2020年2月23日 サンデーモーニング(後編)

2020年2月23日 サンデーモーニング(後編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年2月23日放送回の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 黒川検事長の定年延長について報道された部分
② 森友問題における籠池夫妻の地裁判決について報道された部分
③ 「風を読む」にて感染症と差別について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて感染症と差別について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 感染症の拡大が人々の心の動きにも微妙な影を落とし始めています。新型コロナウイルスの感染拡大で混乱が続いていた今月4日、日本から送られたマスクや防護服などの支援物資に中国の外務省が謝意を示したのです。日本の自治体や企業がその支援物資を中国に送る際使った段ボール箱。その中には、漢詩の一節が書かれた箱も。山川異域風月同天、住む場所は違っても風月の営みは同じ空の下という意味です。この詩は中国で大きな話題になりました。思わぬきっかけで始まった日本と中国との交流。
 しかし、その一方で、20日、ウクライナでは新型肺炎を巡って激しい衝突が発生。中国・武漢市から退避してきたウクライナ人を含め、およそ70人を乗せたバスの行く手を阻もうと、地元住民が火を放つなどしたのです。世界各地に拡大する新型肺炎を巡る混乱。ヨーロッパでは、オランダのラジオ局が感染拡大は中国人のせいだとする歌を放送したのです。また、パリにある中国人が経営するレストランに「コロナウイルス出て行け」と落書きが。差別的な動きが外交問題に発展したケースも。10日、中国外務省はアメリカの「ウォールストリート・ジャーナル」が掲載した中国はアジアの病人という記事に対して激しく抗議しました。差別的な動きは日本国内でも。おととい、京都市東山区で感染した中国人は来るなと書いたビラを電柱に貼った男が逮捕されました。来てほしくないという思いを抑えられなかったと供述しています。同様にネット上には、中国人は日本に来るななどという書き込みが多数投稿されています。
 各国の事態を受けて、WHOのテドロス事務局長は「敵はウイルスではなく、差別。」と演説。新型コロナウイルスに切り裂かれていく世界。ここ数年、人種、民族、経済格差などを背景に繰り返される世界的な差別・分断の動き。そして今、感染症により新たな差別や分断が生まれようとしています。感染症の歴史を見れば、14世紀ヨーロッパでペストが流行した際にはスペインやフランスなどでユダヤ人が井戸に毒を入れたからだとの人種差別によるデマが飛び交い、ついにはユダヤ人虐殺という惨劇を招きました。日本でも明治時代、ハンセン病患者の隔離政策が実施されて以来、患者だけでなく、その家族までが差別と偏見の対象とされ、厳しい視線にさらされました。さらに、エイズに対する偏見からHIVに感染していることを理由に仕事を解雇されたり、医療機関での診療を拒否されるなど、深刻な人権侵害も起きています。感染症の流行が、偏見や差別を生み出してきた歴史。今また、同じことが繰り返されてしまうのでしょうか。

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):感染症に対しては、静かな知恵というのかな立ち向かっていく知恵が問われるということを言いたいんですけど、感染症って4つのレベルに分かれてるんですよ。BSL1234、バイオセーフティーレベルというのがあって、今、われわれが議論しているコロナなんていうのはこの2段階から3段階ぐらいの話なんです。実は、例えばエボラ出血熱みたいなアフリカ熱帯感染症なんて致死率5割なんていう段階のものがあるわけです。今、われわれがグローバル化という名の下に例えば僕自身も海外に出る機会が多いわけですけど、日本から出ていく人が2000万人、外から来る人が3000万人、5000万人が移動するわけですね。これが外から来る人を6000万人にしようと、観光立国論なんていうのが成り立っているわけだけれども、ますますそれに対応するシステムが要るわけですよ。例えばレベル4と言われる、BSL4に対応できる施設は村山の国立感染症しかないんですよ。世界には54カ所これに対応できる機関というのがあるんですね。今、ようやく長崎に2つ目の長崎大学に建設中。これを今後、日本はどうしていくんだという、その制度設計の問題ね。それからその財源、例えばこの間から僕言ってる国際連帯税という名のもとにフランスや韓国も導入してるんですけど航空券税という形で、飛行機で移動している人に対して一定の責任を持ってもらって財源を確保しておいて例えばワクチンの開発だとか、あるいはアフリカの衛生とか、中国に対しての公衆衛生に対する財源にしていくとか、WTOが。そういう知恵がこれに冷静に対応として向き合わなきゃいけないというか、そういう段階に議論のレベルを上げていかないといけない。政策科学の議論なんだと言いたいですね。

