TBS「サンデーモーニング」、2020年2月2日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
② 「風を読む」にて太平洋戦争について報道された部分
③ 桜を見る会の新たな答弁について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
武漢市内の医療現場で働く意思や看護師たちは、防護服を着たまま寝るほど過酷な状態に置かれています。中国での新型肺炎の感染者数はおよそ12,000人に達し感染の拡大が止まりません。インターネット上には、現場で従事する医療関係者たちの悲痛な叫びが多くアップロードされています。先月25日には男性医師が死亡するなど、医療従事者の感染も広がっています。一昨日には、新たに46人の死亡が確認され、死者は259人となりました。27日には、李克強首相が現地入りし激励を行いました。その武漢市では、新型ウイルス専門の病院が、わずか十日程の突貫工事で完成し、早ければ明日にも開院をする予定です。
一方で、武漢が閉鎖された先月23日から帰れずにいた日本人565人が、水曜日から政府のチャーター便三便に分かれて帰国をしました。水曜日の朝到着した一便の乗客からは、三人の感染が確認されました。三例の内一例は症状がありましたが、残りの二例は、無症状ですが病原体を保有していました。こうした事態を受け、厚生労働省は、陰性であっても14日間の経過観察を行う旨を表明しました。
国内では、武漢市への渡航歴のない感染者が初めて確認されました。武漢市からのツアー客と行動をともにしていたバス運転手とバスガイドです。更に、バス運転手と行動を共にしていた別のバスガイドも感染が確認されました。日本でも感染は新たなステージを迎えています。
WHOは緊急事態宣言を出し、これを受け日本政府は、中国湖北省に二週間以内に滞在歴のある外国人等の入国拒否を行うことを表明しました。また、指定感染症への指定を前倒しして行いました。
中国では混乱が広がっています。武漢市の周辺では、外部から続く道を塞ぐなどして、入ってくる人を防ぐ村も出てきました。また、春節で武漢に里帰りしていた人の家は、扉が塞がれるなど、武漢の人を排斥する動きが続いている。また対応にあたる当局にも批判の声が。感染者が多い地域ではマスクの着用が義務化されています。しかし肝心のマスクが品不足となっています。果たして新型コロナウイルスの感染はマスクで防ぐことはできるのでしょうか。感染対策に詳しい専門家は、ウイルスは飛沫感染すると考えています。マスクはある程度防護になるが、それをつけていれば完全に防げるわけではないといいます。
【アナウンサーによるパネル説明】
・感染者数は一万人を超え、世界の26の国・地域に拡大した
・国内感染者の大半は武漢滞在歴があるが、中にはそうでない人もいる
・各国でそれぞれ隔離や入国禁止等の措置を取っている
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【コメンテーターの発言】
鎌田實氏(要約):今後検査は簡易的に行うことができるようになるのではないだろうか。それをまず初めに行うべきである。できるようになれば、コロナウイルスを随分防ぐことができる。
田中秀征氏(要約):数字を聞いても、なぜ緊急事態宣言が一週間前に出なかったのかと。中国もWHOも対応が遅い。科学的判断よりも政治的判断が優先されているように感じる。WHOの事務局長は中国の専属弁護士という印象を受ける。こうした体制でこの荒波は乗り越えられるのか。体制を変える必要があると感じる。体制を変えなければ国際社会は結束することが出来ないと思っている。
元村有希子氏(要約):ウイルスは見えないし、無症状でも感染しているとなる、ますます不安を高める。そんな中でウイルスについて知ることは重要。WHOは情報のハブになるべき。一方で私達は、国内でこれから患者が増えてきたときのことを考えなければならない。どの地方でも検査治療が行える環境は整えなければならない。長引いたときにオリンピックに影響が出ないように封じ込める、万全の対策を取る必要がある。この二十日間で科学論文が50本以上出ている。科学者がウイルスについて研究を行っている。過去の検証も重要だが、これから起きることに積極的に手を打っていくことも必要になる。
鎌田實氏(要約):水際作戦に失敗したように感じる。これから中長期作戦に入るわけだが、一番怖いのは、潜伏期があるということと無症状である時があること。病原体保持者がいて、それが知らない間に広まっていく。そういう感染のパターンが考えられる。これから中長期的にどう対策をしていくのか。大切なのは致死率がSARSやMARSに比べ低く、これらを抑えることも出来た。あまり戦々恐々とならないことが大事だ。
仁藤夢乃氏(全文):そうですね、不安が大きくなるにつれて、その排除とか差別の雰囲気っていうのも強まってきているなあって感じていて。そのSNS上だけじゃなくて日常生活の中でも、その中国人の方に対する不安とか差別的な発言っていうのが聞かれるようになってきたなって思っているんですね。でヨーロッパで最初にウイルスの感染が確認されたフランスでは、そのアジア系の住民に対する差別も広がっているそうで、SNS上では私はウイルスじゃないっていうハッシュタグも作られています。で日本でも、中国人の方の入店お断りという張り紙をする飲食店があったり、まあその差別的な対応に理科を示すような声っていうのはやはりあって。でもそのウイルスを理由に差別を正当化するっていうのはあってはならないですし。正しい情報に基づいて私達も判断していかないといけないと思っています。
