9月27日のサンデーモーニングのレポート中編、4連休の観光地の混雑について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
—
【VTR全文】
海外ではロックダウンを再開する国も出ている中、日本では入国制限の緩和に動き出そうとしています。せきを切ったように人々が移動した4連休の日本列島。横浜中華街や京都・嵐山など、全国の観光地に多くの人が押し寄せたのです。連休が終わって金曜日、政府分科会の尾身会長は…「先日の連休での混雑を見ると、小規模分散型旅行は必ずしも実現していない。」
観光地に多くの人が集まったことに苦言を呈しました。実は夏休みに多くの人が国境を越えてバカンスを楽しんだヨーロッパでは、感染の第二波が押し寄せています。21日に過去最多の3万人が新たに感染したスペイン。首都マドリードでは公園の遊具にテープが巻かれ一部の地区では21日からロックダウンを再開しました。イギリスも一日の新規感染者が過去最多の6800人を突破。パブなど飲食店の夜10時閉店が義務づけられるなど厳戒態勢となっています。収束が見えない世界の感染、その水際対策として日本の国際空港では結果が分かるまで数日かかることもあるPCR検査に代わって、2〜3時間で結果が出る唾液による抗原検査を導入。一日およそ1700件の空港検疫を行っています。現在、入国を認めているのはベトナムやタイなど比較的感染状況がおちついている国・地域だけですが金曜日、菅総理は…「菅内閣として来月以降観光客以外については、日本人外国人を問わず検査をしっかり行った上で出来る限り往来を再開していく方針で臨みます。」
政府関係者によると新たに入国を受け入れるのは、全世界から一日3000人程度で中長期ビジネス滞在予定者らが対象となります。なぜ今入国制限の緩和なのでしょうか。
全世界を対象に新たな入国者を受け入れる方針を示した日本政府。その対象にはスポーツ関係者も含まれています。そこには日本での国際スポーツイベントの開催が可能だと実績を積み重ねることで、東京オリンピック開催の環境整備ができつつあることをアピールする狙いもあるといいます。IOCのバッハ会長は24日、東京五輪について「必ず実現できる。このオリンピックは歴史的なものになるでしょう。必ず成功させます、共に成功させましょう。」
最近では、世界的なスポーツイベントが安全に開催されているとしてワクチン開発が間に合わなくても五輪の開催は可能との認識を示しています。一方、昨日発表された東京都の新規感染者は270人。およそ半月ぶりに200人台の後半に達しています。こうした状況での入国制限の緩和について専門家は…国際医療福祉大学松本主任教授「かなり急な制限の緩め方だと思います。(入国者が)相当な数に増えてくると検査をすり抜けて(14日間)待機することも従わず、場合によっては国内で感染を広げてしまう可能性はある。」
政権が目指す経済再開と感染拡大防止、アクセルとブレーキの併用はどこまでうまくいくのでしょうか。
スタジオでの水野アナの説明
こちらのグラフなんですが、新型コロナの影響により解雇・雇い止めにあった人は全国で6万人に達しました。今年6月以降、1カ月前後で1万人のペースで増え続け歯止めがかかっていません。落ち込んだ経済活動を再生させるため政府は来月1日から全世界を対象にした入国制限の緩和やGoToトラベルに東京都発着の旅行を追加することを決定。また来月の中旬以降にもスポーツやコンサートなどのチケット購入代金を1回当たり2000円まで補助するGoToイベント、さらに商店街の催しなどにかかる費用を300万円まで支援するGoTo商店街を始めるとしています。
【コメンテーター発言内容】
青木氏(全文):シルバーウィークの人出ね、僕も街を歩いてみてすごかったですね、別にあまりGoToはあまり関係ない、都内なんかも混んでましたから、要するにみんな出かけたいんですよね、結局どういうことかというと、感染を制御することが最大の経済対策だということを考えなきゃいけないと思うんですよね。しかも6万人の方が解雇とか雇い止めとかになっていて、そもそもこういう人たちはGoTo行かないですよね。しかも今回GoToで潤っているのが高級旅館だったりという報道もあるので、秋・冬に向けて、こういう対策もアクセルの部分ももちろん否定はしないんですけれども、やっぱり国際的に最低レベルの検査。だってオリンピックやるのだって選手だったりとか、徹底的に検査をするとなると、検査態勢をきちんとしなくちゃいけないというのが今どこか飛んじゃってるんですよね。だから秋、冬に向けて検査体制を本当に充実させていく。感染の制御こそが経済対策なんだということをきちんと考えないと今、まだ感染者が100人、何百人単位で出てるのを忘れちゃってアクセルだけ踏むというのだとちょっと心配ですよね。今やるべきことを忘れないでやるっていうことを新政権には求めたいなという気はしますよね。
—
【検証部分】
今回検証するのは青木氏の発言に関してです。青木氏の発言を要約すると、シルバーウィークの人出が増加したことを踏まえて、感染対策が最大の経済対策だと考えるべきだ、また検査体制を拡充するべきだという主張でした。
しかし現在の状況で感染対策が経済対策となるのでしょうか。今回のVTRの内容や現在の国内の状況、また青木氏自身の前後の発言から、感染拡大の懸念は連休の人出が多いことによるものと考えられます。この状況での感染対策として考えられるのは、人出や旅行の制限です。しかし、これは経済対策とはならず、むしろ経済を停滞させることになります。
もちろん、「感染を制御することが最大の経済対策だ」という発言自体には一定の合理性があります。経済活動ができていない状況下では、感染を抑制させることではじめて自由な経済活動を再開することが可能となり、経済を立て直すことができます。
しかし、感染を抑えるために経済活動を制限してしまうことは、経済対策とはなりません。今回の連休では人手が増加し、移動や観光地での消費などによって経済が動いたことを考えれば、それを抑えることが経済にとってマイナスであることは明らかです。
そこで、青木氏は発言の後半で検査体制の拡充を主張しています。こちらはたしかに、経済活動への影響を抑えつつ感染症拡大を防ぐのに一定の効果があると考えられます。しかし、報道では空港に限られていますが検査体制の強化に関する言及がなされています。また国内を見ても、一番多かった時に比べれば一日あたりの新規感染者数は減少しています。かつては検査体制がひっ迫し、症状があるのに検査が受けられないという状況がありましたが、現在は検査体制の拡充も進んでおり、さらに拡充させる動きも多くあります。それでも新規感染者数が減少しているということは、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いていることを示しています。そのような状況で、検査体制を闇雲に拡大することが、果たして経済対策になるのでしょうか。無症状者を片っ端から検査して、陰性であることを明らかにしても、それは経済を回復させることにはつながりません。一方で検査には莫大な費用がかかります。青木氏も言及している解雇、雇い止めになった約6万人への支援や、経済の再建など、政府には他にもお金を注ぐべきところがたくさんあります。そのような支援を後回しにして、現在拡充が進みつつある検査体制をさらに拡充させ、検査数ばかりを増やすことが、経済への対策となるのでしょうか。
現在日本では、検査体制を拡充することはもちろんのこと、感染症の拡大と経済活動を天秤にかけながら、徐々に経済活動を再開させる方針を採っています。検査数を増やすことはよいことですが、それ自体は経済を回復させることにはつながりません。経済を再建するには経済活動を可能な範囲で再開させる、活発にする必要があります。
今回の報道では、このような点に言及がなされていませんでした。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
————————————————————————————–
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
————————————————————————————–
視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。