2020年3月1日 サンデーモーニング(前編)

2020年3月1日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年3月1日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大と一斉休校要請について報道された部分
② 新型コロナウイルスのPCR検査について報道された部分
③ 「風を読む」にてパンデミックについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 新型コロナウイルスの感染拡大と一斉休校要請について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
感染が世界に広がる新型コロナウイルス。この1週間もイタリアでは一気に感染が拡大。イランでは対策に当たる副保健相が感染。アメリカでも、市中感染が起きている可能性があります。28日、WHOは世界で大流行するおそれを指摘。危険度を最高レベルに引き上げました。さらに、影響は世界経済にも。ニューヨーク株式市場は1週間でダウ平均が3500ドルも下落。12%もの記録的な下げとなりました。そして東京市場が一時1000円以上値下がりした日本。その東京で木曜日、安倍総理の発言が波紋を広げました。安倍総理が突然、全国すべての小中学校、高校、特別支援学校に対し、臨時休校を要請したのです。子どもたちの健康を第一に考え、決断したと語った安倍総理。しかし、この要請が大きな混乱を招いたのです。全国にある小・中・高等学校で一斉休校を要請するという過去に例のない対策。教育現場に事前に知らされることはありませんでした。千葉市長はSNSに、医療関係者など社会を支えている種類の親はどうするのか、社会が崩壊しかねませんと投稿。実際、地域の病院に影響が出ているのです。北海道では、木曜日から国に先駆け小中学校などの臨時休校に踏み切りましたが、帯広市の病院では看護師の2割が子どものケアなどで出勤できず、外来診療が縮小に追い込まれたのです。この問題は国会でも論戦が繰り広げられました。波紋を広げた全国の小中学校などへの休校要請。ところが、翌日になって萩生田文科大臣が休校の期間などは地域の実情を踏まえて工夫してほしいと述べたのです。政府が判断をゆだねたことで自治体の対応はさらに混乱。群馬県太田市は保護者や職場への負担が大きいとして休校しないことを決定するなど地域で判断が分かれる事態となったのです。全国一斉休校を要請した安倍総理。決断の理由について金曜日、専門家の指摘を根拠にしたと説明をしました。
また、今回の決断の背景についてある政権幹部は総理の判断だったとしたうえで、子どもに死者が出ると社会の動揺が大きくなるため先手を打ったと明らかにしています。昨日、みずから国民に説明するとして会見に臨んだ安倍総理。総理の政治判断が今後、問われることになりそうです。

【アナウンサーの解説】
橋谷アナ(抜粋):そして日本なんですが先週のこの時間は、感染者数770人、死者3人だったんですけども。これが、一週間経って感染者947人、そして死者11人まで増えてしまいました。

橋谷アナ(抜粋):そしてこれによって、お子さんのいる世帯は非常に混乱しています。15歳未満の子供がいる世帯、共働きでおよそ408万世帯。仕事を持つひとり親世帯はおよそ60万世帯。ま、仕事をしている間お子さんの面倒を誰が見るのかと、皆さん戸惑っているわけです。そして、VTRにもありましたけれども、北海道の帯広厚生病院は子供のいる看護師の一部が出勤できなくなりまして、看護師の2割強およそ170人が勤務困難になるとして、28日から予約や救急以外の外来診療を休止しました。そして総理は、昨日の会見でできる限りの対策を講じるとした上で、新しい助成金制度を創設して、所得の減少に手当する。このように表明をしました。
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【コメンテーターの発言】
上昌広氏(全文):判断は難しいですよね。確かに学校をやめると、学校でうつることはなくなるんですが、まあ学童に行って暮らすのなら、そこで感染しますし、それから、誰を優先して守るか。実は今回、子どもの感染症は実はあまりひどくなくて、かつあんまり亡くなっていないんですよ。感染をまん延させることを防ぐのか、感染症ですから、治れば問題ありませんので死者を減らすことを防ぐのか。後者の立場に立つと、お子さんの学校に介入するよりも、高齢者をケアすべきなんですね。ええ介入自身は確かに効果があるんですが、その副作用が多分に出るものですから非常に慎重な判断がいると思います、私自身は疑問があります。

