2018年9月9日 サンデーモーニング

2018年9月9日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、2018年9月9日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・北海道で発生した地震に関して報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

では、さっそく放送内容をみていきましょう。

水野 真裕美アナウンサー(以下、水野アナ):北海道を襲った震度7の地震。日を追って被害の深刻さが明らかになっています。

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【VTR】
・6日午前3時8分頃、北海道胆振地方中東部を震源とするM6.7の地震が発生
・北海道厚真町では北海道初の震度7を観測し、札幌市内では広い範囲で液状化現象が発生
・8日午後10時時点で、死者35人・心肺停止2人・安否不明3人
・政府の地震調査委員会は、震源の西側にある活断層(石狩低地東縁断層帯)との関係について検討したが、今回の震源は石狩低地東縁断層帯より深いこと等から、別の断層がずれ動いたと見ている
・最近の地震は未知の活断層で地震が頻発しており、専門家は、「どこに住んでいてもM7くらいの地震は起こる可能性がある」と話した。
・火力発電所の運転が停止し、北海道全域295万世帯で停電したが、地震発生から45時間超で99%の停電が解消
・供給できる電力は、地震前日のピーク時の1割程度不足するため、計画停電をせざるを得ない状況
【VTR終】
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【スタジオ】
司会 関口 宏(以下、関口氏):地震発生から、72時間ですか、3日間ね。これが非常に大きなポイントとなるんですが、まあそのこともあって、昨日から救助作業が続いている北海道。中村さんを呼びます。中村さん。

中村 由希アナウンサー(以下、中村アナ):はい。6日未明に、震度7の地震に見舞われた北海道厚真町です。こちらでは、今日は朝から天候が悪く、雨が降ったり止んだりを繰り返している中で、24時間体制の懸命な捜索活動が現在も続けられています。今日も朝早くから、今、見えていますように多くの警察官や消防が、入り、救出活動を行っています。そして、体に感じる余震といったものも、今も続いています。まさに、今見えている土砂が少し動くといった、土砂が上から落ちてくるといった状況も今朝からありました。
また、昨夜もこちらのエリアで60代の男性が土砂の下敷きとなり、心肺停止の状態で搬送されたということです。これにより、ここ厚真町内では、31人の死亡者数が確認されています。全域では、35人の死亡となっています。そして、こちらでは二次災害も懸念されています。今日は、全体で1850人体制といった大規模な体制で本格的な捜索が現在も行われているんです。一刻も早い救出が急がれています。

関口氏:はい。どうもありがとう。さて、先程VTRにも出てきましたけど今回の地震で、北海道中が真っ暗になっちゃった。これはなぜ起こったのか。水野さん、ちょっとご説明を。

水野アナ:はい。お伝えします。今回の地震では、一時北海道の全域、およそ295万戸がていでんするという事態が起きました。大手電力会社でも、全ての停電は初めてのことです。こちらは、北海道電力の発電所です。地震の影響で最初に緊急停止したのが、この震源地に近い苫東厚真火力発電所だったんですが、この発電所が一つ止まっただけで、なぜ北海道全域の停電となったんでしょうか。地震発生当時、北海道の電力供給を支えていたのは、主に、この4つの火力発電所でした。中でもこの苫東厚真は、最大165万kwを発電できる、北海道電力で最大の火力発電所で、ベース電源として、およそ半分の電力を供給していました。一つの発電所に依存しすぎていたことが、今回の停電の大きな要因の一つでした。そもそも、家庭などで使う電気というのは、火力発電所から一定の周波数で送られています。これを保つために必要なのが、電気の使用量と供給量のバランスです。しかし今回、発電能力の高い、この苫東厚真が緊急停止したことで、他の火力発電所の負担が増えて、一定の周波数を保てなくなりました。火力発電所は、周波数が低下すると、他の設備の負荷やトラブルが発生するため、これを避けるために、電気供給を自動停止し、一斉に停電となったわけなんです。今回は、稼働していた火力発電所すべてが連鎖して止まったため、北海道全域の停電となりました。これを、ブラックアウトといいます。実は北海道電力は、苫東厚真の依存の状況に危機意識を持っていて、石狩湾新港に、ベース電源にもなり得る新たな火力発電所を建設していて、これは来年2月に完成する予定だったんです。また、北海道と本州の間には、緊急事態などで電力不足が起きた際に融通し合うための連系線があるんですが、これもすぐに使うことができませんでした。というのもこれは、直流形式を採用しているため、その電気を交流に変換する必要があるんですが、停電で、その装置自体が使えなかったからです。また、その能力というのも苫東厚真の半分以下の60万kwと、脆弱さも浮き彫りとなりました。経済産業省によりますと、老朽化した火力発電所を稼働させたり、企業の自家発電から供給を受けたりして電気を積み上げ、昨日までにほぼ全域の停電が解消されました。しかし肝心の苫東厚真の火力発電所は、設備が損壊していて、復旧に1週間以上かかる見通しです。計画停電の可能性も検討されていて、電力供給は綱渡り状態が続いています。

関口氏:はい。どうもありがとう。まあ北海道というと梅雨もない、なんか穏やかなイメージが私たちの中にあったんですが、最近はなんか、こういう災害が増えてきたかなっていう気がしていますが、皆さんはどういうふうに受け止められたか。秀征さんはどうでしょう。

福山大学客員教授 田中 秀征(以下、田中氏):あの、台風なんかも行くようになりましたしね。北海道が、なんか気候条件からいろいろ一番変わってるって感じ、しますよね。とにかくその、一週間に想定内のその、重大災害が2度起きるっていう異常事態ですけれども、こういう機会に、それこそ、前例がどうのこうのっていうよりも、いつでも大きな災害は起こり得るんだっていう、そういう気持ちで防災体制を整えるっていうことしか見えてこないですね。とにかく、今しかないっていう。今考えるしかない。今整えるしかないという感じですよね。一週間に2つが異常なんじゃなくて、こういうこともあり得るんだっていう感じがしますよね、これからも。

関口氏:その、気象に関しては、どんどん極端に激しくなるっていうね、ことを言ってる専門家もたくさんいますから。

田中氏:根本も絶たなきゃダメですね。

関口氏:西崎さん、どういうふうに受け止められましたか?

