2018年8月19日 サンデーモーニング

2018年8月19日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、2018年8月19日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・トランプ大統領と米メディアの対立について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

橋谷能理子アナウンサー(以下、橋谷):問題発言が止まらないトランプ大統領。全米のメディアと、全面対決の様相です。

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【VTR】
・8月12日、ホワイトハウスの前で白人至上主義ら数十人が「白人の権利」を訴えるデモ
・ホワイトハウスの広場の反対側には、人種差別に反対する人たち数千人が集結
・トランプ大統領就任から1年7か月が経ち、白人至上主義者が増加
・白人至上主義やネオナチなどの団体数はここ数年で約2割増加
・トランプ大統領就任から1年で、人種差別などに基づく犯罪は、約12.5%増加(前年比)
・トランプ氏の差別発言を元側近であるマニゴールト元大統領補佐官が告発し、波紋を広げている
・マニゴールト氏は出版した本で、トランプ氏が黒人の蔑称を使っていたと証言
・トランプ大統領は、マニゴールト氏を犬呼ばわりし、メディアをフェイクニュース扱い

トランプ大統領(字幕):「フェイクニュースは“国民の敵”だ」と言ったが そのとおりだ

・ニューヨークタイムズをはじめ400超の全米メディアが、報道の自由を訴える社説を掲載
・トランプ大統領はTwitterで、「フェイクニュースメディアは野党だ。だが、我々は勝っている」と反発
・トランプ大統領とメディアの対立は高まる一方
【VTR終】
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司会 関口 宏(以下、関口):なんだか気に食わない報道メディアってものが、あると思いだしたときに本当に危ないんだね。権力ってのはね。まあちょっとこれ、ご説明しておきましょう。

橋谷:メディアは「国民の敵」と発言しましたトランプ大統領に対して、今回呼びかけを行いましたボストン・グローブは、“我々は国民の敵ではない”。そして、2年前の大統領選でトランプ支持を打ち出したトピーカ・キャピタル・ジャーナルでさえ、“国民の敵とは、ナチスドイツがユダヤ人に対して使った言葉に似ている”というふうに批判しているわけなんですね。その一方、アメリカ国内で、メディアは国民の敵と思うかという調査をしたところ、思わないが48%。そう思うが29%。

関口:これだけあると思うこと自体もね、不思議だなと・・・

橋谷:そうですね、全体はこの数字なんですけれども、これを共和党支持者に限りますと、そう思うが48%に上るんですね。こうした動きに対して、国連で表現の自由を担当しています特別報告者デビッド・ケイ氏は、発言は戦略的であると。政権監視など、メディアの役割の弱体化を狙ったものだと指摘しています。

関口:ええ、さらに、古田さん。ボード使ってご説明お願いします。

古田 大輔:はい。えっと、今起こっているのは、メディアへの攻撃と、社会の分断と言えると思います。かつては、権力者というものは自分のメッセージを伝えるのにメディアを使うしかなかった。で、メディアを通じて自分のメッセ―ジを国民や市民へ伝えていたと。それが、インターネットが使えるようになって、TwitterやFacebookを使って、直接権力者が国民や市民へメッセージを届けることができる。そして、トランプ大統領は、批判的な報道に対して、彼らはフェイクニュース。偽のニュースだと。で、国民の敵であるというメッセージを発信し続けていると。で、そうすることによって何が起こっているか。先ほどのデータ以外にも、今、共和党支持者、つまりトランプ大統領支持者とほぼイコールですね。の、43%がメディアを規制していいというふうな意見にまで辿り着いています。で、これはどういうことかというと、権力者が、メディアを攻撃すると。それによって、その支持者もメディアを攻撃する。というふうな、両方から攻撃される存在になってしまっている。一方で、これに対して反対する人達は、そのメディア側を支持するので、メディアを支持する人支持しない人の間でも社会の分断が発生してしまうと。で、ここで考えてもらいたいのが、このトランプ発言なんですが、実はある研究によると、その70%に間違いがあると言われています。じゃあその間違いを指摘するべき存在はどこなのかというと、それこそメディアの役割であろうと。つまり、トランプ大統領は、メディアを国民の敵だというふうに表現していますけれども。こういう権力者の発言をチェックする、その国民の、国民や市民のためにチェックする存在こそがメディアであると。だからこそ、ボストン・グローブは、我々は国民の敵ではない。ジャーナリストはノットエネミーという言葉を使ったんだと思います。1つ残念なのは、同じような両方の攻撃というものは、全ての国、日本においても起こっています。インターネットの発明によって。ただ、じゃあ日本において同じように、メディア側が団結して報道の自由を訴えるようなことは、今まだ日本では起こっていません。

