2020年3月1日 サンデーモーニング(中編)

2020年3月1日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年3月1日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大と一斉休校要請について報道された部分
② 新型コロナウイルスのPCR検査について報道された部分
③ 「風を読む」にてパンデミックについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 新型コロナウイルスのPCR検査について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
多くの人が疑問を感じてきた検査の在り方、なぜ、このようなことが続いてきたのでしょうか。韓国では宗教団体で集団感染が発生するなど、29日の時点で国全体の感染者数が3000人を超え17人が死亡しました。これはソウル近郊にできたドライブスルー型の検査所です。感染が疑われる場合は窓越しに検体を採取し、数分で終わります。韓国政府は、492カ所の検査所を設置、感染が疑われる場合には検査を受けることができます。一日でおよそ1万3000人がPCR検査を受けたことが分かっています。一方、日本の検査態勢は。新型コロナウィルスのPCR検査について今月18日の国会で一日当たりおよそ3800件が可能だと説明していた日本政府。しかし実際には、一日平均で900件程度しか行われていなかったのです。PCR検査はのどの粘膜などから取ったウイルスの遺伝子の断片を機械にかけて温度調節をしながら増幅して検出するため機械と時間が必要な検査です。4日以上の発熱が続き、入院を要する肺炎の疑いがあって初めて実施が検討されることになります。また、25日に発表された政府の基本方針では比較的軽い症状と診断された人については自宅療養が原則です。こうした中、医療現場では不安の声を上げる患者の姿も。民間のクリニックでは検査ができず木曜日、東京都の医師会からは検査の見直しを訴える声が上がりました。SNSでは悲痛な声が相次ぎました。熊本県の20代の女性看護師のケースでは17日にせきの症状が出て、翌日に発熱。3カ所の医療機関を訪れたもののPCR検査は行われませんでした。結局、発症から4日後に入院。そこでようやく検査が行われ、陽性であることが判明。現在、重篤の状況です。混乱の要因は検査態勢が整わないことにありますが、昨日の会見で安倍総理は検査を拡充する方針を示しましたが、混乱に歯止めはかかるのでしょうか。

【アナウンサーの解説】
・韓国では一日あたりの検査数がおよそ1.3万人。日本では、総理は4000人を超える検査能力があるとするが、実検査数はおよそ900人。
・日本の感染者数が少ないのは、そもそも検査数が少ないからではないかという指摘もある。
・総理は、PCR検査を保険適用する。これによって直接民間へ依頼することを可能とすると表明。

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【コメンテーターの発言】
上昌広氏(全文):不思議ですよね。PCR検査というのは基本的に難しくないんです。もう30年以上前に開発されて長い間、臨床現場で使われている検査なんですね。キーポイントは国立感染症研究所なんです。ここが検査を請け負って、まあ地方衛生研究所などと一緒にやるんですが、あくまで研究所なんです。臨床業務をするところじゃないんですね。ですから、たくさんのサンプルをさばけません。たくさんのサンプルをさばくのは、民間の検査会社、工場みたいなので、一日に何万件もさばくんです。民間の検査会社はいっぱいありますから、日本に100社あって900ラボがあるんです。1つに仮に100件一日やっても9万件できるんです。ところがあくまで研究所を中心にやられているんです。なぜこうなるかというと長い歴史が関係するんですが、厚生労働省の国立の研究機関で厚労省がここに頼る、ある意味丸投げしてくるんですね。今回の専門家会議の委員も12名おられますが、感染症研究所の関係者が約3名入っているんです。OB1名、現役2名。ここの研究所の方々を中心に治療・診断を決めるんです。これってちょっと異様ではあるんです。患者さんの診療っていうのは臨床医と患者で決めて柔軟に対応しなきゃいけないのに、熱が出ても4日間、高齢者の場合2日間検査しちゃいけないって。これって研究者が診療を決めるというのはかなり異様なんですが、ここのところを全く議論されていないんですよ。80代のおじいさん、おばあさん、ご高齢の方が39度の熱が出て、2日遅れたらかなり重症ですよ。点滴したほうがいいですし、解熱剤出さなきゃいけません。こういうことを一切考慮されていないんですね。どうしてこうなるかというと、実は今回、感染症研究所はもともと長い歴史があって戦前の伝染病研究所という組織なんです。北里柴三郎先生がつくったんですね。ここの組織というのは日本陸軍と密接に関係していたんです。ワクチンというのは本来、軍隊に提供するものなんですよ。アメリカのCDCも実は、戦後、アメリカ陸軍の一部分が独立したんです。こうなると軍隊というのは基本的にはある意味、自前調達して、独自に決めて、情報開示しませんね敵に知れちゃいますから。こういう性質を私長く受け継いでいると思います。もちろん、土台がありますからそれは続いていきますよね。皆さん、研究者の先生が一律に診療を決めるというのはこれ医療じゃないですよね。もちろん、医師免許を持っている方はおられますが、診療されている方はほとんど入っていませんのでこれがこういういびつな、臨床医から見たら全くおかしいことが平然と起こる理由は研究所が行っている、キャパシティ的にも文化も違う、ここが中心になっているからだと私は考えています。

