2019年7月28日 サンデーモーニング(後編)

2019年7月28日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2019年7月28日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 日本の対韓輸出優遇措置廃止がWTOで取り上げられた件について報道された部分
② ボリス・ジョンソン英首相誕生について報道された部分
③ 「風を読む」にて参院選の結果について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて参院選の結果について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
令和初の参議院選挙では、これまでになくネットの活用が積極的に行われた。与党は改選議席の過半数を上回り、安倍自民党は国政選挙で6連勝を果たした。野党は野党候補同士で票を争う形となった一方、れいわ新選組は無党派層を中心に支持を獲得した。投票率は歴代ワースト2位となり、若い世代での投票率低調が目立ったが、自民党は若い世代の支持からの支持を集めた。
 今回の選挙では改憲に前向きな勢力が議員総数の3分の2を超えるか否かが注目されたが、改憲勢力は3分の2に4議席足りない結果となった。しかし安倍総理は選挙後も改憲に積極的な姿勢を示した。

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):今度の参議院選の一番の数字はですね、投票率が48.8にすぎなかったと。国民の半分も投票しなかった。それはやはり、国民の大きなですね、政治に対する失望感とかですね、苛立ちっていうものを内在させているのは間違いないんですね。で、こういう状態になると組織票をもったところが有利になるってことで、公明党とか共産党が一定のやっぱり議席を確保した。で、実はね、与党勝った感を出してるけども、自民党は単独過半数を失ったんですよ。ということは、公明党のもつ与党における存在の意味が重くなったっていうかですね。これがね、我々が注目しとかなきゃいけないことでですね、で、しかもそのフラストレーションがね、3議席。310万票をですね、あのいわゆる、全国区でもって、その3議席のあの、山本太郎に象徴されるようなところの人たちが取ったってことですね。これってやっぱり苛立ちの表現だと思うんですね。国民のですね、行き場のない怒りとかですね。で、そういう意味合いにおいてね、政治っていうものが、新たな僕は、ジワリとですね、変化を見せ始めたのかなっていうふうに見てます。

幸田真音氏(要約):将来にちゃんと期待を持てるようなちゃんとした政策論争になっていない。相手をただこき落としたり揚げを足取ることばかりしている。日本が魅力的な国だってことをもっとアピールしていかないと、日本はこのまま沈んでしまう可能性があるので、ここで一回政治家に考えてほしい。

高橋純子氏(全文):寺島さんがおっしゃったように、やはり投票率の低さということが大きな問題だと思います。それで、自民党もですね公明党も、勝ったと言ってもですね、大幅に比例票を減らしてるんですよね。で、その一方でやはりれいわ、新選組であるとか、NHKから国民を守る党というところが票を取って、議席を獲得してると。ま、これが何を物語っているかというと、やはりこの既成政党へのNOというかですね、それからもっと言うと、代表制民主主義というものに対する異議申し立てみたいな声が出てきてるんじゃないかと。これはですね、結構やっぱり政治というファクターが沈んでいく。このまま地盤沈下を興していく予兆なにかもしれない。だからやっぱり政党政治。今ある政治家たちはですね、このことをもっと深刻に受け止める必要があると思います。憲法改正というふうに安倍さんは張り切ってますけども、その手前でですね、やらなきゃいけないことがもっとたくさんあるのではないかというふうに思います。

古田大輔氏(全文):参院選のあの開票のときに自民党本部で取材してたんですけど、まったく笑顔がなかったんですよね。テレビに映ってるときだけ笑顔を出してくださいって言われて笑ってるけど、それ以外のときは皆深刻な顔してて。まあ、単独過半数失うとか、改憲勢力3分の2いかずとか、それほど楽な状況ではなかったと。自民党にとっても。で、実際見てみると、まあ投票率が半分いかずに、投票した人の中で自民党に入れたのは3分の1ってことは、全体の6分の1なわけですよね。20%もいってないわけですよ。ただし、これは民主主義のルールで与党になると。先ほどあの、ボリスジョンソンのときに、これは民主主義のルールを満たして首相になってるけども、じゃあ彼は民主主義の理念を満たしているのかっていう指摘をしましたが、これはまさに日本でも言えるんじゃないかなって思います。

松原耕二氏(要約):投票率が下がっていて、ほんの一部の人に向けた政治になってしまっているのではないか。増える借金や社会保障など、本当に大事なことを議論しないと投票されないリスクが増えてしまうことが懸念される。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、古田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):今度の参議院選の一番の数字はですね、投票率が48.8にすぎなかったと。国民の半分も投票しなかった。それはやはり、国民の大きなですね、政治に対する失望感とかですね、苛立ちっていうものを内在させているのは間違いないんですね。(中略)で、しかもそのフラストレーションがね、3議席。310万票をですね、あのいわゆる、全国区でもって、その3議席のあの、山本太郎に象徴されるようなところの人たちが取ったってことですね。これってやっぱり苛立ちの表現だと思うんですね。国民のですね、行き場のない怒りとかですね。で、そういう意味合いにおいてね、政治っていうものが、新たな僕は、ジワリとですね、変化を見せ始めたのかなっていうふうに見てます。

