2020年2月9日 サンデーモーニング(中編)

2020年2月9日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年2月9日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
② 検事総長の定年延長について報道された部分
③ 桜を見る会の問題紛糾について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 検事総長の定年延長について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
政府は、検察庁の事実上のナンバー2である、東京高検の黒川検事長について、退官直前に定年を延長する異例の閣議決定を行いました。国会では、野党からの追求が行われました。黒川氏は、官邸と近く、特に菅官房長官と近いと言われています。検察官の定年延長は過去には一度も例がなかったそうです。

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【コメンテーターの発言】
松原耕二氏(全文):はい、そうですね。ちょっと話したいと思います。まあ今回の話を最初聞いたとき、まさかここまでするのかというふうに私は驚きました。ちょっと抑えておきたいのはですね、まず検察官の定年なんですが、これ法律で定められていて、まあ検事総長という検察トップは65歳、なんですね。でそれ以外の方々検察官はみなさん63歳の定年なんですね。で今回問題となっている黒川さんというのは、東京高検の検事長、つまり検察のナンバー2の方で、この方はまあ、捜査現場というよりは法務省が長くてですねまあ、今の政権に近いというふうに言われてる人なんですね。で、この黒川さんですね、実は昨日が誕生日で、となると一昨日の2月7日に定年になるというのが、退官するというのが既定事実だったわけですね。ところが、この少し前の駆け込みという形で、1月の終わりにですね、政権側が閣議決定して、この定年を半年延ばして、8月7日までというふうにしたんですね。じゃ、こういうことにして何ができるのかということになると、実は今の検事総長がですね、今大体まあ2年間の任期というふうにまあ慣例になってますので、そう考えると、この前(注:黒川検事長の延期後定年)には今の検事総長退官するんですね。てことは、まだ現役が続いているということは、この黒川さんがこのまま検事総長になる道が開けるんじゃないかということなんですね。つまり、政権側は、この自分たちに近いとされる、黒川さんを検察のトップに据えようとしている人事だったんじゃないか、というのがまあ今野党なんかも追求してる部分なんですね。でもそもそもですね、この定年延長というのを閣議決定決めていいのかという問題もある。しかもこれ自身、定年延長が法律違反じゃないかという声もあるわけで、つまり法律違反だとすると、捜査機関のトップを、法律違反という形で据えていいんだろうかという疑問が出てくるわけですね。しかも、独立性がものすごく求められる、捜査機関にですね、もし政治があからさまに手を突っ込んで介入して検事総長を決めようとしているとなるとですね、それこそ問題じゃないかというふうにやっぱ思えるわけですよね。じゃなぜこんなことをですね、しようとしてるのかと。これもし本当に検事総長にしようとしてるということならですね、これあのまあ独立性がものすごく高まっているところに据えていいのかという議論と同時にですね、あのまあ今の国会議員のいろんな疑念、疑惑がある、そして桜を見る会をめぐる問題でも実は安倍総理への告発状が東京地検に出されているわけですね。つまり、政権中枢に捜査の手が及ぶのをこれを防ぐためじゃないかというふうに思われてもしかたがないと思うんですね。この政権これまでも、中立であることが求められる法の番人の内閣法制局長官とか、独立性が高いはずの日銀総裁あるいは、NHKの会長といったところに自分たちに近い、意に沿う人といわれる人たちをまあ据えてきたわけですね。でしかも、皆さんわかってる通り、まあ官僚・国会議員も忖度が目立つわけですね。民主主義ってのはチェックアンドバランスで成り立って、まあ権力の専制を防ごうとする、横暴を防ごうとするのがバランスなんですが、これを結局無くしてですね、官邸独裁と言う形になってるんじゃないかというふうにやっぱり懸念されるわけですね。そういう意味でもこの検事総長人事がどうなるのかということを私達はちゃんとこれ監視する必要があるというふうに思いますね。