大宅映子氏(要約):今、その話、初めて伺ったので、どう考えたって韓国との差は私たちには分からない。世界で一番安全で清潔な国、一番医療技術が高い国と言われているのにどういうわけということですよ。もう1つ、うがった見方をすればたくさん検査したらたくさん出ますよね。それが嫌だから検査させないのかななんてふうにさえ思ってしまう。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

上氏(抜粋): PCR検査というのは基本的に難しくないんです。もう30年以上前に開発されて長い間、臨床現場で使われている検査なんですね。
キーポイントは国立感染症研究所なんです。ここが検査を請け負って、まあ地方衛生研究所などと一緒にやるんですが、あくまで研究所なんです。臨床業務をするところじゃないんですね。ですから、たくさんのサンプルをさばけません。
たくさんのサンプルをさばくのは、民間の検査会社、工場みたいなので、一日に何万件もさばくんです。民間の検査会社はいっぱいありますから、日本に100社あって900ラボがあるんです。1つに仮に100件一日やっても9万件できるんです。
ところがあくまで研究所を中心にやられているんです。なぜこうなるかというと長い歴史が関係するんですが、厚生労働省の国立の研究機関で厚労省がここに頼る、ある意味丸投げしてくるんですね。今回の専門家会議の委員も12名おられますが、感染症研究所の関係者が約3名入っているんです。OB1名、現役2名。ここの研究所の方々を中心に治療・診断を決めるんです。これってちょっと異様ではあるんです。患者さんの診療っていうのは臨床医と患者で決めて柔軟に対応しなきゃいけないのに、熱が出ても4日間、高齢者の場合2日間検査しちゃいけないって。これって研究者が診療を決めるというのはかなり異様なんですが、ここのところを全く議論されていないんですよ。

80代のおじいさん、おばあさん、ご高齢の方が39度の熱が出て、2日遅れたらかなり重症ですよ。点滴したほうがいいですし、解熱剤出さなきゃいけません。こういうことを一切考慮されていないんですね。
どうしてこうなるかというと、実は今回、感染症研究所はもともと長い歴史があって戦前の伝染病研究所という組織なんです。北里柴三郎先生がつくったんですね。ここの組織というのは日本陸軍と密接に関係していたんです。ワクチンというのは本来、軍隊に提供するものなんですよ。アメリカのCDCも実は、戦後、アメリカ陸軍の一部分が独立したんです。こうなると軍隊というのは基本的にはある意味、自前調達して、独自に決めて、情報開示しませんね敵に知れちゃいますから。こういう性質を私長く受け継いでいると思います。もちろん、土台がありますからそれは続いていきますよね。皆さん、研究者の先生が一律に診療を決めるというのはこれ医療じゃないですよね。もちろん、医師免許を持っている方はおられますが、診療されている方はほとんど入っていませんのでこれがこういういびつな、臨床医から見たら全くおかしいことが平然と起こる理由は研究所が行っている、キャパシティ的にも文化も違う、ここが中心になっているからだと私は考えています。

