TBS「サンデーモーニング」、2020年3月8日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 新型コロナ問題にてWHOが最も懸念する国について報道された部分
② 新型コロナ問題における安倍首相の政治判断について報道された部分
③ 河合夫妻逮捕について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 新型コロナ問題における安倍首相の政治判断について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、中国韓国に対する新たな入国規制を実施すると表明した安倍総理。なぜこのタイミングで規制の強化を打ち出したのか。専門家会議のメンバーは、中国に関しては遅かった感もあるが、一定の効果は期待できるとコメント。今回の措置は、政治的な判断であり、専門家会議にも相談は無かった。会見の2時間前に、習主席の訪日の延期が決定。その直後の規制強化だったため、野党は訪日延期の決定を待ったのではないかと追及。一方、今回の入国規制に対して、韓国は、不当な措置と反発。対抗措置を打ち出しました。すでに日本は、27の国と地域から入国規制を受け、更に63の国と地域からは入国後の行動制限措置が取られています。アメリカのトランプ大統領も渡航や入国の制限について、日本も検討対象にしていることを明らかにしました。その日本では、感染拡大を防ぐため、新型インフル等特措法を改正し、新型コロナウイルスにも適用できるように政府が野党に協力を求めました。特措法に基づき、総理が緊急事態宣言を出せば、外出禁止やイベントの中止を求めることができます。野党側は、改正をしなくても現在のままで適用が可能であると主張。これに対し総理は、新感染症として指定できるのは未知の感染症であり、新型コロナウイルスはそれに当たらないと主張。国民の権利が制限されかねないとして、慎重な意見も出ていますが、改正案は13日にも成立する見込みです。
【アナウンサーの説明】
・緊急事態宣言が出されると、スポーツイベント等の開催制限の指示、臨時医療施設のために土地や建物の強制使用が可能になる。行政に極めて強い権力が与えられる。
・公明党の山口代表は、人権を不必要に制約しないような配慮しながらの立法を求める。
・特措法の改正案は13日に成立予定。政府の専門家会議が定める瀬戸際の終わりである9日には間に合わない。
【コメンテーターの発言】
松原耕二氏(全文):そうですね、人権とか私権をかなり制限することになりますんで。そこは本当に注意してやる必要があると思いますよね。
安田菜津紀氏(全文):先程の入国制限なんかも専門家会議を経ていないっていうことがわかってると思うんですよね。じゃあどういう専門家のどういう分析で行ったものなのかということが曖昧ですし。その前に例えば休校の要請に関しても科学的な根拠は未だに示されてないですし、議事録すら残っていない意思決定のということだったと思うんですね。なので、ウイルスの感染拡大だけでなくて、緊急事態は安倍政権の中で起こっていると言わざるを得ないんですよね。でこうした事態で例えば政府方針を批判すべきでないっていう声も、そういう場合ではないっていう声もあるんですけれど、こうした混乱の中だからこそ日頃脆弱な立場にいる方々が追いやられがちだと思うんですよね。例えば、まあ仕事を休めない保護者の方をどうするのかとか、生活困窮者の方が更にこう追い詰められていないかだったり、その都度それは問いかけていかなければならないですしその批判を許さないっていう空気感自体が私達がこう警戒をしていかなければならないことなのかなあとは思います。
元村有希子氏(全文):あのー政治決断を矢継ぎ早に総理やってますけれども、私から見ればタイミングが一ヶ月遅かったなと思っています。1月30日にあの対策本部を立ち上げて、2月1日には指定感染症に伴ういろんな入国宣言などかけたわけですからその段階で例えば中国へのもう少し厳しい入国宣言や休校の対応ですねああいうことをやっておくべきだったと思うんですね。なんでためらったのかということは、これから解明されないといけないと思いますけども。PCR検査だって1月30日の時点できちんと広げていればクルーズ船が来ても早く検疫が終わらせられたし、その後の感染拡大も対応出来たと思います。あのー見えない戦いって言いますけども、戦いを例えば兵器、飛び道具であるワクチンや薬がない中では、情報とそれからロジスティクスですね、その兵隊さんが寝たり食べたりするそういうものがいちばん大切なんですけども、そこに該当する法律の整備や検査の体制というのが一ヶ月遅れてしまった。そこは、かなりの失敗と言っていいと思います。
