TBS「サンデーモーニング」、2019年12月29日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 出生数初の90万人割れについて報道された部分
② IR事業における不正とIRへの疑念について報道された部分
③ 辺野古移設の工期と総工費拡大について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② IR事業における不正とIRへの疑念について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
秋元司衆議院議員が収賄容疑で逮捕された。副大臣だった一昨年9月頃、中国企業「500ドットコム」から、IR進出に便宜を図って欲しいとの趣旨を知りながら現金300万円を受け取った疑いがある。秋元容疑者はIRについて審議する衆議院内閣委員長に就任し、わずか6時間の審議時間でIR整備を推進する法案の採決を強行していた。中国企業の顧問紺野容疑者ら3人が贈賄の容疑で逮捕された。中国企業は2017年のシンポジウムでIRに関する講演を行った秋元容疑者に講演料200万円を支払っており、講演後にIR担当の副大臣に就任することを知り金額を増額したとされる。特捜部は中国企業側がIR事業に参入しやすくなるよう働きかけていたとみて捜査しているが、秋元容疑者は容疑を全面否認している。
一方、横浜市ではIRに関する市民説明会が行われた。林市長は経済効果が見込めると説明したが、誘致に反対する市民は「反対意見があったのにほとんど審議もしない」と不安の声があがっている。安倍政権肝いりのIR事業そのものに疑念を抱く声が広がっている。
【アナウンサーによるパネル説明】
・500.com社は中国のインターネットくじ販売の先駆者という存在だが、2015年に中国当局がネットくじに対する規制を強めたことで業績が悪化していた
・そこで2017年、オンラインカジノ事業展開するヨーロッパ企業を買収して海外でのカジノ事業に活路をしていたとされる
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【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(全文):大小さまざまと言ってもいいと思うんですけども、利権が山のようにあるわけですよ。出来上がるまでにね。この事業っていうのは。そうだと思います。だからよっぽど気をつけなきゃ、いけないんですけども。しかしこう、IRっていうのは、明るさとか清潔感を感じさせる場所でなければね、人はいかないですよ。外国から何からね、それこそ経済効果ないですよ。ですから、こういうね、僕はまあ、利権依存症っていう人達がね群がるんじゃないかと思うんだけれども、今回のことで、よほどしっかり学んでね、もう二度とこういうものが起きないようにしなかったら、本当にいかがわしいものがね、出来上がるっていうようなことになっちゃったら、もうなんていうか、目指したようなことにはならないと思いますよね。(関口氏:そういう要素があるなら、もっとしっかりとした人をそこに置かなきゃいかんわけでしょ?)そうです。その通り。それから、強行で採決するような話でもないですよ。手順をちゃんと尽くしてね。
田中優子氏(全文):私も何か氷山の一角ではないかって気がするんですね。今度の事件は。で、その自治体の一社を選んで、それで一緒に政府に申請するわけですから、当然ムラがありますし、大小の利権が絡んでると思うんですよね。で、どんな基準で選ぶっていうこともはっきりしてませんし、それも自治体の中で本当は求めていかなければなりませんよね。どういう基準で選んでほしいのか。それから、あと、非常に気になるのは、ラスベガス・サンズとかウィン・リゾーツっていうその、共和党のトランプさんの支援者の、アメリカの方の会社が非常に有力なものとして浮かび上がっていますよね。なんかこうステルス戦闘機を104機買ってしまうっていうのとすごくよく似てるなっていう気が。それは何か、トランプさんの関係で、こういうものを導入したんじゃないかっていうふうにこう、どこかで考えてしまうようなものになっていますよね。それからあと、これからその、動いていくんだとすると、やっぱり自治たちの人達は、税金をいくら使うのかっていうこととか、それからこれからの富裕層。これ、今の若者たちが富裕層になっていくとすると、若者たちって本当にカジノ行くのだろうかって。私はちょっと疑問なんですが、これからの富裕層が持続可能な形で本当にそこでお金を落とすのかってことや、それから自治体が現実的な収益計算してるのかってことや、それから、もし収益が上がらなくて資本を引き上げられた場合、自治体はこれからどうするのかとか、いろいろな懸念があると思うので、確認をしていかなければならないだろうと思いますね。
藪中三十二氏(要約):IRがもつ影の側面が見えた気がする。日本には豊かな自然も文化遺産もある。IRは観光客を呼ぶためには必要がないと思っていたが、今回の件でIRの負の側面が露呈した気がする。