田中優子氏(全文):大学や研究機関では流動化が大変重要なことになってるんですね。しかも、そのグローバル化というのはダイバーシティ、つまり多様性に支えられるグローバル化でないと意味がないんです。多様性というのはさまざまな民族とかそれから国家とか、言語とかを背景にしてますからそれをお互いに理解して受け入れるというのが前提になるんですグローバル化というのは。で私が懸念するのは、このウイルスの問題というのが何々人が悪いんだみたいなことになっているわけですよ。ところが現実には「ダイヤモンド・プリンセス」見てても分かるようにそのイギリス船であって、アメリカの出資でいろんな国の人がいると。これってすごく象徴的で、こう「ダイヤモンド・プリンセス」は日本でもあるし世界でもあるんですね。だとすると、そこで何が起こっていて、どうすればよかったのかという検証することはすごく大事で。でしかもそれは誰のせいということではなくて、どこが発症してもおかしくはないわけですよね。でそういうことを私たち、今、考えるチャンスなんだと思うんです。差別って、突然起こるんじゃなくて日ごろの差別なんですね。でこれ先ほどユダヤ人が井戸に毒をという、これ、関東大震災のときに日本でも起こったわけですよ。そういうようなことは日ごろの差別から、あることが起こった場合、突然噴出する。だから私たちはやっぱり毎日のこととしての差別というものを越えていかなければならないと思いますね。

薮中三十二氏(要約):今度のウイルスというのは、未知のものというか、分からないということで、だからみんな不安に思ってるんですよね。CDCというアメリカのセンターをみますと、実はこの1年間、この冬で1万6000人から4万1000人ぐらいインフルエンザで死んでるという数字がありますよね。でも、あれは分かっているインフルエンザだからとそんなに心配しない。難しいところですね。今ちょうどアメリカの中では、アメリカと中国との関係が悪くなっていると。だから今回の中国の出しているデータも、あれは絶対に信用できないんだとかいろいろありますよね。今、本当に大事なのは、正しく恐れるということなんだと思いますがどうやって、何が起きているのかというのが分かる、それをきちんと説明できる人ってWHO、実はちょっと中国寄りすぎじゃないかと、あの事務局長になって。だから日本自身としてどういう格好で正しい情報をタイムリーに出すのか。本当は日本は安全だよねと、いろいろ手を洗ったり、今、危ない、危ないばかりが出てるというのはちょっと心配になりますね。

谷口真由美氏(全文):皆さんおっしゃっていることなんですけど、不安なときっていうのは、もともとある差別意識っていうのがこういったもので表に出てくると思うんです。だからもともと自分の中に差別意識があるということが表面化する、たたいていい存在を作り出しているということだと思うんです。それって、誰かを悪者にすれば、その悪者さえ排除すれば何でも収まっていくというふうな認識だと思うんですけれども、ウイルスなんて本当に、優子先生がおっしゃったみたいにどこが発生源かというのが大事なのであって、どうやって感染ルートがあって、どうやったら防げるのか、そういうのって専門家に任せなければいけないところがあってわれわれ一般の人間っていうのはそれに冷静に対処するっていうことが大事だと思う。それに寺島さんがおっしゃったようにやっぱ知恵ですよね過去のものの集積というかそれを教訓としてですね知恵にしていくということがすごく大事な段階で、だからペストから何を学ぶかHIVから何を学ぶかっていうことを我々側が今やらなきゃいけないんだなあということを本当に感じますね。

松原耕二氏(全文):私、今回ですね、何度も3・11のときの原発事故の頃を思い出すんですね。何度も防護服の映像が目に飛び込んでくる。そしてやっぱりあのころも目に見えないものへの不安や恐怖、ものすごくみんな感じていた。今回のクルーズ船の内部の告発の動画がすごい再生回数で反応がすごかったのも、やっぱり不安だから何か隠されてるんじゃないかという疑心暗鬼が広がっていたからだと思うんですね。そして、そういう不安から、あの頃も福島からこう避難した子どもたちがいじめられたり、差別を受けたりしたということがあったの思い出すんですね。私たち人間はとても弱いですから、不安を消すことはできないけれどやわらげることはできると思うんですね。そのためには大事なのは本当に正確な情報であることと、いじめのような、あるいは差別のようないきすぎたことに対するそれに対抗する言論の分厚さみたいなもの、それをメディアの人間としてものすごく突きつけられている気が今回しますね。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):私が懸念するのは、このウイルスの問題というのが何々人が悪いんだみたいなことになっているわけですよ。ところが現実には「ダイヤモンド・プリンセス」見てても分かるようにそのイギリス船であって、アメリカの出資でいろんな国の人がいると。これってすごく象徴的で、こう「ダイヤモンド・プリンセス」は日本でもあるし世界でもあるんですね。だとすると、そこで何が起こっていて、どうすればよかったのかという検証することはすごく大事で。でしかもそれは誰のせいということではなくて、どこが発症してもおかしくはないわけですよね。でそういうことを私たち、今、考えるチャンスなんだと思うんです。差別って、突然起こるんじゃなくて日ごろの差別なんですね。でこれ先ほどユダヤ人が井戸に毒をという、これ、関東大震災のときに日本でも起こったわけですよ。そういうようなことは日ごろの差別から、あることが起こった場合、突然噴出する。だから私たちはやっぱり毎日のこととしての差別というものを越えていかなければならないと思いますね。