関口:はい、どうもありがとうございました。本当に他人事じゃあないですよ。日本でもそういう空気が出てきていることは間違いないですよね。皆さんどうお考えになりますでしょうか。

寺島 実郎:あの、アメリカっていう国はですね、理念の共和国って言葉があったんですけれども、民主主義。つまり、人権とですね、経済的には自由主義と競争主義っていうものを掲げてですね、戦後世界秩序の中心にあったわけですよね。ところがその、リーダーとしての忍耐がぶちぎれたっていうかですね、もう、そのアメリカファーストで自分の国の利害にしか目がいかないくらい、アメリカ自身が追い詰められ、ある種の軋みといら立ちの中で、トランプ現象が起こってるんだって言っていいと思いますね。ただ、長い目で見て、ヒトラーの存在もあったけども、歴史ってのは必ず条理の側に向かうってのがですね、長い間歴史分析してて僕の本音ですね。アメリカも、ギリギリのところで民主主義を持ち堪えてるってかまさに今報告にあったように、メディアのある種の存在感っていうかね。やはり自分たちの役割にですね、メディアもしっかりとした自己意識を持ってる人達もいるし、司法もそうだし、やはりアメリカのデモクラシーを支えてるギリギリの仕組みが機能してるっていうか。昔、アメリカっていうのは、もう気に入らない奴は縛り首だとか、テロで問題を解決するだとかっていうような時代さえあったこともあるんだけど、ギリギリやはり大統領制度に対するリスペクトってのかな、それを持ちこたえながらですね、アメリカ自身も軋んでるんだけれども、歯を食いしばってるところにあるんだっていうふうに僕は認識してます。

関口:大宅さん、いきましょう。

評論家 大宅 映子:私たちが思ってたアメリカっていうのは、全く違うものだったっていうのを毎日、日々ね、トランプさんの発言で感じさせられてるんですけど。あの言葉遣いですよね。私、しょっちゅう居酒屋のおっさんみたい、居酒屋の人が怒るなって思うぐらいにこの頃ひどくなってるっていうふうに思いますけど。あの、黒人の女性が本を出しましたけど、彼女は、トランプさんに見つけられて、トランプさんの番組からタレント、タレントっていうか、になって、それで、入った人なんですね。だから蜜月時代があったわけですよね。で、口止め料が出るとか出ないとかいう話があって、揉めて、それで暴露本って。まあ、そこも一筋縄ではいってないっていうところもあるんですけれど、私は一色じゃないっていうことが一番大事なことだと思っているので、300メディア、400メディアっていうのは、私が思ってるアメリカらしくないっていう気が、最初に思ったんですよ。皆一斉にやるっていうことは。でも、参加しなかったところがあるんですよね。で、私はそこに救いがあるっていうふうに思っておりますよね、逆にね。