東京大学大学院 西崎 文子(以下、西崎氏):そうですね、やはりあの、その地震も全国どこでも震度7の地震が起こり得ると。で、加えて台風、豪雨、過度の熱波とか。そういったものが、繰り返し本当に来た夏だったと思うんですけれども、やはりあの、そのときにインフラとか鉄道とか電気とか、そういった根幹のインフラが危ういってことが分かってきてると思うんですよね。で、やはり優先順位をつけて、どこから手当てをしていくかと。で、危機に備えるのかってことを考えないといけないと思います。

関口氏:藪中さん、いきましょう。

元外務事務次官 藪中 三十二(藪中氏):あの、先程天変地異って言葉が、ね、聞きましたね。まさに、奈良時代のことを思い出したんですけどね、奈良時代に、干ばつ、疫病、それで大地震が襲うんですよね。で、聖武天皇が、「責めはわれ一人にあり」と、まあこう言われたわけですけどね。なんかこれだけ自然災害が続くと、行き過ぎた現代社会への警鐘っていうことなのかなと。まあそんなことを感じます。

関口氏:谷口さん。

大阪国際大学准教授 谷口 真由美(以下、谷口氏):あの、本当に北海道も大変な中だったんですけど、関西もまだ実は停電が続いていて、火曜日のあの台風以降ですね。で、電柱が根元から倒れてしまっているので、その復旧っていうのは、停電は停電でもすごく時間がかかるってインフラの部分になるのでっていうことで、で、もうそれこそ冷蔵庫の中が、もう全然ダメになったりとか、大きな倉庫とかもダメになっちゃって、これからもう物価が上昇するだろうっていうことを、関西は本当に言われてるんですね。で、そんな中で、ちょっと私、気になったのが、まあ関西の台風でもそうだったんですけど、私、報道各社の皆さんが、全社、同じ現場に行く必要にあるんだろうかっていうのをすごく感じてまして、まあ共同で撮影とかできないものなのかなっていうのを、いろんな所で災害が起こっているだけに、こう分散して、皆さん共同でやられた、同じ所に入って同じこと聞くんじゃなくって、できないのかなっていうのをすごく今回考えさせられた点だったんです。

関口氏:まあでも、そうなってしまう・・・松原さん。

松原 耕二(以下、松原氏):そうですね。どうしても激しいところに皆、一番被害が大きいところに行きますんで、結果的にそうなる。まあ3.11のときもやはり、そういう中継が入ったところだけ支援物資が届くみたいなことも起きたんで、そこはちょっと考えなきゃいけないかもしれないですね。私その、電力についてちょっと付け加えたいのはですね、確かに言われているように分散型にすべきであると私も思います。と、同時に泊原発が今停止中なんですけど、動いていたら停電は起きなかったじゃないか、だから再稼働すべきだなんて声が実は上がったりしてるんですね。でも私は逆に、泊原発も震度2だったんですね、あそこは。それでも総電源喪失状態になってしまった。3.11のときで。だから、もしこれが震源地の上に、震度7のところに、もしあったらどうなったんだろうとかですね、もし稼働中だったらどうなったんだろうとか、やっぱり最悪のことを考えてしまう。で、実際、今回も断層は活断層と分かってなかったところだったわけですよね。でも泊原発の敷地内にも実は断層があって、活断層かどうか、地震を引き起こすがどうか議論になってるわけですね。そういう意味では、すごく慎重にすべきだし、今後の再稼働の動きに影響を、これ、間違えなく与えると思いますね。

関口氏:そうですね。今、現在のことをまとめておきます。

水野アナ:今回、北海道で起きた地震の被害状況なんですが、昨日(9月8日)午後10時時点です。亡くなった方が35人。心肺停止の方が2人。安否の分からない方が3人となっています。そのうち、大規模な土砂崩れが起きた厚真町では、31人の方が亡くなっています。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の点です。

・松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

では、順を追って解説します。
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):同時に泊原発が今停止中なんですけど、動いていたら停電は起きなかったじゃないか、だから再稼働すべきだなんて声が実は上がったりしてるんですね。でも私は逆に、泊原発も震度2だったんですね、あそこは。それでも総電源喪失状態になってしまった。3.11のときで。だから、もしこれが震源地の上に、震度7のところに、もしあったらどうなったんだろうとかですね、もし稼働中だったらどうなったんだろうとか、やっぱり最悪のことを考えてしまう。

要旨をまとめると、
・今回のブラックアウトについて、泊原発を動かせばよかったんじゃないかという意見がある
・だが、泊原発は震度2で総電源喪失になってしまった
・もしこれが震源地の上、震度7だったらどうなっていたかわからない

というものです。

しかしながら、この発言は事実に基づかないものです。実際は総電源喪失ではなく、泊原発の周辺一帯が停電になった影響で外部から電力供給が絶たれたため、非常用電源を作動させただけだからです。よって、泊原発が震度2で総電源喪失になったという主張は大きな誤りと言えます。こうした発言は泊原発が福島第一原発のように全電源喪失状態に陥り、原発事故が起きかねないなどという事実と全く異なる認識を視聴者に誘発する可能性があります。

よって、今回の松原氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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