2019年4月18日 報道ステーション

2019年4月18日 報道ステーション

4月18日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では、萩生田幹事長代行のネット番組での発言をめぐる報道が取り上げられていました。

このネット番組とは4月18日放送のDHCテレビ・虎ノ門ニュースでの発言であると思われます。

発言の内容としては、消費増税を先送りにするというものです。

この消費税に関して簡単に触れておきます。
リーマンショック後の経済政策の失敗により自民党が2009年に下野し、民主党政権になりました。
ですが、景気が回復することはなく民主党政権は終わり、2012年の安倍政権が誕生します。
安倍政権によるアベノミクスが始まってから景気が上向き始めました。
インフレターゲットとして2%の物価上昇を目標に金融緩和を続けていきましたが、消費税が8%に増税され、物価目標が達成されることはありませんでした。
未だにこの目標は達成されていないため、日本の景気を回復させるためには消費増税についてもう一度考える必要があるでしょう。

しかし今回の放送では、消費増税そのものに関する解説はほとんどなく、萩生田氏の発言の意図ばかりが取り上げられていました。

そこで今回検証する点は2点です。
1.消費増税に関して様々な論点を提示して放送がなされていたか
2.政治的に公正な放送がなされていたか
この2点について解説していきます。

まずは放送内容から確認していきます。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:さて、自民党幹部からこんな発言が飛び出しました。どういう意味なんでしょうかね。

徳永有美アナ:きょう安倍総理の側近中の側近ともいえる、萩生田幹事長代行が、消費増税を先送りする可能性について言及したんです。永田町や経済界に波紋が広がっています。

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【VTR】
記者:麻生大臣。萩生田議員が6月の日銀短観の結果次第では増税延期もと発言されていますが、どう思われますか。政府として何か考えが変わったんでしょうか。

ナレーション:波紋は瞬く間に永田町や霞が関に広がりました。発信源となったのは自民党の幹事長代行・萩生田光一氏です。

萩生田幹事長代行(インターネット番組での発言):景気が非常に回復傾向だったが、ここにきて日銀短観を含めてちょっと落ちてますよね。せっかく景気回復ここまでしてきたのに、万が一腰折れしてまたやり直しになっちゃったら何のための増税かということになっちゃうので、6月の(日銀短観の)数字をよく見て、本当にこの先危ないぞというところが見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかないので、そこはまた違う展開はあると思います。

ナレーション:と、消費税増税の先送りもあると述べたのです。さらに。

萩生田幹事長代行(インターネット番組での発言):やめるとなればね、国民の皆さんの了解を得なければならないから、信を問うということになりますよね。

ナレーション:衆議院の解散にまで言及したのです。萩生田議員は安倍総理の側近中の側近として知られています。

自民党 萩生田光一幹事長代行:安倍晋三頑張れ。自民党しっかりしろ。そんな思いで――

ナレーション:そんな萩生田氏が、増税先送りのポイントとして挙げたのは、日銀短観です。日銀短観とは、日本銀行が企業に対し景気の現状と先行きについてアンケートしたものを3ヶ月に一度発表するものです。3月の日銀短観では、大企業の製造業で6年3ヶ月ぶりの大幅悪化となりました。ただ、この発表のあとも安倍総理は景気について。

安倍晋三総理大臣:先般、戦後最長の景気回復、今回の景気回復は戦後最長になったのではないかと言われております。

ナレーション:今回の萩生田氏の発言に、与党内からは。

自民党幹部:総理としてはいろいろ選択肢があった方がいいから、代弁したのかもしれないな。観測気球だろう。幹事長代行だし総理の側近だから。総理のメッセージと勘ぐられても仕方ないよな。

ナレーション:安倍総理はこれまでも、消費増税を先送りしてきた過去があります。

安倍晋三総理大臣(2014年):再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言します。

ナレーション:こう言い切って衆議院を解散し、選挙に打って出ると、その一年半後には。

安倍晋三総理大臣(2016年):今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる「新しい判断」であります。

ナレーション:二度目の延期。このときも直後に参院選を控えていました。萩生田発言をめぐって、野党からは。

立憲民主党 福山哲郎幹事長:自民党の幹事長代行がやっと景気の悪化を認めた。国民生活の現状を考えれば消費税など上げられるわけがありません。

ナレーション:一方、経済界からは。

日本商工会議所 三村明夫会頭:ちょっと信じられない。

ナレーション:日本商工会議所の三村明夫会頭は、けさ麻生財務大臣と懇談し、中小企業が増税分を円滑に価格転嫁できるよう訴えたばかりでした。

日本商工会議所 三村明夫会頭:ようやく消費税対策というものに熱が入り出したときに、「まだ分からない」「万が一こういうことがあったら」っていう話を、私の方で一切やりたくありません。消費税の問題については、短期の若干の経済の変動でこれをうんぬんするっていうのは、僕はちょっと間違いだと思う。

ナレーション:菅官房長官は。

菅義偉官房長官:景気でありますけども、緩やかに回復しているという基調は変わっていないと考えております。リーマンショック級がない限り予定通り引き上げさせていただきます。その政府の方針に全く変わりはないということです。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:ほんとに消費税増税どうなるんだろうと思うんですけれども、萩生田氏の発言というのはどういうねらいがあるんですか。

