2020年10月11日 サンデーモーニング(前編)

2020年10月11日 サンデーモーニング(前編)

10月11日のサンデーモーニングのレポート前編、トランプ氏の復帰について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR要約】
10日、ホワイトハウスの庭で行われたトランプ大統領の選挙集会。マスクを外し、招待された数百人の支持者を前に約15分にわたり演説を行いました。しかし、トランプ大統領は最後まで自身が陰性になったかどうかは明かしませんでした。
5日、アメリカメディアが周囲の反対を押し切って僅か3日間で退院したと伝えています。その後退院の様子を映画さながらの編集でSNSに投稿し、新型コロナに打ち勝ったようにアピールしました。
退院当日 主治医のコンリー医師は、記者から大統領の症状について問われると、答える立場にないと話しました。またトランプ氏が最後に陰性になったのは聞かれると、過去の話に戻りたくない、と詳しい容体について明かされませんでした。コンリー医師は海軍所属で大統領の意に反することは軍法違反に当たるため、退院を認めざるを得なかったという指摘もあります。
そしてトランプ氏は7日、「申し分ないほど体調が良くなった。感染は神の思し召しだったのだろう。」と話し、大統領執務室で執務を再開させました。コンリー医師がトランプ氏の治療が終了したと発表したのは8日のことでした。
そんなトランプ氏に対し、長年政治的中立の立場を保ってきたアメリカの権威ある医学誌は9日、「危険なほど無能、彼らに仕事を続けさせ、さらに何千人ものアメリカ人を死なせるべきではない」と暗にトランプ氏に投票しないよう呼びかける異例の論説を発表しました。

7日 ユタ州で行われた副大統領候補の討論会では、ペンス副大統領は民主党・ハリス候補から厳しい批判を受けました。
ハリス上院議員「国民は史上最悪の失敗を目の当たりにしています。一月にはパンデミックの危険性を知っていたのに、国民に明らかにせず隠しました。」
ペンス副大統領「大統領の治療は本当に素晴らしかった。今後も透明性を持って伝えていく。」
ハリス上院議員「バイデン氏は透明性を持って健康状態を公開しているが、トランプ大統領は違いますよね。」
CNNの調査によると、ペンス副大統領が優勢だったと答えたのは38%にとどまり、ハリス候補は59%に上りました。
先ほど演説を行ったトランプ氏は「アメリカはこのひどい中国ウィルスを打ち負かし、科学と医療を用いて世界中から根絶する。」と述べました。15日の大統領候補の討論会は両陣営がリモート開催などのやり方を巡って対立したことにより中止となり、先行きはますます不透明になっています。

スタジオでの橋谷アナの説明
CDC=疾病対策センターは新型コロナで入院などした患者には、発症後10日以上の隔離を要請しています。発症日については明らかにされていませんが、陽性判明から9日後に演説を行ったトランプ大統領はギリギリだった可能性があります。ホワイトハウスでは集団感染が深刻化しています。マクナニー報道官が5日に感染していたことが明らかになり、マクナニー氏の部下であるドラモンド報道官主任補佐などこれまでに34人の感染が報じられています。政権の中枢で集団コロナが起こるなど新型コロナへの対応の甘さを反映してか、最新の支持率はバイデン氏との差が9.6%に開いています。

【コメンテーター発言内容】
田中秀征氏(要約):ケネディ対ニクソンのテレビ対決は胸がわくわくしたが、今回ドタバタ劇にうんざりしている。私はハリスさんを中心にして大統領選見ていこうと決めている。大統領候補になればよかったというぐらい思っている。

元村氏(全文):びっくりするぐらいドタバタです。それからホワイトハウスだけでなくてクラスターはペンタゴン、いわゆる軍にも感染、広がって、核のボタンを持っている担当も自主隔離になるということでこれ、世界的な安定を乱す原因にもなっているわけですよね。そしてトランプさんのリーダーシップもさることながらこのホワイトハウスの中でマスクをしていない人が多かったというのは別に自分の意識ではなくて多分、ボスがやらないのに自分がマスクをするわけにはいかないというような状態だったと想像できるんですが、これ、一種のパワーハラスメントですよね。こうしたリーダーを抱いていていいのかということを国民が分かり始めたというのがこの世論調査の結果だと思います。これからバイデンさんもご高齢ですし、感染のリスクもありますけれど、11月3日の大統領選が本当にちゃんとできるのかそのあとのもめ事も含めて、本当に成り行きが心配になってしまいました。