田中秀征氏(要約):やっぱりこういうことっていうのは、いいところも悪いところもあって、まだ評価ができるような段階じゃないと思うんですけれども、それでもこれほど、いろいろ受け止め方があるということは国民と総理との間の信頼関係が弱いからだというふうに僕は思うんです。今回、前へどんどん出てきたということ自体は歓迎すべきことだと思うんだけども、しかし、やってることを理解してもらうということ、あるいは今の状態を笛吹けどなかなか踊らないという形になっていますよ。だから自分がなぜ不信感を持たれているか、ここへ来て、どんどん世論調査の数字が悪くなってきているんですよね。支持率が下がって不支持率が上がる。大体そうですよ、流れとして。かなりの程度そうで。こういう方向に転換した大きな理由じゃないかと私は思ってるんだけど、底流には桜を見る会とか検察人事にああいう形でそんなことに手を出している時間かと僕は言いたいんです。とんでもないです、だってあれは緊急事態宣言をWHOが宣言した翌日やったんですから。そんなときにそんなことやるような話かと言いたい。そういうことも含めて、じわじわと不信感が募っていく中で、なかなか総理に耳を傾けてもらえないという状況になってしまった。ですから、むしろ今までの間違いとかに対して、反省の弁をしてもらいたい。例えば検察の問題だったら撤回するというところまでいけば、そうかと、全面的に協力するという気持ちになりますよ。ここで変えるわけにいかないから。

仁藤萌乃氏(全文):そうですねウイルス対策は大事だと思うんですが、根拠が示されないまま、突然の休校要請ということでそれも自治体に判断を任せるという言い方で責任を押しつけているようにも感じますね。で共働き家庭やひとり親家庭で子どもの預け先が見つからなくて収入が減るというおうちもありますし、知人の10代の女性も、子どもがいなくてもですね、人手不足になったアパレル店が営業時間を短くせざるをえないっていうことになってシフトが減らされて今後の生活が成り立たなくなると困っていたりして、その補償をどうするのかというのも早く示してほしいなと思います。また、食事を給食に頼ってる子どもたちっていうのも私もたくさん知っているので、学校がない間に、そういう子どもたちのことも心配ですし、学校を開放して給食を提供することを決めた学校もあるんですが、臨時休校中にですねスクールソーシャルワーカーが子どもや保護者との面談、家庭訪問もしてはいけないというような判断を教育委員会がしているような自治体もあって、これは大阪府の学校で働くスクールソーシャルワーカーの方から聞いた情報なんですけど、そうなると、スクールソーシャルワーカーというのは子どもたちが抱える悩みとか、さまざまな問題に関わる専門家なのでまあこういうときこそそうした方々の力が必要だと思うんですけど虐待とか生活困窮、いじめ、不登校とか、さまざまな問題を抱えている子どもたちとか、行き場に困った子どもたちの見守りすら自治体の判断によってはできなくなってしまっているという現状があります。その市民の暮らしとか生活への影響にどう対応するのかというのが示されなくて、弱い立場にある人にしわ寄せがいくような政府の対応に、すごく不安がますます広がっているかなあと思います。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、橋谷アナの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、橋谷アナの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
橋谷アナは今回の報道で、以下のように述べています。

橋谷アナ氏(抜粋):そして日本なんですが先週のこの時間は、感染者数770人、死者3人だったんですけども。これが、一週間経って感染者947人、そして死者11人まで増えてしまいました。

要旨をまとめると、
・日本国内における新型コロナウイルス感染者が947人、死者は11人まで増加した。

というものです。

しかしながら、
・947人という感染者数は日本国内でないダイヤモンドプリンセス号の感染者を含めたもので、正確な日本の感染者数を示していない。
・この段階での実際の感染者数は247人であるため、こうした主張は事実に反しており、また視聴者に日本の感染拡大が実際より深刻であるという誤った認識を与える恐れのある極めて悪質な報道である。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での橋谷アナの発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

上氏(抜粋):誰を優先して守るか。実は今回、子どもの感染症は実はあまりひどくなくて、かつあんまり亡くなっていないんですよ。感染をまん延させることを防ぐのか、感染症ですから、治れば問題ありませんので死者を減らすことを防ぐのか。後者の立場に立つと、お子さんの学校に介入するよりも、高齢者をケアすべきなんですね。ええ介入自身は確かに効果があるんですが、その副作用が多分に出るものですから非常に慎重な判断がいると思います、私自身は疑問があります。

