10月11日のサンデーモーニングのレポート後編、新型コロナ対応民間臨時調査委員会について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR要約】
8日、政府の新型コロナ対応に苦言を呈した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は安倍前総理はじめとする閣僚や厚労省の幹部ら83人に聞き取り調査を行ない「場当たり的な判断の積み重ね」と厳しく総括しました。
新型コロナ対応民間臨時調査委員会・小林委員長「本当に戦略的な内容だったのか、国民の支持は得られていたのか」と述べました。
内容には2月下旬、突如発表した’’全国一斉休校の要請’’について専門家が’’疫学的にはほとんど意味がなかった’’と述べたこの要請は文科省に異論もある中、総理が決断したものです。報告書では’’感染が拡大していた欧州各国に対する水際対策をもう少し早く実施すれば、4月以降の国内の感染の拡大を一定程度抑えられた可能性があった’’と指摘しました。水際対策の遅れについて総理官邸官僚は’’突然の休校に対して保護者から不満や戸惑いの声が上がり、安倍総理がかなりまいっていた。さらなる批判を受けるおそれが高い、ヨーロッパの旅行中止措置を提案することができなかった、あれが一番悔やまれる’’などと証言しています。
さらに報告書では今年3月東京都の小池知事「都市封鎖 いわゆるロックダウンなどの強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性があります。」この発言が緊急事態宣言を遅らせたといいます。
新型コロナ対応民間臨時調査委員会・塩崎主査「火消しをする意味で、官邸側の中での調整時間がかかり緊急事態宣言発出が遅れたのではないか。」と述べました。
緊急事態宣言は感染のピークを4月1日ごろに迎えたあとの4月7日に出されました。その遅れについて西村経済再生担当大臣は’’小池都知事のロックダウン発言がターニングポイントになった’’と証言しました。
ロックダウン発言直後、食料買い占めなどの混乱が発生し官邸が’’ロックダウンを恐れた都市部の人々が地方に向かい、地方に感染が広がってしまうこと’’などを懸念したといいます。
この指摘に9日・小池知事は「政府の対応との関連 その辺りの感覚が違うのか理解できない部分もある。(発言は))正しかったと思います。」と反論しました。
実際、報告書でもこのロックダウン発言によって国民が外出を控え、感染者の減少につながったとの分析もしています。今回の検証は今後のコロナ対策にどう生かされていくのでしょうか。
スタジオでの杉浦アナの説明(全文)
報告書の中で官邸スタッフの1人はあのとき、ヨーロッパ旅行中止措置を取るべきだったあれが一番悔やまれるところと証言しています。あのときというのは、3月の初めごろと思われますが3月17日には専門家会議が政府に対して水際対策の強化を要請しました。しかし、実際にヨーロッパからの入国拒否を行ったのは3月27日、証言によれば2月に決断した一斉休校に対する批判が大きかったためすぐに提案できなかったといいます。この10日の遅れがどのぐらい影響したのかは分かりませんが対策が早ければ、ヨーロッパ由来のウイルスによる第1波の感染拡大を一定程度抑えられた可能性があります。一方、4月に発表されたいわゆるアベノマスクの配布ですが官邸スタッフの1人は、配布の遅れなどもあり総理室の一部が突っ走った、あれは失敗だったと述べています。安倍総理は辞任会見でコロナ対応について、今までの知見がない中において、その時々の知見を生かしながら、われわれとしては最善を尽くしたつもりと振り返っています。このグラフは5月までですが、現在全国の感染者が再び500〜600人で推移する中、政府の舵取りが重要になります。
【コメンテーター発言内容】
仁藤氏(全文):政府の批判とか異論を排除しようとするかのような政治が行われている中で、調査会が事実を指摘するというのは当たり前のことであるべきだとは思うんですが、これがはっきり批判していることがとても勇気のあることのように感じてしまうなということを思いながら今、お聞きしていましたが、根拠のない学校休校要請とか補償のない休業要請で生活が苦しくなった人もいますし、10万円の特別給付金についても世帯ごととしたことで、虐待やDV被害者の方、住民登録のない方が受け取れないという状況にもなったんですよね。私たちも活動の中で、コロナ禍で貧困も広がっていることも実感するんですが、今されているGo ToトラベルやGoToイートも困窮している人たちには利用する余裕もないんですね。手数料を取られたり手続きに手間がかかるということで、コロナの影響を受けた多くの個人商店や中小企業にとって意味のある政策になっているのか疑問だなと思っています。市民の生活にもっと目を向けてほしいと思います。
関口氏(全文):発生してから半年以上、1年近くたったんで振り返ったんですが。さっきも言いましたようにこれ5月までです。これ以降は、こういうふうにグラフは上がるんですよ。この初期のころにこれだけいろんなことかあって、このころは緊張してたと思うんですね、日本全体が。ところが、ずっと伸びているこの辺はどんどん緩んでるような気がしてて、それを僕はちょっと心配するんだけど、青木さんはそんな気がしません?
