2020年2月23日 サンデーモーニング(前編)

2020年2月23日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年2月23日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 黒川検事長の定年延長について報道された部分
② 森友問題における籠池夫妻の地裁判決について報道された部分
③ 「風を読む」にて感染症と差別について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 黒川検事長の定年延長について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
そうした中、水曜日、行われた検察幹部が集まる会合。安倍政権が定年延長を閣議決定した東京高検、黒川検事長の姿も。政権に近いとされ、定年延長で黒川氏を検事総長にするつもりではと野党が取り沙汰する人物です。この席である検察幹部は、このままでは検察への信頼が疑われると発言。検察内部からも異例の苦言が呈されたのです。これまでは検察官は国家公務員法の定年延長制の適用外とされてきましたが。安倍総理は、13日、法律の解釈を変えたことを明言。この前の日、解釈は変わっていないと答弁していた官僚は苦しい立場に追い込まれることになったのです。そして水曜日、一転して答弁を撤回すると述べた人事院の松尾給与局長。さらに撤回の理由を問われると、言葉を選び練り上げるはずの法解釈を巡る国会答弁で言い間違えたという松尾局長。法律の解釈を内閣が恣意的に変えていいのかと野党が追及。すると、森法務大臣は「理論的には、法律の解釈は適正なプロセスを取り、所管省庁である法務省がそれぞれの法律を解釈する」と答弁。野党は政府側の答弁には無理があると今後も追及を続ける構えです。

【アナウンサーによるパネル説明】
・政府は国家公務員法の規定を適用したとしていたが、1981年に人事院が、検察官は適用されないと答弁をしていた。
・人事院は、同じ解釈を引き継いでいた
・しかし、安倍総理が解釈を変更したと答弁すると、言い間違えていたという理由で人事院は答弁を撤回した
・野党からは法治国家でないという声が上がっている

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【コメンテーターの発言】
関口宏氏(全文):えーこういうふうに強引にこういうことをするということは何かの理由があって留め置きたいと、誰かが思ってたということになっちゃいますよね。

松原耕二氏(全文):そうとしか思えないですよね。まあこの答弁もひどいもんですよね。まあ定年延長ありきで閣議決定して、そのあとにとにかく法解釈をどうつじつまを合わせるかっていうふうにしかまあ見えないですよね。これ、実はアメリカでもトランプ大統領が自分に近しい人が実刑判決を受けた。それで恩赦を与えようなんてことを言い始めてるわけですね。これしかもトランプ大統領たびたび司法介入みたいなことを行ってきた。もちろん日米、ケースはだいぶ違いますけども、感じるのはですね、民主主義というのはやっぱり制度それ自体で担保できるもんじゃなくて、運用によってはいかようにも壊されてしまいかねないということだと思うんですね。だからこそ不断のチェックが必要だということ改めて感じますね。ですから、今回のまあ定年延長もまだまだこれから議論してちゃんと監視することが必要だと思いますね。
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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、松原の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):まあこの答弁もひどいもんですよね。まあ定年延長ありきで閣議決定して、そのあとにとにかく法解釈をどうつじつまを合わせるかっていうふうにしかまあ見えないですよね。これ、実はアメリカでもトランプ大統領が自分に近しい人が実刑判決を受けた。それで恩赦を与えようなんてことを言い始めてるわけですね。これしかもトランプ大統領たびたび司法介入みたいなことを行ってきた。もちろん日米、ケースはだいぶ違いますけども、感じるのはですね、民主主義というのはやっぱり制度それ自体で担保できるもんじゃなくて、運用によってはいかようにも壊されてしまいかねないということだと思うんですね。だからこそ不断のチェックが必要だということ改めて感じますね。ですから、今回のまあ定年延長もまだまだこれから議論してちゃんと監視することが必要だと思いますね。

要旨をまとめると、
・定年延長ありきで閣議決定して、その後法解釈を辻褄合わせしているようにしか見えない。
・アメリカでもトランプ米大統領が実刑判決を受けた自分に近しい人に恩赦を出そうとするなど司法介入をしている。民主主義は制度それ自体だけでなく運用とその監視が肝心だ

というものです。

しかしながら、
・黒川検事長の定年延長は検察庁の業務上の必要性から法務省によって閣議の議題に上り決定されたものであり、安倍政権側の意向であるかのように扱う主張は明らかに事実に即していない。
・検事総長の定年については検察庁法で規定があるが、定年延長に関する特段の規定はない。一方、一般法の国家公務員法では「退職で公務運営に著しい支障が生ずる場合、1年未満の範囲で勤務を延長することができる」ため、定年延長が違法だという主張は事実に即していない。また、法解釈を政府によって変更することに違法性はない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「検事長の定年延長は安倍政権の意向であり検察権力の私物化に他ならない」「我々は安倍政権を監視しなければならない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

関口氏(全文):えーこういうふうに強引にこういうことをするということは何かの理由があって留め置きたいと、誰かが思ってたということになっちゃいますよね。

など、こうした立場を支持する発言もありました。

ですがこの問題に関しては「検事長の定年延長の要請は法務省から出たものであり安倍政権の意向とは言えない」「現時点で倫理的な問題や違法性を問える根拠はない」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 森友問題における籠池夫妻の地裁判決について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にて感染症と差別について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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