松原耕二氏(全文):例えば台湾なんかはかなりスピーディーにやっていて封じ込められていて、しかも支持率も上がっているわけですね。大事なことは緊急事態宣言を出すことじゃなくて、やるべきことを早くやることに尽きると思うんですね。実はこれを巡って、自民党の中でだいぶ空気が変わってると感じてまして。一強の中でみんな黙っていたことがあったわけですが、実は今回は、あまりの遅さ後手後手に回っていること。あるいはまあ官邸の中で一部の人間が決めてるじゃないかっていうことでものすごく実は自民党内不満が溜まっていて、かなりもう怒りの声を出す人がいるんですね。ですから、今回先程安田さんも言ったように、専門家入れること、きちんと評価すること。しかも専門家も研究者だけじゃなくて、臨床医なんかも入れて、幅広く意見を聞いて、きちんと早く対応する。その体制を至急作って欲しいと思いますね。
寺島実郎氏(全文):あのーこういう恐怖心が理性を超えていくとですね、不安な社会心理っていうのがすごいことになって、それを背景にしてですね、まさに今我々が体験していることっていうのは、官邸主導のね国難政治ってやつにもう巻き込まれてってると思うんですね。要するにどういうことかっていうとね、今本当にやるべきことはですね、検査であり、医療でありですね。いわゆる研究なんですよ、立ち向かっていかないといけない。ところがね、要するに文科省の現場もびっくりするような形で、全国の小中高校止めた。その事によってですね、周りにものすごく大きなハレーションが起こって、経済的にもですね、要するに観光の時代じゃないぜってことで凍りついて来てる。マイナス成長になるんじゃないかっていう状況になってきてる。で、本当だったらそこに集中してやんなきゃいけないのですね。いつのまにかね、この例えば、国の予算の何千億ってのか休業補償なんてところに使われていく。本当だったらね、医療であり、検査のところに集中して今立ち向かっていかなければならないのにですね。なにかずれてきてるよねってのはね、我々がしっかり認識しなきゃいけないところだと思いますね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の5点です。
1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
5、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
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1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
安田氏(抜粋):先程の入国制限なんかも専門家会議を経ていないっていうことがわかってると思うんですよね。(中略)例えば休校の要請に関しても科学的な根拠は未だに示されてないですし、議事録すら残っていない意思決定のということだったと思うんですね。なので、ウイルスの感染拡大だけでなくて、緊急事態は安倍政権の中で起こっていると言わざるを得ないんですよね。
でこうした事態で例えば政府方針を批判すべきでないっていう声も、そういう場合ではないっていう声もあるんですけれど、こうした混乱の中だからこそ日頃脆弱な立場にいる方々が追いやられがちだと思うんですよね。
例えば、まあ仕事を休めない保護者の方をどうするのかとか、生活困窮者の方が更にこう追い詰められていないかだったり、
その都度それは問いかけていかなければならないですしその批判を許さないっていう空気感自体が私達がこう警戒をしていかなければならないことなのかなあとは思います。
要旨をまとめると、
・専門家会議を経ない入国制限や根拠、議事録のない休校など緊急事態は安倍政権の中で起きていると言わざるを得ない。
・政府方針を批判している事態ではないという声もあるが、仕事を休めない保護者や生活困窮者など日ごろ脆弱な立場にいる人が追いやられている。批判を許さないという空気感自体を警戒すべきだ。
というものです。
しかしながら、
・新型ウイルスのこの規模のパンデミックは前例のない事態であり、感染拡大を防ぐためには政治的判断が必要である。入国制限や休校要請は多くの医療関係者から効果的だと評価されており、また政府の対応が後手後手だと批判されてきた経緯を踏まえれば、こうした有効な対策を先手を打って実施すること「緊急事態」とする主張は事実に即しておらず、またこのような揶揄は明らかに政治的公平性を欠く。
・日ごと脆弱な立場にいる人が窮地に立たされているという主張は、政府批判を許さない空気の存在の有無とは何ら関係ない。
