2020年2月12日 報道ステーション

2020年2月12日 報道ステーション

2月12日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・国会論戦に関して政治的に公平な報道を行っていたか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):こちらは今日の国会です。総理出席のもと桜を見る会などの追及が続きましたが、質問を終えた野党議員に対する総理のひと言で審議がストップしたんです。

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【VTR】
安倍晋三総理大臣(以下安倍総理)『こうした非生産的な、あるいは政策とは無縁なやりとりを長々と続ける気持ちは、私は全くないわけですが』

ナレーション(以下ナレ):安倍総理が非生産的と評したのは桜を見る会の前夜祭に関するやり取りです。これについて…。

辻元清美衆院議員(以下辻元議員)『さっき総理はまだこの話してると言うけれども総理が領収書をドンと出して明細書をバンと出せば終わるじゃないですか』

ナレ:その辻元議員は自民党が提起している憲法への自衛隊明記について質問しました。引き合いに出したのは2015年の安保法制の議論です。野党は多くの憲法学者が違憲だと反対していると主張していましたが菅官房長官は当時、数の問題ではないと反論していました。

辻元議員『あの時は数じゃない、関係ないと。今回は「憲法学者の多数が、憲法違反というから変えなきゃいけない」論理的に矛盾していませんか』

菅義偉官房長官「そもそも自民党そのものがスタートする地点から自主憲法というものを掲げて私どもは戦ってきてるわけですから、そこはまったくおかしくないと思いますよ」

ナレ:更に、辻元議員は自衛隊を憲法に明記するための改憲案が国民投票で否決されたら自衛隊はどうなるのか安倍総理にただしました。

安倍総理『否決されたとしても政府の見解としては国家固有の権能の中において自衛隊が設置されているとの考え方。これは変わらないということであり、合憲であることは変わらない』

ナレ:そして、質疑のあと、委員会が紛糾しました。

辻元議員『タイは頭から腐るという言葉ご存じですか?上層部が腐敗していると残りもすぐに腐っていく。総理が“桜”とか“加計”とか“森友”とか疑惑まみれと言われているからそれに引きずられるように完了の示しがつかない。そろそろ総理自身の幕引きだと申し上げて終わります』

ナレ:その直後でした。

安倍総理『意味のない質問だよ』

ナレ:その後の質問で、安倍総理はこう釈明しました。

安倍総理『(辻元議員の質問は)罵詈雑言の連続だったわけですよ。“頭から腐る”腐っている本体が私であると。ずっとこれを言い続けてたわけですよね。政策に関わりなく』

ナレ:野党側は国会軽視だと抗議し発言の撤回と謝罪を求めています。そして、公文書の管理を担当する北村大臣は今日も野党から追及を受けました。

逢坂誠二衆院議員(以下逢坂議員)『これほど安倍政権で公文書の改ざん・隠ぺい・ねつ造・廃棄、行われる理由は何と思われますか。これは公務員が悪いんですか。原因は何だと思われますか』

北村誠吾内閣府特命担当大臣(以下北村大臣)『一連の公文書をめぐる問題の要因は適正な文書管理を行うことに、職員一人一人の理解が不足であったこと文書管理のチェック体制が不十分であったことなどが挙げられると認識しております』

逢坂議員『北村大臣。それは霞が関のみなさんに失礼だと思いますよ。違うでしょう。安倍内閣のやってきたことがおかしいから公務員のみなさんがそうせざるをえないんじゃないですか』

北村大臣『今回の事案に関し、与党・野党・国民の皆さま方からいただくご指摘を真摯に受け止めて、各府省の連携強化などを私もともどもに励んでまいりたいということを述べたいと思います』

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【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:曽我部さん、北村大臣は官僚のせいに今日はしていたわけなんですが公文書管理の問題はどんなふうにご覧になりますか?

曽我部真裕氏(以下曽我部氏):一職員の問題ではないと思うんですね。この問題って先ほど出ていましたように森友問題、加計問題と共通の背景があると思うんですが官邸主導というものの矛盾が明らかになったような現れたような事案だと思います。官邸主導ってメリットもあって強いリーダーシップによって課題を解決していくというメリットもあるんですけど他方で、暴走の恐れということもあってその辺の弊害というのがこの辺りに現れていると思いますので、一職員の問題ではないと思います。公文書管理の話で申しますと、今回いくつか法律違反があったりですとかあるいは、抜け道だったんじゃないかというようなことがあったわけですね。その違反、あるいは抜け道は必ずしも十分チェックされていないところで若干、職員の処分等も行われましたけど十分に責任が追及されているわけではないと思います。ただ、法律ができたからこそ違反だ、違反だというふうに責任追及ができるわけです。この公文書管理法というのは2009年にできた割と新しい法律なんですがそれ以前はルールがないのでルール違反だという指摘もできないということでそういう意味では一歩あるいは半歩前進という側面があると思います。ただ、不備も多いというのも事実ですのでそこをしっかり改善していくということとあと、今回担当大臣があまりこの問題に詳しくないという批判もあるところですけど。これは政権のプライオリティーというのが表れていて、公文書管理が重要なことだということに認識を持っていただいてしかるべき方を担当大臣にしていただくのが求められるんじゃないかと思います。