青木理氏(全文):まあ少し冷めて言うと、まあ人類の歴史って感染症との戦いだったわけですよね。ただ今圧倒的に違うのは、この人の、まあ世界が小さくなったっていうか、人がものすごく往来するってことと、それから情報環境。だからそこで仁藤さんおっしゃるようなある種デマとか差別も飛び交うし。今回で言うと、その憲法に緊急事態条項が必要だなんて言う人が言いだしたりして。現行法でやれることやるべきこともろくにしてないのに緊急事態条項なんていうとんでもないことを言い出した話も出てくる。かつもう一つ大きく変わったのは、やっぱり今回の発信源となった中国が、これは中国の体制を好きとか嫌いとかどう評価するかは別として、世界の工場というか、まあ世界の心臓になっているわけですよね経済の。その経済の悪影響なんかも考えると鎌田先生おっしゃったように、どれくらいの危険度なんだろうかということを少し冷静に見ないと、冷静かつバランスのある対処っていうのをしないと、そのデマ差別っていうようなところももちろんだけど、経済との関係っていうのもこれ本当壊滅的なダメージ与える可能性ありますんで、ちょっと冷静かつバランスのある対処をしていくべきだと僕は思ってますけどね。
鎌田實氏(要約):これからどうするのか。大きく3つ提案をします。自分の命は自分で守ること。マスク、手洗いが有効。二番目は、心配しすぎるなということ。インフルエンザでは8200人の人が亡くなっている。インフルエンザとの距離のとり方を僕たちは学んできた。これを参考にすることで乗り越えることができるのでは。濃厚接触をしない限りそれほど感染をしていない。三番目はリテラシー。ヘルスリテラシーを上げることが重要です。今日見ていただいた、中国の外来待ちでの阿鼻叫喚。ああした事態を日本で起こさないことが重要。中国でも差別が起きている、日本でも過去ハンセン病や結核者に対して差別をしたことがある。できるだけ落ち着いて、人権を守りながら、SARSもMARSも克服出来たのだから僕たちは必ずできると信じていくことが大切である。
田中秀征氏(要約):コロナウイルスは他の種類もあるんですね。
鎌田實氏(要約):コロナウイルスは六種類あると言われていたが、今回新しく出来て七種類ある。そのうち四種類は殆ど人間に害を与えない。だから、コロナウイルスだけが怖いのではなくて、その中にMARSもSARSもあって克服することができた。
田中秀征氏(要約):これは野生の動物と関係あるということだと思う。そうであるならば、元を断たなければならない。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。
仁藤氏(抜粋):そうですね、不安が大きくなるにつれて、その排除とか差別の雰囲気っていうのも強まってきているなあって感じていて。そのSNS上だけじゃなくて日常生活の中でも、その中国人の方に対する不安とか差別的な発言っていうのが聞かれるようになってきたなって思っているんですね。でヨーロッパで最初にウイルスの感染が確認されたフランスでは、そのアジア系の住民に対する差別も広がっているそうで、SNS上では私はウイルスじゃないっていうハッシュタグも作られています。で日本でも、中国人の方の入店お断りという張り紙をする飲食店があったり、まあその差別的な対応に理科を示すような声っていうのはやはりあって。でもそのウイルスを理由に差別を正当化するっていうのはあってはならないですし。正しい情報に基づいて私達も判断していかないといけないと思っています。
要旨をまとめると、
・新型コロナウイルスへの不安が大きくなるにつれ、排除や差別の雰囲気が強まってきている。SNSだけではなく日常生活でも中国人への差別が聞かれるようになった。
・日本では中国人入店お断りの張り紙やそれを支持する声があるが、ウイルスを理由に差別を正当化してはいけない。
というものです。
しかしながら、
・日本国内において排除や差別の雰囲気が存在するという主張には何ら客観的根拠がなく、仁藤氏の感想に過ぎない。
・ウイルスを避けようとする感情を「差別の正当化」と断定する主張は、ウイルス流行前から日本国内で中国人への差別が横行していると根拠なく断定するもので事実に即していない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):まあ少し冷めて言うと、まあ人類の歴史って感染症との戦いだったわけですよね。ただ今圧倒的に違うのは、この人の、まあ世界が小さくなったっていうか、人がものすごく往来するってことと、それから情報環境。だからそこで仁藤さんおっしゃるようなある種デマとか差別も飛び交うし。今回で言うと、その憲法に緊急事態条項が必要だなんて言う人が言いだしたりして。現行法でやれることやるべきこともろくにしてないのに緊急事態条項なんていうとんでもないことを言い出した話も出てくる。
要旨をまとめると、
・人類の歴史は感染症との戦いだが、グローバル化やデマが飛び交うなど現代ならではの問題がある。憲法に緊急事態条項が必要だなど、現行法でできることをろくにしていないのにとんでもないことを言う話もある。
というものです。
しかしながら、
・日本政府は現行法に則って必要な対策を講じており、「現行法でできることをろくにしていない」とする主張は明らかに事実に反している。
・今回の事案は緊急事態に緊急事態条項の必要性を示すものであり、緊急事態条項を含めた憲法改正やその是非についての議論すらも「とんでもないこと」や「デマ」として扱う主張は明らかに事実に即しておらず、政治的に公平とは言えない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「新型コロナウイルスを中国人への差別を正当化する理由にしてはいけない」「日本政府は対策に失敗している」「新型コロナウイルスを過剰に恐れるとかえって被害が大きい」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「中国への渡航禁止や滞在歴のある人間の入国拒否など適切な線引きは必要だ」「日本政府の対策は遅いが適切だ」「リスクが大きい以上用心するに越したことはない」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」にて太平洋戦争について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 桜を見る会の新たな答弁について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。