2019年12月24日 報道ステーション

2019年12月24日 報道ステーション

12月24日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・日韓関係に関して様々な論点を取り上げて放送がなされていたか

まずは放送内容から見ていきます。

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【スタジオ】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ):こんばんは。「報道ステーション」は今日も10時15分からのスタートとなります。どうぞ最後までお付き合いください。まずは、こちらです。安倍総理が中国・成都で韓国の文在寅大統領と握手を繰り返したんですね。今日、日韓首脳会談が行われたんですが実に1年3か月ぶりのことだったんですね。

徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):会談は当初30分の予定でしたが実際には45分に及んだということです。戦後最悪とまで言われる日韓関係ですが一体どのような話になったのでしょうか。

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【VTR】
安倍内閣総理大臣(以下安倍総理)『北朝鮮の完全な非核化に向けて、 米朝プロセスを最大限後押ししていくことが重要と述べました』

ナレーション(以下ナレ):20年という節目の年を迎えた日中韓サミット。中国の成都で行われました。

李克強中国首相『朝鮮半島の非核化と東アジアの持続的な平和維持が三者の共通目標だと強調した』

文在寅大統領(以下文大統領)『恒久平和のために緊密な協力をとってまいります』

ナレ:一部メディアで北朝鮮がアメリカとの非核化交渉を打ち切るのではと報じられる中3か国は朝鮮半島の完全な非核化に向け協力していくことで一致しました。日中韓FTAの早期実現など経済面での協力も確認し次回は、来年韓国での開催を目指すことに。そして、午後。前に出て文大統領を招き入れる安倍総理。笑顔で握手し背中に手を添える姿も。注目の日韓首脳会談です。顔には笑みとともに緊張感も。

安倍総理『文在寅大統領とはさまざまな国際会議でお目にかかっておりますが本日は久々にこうして会談を行うことができました』
文大統領『歴代最長、また令和初の総理になったことをお祝い申し上げます』

ナレ:久々の首脳会談はこんな挨拶で始まりました。

安倍総理『北朝鮮問題をはじめとする安全保障に関わる問題について、日韓、そして日米韓の連携は極めて重要であります』

ナレ:両国メディアに限られた時間のみ公開される冒頭のやり取り。そこで、安倍総理が言及したのは北朝鮮問題での連携の重要性でした。一方の文大統領は…。

文大統領『現在、両国の「外交当局」と「輸出管理当局」の間で懸案解決に向けた協議が行われています』

ナレ:輸出管理当局という言葉を使い、韓国がこの問題を重視することをアピールします。安倍総理の発言がおよそ1分間だったのに対し文大統領は3分以上、話し続け途中でメディアは退出させられます。日本側の説明によると極めて率直な意見交換が行われたといいます。安倍総理は日韓関係の悪化について根本原因は旧朝鮮半島出身労働者問題にかかる大法院判決にあると伝えました。これに対し、文大統領は韓国側の立場は繰り返さないが問題解決の重要性は認識しており早期に解決を図りたいと述べたといいます。およそ45分の会談後会場となったホテルを出る文大統領。時折、カン・ギョンファ外相と言葉を交わす姿も。安倍総理は、口を真一文字に結んでいるようにも見えます。その後の記者会見では…。

安倍総理『国交正常化の基礎となった日韓基本条約、日韓請求権協定が守られなければ、国と国との関係は成立しない。成り立ちません。文在寅大統領には旧朝鮮半島出身労働者問題に関する我が国の立場を伝えました。日本としては主張すべきは主張し、韓国側が日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作るように求めました。文大統領との間では対話による解決の重要性については確認したところであります』

ナレ:一方、日本が輸出管理を強化している半導体材料3品目のうち1つが、会談の直前に事実上緩和されたことについては…。

韓国大統領政府関係者『大統領は日本の自発的措置はそれなりの進展であり、(局長級)対話を通じたそれなりの誠意だと評価すると言及した』

ナレ:また両国は局長級対話の継続で一致したということです。戦後最悪といわれる日韓関係。ようやく実現した首脳会談について、政府高官は…。

日本政府高官『新しい話は特になく予想した通りだった。これで何かが進むということはないだろう』

【記者レポート】(要約)
(会談場所である中国・成都より)
高橋政光ソウル支局長:安倍総理と文大統領の会談は非常に近い距離で行われました。会談前に安倍総理が1分ほど文大統領に待たされる形になったことについては、韓国政府の関係者はスケジュールがタイトだったため、と説明していますが、GSOMIA破棄を延長したときの内容について国内から酷評された文大統領が見栄えを気にした可能性もあります。会談の結果については、韓国側は対話の重要性をお互いに認識した点を評価しています。一方で、文大統領が貿易管理措置の撤回を安倍総理に訴えたわけですが、進展はなくここはネガティブに受け止めているようです。