谷口真由美氏(全文):2つあって、秋元容疑者がですね、議員会館で賄賂を受け取ったんじゃないかって言われてるじゃないですか。まあ大胆な。よくそんなことするなって思うんですね。それってやっぱり、自民党一強と言われる中の驕りなのかなっていう気もするんで、そんなことしただろうか。かつてそんな話聞いたことないなっていうのが一つ。それと、IR立国って言って、政府が進める話の中で、ちょっと気になったのは、自治体の方とかがね、例えば自治体によっては、職員が単独でIRの事業者と会うことを禁じていたりとか、あとその、面会する場合に政治家と会ったら公表するっていうルールを作ってる自治体結構あるんですけど、それって元々やっぱり、なんとなく闇の問題があるからじゃないのか。健全なのかなって言うのが、そもそもあったんじゃないかって言うのを感じるんですね。だからやっぱりもう一回、立ち止まって、今ならまだ議論ができる、だから秀征さんがおっしゃったみたいに審議やり直したらいいんじゃないかなと思うんですけどね。
松原耕二氏(全文):もう一つ付け加えると、確かに幼稚な、ものすごく幼稚な事件に見える。ただ、これまでは政治家っていうのは「秘書が秘書が」とかですね、って逃げてきたり、あるいは「秘書たちが親分のために」と被ったりとかいうこともあったりして、政治家の立件のハードルは高かったと思うんですね。ところが10年ぶりにこれができたということは、もちろんまだ容疑の段階ですけども、これはもちろん特捜部の意思もあるでしょうけども、一方でやっぱり司法取引が行われてるんじゃないかという話があって。司法取引を使うことで逃げられなくなるんじゃないかと。これからまあ政治に切り込む一つの武器になり得るのかもしれない。そういうとこをちょっと見た方がいいなと思いますね。もう一つは、皆さんおっしゃったように、やっぱりカジノっていうのはものすごく犯罪の温床になり得るわけですね。例えば暴力団が入ってきたり、あるいはマネーロンダリングっていうのも世界で実例がありますし。だからまあ、例えばネバダ州、先ほどのラスベガスもなんか、ものすごく厳しい法律を作ってるわけですね。例えば、業者が反社会勢力と接触しただけでも営業停止になったりですね、だから、本当にこれ必要なのかカジノがという気持ちがものすごく私もありますけども、もしやるならば、そのぐらい強い法律を作るっていうような覚悟を決めないと、また犯罪っていうのはこれ、起き得る。十分起き得ると思いますね。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、田中優子氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、田中優子氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中優子氏は今回の報道で、以下のように述べています。
田中優子氏(抜粋):私も何か氷山の一角ではないかって気がするんですね。今度の事件は。で、その自治体の一社を選んで、それで一緒に政府に申請するわけですから、当然ムラがありますし、大小の利権が絡んでると思うんですよね。で、どんな基準で選ぶっていうこともはっきりしてませんし、それも自治体の中で本当は求めていかなければなりませんよね。どういう基準で選んでほしいのか。
それから、あと、非常に気になるのは、ラスベガス・サンズとかウィン・リゾーツっていうその、共和党のトランプさんの支援者の、アメリカの方の会社が非常に有力なものとして浮かび上がっていますよね。なんかこうステルス戦闘機を104機買ってしまうっていうのとすごくよく似てるなっていう気が。それは何か、トランプさんの関係で、こういうものを導入したんじゃないかっていうふうにこう、どこかで考えてしまうようなものになっていますよね。
それからあと、これからその、動いていくんだとすると、やっぱり自治たちの人達は、税金をいくら使うのかっていうこととか、それからこれからの富裕層。これ、今の若者たちが富裕層になっていくとすると、若者たちって本当にカジノ行くのだろうかって。私はちょっと疑問なんですが、これからの富裕層が持続可能な形で本当にそこでお金を落とすのかってことや、それから自治体が現実的な収益計算してるのかってことや、それから、もし収益が上がらなくて資本を引き上げられた場合、自治体はこれからどうするのかとか、いろいろな懸念があると思うので、確認をしていかなければならないだろうと思いますね。
要旨をまとめると、
・この収賄事件は氷山の一角だ。自治体が一社を選んで政府に申請するのでムラがあり、大小の利権が絡むからだ。基準も明確でないので自治体が決めるべきだ。
・共和党のトランプ米大統領を支持するアメリカの会社が有力な候補として浮かび上がっているが、ステルス戦闘機を104機買ってしまったことと似ている。トランプ米大統領がらみで買ったのではないか。
・税金をどれだけ投入するのか、また富裕層が持続可能な形でお金を落とすのかという疑問や、自治体が収益計算をしているのかといった問題、そして採算が取れなかった場合の資本引き上げにあった場合など懸念点がたくさんある。