仁藤氏(全文):陽性と診断されてから数日でこの振る舞いをするというのは、選挙に向けて強さをアピールしているつもりかもしれないんですがこれが本当の強さだとは思えないですよね。コロナに対して恐れるなというメッセージも強く発信していると思うんですけど、科学的な根拠に基づいて正しく恐れるということはすごく大切で、そのうえで対策というものが成り立つと思うのでやっぱり科学を軽視したりとか、市民の命や生活を置き去りにしているような人がリーダーになるというのは、大変だなというか問題をすごく感じますね。

竹下氏(要約):トランプさんが勝つ可能性もある。バイデンさんはトランプさんの否定ばかりしている。トランプさんが都合のいい情報ばかり言うため否定から入るというのは分かるが論戦を見ていても否定ばかりしている、民主党の操り人形に見えると言っている有権者がいました。
トランプさんがコロナからの復活をアピールして人間的な部分を出しているため、バイデンさんの影が薄まってしまっている。世論調査は開いているが4年前もトランプさんが勝つとは誰も思っていなかったので余談を許さないというのが今の状況だと思う。

青木氏(要約):行動も感染制御策も危機管理上も誤ったメッセージを世界中に発信しているのも最悪だと思う。これが大統領選にどう出るか。トランプ対バイデンではなく、トランプ対反トランプ。バイデンさんを支持というよりもトランプさんいいかげんにしてくれ、そういう人がそれぐらいの数字いて、バイデンさん自身の求心力はそんなにあるようには思えないです。ハリスさんくらいしか注目する人がいないというある種、不毛な大統領選。 この結果がどうなるのかは恐らく投票日まで分からない気がします。

【検証部分】
今回検証するのは、元村氏のコメント「そしてトランプさんのリーダーシップもさることながらこのホワイトハウスの中でマスクをしていない人が多かったというのは別に自分の意識ではなくて多分、ボスがやらないのに自分がマスクをするわけにはいかないというような状態だったと想像できるんですが、これ、一種のパワーハラスメントですよね。」、仁藤氏のコメント「陽性と診断されてから数日でこの振る舞いをするというのは、選挙に向けて強さをアピールしているつもりかもしれないんですがこれが本当の強さだとは思えないですよね。」に関してです。
元村氏は、ホワイトハウスの中でマスクをしていない人が多かったことについて、トランプ大統領がそのような雰囲気を作り出していたと批判しています。しかし、これは元村氏自身も言うように「想像」でしかありません。一方でトランプ大統領は10月15日の対話集会で、周りの人にマスクをつけろと言っていると発言しています。トランプ大統領がマスクをつけない雰囲気を生み出していたという元村氏の主張には何一つ根拠はなく、信憑性が疑われるものです。

加えて、元村氏はこのような状況をパワハラだと発言しています。そもそもこのような状況が事実であるかどうかが疑わしいものですが、仮に事実だったとして、これはパワハラに該当するのでしょうか。
そこで、パワハラとは何かを確認します。アメリカにはそもそもパワハラという概念がなく、したがって明確な定義も存在しません。そこで日本のパワハラの定義を参照します。日本ではそもそもパワハラは、明確な行為であることを前提とします。もちろん無視など、するべきことをしないこともこれには含まれています。しかし特定の行為なしに、場にある雰囲気が漂っていること、嫌な雰囲気であると自分が感じていることだけでは、パワハラには該当しません。ゆえに、仮にホワイトハウスのなかにマスクをつけてはいけないという雰囲気があり、トランプ大統領自身もあまりマスクを着けていなかったとしても、それだけでトランプ氏がパワハラをしているとはいえません。

次に、仁藤氏の発言を検証します。
仁藤氏は、トランプ大統領が感染から数日で復帰したことに関して、選挙に向けたパフォーマンスだとしています。しかし仁藤氏のこの発言も元村氏と同様に、根拠のない想像によるものとなっています。
トランプ氏は現職の大統領として、重要な公務を多く抱えています。そのようなトランプ大統領が入院することは、公務の中断などアメリカ中に大きな影響を与えます。同時にトランプ氏は、大統領選挙のための活動も多く予定していました。大統領候補者として、トランプ氏には全国の有権者に自身の政策や考えを説明する責任がありますが、コロナウイルスへの感染によりそれもストップしてしまいました。
このように、トランプ氏は現職の大統領として、大統領候補者としてやらねばならない仕事が多くあります。このような仕事を再開するために、治療を早くに切り上げて復帰してきたとは十分に考えられます。
しかし仁藤氏は、このような可能性に言及せずに、トランプ大統領の選挙に向けたアピールだとしています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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