要旨をまとめると、
・新型コロナウイルスの問題を特定の国の人間に責任転嫁する動きがある。だが、日本で問題になったダイヤモンド・プリンセス号がイギリス船でアメリカの出資だったこと、ダイヤモンド・プリンセス号が日本であり世界だったことを考えれば、どこが発症してもおかしくないし誰のせいでもないと言える。
・こうした状況で起きる差別は突然ではなく日ごろの差別の表面化である。毎日のこととして差別と向き合う必要がある。

というものです。

しかしながら、
・新型コロナウイルスの初期の感染拡大を引き起こしたのは中国共産党であり、誰のせいでもないとする田中氏の主張は事実に即したものとは言えない。
・ダイヤモンド・プリンセス号の船籍、出資元、寄港先がそれぞれ別の国だったことは、新型コロナウイルスの感染拡大の責任を有耶無耶にするものではない。
・ダイヤモンド・プリンセス号が「日本であり世界だった」としてあたかも日本にも責任の一端があるかのように扱う主張は視聴者に誤った認識を与えるもので事実に即していない。
・少なくとも日本における新型コロナウイルスによって起きた差別が日ごろの差別の表面化だとする主張には何ら根拠がなく、田中氏の憶測に過ぎない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):不安なときっていうのは、もともとある差別意識っていうのがこういったもので表に出てくると思うんです。だからもともと自分の中に差別意識があるということが表面化する、たたいていい存在を作り出しているということだと思うんです。それって、誰かを悪者にすれば、その悪者さえ排除すれば何でも収まっていくというふうな認識だと思うんですけれども、ウイルスなんて本当に、優子先生がおっしゃったみたいにどこが発生源かというのが大事なのであって、どうやって感染ルートがあって、どうやったら防げるのか、そういうのって専門家に任せなければいけないところがあってわれわれ一般の人間っていうのはそれに冷静に対処するっていうことが大事だと思う。

要旨をまとめると、
・不安な時はもともとある差別意識が表に出てくる。誰かを悪者にして排除すれば物事が収まると考えるからだ。

というものです。

しかしながら、
・こうした状況での差別は新型コロナウイルスへの感染への誤った認識に基づく恐怖から起きるものであり、日本にもともとある差別意識だとする主張は事実に即したものだとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):私、今回ですね、何度も3・11のときの原発事故の頃を思い出すんですね。何度も防護服の映像が目に飛び込んでくる。そしてやっぱりあのころも目に見えないものへの不安や恐怖、ものすごくみんな感じていた。今回のクルーズ船の内部の告発の動画がすごい再生回数で反応がすごかったのも、やっぱり不安だから何か隠されてるんじゃないかという疑心暗鬼が広がっていたからだと思うんですね。そして、そういう不安から、あの頃も福島からこう避難した子どもたちがいじめられたり、差別を受けたりしたということがあったの思い出すんですね。私たち人間はとても弱いですから、不安を消すことはできないけれどやわらげることはできると思うんですね。そのためには大事なのは本当に正確な情報であることと、いじめのような、あるいは差別のようないきすぎたことに対するそれに対抗する言論の分厚さみたいなもの、それをメディアの人間としてものすごく突きつけられている気が今回しますね。

要旨をまとめると、
・3.11の原発事故を思い出す。目に見えないものへの不安や恐怖をものすごく感じていた。今回のクルーズ船の告発動画の反応がすごかったのも何か隠されているんじゃないかという疑心暗鬼からだ。こういう不安から福島から非難した子どもがいじめられたりした。
・大事なのは正確な情報と差別など行きすぎたことに対する言論の分厚さだ。

というものです。

しかしながら、
・3.11の原発事故の際に散々不安や恐怖をあおったのは他ならぬマスメディアであるにもかかわらず、それに触れずにあたかもマスメディアがこうした偏見へのカウンターパートであるかのように扱う主張は明らかに事実に即していない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「新型コロナウイルスに基づく差別は元々ある差別意識の表れだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「少なくとも日本においては新型コロナウイルスへの過剰な恐怖が原因だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 黒川検事長の定年延長について報道された部分
については前編の報告を、

② 森友問題における籠池夫妻の地裁判決について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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