というものです。
しかしながら、
・現在発覚している収賄事件以外にも収賄が存在するという主張には一切根拠がない。また、自治体による企業の選定過程において利権が存在するという主張にも根拠がなく、こうした根拠のない誹謗中傷は政治的に公平とは言えない。
・共和党支持、トランプ米大統領支持の会社がIRで有力な候補として挙がっていることは、トランプ米大統領への忖度があったという主張の根拠にはならない。したがってトランプ米大統領への忖度がIR事業であったという主張は事実に即しておらず、また中国企業からの収賄が問題視されている中で論点をトランプ米大統領にずらしており政治的に公平とは言えない。
・F35戦闘機の購入は日本の安全保障上必要だから実施されたものであり、トランプ米大統領へ忖度によって購入されたかのように説明するのは事実に即していない。
・統合型リゾート(Integrated Resort)は「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設」であり、富裕層がお金を落とすのかといった疑問などカジノ以外の採算がないかのような主張は事実に即していない。
・IR事業に対する税金投入や収益計算、採算についてはIR事業に関連する民間企業などを含めた調査が進められており、懸念点が放置されているかのような主張は事実に即していない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での田中優子氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。
谷口氏(抜粋):2つあって、秋元容疑者がですね、議員会館で賄賂を受け取ったんじゃないかって言われてるじゃないですか。まあ大胆な。よくそんなことするなって思うんですね。それってやっぱり、自民党一強と言われる中の驕りなのかなっていう気もするんで、そんなことしただろうか。かつてそんな話聞いたことないなっていうのが一つ。それと、IR立国って言って、政府が進める話の中で、ちょっと気になったのは、自治体の方とかがね、例えば自治体によっては、職員が単独でIRの事業者と会うことを禁じていたりとか、あとその、面会する場合に政治家と会ったら公表するっていうルールを作ってる自治体結構あるんですけど、それって元々やっぱり、なんとなく闇の問題があるからじゃないのか。健全なのかなって言うのが、そもそもあったんじゃないかって言うのを感じるんですね。だからやっぱりもう一回、立ち止まって、今ならまだ議論ができる、だから秀征さんがおっしゃったみたいに審議やり直したらいいんじゃないかなと思うんですけどね。
要旨をまとめると、
・秋元容疑者が議員会館でわいろを受け取ったのは自民党一興と言われるなかの奢りによるものだ。
・多くの自治体で職員が単独でIR事業者と会うことを禁止したり、政治家と会ったら公表したりといったルールを作っているが、これはルール制定前に闇の問題があったからだ。今ならまだ議論ができるので、IR事業について審議をやり直すべきだ。
というものです。
しかしながら、
・秋元容疑者が賄賂を受け取った場所は、自民党の奢りがあるという証明にはならない。したがって谷口氏の主張は事実とは言えず、政治的にも公平とは言えない。
・自治体が自主的なルールを制定する理由は「闇の問題が実際に起きた」こと以外にも存在し得る(闇の問題が起きるのを未然に防ぐため、など)。したがって、自治体がIR事業者や政治家との接触について自主的なルールを制定したことは、過去に闇の問題があったと断定する根拠にはならない。
・IR事業について収賄事件が発生したことは、IR事業の内容には影響を与えない。したがってこれを機にIR法案の審議をやり直すべきだとする主張は事実に即しておらず、IR法案を中止したい立場に一方的に偏っており事実に即していない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「収賄事件も起きているのでIR事業は見直すべきだ」「日本にカジノは必要ない」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「IR事業自体に問題が起きているわけではない」「IRはカジノだけが目的ではなく、MICEや観光などで必要だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「IR事業における不正とIRへの疑念」について報道された部分における
検証3「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 辺野古移設の工期と総工費拡大について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 出生数初の90万人割れについて報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
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