要旨をまとめると、
・PCR検査は簡単で実績があるにも関わらず利用されていない。その理由は臨床業務に特化し大量のサンプルを捌ける民間の検査会社ではなく、臨床業務のキャパシティに乏しい国立感染症研究所が中心となって実施されているからだ。国立感染症研究所が中心となっている理由は国立の研究機関に厚生労働省が丸投げしているからだ。
・専門家会議の委員12名のうち3名が国立感染症研究所の関係者だ。患者の治療は臨床医と患者が柔軟に決めるものであり、検査してはいけない期間を研究者が定めるのは異様だ。高齢者が熱を出せば2日遅れるだけで重症化してしまう。
・国立感染症研究所は戦前「伝染病研究所」という組織で、この組織は陸軍と密接な関係にあった。ワクチンも本来は軍隊に提供するもので、アメリカのCDCもアメリカ陸軍の一部だった。軍隊はモノを自前で調達し、独自に物事を決め、情報開示をしないものだが、こうした性質を国立感染症研究所も受け継いでいる。
・医師免許を持っていても診療はしていない研究者が一律に診療のことを決定するのは医療ではない。臨床医からみたらおかしいことが起きる理由は文化的にもキャパシティも違う研究所が間に入っているからだ。

というものです。

しかしながら、
・PCR検査は現在外部委託や保険適用について検討されており、検査が利用されていないとする主張は事実に即していない。
・PCR検査が全数検査にならない理由は「そもそもPCR検査の感度は40%程度であり、全数検査すると大量の偽陽性患者が生まれて隔離病棟などのリソースがパンクして医療崩壊が起きるから」であり、国立感染症研究所に丸投げしているから等とする上氏の主張は明らかに事実に反している。
・医療全体のリソース等を鑑みてPCR検査実施の適切なタイミングを専門家が決めることは至極当然のことであり、PCR検査実施の要件を決めることが不当だとする上氏の主張は明らかに事実に反している。
・専門家会議の委員3名が国立感染症研究所の関係者であることは、PCR検査実施の要件の不当性の根拠にはならない。
・そもそも新型コロナウイルスに現在特別の治療法は存在しないため、高齢者が高熱を出せばPCR検査とは関係なしに適切な治療が施される。したがって、患者の治療を臨床医と患者が相談して決めるべきだということは、PCR検査とは何の関係もない話である。
・戦前の軍部との関係性や性質が現在の対応に繋がっているという主張は根拠としてあまりに薄弱で論理的にも飛躍しており、陰謀論の域を出ないものだと言わざるを得ない。
・戦前の伝染病研究所とつながりを持つのは国立感染症研究所ではなく東京大学医科学研究所であり、上氏の主張は明らかに事実に反している。アメリカCDCの全身が陸軍であったとして、日本の国立感染症研究所とは一切関係のない話に過ぎない。
・ワクチンが本来軍隊に提供するものだったという主張には何ら根拠がなく、歴史的にも事実に即したものとは言えない。
・臨床医の多くが今回の新型コロナウイルスについて「全数検査するべきではない」という見解を表明しており、上氏の主張は明らかに事実に反している。

など、発言の趣旨とは異なる事実が数多く存在します。

以上のことから、今回の報道での上氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「政府はPCR検査を拡大させて全数検査を実施すべきだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「全数検査は医療崩壊を招くので絶対にやってはならない」「そもそも特別な治療法がない以上全数検査の意味がない」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ 「風を読む」にてパンデミックについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

① 新型コロナウイルスの感染拡大と一斉休校要請について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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