要旨をまとめると、
・今回の参院選の一番の問題は投票率が48.8%に過ぎなかったことだ。国民の半分も投票しなかった背景には国民の政治に対する失望感や苛立ちが内在していることは間違いない。
・山本太郎に象徴されるような人たちが全国区で3議席取ったことからも、国民のやり場のない怒りがうかがえる。

というものです。

しかしながら、
・国民の半分が投票しなかった理由として、当然現在の政治に興味がない、不満を抱かない人たちが多いということも考えられる。にもかかわらず投票しないという行動をただちに国民全体の政治への失望や怒りによるものだと主張することは事実に基づいておらず、また政治的に公平とも言えない。
・山本太郎氏のような人たちが全国区で3議席取ったことが、そのまま国民全体の怒りの存在を証明することにはならない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。

高橋氏(抜粋):自民党もですね公明党も、勝ったと言ってもですね、大幅に比例票を減らしてるんですよね。で、その一方でやはりれいわ、新選組であるとか、NHKから国民を守る党というところが票を取って、議席を獲得してると。ま、これが何を物語っているかというと、やはりこの既成政党へのNOというかですね、それからもっと言うと、代表制民主主義というものに対する異議申し立てみたいな声が出てきてるんじゃないかと。これはですね、結構やっぱり政治というファクターが沈んでいく。このまま地盤沈下を興していく予兆なにかもしれない。だからやっぱり政党政治。今ある政治家たちはですね、このことをもっと深刻に受け止める必要があると思います。憲法改正というふうに安倍さんは張り切ってますけども、その手前でですね、やらなきゃいけないことがもっとたくさんあるのではないかというふうに思います。

要旨をまとめると、
・自民党や公明党は勝ったとはいえ大幅に比例票を減らしている。一方でれいわ新撰組やNHKから国民を守る党が票を取っており、これは既存政党へのNOが示されたということである。
・また代表制民主主義への異議申し立てみたいな声が出てきており、政治というファクターの地盤沈下が予想される。憲法改正という風に安倍首相は張り切っているが、その前に政党政治の在り方を考え直すべきだ。

というものです。

しかしながら、
・自民党の比例票は前回と比べ4.5%、公明党の比例票は6.3%減少したのに対し、立憲民主党は28.6%も減少しており、これに言及せずに「自民公明両党は勝ったとは言えない」などと主張することは政治的公平性を欠く。また、れいわ新選組が3議席、NHKから国民を守る党が1議席を獲得したことを以て既存政党が否定されたと主張するのは明らかに事実に反している。
・代表制民主主義への異議申し立ての声が出てきており、政治というファクターが地盤沈下するという主張には何ら根拠がない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、古田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
古田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

古田氏(抜粋):実際見てみると、まあ投票率が半分いかずに、投票した人の中で自民党に入れたのは3分の1ってことは、全体の6分の1なわけですよね。20%もいってないわけですよ。ただし、これは民主主義のルールで与党になると。先ほどあの、ボリスジョンソンのときに、これは民主主義のルールを満たして首相になってるけども、じゃあ彼は民主主義の理念を満たしているのかっていう指摘をしましたが、これはまさに日本でも言えるんじゃないかなって思います。

要旨をまとめると、
・今回の選挙で投票総数の3分の1が自民党に入れた、つまり全国民の6分の1しか支持していないということになる。
・これが民主主義のルールに則って与党になることは正しいとは言えない。ジョンソン英首相のEU離脱についても同じだが、民主主義のルールを満たすことと民主主義の理念を満たすことは別なので、日本でも民主主義の理念を満たすかどうか疑問視されるはずだ。

というものです。

しかしながら、
・投票において棄権は一つの意思表示である。棄権した有権者がすべて反政権、反自民だとする主張は明らかに事実に反しており、また政治的公平性を欠く。
・民主主義のルールに則り、選挙で最多得票を獲得した政党が与党になることは当然かつ正当なことである。また、ジョンソン英首相とEU離脱の話は今回の参院選と何ら関係のない話である。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での古田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「投票率がこれだけ低いのは今の政治に対する怒りが背景にあるからだ」「改憲勢力で3分の2にも満たなかったので、改憲議論はすべきではない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「棄権の理由は政治への怒りだけではない」「改憲議論に積極的な政党もおり、今回の選挙結果が改憲議論そのものを否定するものではない」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 日本の対韓輸出優遇措置廃止がWTOで取り上げられた件について報道された部分
については前編の報告を、

② ボリス・ジョンソン英首相誕生について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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