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【コメンテーターによる解説】
富川アナ:ここからは朝鮮半島政治にお詳しい慶應義塾大学の西野純也教授にお話を伺ってまいります。西野さんよろしくお願いします。まず、今日の日韓首脳会談それぞれ日本、韓国には課題がありました。見てみましょうか。韓国としてはやはり輸出管理の問題です。厳格化する前の水準になんとか日本に早期に回復してほしいと直談判したという中継がありました。そして、日本側としては元徴用工問題。そもそも解決した問題だったからそれを持ち出してきた韓国側の責任で解決策を示すべきだという主張だと。西野さん、両方の主張を見るとこれまでとなんら変わらないような印象も受けてしまうんですが。

西野教授:韓国の大統領府の発表にありましたように今日の会談はお互いの立場の違いの確認をするということが1つだったわけですけれどももう1つ、重要な点は問題を対話で解決していこうと。つまりこれ以上けんかはやめようということを両首脳同士が確認したということに意味があるんだというふうに思います。10月の末からイ・ナギョン総理と安倍総理との会談それから11月上旬のタイでの文在寅大統領と安倍首相との対話。GSOMIAの終了の延期という形で一応回復・改善基調にある関係。これを引き続き更なる改善に向けてお互いに努力していきましょうということを確認できたということに意味を見いだすべき会談だったと思います。

富川アナ:マイナス的要素が見られなくなったというところでプラスだという感じですね。

西野教授:まだマイナスの水面の下にいますがこれをできるだけ水面の上に上げていけるように努力しましょうということをお互いに確認したというのが今日の会談の意味だったと思います。

富川アナ:輸出管理でなかなか収穫がなかったということであっても評価はしているということなんですね。

西野教授:そうですね。実際、政策対話貿易管理に対する対話がなされていますし品目の1品については包括許可を出すという方向で動いてはいますので、韓国の文在寅大統領からすればできるだけ早く7月以前の水準に戻したいと思ってはいますけど、ただ、ゆっくりゆっくりこの基調を続けたいというところではお互いの認識が一致したということだと思います。

富川アナ:内藤さん、日本政府はどう受け止めているんでしょう。

内藤正彦氏:現場で取材している政治部の記者によるとまさに、やっぱり想定内。お互いの原則的な立場を言い合っただけでいいじゃないかと。今後の外交チャンネルの交渉に道筋がついたのでとにかく、北朝鮮問題で誤ったメッセージを出さずに済んだと、それだけでよしとしようじゃないかと。それで、とにかく日韓関係というのはダウンスパイラル。戦後最悪といわれる状態になった。それが今回でいったん止まっただろうと。この先、これが上がっていくのかそれが、あるいはまた底割れしていくのかこれは文在寅政権にかかっているという。ボールは向こう側に引き続きあるというのは変わっていませんね。

富川アナ:今、北朝鮮という話がありましたがこちらの図を見ていただきまして北朝鮮問題に関して、今回日中韓の足並みがそろえられたという評価ですが。日本としてみれば日米韓のトライアングルが重要ということは変わらないですよね、先生。

西野教授:もちろん日米韓で足並みをそろえたいということなんだろうと思いますが文在寅大統領としては年内がリミットというふうに金正恩委員長が言っていた米朝プロセスが今後も続いていく必要がある。そのためには、日本との関係をなんとか管理局面に持っていってこの3者で一致して北朝鮮問題にあたりたいというのが今回の一番の目的だったのではないかと思います。もちろん、日韓の2国間関係に懸案はあるんですけれども韓国政府文大統領の頭の中は今、北朝鮮問題でかなりいっぱいになっているんじゃないかと思います。

