2020年11月22日 サンデーモーニング(前編)

2020年11月22日 サンデーモーニング(前編)

11月22日のサンデーモーニングのレポート前編、新型コロナウイルスの後遺症について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・事実をまげない報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
新型コロナには深刻な後遺症があることが分かってきた。国立国際医療研究センターの調査では新型コロナから回復したとされる人の中で11.1%が呼吸困難の症状に苦しみ、9.7%に嗅覚の障害が残る他、けん怠感や脱毛といった後遺症も報告された。国立国際医療研究センターの森岡医師は、後遺症は月単位に及ぶ場合もあり、(コロナが)軽微な症状だった人にも後遺症は残っていたため、無症状の場合でも起こりうるだろうと述べた。またフランスの研究者の論文では、記憶障害や集中力の低下など、後遺症が脳にまで及んでいるとされるケースも紹介された。

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【パネル解説】
水野真裕美アナウンサー:かなりの人に深刻な影響を及ぼしているとWHOも懸念を示す新型コロナの後遺症についてなんですが、新たに分かったこととして、今月5日に和歌山県が調査結果を発表しました。退院後何らかの症状があると回答した人の内、40パーセントが嗅覚障害、26%が呼吸困難、そして16%の方が脱毛に苦しんでいると言います。また世界では、こんな報告が上がっています。ドイツでは、心臓の筋肉に炎症が起こる心筋炎を起こす人が6割にのぼると発表、またフランスでは記憶障害を訴える人が3割以上いたと言います。

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【コメンテーターによる解説】(要約)
『インターパーク倉持呼吸器内科』院長 倉持仁 氏:コロナの第二波から三波にかけて感染者が急速に増え、日本でも後遺症に悩む方がたくさんいると最近分かってきたんですが、ある程度の日数が過ぎると病状に関わらず退院させてしまうという日本の診療体制が問題になっており、厚生労働省も第二波以降、データを集めている段階です。またコロナは指定感染症ですから、後遺症は公費で負担するなどの補償も必要だと思います。(要約)

毎日新聞論説委員 元村有希子 氏:急性期、つまり感染している間は公費で負担されるけれども、後遺症については3割負担などをしなければならず、また20代から40代の方に結構後遺症が目立つというデータもあります。そうしますと仕事の継続も難しくなるなという、また別の問題も出てきますね。(要約)

【検証部分】
今回は、新型コロナウイルスの後遺症に関する報道を取り上げました。今回問題となるのは、スタジオでのパネルを用いての解説が、必要な情報を伝えていないために事実と異なる恐れがある点です。該当箇所が2点ありますので、順に確認します。

まず、解説の前半でのパネルの書き方についてです。まずパネルに何が書かれているのかを確認します。パネルの一番上にはWHOのテドロス事務局長の顔から吹き出しで、「かなりの数の人に深刻な後遺症を及ぼしている」と記されています。そしてその下に、和歌山県の調査として、「味覚障害40%、呼吸困難26%、脱毛16%」というデータが掲載されています。
これを読んだときに、和歌山県の調査は感染者全体を母集団としていると多くの人は考えます。というのも、テドロス氏の発言は、明記はされていませんが、感染者のうち、「かなりの数の人に深刻な後遺症を及ぼしている」という内容なので、和歌山県の調査も同じように「感染者のうち」という前提であると思い込んでしまいます。
しかし実際には、和歌山県の調査は何かしらの後遺症を発症している人を母集団としています。水野氏は解説の中でそのように発言してはいますが、パネルの中にそのような記述はありません。視覚による情報は、聴覚のそれよりも強い印象を与え、さらに今回は、発言は一瞬で終わってしまいますがパネルは長時間映されていました。ですからこのようなパネルの書き方は事実と異なる認識を視聴者に与える可能性が高いです。

2点目は、パネル解説の後半部分です。パネルの一番下には、フランクフルト大学病院の調査として「心筋炎60%」、パリ大学の調査として「記憶障害34%」と記されています。そして、これに関する水野氏の解説は次のようになっています。
「また世界では、こんな報告が上がっています。ドイツでは、心臓の筋肉に炎症が起こる心筋炎を起こす人が6割にのぼると発表、またフランスでは記憶障害を訴える人が3割以上いたと言います。」
ここで問題となるのは、先ほどと同様に、この調査の母集団がどのような属性なのかという点です。母集団の属性としてここまでの解説から、2つの可能性が挙げられています。それはテドロス氏の発言にある「感染者のうち」、和歌山県の調査にある「何らかの後遺症がある人のうち」の2つです。視聴者はこのどちらかであると推測する可能性が高いと考えられます。
しかし、パリ大学の調査は、入院患者が母集団とされています。このような母集団の設定は今回の報道では一度も出てきていません。そしてパネルの中にもそのような記載はなく、水野氏の解説からも説明はありませんでした。これでは視聴者が正しい情報を得ることは不可能といえます。

今回取り上げた報道では、パネルの書き方が不十分なためにミスリードである点、そしてパネル、解説の中で必要な情報が伝えられていなかったという点で、報道が事実と異なる恐れがあるといえます。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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