要旨をまとめると、
・新型コロナウイルスへの対応においては感染症の蔓延を防ぐ方針と重症化を防ぐ方針の2つが考えられるが、後者の場合は子どもより高齢者のケアが大切だ。学校への介入は副作用が大きいので疑問だ。

というものです。

しかしながら、
・重症患者の予備軍に集中的にリソースを割く方針は、子どもを重症患者予備軍へのウイルスのキャリアにしないための施策と相反するものではない。したがって学校への介入ではなく高齢者のケアを実施すべきだという主張は事実に即していない。
・休校によるメリットよりデメリットが勝るとする主張には何ら根拠がない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):そうですねウイルス対策は大事だと思うんですが、根拠が示されないまま、突然の休校要請ということでそれも自治体に判断を任せるという言い方で責任を押しつけているようにも感じますね。で共働き家庭やひとり親家庭で子どもの預け先が見つからなくて収入が減るというおうちもありますし、知人の10代の女性も、子どもがいなくてもですね、人手不足になったアパレル店が営業時間を短くせざるをえないっていうことになってシフトが減らされて今後の生活が成り立たなくなると困っていたりして、その補償をどうするのかというのも早く示してほしいなと思います。(中略)臨時休校中にですねスクールソーシャルワーカーが子どもや保護者との面談、家庭訪問もしてはいけないというような判断を教育委員会がしているような自治体もあって、これは大阪府の学校で働くスクールソーシャルワーカーの方から聞いた情報なんですけど、そうなると、スクールソーシャルワーカーというのは子どもたちが抱える悩みとか、さまざまな問題に関わる専門家なのでまあこういうときこそそうした方々の力が必要だと思うんですけど虐待とか生活困窮、いじめ、不登校とか、さまざまな問題を抱えている子どもたちとか、行き場に困った子どもたちの見守りすら自治体の判断によってはできなくなってしまっているという現状があります。その市民の暮らしとか生活への影響にどう対応するのかというのが示されなくて、弱い立場にある人にしわ寄せがいくような政府の対応に、すごく不安がますます広がっているかなあと思います。

要旨をまとめると、
・根拠がないまま突然の休校要請をしたせいで共働き家庭やひとり親家庭で子どもの預かり先がなくて収入が減る家もある。知人の十代女性は子どもがいなくても人手不足になったアパレル店のシフトが減らされるなどして生活に影響が出ている。しかも自治体に責任を押し付けているようにも感じる。
・食事を給食に頼っている子どもを知っているので、学校がない間どうするのか心配だ。
・休校中にスクールソーシャルワーカーが面談や家庭訪問を禁止する自治体など、虐待やいじめで行き場に困る子供たちの見守りすらできない自治体もある。
・市民の暮らしや生活への影響にどう対応するかが示されず、弱い立場にある人にしわ寄せがいく政府の対応に不安が広がっている。

というものです。

しかしながら、
・前例のない新型ウイルスによるパンデミックに対し多くの専門家が先手を打った対策の必要性を強調しており、また後手後手の対応が批判されてきた経緯を踏まえれば、迅速な対応について「根拠がない」などとする主張は事実に即しておらず、また政治的に公平とも言えない。
・「知人の十代女性」の存在が仮に事実だとして、そのケース1件を以てして国民全体の生活がひっ迫しているとする主張は根拠に乏しく、事実に即しているとは言えない。
・休校について各々事情を抱える自治体ごとの裁量にしたことを「自治体に責任を押し付けた」などと根拠なく表現する主張は政治的に公平性を欠く。
・休校中の児童虐待などに関しては児童相談所などの学校以外の機関が従前通りに対応しており、「学校が休校になると子どもの見守りすらできない」とする仁藤氏の主張は明らかに事実に反している。
・市民の暮らしや生活への影響について政府が何の対応もしていないかのように扱う主張、政府が弱い立場の人たちに負担を押し付けているかのように扱う主張は事実に即しておらず、また政治的に公平とも言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「学校の休校措置は効果があるのかどうか疑わしい」「いきなり休校措置を自治体に委ねるなど対応が二転三転している」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「前例がない以上先手を打った対応が必要だ」「休校措置はあくまでも要請であり、対応にブレはない」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 新型コロナウイルスのPCR検査について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にてパンデミックについて報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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