・政府方針への批判を許さないという空気が存在しているという主張は、政府の後手後手の対応が批判されてきた経緯を踏まえれば明らかに事実に反している。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
元村氏は今回の報道で、以下のように述べています。
元村氏(抜粋):あのー政治決断を矢継ぎ早に総理やってますけれども、私から見ればタイミングが一ヶ月遅かったなと思っています。1月30日にあの対策本部を立ち上げて、2月1日には指定感染症に伴ういろんな入国宣言などかけたわけですからその段階で例えば中国へのもう少し厳しい入国宣言や休校の対応ですねああいうことをやっておくべきだったと思うんですね。なんでためらったのかということは、これから解明されないといけないと思いますけども。PCR検査だって1月30日の時点できちんと広げていればクルーズ船が来ても早く検疫が終わらせられたし、その後の感染拡大も対応出来たと思います。(中略)法律の整備や検査の体制というのが一ヶ月遅れてしまった。そこは、かなりの失敗と言っていいと思います。
要旨をまとめると、
・政治判断を矢継ぎ早に打っているが、タイミングが1か月遅い。中国への厳しい入国宣言や休校の対応を2月にやっておくべきだった。
・PCR検査も1月30日に拡大しておけば早く検疫を終わらせることができたし、その後の感染拡大にも対応できた。法律の整備や検査体制が遅れたのは大きな失敗だ。
というものです。
しかしながら、
・政府による厳格な対応は国民の権利を制限することと表裏一体であり、また結果を見るまでは正しいかどうかわからないことであるため、感染がそこまで拡大していなかった1月段階にそこまでの措置を講じることができたとする主張は事実に即しておらず、また政治的に公平とも言えない。
・ダイヤモンドプリンセス号の検疫期間はPCR検査の規模とは関係のない事柄である。
・PCR検査は患者の確定診断に用いるものであり、PCR検査の体制が整っていれば感染拡大を防げたとする主張は明らかに事実に反している。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での元村氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):例えば台湾なんかはかなりスピーディーにやっていて封じ込められていて、しかも支持率も上がっているわけですね。大事なことは緊急事態宣言を出すことじゃなくて、やるべきことを早くやることに尽きると思うんですね。(中略)専門家入れること、きちんと評価すること。しかも専門家も研究者だけじゃなくて、臨床医なんかも入れて、幅広く意見を聞いて、きちんと早く対応する。その体制を至急作って欲しいと思いますね。
要旨をまとめると、
・スピーディーな対応を実施した台湾は封じ込めに成功し支持率も上がっている。
・大事なのは緊急事態宣言ではなくやるべきことを早くやることだ。
・研究者だけでなく臨床医を入れるなど専門家を入れ、きちんと評価することが必要だ。
というものです。
しかしながら、
・台湾の感染者・死亡者数の人口比率は日本と台湾とで同程度であり、松原氏の主張は事実に即していない。また、感染封じ込めの状況と政府の支持率には何の因果関係もない。
・やるべきことを早くやるための緊急事態宣言であり、松原氏の主張は明らかに事実に反している。
・専門家を入れずにきちんと評価していないとする松原氏の主張には何ら根拠がない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「緊急事態宣言は人権を侵害する恐れがあるので既存の法律で対応すべきだ」「政治判断ではなく専門家会議を経て物事を進めるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「既存の法律では対処できないからこそ緊急事態宣言が必要だ」「政治判断でスピーディーな対応が求められる局面に来ている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では(政治的に公平でなかったり、)事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 新型コロナ問題における安倍首相の政治判断について報道された部分における
検証5「寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 河合夫妻逮捕いて報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 新型コロナ問題にてWHOが最も懸念する国について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。