徳永アナ:今日は憲法改正についても議論がされました。辻元議員が引き合いに出していたのは2015年の安保法制のときの議論です。ほとんどの憲法学者が違憲と言っていたのに菅官房長官は数ではないと思うと反論をしました。一方で今回、自衛隊を憲法に明記する理由としては自衛隊は合憲という憲法学者はたった2割しかいないとつまり憲法学者の多くが違憲だと言うから変えなければいけないということなんです。以前は数の問題ではないとしながらも今回は数を根拠にしていると。これは、辻元議員が二重基準だと話していたんですけど曽我部先生は憲法学者の立場からご覧になってどのようなご意見ですか?

曽我部氏:これは二重基準だといえばそうとも言えるとは確かに思うんですがただ研究者の立場から申しますと世論調査ではないですので数の問題ではなくてですね理由付けなり理屈の問題だと思うんです。そういう観点から申しますと問題だと思いますのは政治家の方々憲法学者を引き合いに出されるわけなんですがただ、いかにもつまみ食い的に見えるということで一連の憲法論議において憲法学者の意見というのが十分に聞かれていないのが非常に残念に思います。

徳永アナ:つまみ食いで政権にとっていいところだけが取捨選択されているんじゃないかということですね。

曽我部氏:憲法問題に限らないんですけど政策を考えるときは民意の反映って大事なんですけれども、他方で専門家の意見をしっかり踏まえるということも同じぐらい重要でしてその辺のバランスが重要なわけですよね。憲法問題に関してはその辺の兼ね合い、バランスが非常に崩れているという印象を持っているので今後は、この辺りを踏まえてもう少ししっかりした議論をしていただきたいなと思います。

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【検証部分】
今回は安倍首相の野次について取り上げていました。
辻元清美衆議院議員の質問が終了した後に、「意味のない質問だよ」との野次を行い、審議がストップしました。
これについて、今回の放送では安倍首相が野次をした前後について十分な放送が行われていなかったと言えます。
まずは、辻元議員の質問の後半部分を見ていきます。

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辻元議員「総理、最後に申し上げます。鯛は頭から腐るという言葉、ご存知ですか。
これはですね、英語とかロシア語でもあるんですよ、死んだ魚の鮮度は魚の頭の状態から判断できる、従って社会、国、企業などの上層部が腐敗していると、残りもすぐに腐っていく。
総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれと言われているから、それに引きずられるように官僚の示しがつかない。私ね、官僚のみなさん、可哀想です。
心痛めてる官僚の方、たくさんいると思いますよ。今回(和泉補佐官に関する問題)も見るに見かねて(編注:メディアへの情報提供は)内部からじゃないかな、というぐらい心配しています。
子供の教育にも悪いです。長期政権だからじゃないですよ、最初からやってるんですから。桜を見る会も、森友だって総理大臣になる前から講演に行こうとしてた。
まあですね、ここまで来たら原因は鯛の頭、頭を変えるしかないんじゃないですか。私は今日、総理がしっかりけじめをつけると仰ったら、ここまで言うつもりはなかったです。まあ、『私の手で憲法改正を成し遂げたい』と、総理の手で成し遂げることは、そろそろ総理自身の幕引きだということを申し上げて終わります」
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この直後に安倍首相は上記のような野次をしました。
そして審議が再開した後の安倍首相の答弁についても切り取って放送していましたので、そちらの部分についても紹介します。

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安倍首相「あの、(質問の)最後のところでですね、ずっと辻元委員が私に質問ではなくて、ずっと、私から言わせれば罵詈雑言の連続だったわけですよ。頭から腐ると、腐ってる本体が私であると、ずっとこれを言い続けたわけですよね、政策に関わりなく。私に反論という反論する機会を与えられずに、延々とそれを繰り返された。私の目の前で、テレビつきで、ですね。それで終えられたんで、終えられたあとですね、それで、こんなやりとりは無意味じゃないか、ということを申し上げたわけでありますが、それは当然、そう思うじゃないですか。相互のやりとりがあって…ここで一方的に罵る、ここは質疑の場であってですね、一方的に罵る場なんですか?私はそうだとは思いませんよ。やっぱりそれでは質疑が無意味になる。私はそれでは質疑が無意味になってしまうと、こう思ったから、これじゃあ無意味じゃないかと、こう申し上げたわけであります」
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安倍首相の野次は適切なものであったとは言えません。

しかし、辻元議員の質問の後半部分が適切なものであったか、生産的なものであったかは、議論が必要でしょう。
そして首相が野次を行った意図についても、発言が切り取られて放送されていました。

前後の発言を十分に取り上げずに放送することは、以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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