関口:谷口さん。

大阪国際大学准教授 谷口真由美:えっと、アメリカの合衆国憲法って1788年に出来てるんですけど、その3年後にできた修正第一条っていうのが、言論の自由・出版の自由っていうのを認めているんですね。で、これを起草したのが第三代大統領だったトーマス・ジェファーソンという方なんですが、トーマス・ジェファーソンは、新聞のない政府か、政府のない新聞、どちらを選べと言われたら、ためらわず、政府のない新聞を選ぶということを発言しているんですね。どれだけ言論の自由が大事かということを、言ってるわけなんですけれども、トーマス・ジェファーソン自身もその後は、ちょっとあの、メディアの攻撃には回るんですが。それでも、なんかやっぱり、民主主義というのを、言ってみれば始めたみたいなアメリカがどうしてこれだけ、言論の自由が大事で、それを担保するメディアがどれだけ大事かってことが、分かっているはずなんですよね。だからこそ、まあ400ものメディアが、メディアスクラムっていうのをこういうところで組むんだなっていうのを、私はかえって、感心した次第です。

関口:まあ、それぐらい危機感があるんじゃないかと僕は思うんですがね。松原さんどう思います?

松原 耕二:そうですね。そこに、共和党支持者が、メディアは国民の敵と48%って数字がありますが、もう一つ数字を上げるとですね、メディアがちゃんと事実を伝えてると思うかと。共和党支持者は8割以上、85%くらいがですね、伝えてないと思ってるわけですね。これはトランプ支持者を取材しても、まあ要は自分たちは見捨てられてきたんだと、政治にと。で、メディアもエリートで政治と一緒だっただろうと。お前らも同じだと。俺たちを見捨ててきたんだと、もう強烈な憎しみがあるわけですね。それをトランプさんが増幅してるという面があると思います。私、最近ずっと、ものすごく恐ろしい思いで注視してたことがあるんですが、それはその、シンクレアというテレビの、まあもってるグループがあって、そこは実は200近くのローカルテレビ局を持ってるんですね。そこがこの3月に、フェイクニュースに騙されるなみたいなメッセージを一斉にやったっていうのがニュースであったのを記憶がある人がいるかもしれませんが、そこがさらに買収をかけていてですね、実はそこで、買収がもし成功していたら、実は失敗したんですけど。それが成功していたら、実は70%の全米のテレビ局がトランプ大統領のある種、大本営発表の局になるという、ある種の悪夢のようなことが起きかけたんですね。それをトランプさんは、規制緩和によってそれを後押ししたという。その動きが、まだ続くかもしれない。これから、そういうことが。だから、口だけじゃないって言うことはきちんと押さえた方がいいと思う。一つだけ、明るい話題を一つ言うとですね、実は、アメリカの大学のジャーナリズムを目指す学生が増えてるそうなんです。これはウォーターゲート事件の時代の頃も起きた現象らしいんですが、やっぱりこれはまずいと思ってる若者が増えてるというのも、一方でちょっと救いではあるかなと思います。

関口:ジャーナリズムにはジャーナリズムの問題があるのかもしれないけれど、でも、普通の方々がねえ、世の中のことを知るには、やっぱりメディアがあって知れるわけだから、この問題は実は根が深いし大きなことかなと僕は思っておりますが。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。

1、 トランプ大統領の発言の扱われ方が、視聴者に誤解を与える恐れがある
2、 この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、 トランプ大統領の発言の扱われ方が、視聴者に誤解を与える恐れがある
トランプ大統領は、今回の報道のVTRで以下のように発言しています。

トランプ大統領(字幕):「フェイクニュースは“国民の敵”だ」と言ったが そのとおりだ

しかし、その後の橋谷アナの解説やコメンテーターの発言では、

橋谷アナ(抜粋):メディアは「国民の敵」と発言しました

などと、あたかもトランプ大統領が「メディアは国民の敵だ」と発言したかのような引用のされ方がなされました。こうした報道は、視聴者に「トランプ大統領がメディア全体を非難している」という誤解を生みかねません。
以上のことから、こうした報道は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、 この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

今回の放送では、この問題について全体を通して「メディアこそが為政者の間違いをただすことができる」「米メディアは言論の自由を守ろうとしている」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「メディアもフェイクニュースを流してしまうことがある」「メディアは『第四の権力』である」「米メディアもかなり偏った報道をしている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした立場を全く取り上げず、あくまでメディアは正しいという立場にのみ立った形で放送がされていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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