青木氏(全文):この調査報告書の結論というのは政権スタッフがこう言っているらしいんですよね。泥縄だったけど結果オーライだったと。結果オーライだったかどうかは議論が分かれるところだと思いますが、つまり、一生懸命やられた面はあったんだと思うんだけどよく分からないで対応しちゃったってことなんですよ。今も増えているんですよ、関口さんおっしゃるように。さらにこの秋・冬、もっと増えるんじゃないかというときに泥縄では困るんですよ、かつ泥縄でできたことが、これからはできないかもしれない。例えばあれだけ給付金をできるんですかとかGoToみたいなこと、できるんですかって考えるとできないことも出てくるんですよ。つまり泥縄では困るので、徹底的に検証して検査の数なんかもそうですけれども、秋・冬に備えていただかないと困りますよね。
【検証部分】
今回検証するのは、青木氏の発言に関してです。青木氏はここまでの政府のコロナ対策を泥縄であったと批判しています。
たしかに、4月、5月ごろの初期の政府の対策には不十分な点はあるでしょう。当初は、新型コロナウイルスは完全に未知のウイルスで、どのように対処したらよいのか全く分かりませんでした。さらにはロックダウン、学校の一斉休業などは前代未聞の事態であり、躊躇してしまった部分があったと考えられます。
しかし、ウイルスの研究や患者のサンプルが集まるにつれて、感染拡大に対して的確な対策を講じられるようになりました。例えば三密を合言葉に、ロックダウンのような社会への影響の大きい対策を極力控えつつ、リスクの高い行動のみを禁止するピンポイントの対策で感染を抑制してきました。
一方で、経済的困窮者への支援や経済再建への対策は現在十分とはいえません。経済的困窮者は、感染拡大の影響で収入の減少、解雇や雇い止めなどで増加しています。また経済全体でも需要の低迷など大きな打撃を受け、経済再建が急務となっています。
そこで政府は、特別定額給付金や、持続化給付金など、経済的に困窮した世帯、企業に対しての支援を拡充し、またGoToトラベル、GoToイートなどの需要喚起の政策も既に行っています。さらには対策にかける財源として第三次補正予算の編成も検討しています。
このようにさまざまな対策を行っているものの、困窮者支援、経済再建という目的は達成されたとはいえません。それゆえ当然、今後もこのような対策を継続していく必要があります。
ここで青木氏が指摘した点は2点、1つは今あげた給付金などの政策が今後もできるのかどうか、もう1つは秋冬に向けて検査数を増加させる必要があるということでした。
給付金などの政策は、政府も補正予算の編成などによって対応しようとしています。しかし、財源の問題から限界があります。そのためできる限りの財源を投入し、その財源を効果的に運用する必要があります。
ここで、検査数増加の必要性について考えます。確かに検査は重要です。陽性者を見逃さず、適切な処置につなげるためには必要不可欠です。しかし一方で、検査には莫大な費用がかかります。現在は新型コロナウイルスが特別指定感染症に指定され、全額が公費負担となったため、一回のPCR検査あたりの政府の負担は最大で2万円近くになります。検査が重要なことは言うまでもありません。しかしそれによって、困窮者支援や経済対策に回すお金が減ってしまうことにもなりかねません。現在、感染拡大がある程度制御できており、検査体制の充実も図られている中、経済対策などを本気で考えなければならない段階にあります。そのようなときに検査拡大に拘泥してしまっては必要な政策にお金を回せなくなってしまいます。
青木氏の発言はこのような点を考慮せず、検査数にばかり目を向けた発言をしています。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。