後藤謙次氏:ここにもありますけども、あ、なくなっちゃったか。

徳永アナ:こちらにあります。

後藤謙次氏:まさにこのアドバルーン、観測気球なんですね。今後は池で言えば石を投げて、池の深さを測ってる。つまり波紋の行き方を見ましょうということなんですが。その裏にはやはり安倍総理が解散を模索していると。つまり消費増税の裏には必ずそこには解散総選挙の時期が伴ってきていると。過去にもその選挙に絡んで安倍総理は長期政権を担ってきているわけですから、今回も上げたくないって言うのは本音ですね。その裏には大義名分っていうのが必要なんですから、そのためにも消費増税をやりたいと。そういう意図が隠されているんだと思います。今回の発言について自民党の二階幹事長は何を言ってるんだと、声を荒らげて発言したようですけども、これはまあ党としては関知してないんだけども、萩生田さんが安倍総理の側近として総理の気持ちを忖度して言ったのか、あるいは勝手に空気を代弁して言ったのか、その両方が考えられると思いますね。

徳永アナ:じゃあまだ官邸としては消費増税に関しては迷ってるっていう。

後藤謙次氏:まあ探ってるということだと思いますね。

徳永アナ:探ってる。そして衆参同一選挙っていう話もありますけども、そのあたりもどうなんですかね。

後藤氏:これもまだ探ってる段階なんですが、そのためにはこの国会を延長しなきゃいけないんですね。6月26日に会期末がくるんですが、これを延長して8月4日が同日選挙ギリギリだと言われてるんですが、このタイミングでなぜ萩生田さんが発言したかというとですね、来週から安倍総理外遊しますよね。そのあと10連休やってくるんですよね。20日間政治空白が生まれるわけですから、そのあとの連休明けの流れを作るためには今頭出しをしとかなきゃいけない。あらゆるカードを持つためには、今なんらかのメッセージを送っとこうというのが判断ですが、少なくとも安倍総理は「増税前には解散」だと。つまり解散の時期が先にいくとなると、増税を凍結、もしくは延期という選択肢が当然出てくる。3年前の参議院選挙もですね、6/1に新しい判断といって延期したわけですから、まだ時間はあると萩生田さん言ってましたがまさにその通りで、そういうことなんですね。ここから1ヶ月くらい、間にどういう流れを作るか、その先触れが今日だったと思いますね。

富川悠太アナ:そうなったときにどう説明するのかっていうのもね。

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放送内容を確認していきます。
1.萩生田幹事長代行が消費増税延期と衆議院解説に言及したという報道
2.発言に関して、自民党・野党・経済界からの反応を報道
3.スタジオ解説にて萩生田幹事長代行の発言の意図を解説

このような内容でした。

この放送の中で消費増税の是非に関して解説するものはほとんどありませんでした。
消費増税を本当にするべきなのか、それとも延期するべきなのか、この本質を欠いた報道でありました。

そもそも消費税は逆進性が高い税金です。
賃金が低い人も高い人も同様の税率であるため、賃金が低い人の負担が高くなる税金なのです。
賃金が低い人に大きな負担を負わせて、そのお金を社会保障費として使っていく、消費税はこのような税金です。

この消費増税をしてしまえば、当然のごとく消費意欲も下がります。
消費意欲が下がれば、経済が回らず、景気が後退していきます。

1995年から2014年の日本の実質労働生産性を見てみると比較的上昇傾向にあります。
技術革新などにより生産性は上がってきたのです。
しかし、同時期の実質雇用者報酬を見てみると落ち込んでいることが分かります。
これは長く続いたデフレ環境により労働者の賃金がカットされてきたことが原因です。

労働者の賃金が低ければ、やはり景気は回りません。
まずは消費を上向かせ、物価目標を達成する必要があるでしょう。
この目標達成のためには、消費増税を延期するという選択肢は現実的なものであるはずです。

実際に8%への消費増税がなければ物価目標を達成していたという識者もいます。

こういった議論を含めて消費増税をするべきなのか、もう一度取り上げるべきです。
しかし、今回の報道ではこの論点を全く欠いていました。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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次に検証する点として、政治的に公平な放送であったか、という点です。

新聞やテレビなどの大手メディアは重要な法案などが可決された後も、その議論を止めることはありませんでした。
例えば、安保法制やテロ等準備罪が可決された時も再考が必要であるという論調で報道がなされていました。
沖縄の基地移設に関しても同じです。
日米間で政府が長年に渡り交渉を続けてきた基地移設に関する取り決めも、メディアは基地移設しても良いのか、と議論を呼びかけていました。

もちろんこれは良いことであります。
政府のやり方を監視するというのもメディアの重要な仕事であり、決定された後であっても思考停止してはよりよい日本は描けないでしょう。

しかし、今回の消費増税に関しては決まったことなのに、安倍政権はまた増税を先送りにしてしまうのではないかと、批判的な論調で放送されていました。

VTRでも以下のように扱っていました。

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ナレーション:安倍総理はこれまでも、消費増税を先送りしてきた過去があります。

安倍晋三総理大臣(2014年):再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言します。

ナレーション:こう言い切って衆議院を解散し、選挙に打って出ると、その一年半後には。

安倍晋三総理大臣(2016年):今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる「新しい判断」であります。
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これに関して安倍政権がなぜ消費増税を延期したのかも述べずに、決まっていたことを安倍政権は覆したという論調で放送されています。

メディアにとって反対した方が良いものだけ、反対する、という姿勢は二重基準であり、政治的に公平であると言えません。

これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して、今後も監視を続けてまいります。

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