富川アナ:一番が、やはり北朝鮮問題と。

西野教授:そうですね。やはり、プロセスはこのまま停滞してはいけないということで北朝鮮問題に全力を集中したいという状況の中で日韓の関係をこれ以上悪いまま持っていくというのは国内的にも外交面でも大統領にとって負担が大きいのでまずはこの関係を管理をして金正恩委員長との関係に全力を注ぎたいという。そういう意味で今回の会談はそれなりに大統領的には意味があったのかなと思います。

富川アナ:日本としては日米韓が重要といっていますが韓国としてはここは、がっちりというよりある程度離れないようにしておいて中国がポイントになってくるということでしょうか。

西野教授:文大統領からすればこれまではトランプ大統領にかなり頼っていたわけですがどうやら来年、大統領選挙もありトランプ大統領どういうふうな形で北朝鮮に臨むのか分からない中でもう少し南北関係を進めたいと。自分がアクセルを踏み込む必要があると考えている状況の中でできるだけ立場がどちらかといえば制裁解除などで立場が近い習近平国家主席の助けも得たいでしょうしそれから、何よりも金正恩委員長が韓国の頭越しにやはり日朝の対話を試みるというような可能性も完全には排除されないので
もし、そうなったとしても日米韓の関係がしっかりしていればある程度、そうした状況も管理できるという狙いが文在寅大統領の頭の中にはあったのかなと思います。

富川アナ:非常に追い込まれているといいますか難しい立場であることは変わらないですね文在寅大統領は。

西野教授:来年になりますと政権の任期が残り2年になりますので外交問題で最も優先順位の高いですね北朝鮮の非核化の問題をなんとか前に進めたいというのが今の大統領の心境ではないかと思います。

富川アナ:来年も2つのトライアングルでいろんな駆け引きがありそうですね。

西野教授:米中の関係というのも韓国にとっては重要なのでそういう意味でもどちらにつくかという立場表明を迫られないためにもこの5者の関係性を、なんとかバランスをとりたいというのが文在寅政権の悩みでもあり来年の勝負どころではないかと思います。

富川アナ:西野先生でした。ありがとうございました。

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【検証部分】
放送から日韓が互いの主張を伝え、これ以上関係を悪化させない、ということでは一致したということが分かります。

しかし、韓国も日本も互いに主張を譲らない構えのようです。韓国と日本の主張を簡単にまとめてみます。

日本:関係悪化の根本原因となった徴用工問題における日韓請求権協定の遵守
韓国:輸出管理強化を緩和し、管理強化前の状態に戻すこと

徴用工問題に関しては安倍総理もVTRで述べているように日韓関係悪化の大きな原因です。
安倍総理は国同士の約束を守ってもらいたいと言った発言もしています。
しかし、今回の放送ではこの根本原因である、徴用工問題について十分にとりあげておらず、以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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では日韓関係悪化の原因である、徴用工問題や日韓請求権協定とはどういったものなのか、簡単に見ていきます。

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日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの経済協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。

韓国大法院判決が,日本企業に対し,損害賠償の支払等を命じる判決を確定させました。これらの判決は,日韓請求権協定第2条に明らかに反し,日本企業に対し一層不当な不利益を負わせるものであるばかりか,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。

《引用:大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)》
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html

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この協定の解釈に違いがあって、日韓関係は悪化したのです。

同協定では解釈の違いがあったときは、仲裁委員を指名する義務がある、と定められています。
韓国側はこれにも応じないため、日韓関係は悪化したのです。

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韓国大法院判決の執行のための原告による日本企業の財産差押手続が進む中,何らの行動もとらなかったことから,5月20日に韓国政府に対し,日韓請求権協定第3条2に基づく仲裁付託を通告し,仲裁の手続を進めてきました。しかしながら,韓国政府が仲裁委員を任命する義務に加えて,締約国に代わって仲裁委員を指名する第三国を選定する義務についても,同協定に規定された期間内に履行せず,日韓請求権協定第3条の手続に従いませんでした。

《引用:大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)》
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html

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日本側が立場譲らないのははっきりと明文化がされている国同士の約束事を守らないからです。
ここで日本が譲歩してしまうと、日韓請求権協定だけにとどまらず、他の条約が遵守されなくとも良い、ということになってしまいます。

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。

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