涌井雅之氏(要約):松原さんの話の通りで、官僚が主導した政治ていうか政策、すなわちテクノクラート独裁ということに対して、これは不味いねということで政治主導に切り替えられた。ここまでの流れは理解できる。しかし、政治主導と政権主導は全く違うこと。それがごちゃごちゃになっていることが一つの問題。そして今あったように、独立性をどう維持するのかということは非常に重要。僕がふと思い出したのは、トランプ大統領が、最高裁判事に当たる人間に、超保守な人間を据えた。これによって、トランプの政策を司法の面でも担保しようとした。このことに我々は何やってるんだと思った。それと同じかそれ以上に悪い状況になっている。私と親しい霞が関の官僚は、この問題に非常に敏感に反応してます。これはまずいということで。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):まあ今回の話を最初聞いたとき、まさかここまでするのかというふうに私は驚きました。ちょっと抑えておきたいのはですね、まず検察官の定年なんですが、これ法律で定められていて、まあ検事総長という検察トップは65歳、なんですね。でそれ以外の方々検察官はみなさん63歳の定年なんですね。で今回問題となっている黒川さんというのは、東京高検の検事長、つまり検察のナンバー2の方で、この方はまあ、捜査現場というよりは法務省が長くてですねまあ、今の政権に近いというふうに言われてる人なんですね。で、この黒川さんですね、実は昨日が誕生日で、となると一昨日の2月7日に定年になるというのが、退官するというのが既定事実だったわけですね。ところが、この少し前の駆け込みという形で、1月の終わりにですね、政権側が閣議決定して、この定年を半年延ばして、8月7日までというふうにしたんですね。じゃ、こういうことにして何ができるのかということになると、実は今の検事総長がですね、今大体まあ2年間の任期というふうにまあ慣例になってますので、そう考えると、この前(注:黒川検事長の延期後定年)には今の検事総長退官するんですね。てことは、まだ現役が続いているということは、この黒川さんがこのまま検事総長になる道が開けるんじゃないかということなんですね。
つまり、政権側は、この自分たちに近いとされる、黒川さんを検察のトップに据えようとしている人事だったんじゃないか、というのがまあ今野党なんかも追求してる部分なんですね。でもそもそもですね、この定年延長というのを閣議決定決めていいのかという問題もある。しかもこれ自身、定年延長が法律違反じゃないかという声もあるわけで、つまり法律違反だとすると、捜査機関のトップを、法律違反という形で据えていいんだろうかという疑問が出てくるわけですね。しかも、独立性がものすごく求められる、捜査機関にですね、もし政治があからさまに手を突っ込んで介入して検事総長を決めようとしているとなるとですね、それこそ問題じゃないかというふうにやっぱ思えるわけですよね。じゃなぜこんなことをですね、しようとしてるのかと。これもし本当に検事総長にしようとしてるということならですね、これあのまあ独立性がものすごく高まっているところに据えていいのかという議論と同時にですね、あのまあ今の国会議員のいろんな疑念、疑惑がある、そして桜を見る会をめぐる問題でも実は安倍総理への告発状が東京地検に出されているわけですね。つまり、政権中枢に捜査の手が及ぶのをこれを防ぐためじゃないかというふうに思われてもしかたがないと思うんですね。この政権これまでも、中立であることが求められる法の番人の内閣法制局長官とか、独立性が高いはずの日銀総裁あるいは、NHKの会長といったところに自分たちに近い、意に沿う人といわれる人たちをまあ据えてきたわけですね。でしかも、皆さんわかってる通り、まあ官僚・国会議員も忖度が目立つわけですね。民主主義ってのはチェックアンドバランスで成り立って、まあ権力の専制を防ごうとする、横暴を防ごうとするのがバランスなんですが、これを結局無くしてですね、官邸独裁と言う形になってるんじゃないかというふうにやっぱり懸念されるわけですね。そういう意味でもこの検事総長人事がどうなるのかということを私達はちゃんとこれ監視する必要があるというふうに思いますね。

要旨をまとめると、
・検察官の定年は法律で決まっており、黒川東京高検検事長は2月8日が誕生日の為2月7日に退官する予定だった。しかし政権側の閣議決定によって定年が伸び、そのまま任期の切れる前任者に代わって検事総長に任官される可能性が出てきた。
・黒川検事長は捜査現場よりも法務省が長く、政権に近いと言われている。そのためこの人事は黒川氏を意図的にトップに据えようとしている人事である。
・定年延長を閣議決定で決めて良いのかという問題や、そもそも定年延長が違法だという声もある。
・安倍総理に対して桜を見る会に関して告発状が出されるなど国会議員には様々な疑惑があるため、独立性が求められる捜査機関に政治が介入して検事総長を決めようとしているのであれば問題だ。
・安倍政権はこれまでも中立であることが求められる内閣法制局長官や日銀総裁、NHK会長といったポストに自分たちの意に沿う人間を据えてきた。国会議員や官僚にも忖度が目立つ。これでは権力の横暴を防ぐチェックアンドバランスの機能が失われてしまう。

というものです。

しかしながら、
・黒川検事長の定年延長は検察庁の業務上の必要性から法務省によって閣議の議題に上り決定されたものであり、安倍政権側の意向であるかのように扱う主張は明らかに事実に即していない。
・捜査現場での経験より法務省での経験が長いことは、黒川検事長が政権寄りの人物であるという主張の根拠にはならない。また、黒川検事長を意図的に検事総長に任命するための人事だとする主張には何ら根拠がない。
・検事総長の定年については検察庁法で規定があるが、定年延長に関する特段の規定はない。一方、一般法の国家公務員法では「退職で公務運営に著しい支障が生ずる場合、1年未満の範囲で勤務を延長することができる」ため、定年延長が違法だという主張は事実に即していない。
・法務省内での人事を政権側が閣議決定で了解する形のため、閣議決定によって決めていいのかという主張は当たらない。
・安倍首相に対して桜を見る会について告発状が出されたことは、桜を見る会の疑惑が違法性のある重大なものだという主張の根拠にはならない。また、与野党問わず様々な国会議員に疑惑が存在するなかで、桜を見る会のみを引き合いに出す主張は政治的に公平とは言えない。
・内閣法制局長官の任命は内閣の専権事項であり、日銀総裁の任命は衆参両院の承認のもと内閣が任命する「国会同意人事」である。また、NHK会長を任免するのはNHKの経営委員会だが、そのメンバーの任命も衆参両院の同意が必要な「国会同意人事」である。よって、内閣法制局長官の任命に安倍政権の意向が反映されることは極めて当然であり、日銀総裁とNHK会長に至っては国会の同意のもとで選出されているため、「安倍政権が自分たちの意向に沿う人間を据えた」「中立性が損なわれる」とあたかも安倍政権の横暴によってこれらの人事が決まったかのように扱う主張は明らかに事実に反しており、また安倍政権を根拠なく悪魔化するもので政治的に公平とは言えない。
・国会議員や官僚に忖度がみられるとする主張には何ら根拠がない。また、日銀総裁とNHK会長は国会の承認を経て内閣が任命しているため、権力のチェック機能が欠如しているという主張は事実に即していない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「黒川検事長の定年延長は安倍政権の意向が強く反映された人事で中立性を損なうものだ」「安倍政権の横暴を止めるべきだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「黒川検事長の定年延長は合法な手続きのもとで行われており何ら問題はない」「安倍政権は着実に仕事をしているだけだ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ 桜を見る会の問題紛糾について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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