのここのところはビシッとしてやっていかなきゃいけないと思うし、あのその2005年にね、いわゆる左派の、リベラル派が認めたんだと、全面的に。そこがね、どうしても僕は忘れられないし、それやられたらたまらない。付き合いきれないですよ。そんなにしょっちゅう変わられたら。そういうふうに思うよ、僕はね。

など、こうした立場に反対する意見も出てきました。サンデーモーニングとしては異例なことです。
ですが、VTR等も含めた放送全体としてこうした意見が十分に取り上げられたとは言えず、あくまで片方の視点に立った意見に偏った報道がされていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 日韓首脳の1年ぶりの対話について報道された部分における
 検証3「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ 日本大使館によるウィーン芸術展の公認撤回について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 大学入試における民間試験導入の実施について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事