2020年12月6日 サンデーモーニング(前編)

2020年12月6日 サンデーモーニング(前編)

12月6日のサンデーモーニングのレポート前編、医療のひっ迫状況について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
 12月4日金曜日、厚生労働省前に船橋市の医療従事者たちが集まり、新型コロナで負担が増える一方、病院の経営悪化を理由に賃金が下げられているとしてストライキを行った。感染化が拡大している現在、医療現場からは次々と悲鳴が上がっている。
 院内で大規模クラスターが相次いで発生している北海道旭川市の吉田病院では、10月下旬、市長や同知事に対し自衛隊の派遣要請を出していたことが明らかになった。中等症の患者を受け入れている大阪市立十三市民病院では、コロナ患者を受け入れ始めた4月から看護師ら22人が離職した。コロナ患者に占める高齢者の割合が多く、介護士が病室に入れないため、看護師が日常の介助業務にあたる。大阪府大阪狭山市にある近畿大学病院では、10床ある重症患者の病床は3週間前から満床に近い。
先行きの見えない状況の中、使命感を支えに現場で働く医療従事者たちに限界が近づいている。

——-
【パネル解説】
新型コロナに向き合っている看護師は現場の窮状を訴えている。ある男性看護師は朝から夕方5時まで働き、日付が変わった午前0時半から午前9時まで働くという過酷な勤務状況を明かした。またある女性看護師は、コロナにかかった認知症の患者が勝手に病室から出てきてしまうという感染リスクを伴う実態を述べた。聖路加国際病院の調査によると、コロナ患者を診る看護師の46.8%が極度の疲労によって社会に適応できなくなる燃え尽き症候群を訴えた。こうした背景もあってか、大阪では15日に開設を予定している新型コロナの専用施設では、必要とする看護師130人のうちまだ50人ほどしか集まっていないという。

——-
【コメンテーターによる解説】(一部要約)
関口宏 氏(以下関口氏):相良先生の病院では、人手の不足とか医師看護師のストレスはどうなっていますか。

相良博典 氏(以下相良氏):ストレスはかなり溜まっていると思います。コロナに関しては中等症ではあるけども、重症の患者は非常に大きくなってきています。●●(※音声不明瞭)が高い患者さんも増えてきていますので、ストレスはかなり上がってきて大変な状況かなと思います

関口氏:足りない看護師さんをどうやって集めたらいいんですか。

相良氏:外にお願いするのも難しいので、病院の中で慣れた方を集めるしかないと考えています。時間的な問題やその病棟も手薄になってしまうので、難しい問題かなと思います。

関口氏:自衛隊にお願いしたっていうところがありましたね。

相良氏:コロナの患者さんばかりじゃなくて他の患者様を見なければいけませんので、色んな所で制限をかけなければいけない状況になるかもれしないと考えています。ほかの病気で来られる方を制限かけなければ、コロナの重症の患者さんが見れなくなってしまうので、そこは問題として重要だと思っています。

田中秀征 氏:どこの国でもそうですけど、人命尊重か経済優先か二者択一みたいな、必ずしもそうじゃないんだけども、それでなおかつ誤解されているってのは、これどこの国にも同じ感じなんですけども。日本も人命尊重が優先されているはずなんだけども、ここに来てそうじゃないんじゃないかって疑いを持たれてますよね。経済のほうに軸足があって、結局ここに来て医療崩壊というのがかなり現実味を帯びてきている。そういう中でやっぱり、国民の目が非常に厳しくなってきてるんで、やっぱり go toのプラス要素だけ強調するようなことをやめたほうがいいと僕は思うんですよね。だから予算でも集中的に医療体制をとにかく備えていくために、お金いくらでも使ってもいいくらいの決意でやってもらわなきゃいけないという風に思いますよね。目に見えた人命尊重の方に転換してもらいたいと思いますね

薮中三十二 氏:医療の現場は限界にきてる。介護施設も大変だと聞いています。それと、GoToなどのメッセージのギャップがある。今、病院の関係者はあんなに苦しんでるのだから、少なくとも感謝の気持ちを示す、ボーナスを出すなどを政府がやったらいいと思います。(要約)

青木理 氏:医療現場のひっ迫は第一波の時から言われていたのにこの半年間何をしていたのかっていうことですよね。看護師さんもVTRの中で息抜きしたいけどできないと言っていた、一方で、GoToで暇やお金がある人が(旅行に)行くっていうこの不公平さは、僕は強調したいと思います。一方、地方を歩いてみるとGoToの効果はかなりあったんですよね。だから陽性率とか病床率とか、これ以上になったらGoToを止めますという基準を決める。場当たりを繰り返すんじゃなく、医療の支援と経済対策をどうやっていくのか、菅さんの口から明確なメッセージを発してもらいたいと思いますね。(要約)

関口氏:相良先生、今の時点でおっしゃっておきたいことはありますか。

相良氏:若いから大丈夫じゃなくて、命を大切にする行動をしてもらいたいと思います。

関口氏:自粛を強めてくれということですか?

相良氏:そうですね。GoToはやはり止めていただきたいなと思います。

——-
【検証部分】
今回は新型コロナウイルス感染症拡大による医療のひっ迫に関する報道を取り上げました。今回問題となるのは、田中氏の発言が一面的な認識に基づいたものであるという点です。

まず、田中氏の発言を整理します。
田中氏は、どこの国でも人命尊重か経済優先かの二者択一の状況になっていると指摘しています。そして現在の日本は、人命尊重が優先されているはずだが経済優先の方に転換しつつあると批判し、人命尊重のために医療に多くの資金をつぎ込むべきだとしています。
これらの点について順に検証します。

初めに、人命尊重か経済優先の二者択一という指摘についてです。このような発言は表面的な現象しか捉えていない主張といえます。もちろん現在、非常に単純化すると、経済を回せば感染が拡大し、感染を抑えようとすれば経済を止めなければならないという状況であるという見方もできます。しかし実際には、人命尊重と経済優先は表裏一体のものでもあるといえます。
例えば景気と自殺者数とは強い相関関係があるとされています。そしてコロナ禍で自殺者数が急増し、新型コロナによる死者数を上回るまでに増加していることを考えれば、経済を回復させることが人命を守るために必要であることは明らかです。
また同時に、人命を尊重する、すなわち医療体制の整備や感染予防対策を徹底することによってはじめて、経済活動の幅を広げることができます。
ですから、人命か経済かの二者択一という考えは、現在の社会を単純化しすぎた議論であるといわざるを得ません。

また、このような理由から、日本が人命優先から経済優先に移りつつあるという指摘も表面的な認識といえます。経済を回復させることで、人命を守ることができるのは先ほど確認した通りです。

最後に、医療に多くの資金をつぎ込むべきだという指摘についてです。こちらも、一見すると正しい主張のように聞こえますが、問題の本質を無視した発言といわざるを得ません。
現在の医療のひっ迫をもたらしている要因として、資金面も考えられますが、より重要なのは人手不足であるといえます。そしてその人手不足の原因となっているのは、職務の身体的、精神的な負担です。医療従事者に対しての給料の増加やボーナスの支給なども実際に検討されてはいますが、負担の大きさという根本的な問題を解決することにはつながりません。現在議論されているのは、どのような資金の投入の仕方をすれば、もしくはどのように医療に関わる制度を整えればこれらの根本的な問題が解決されるのかということであり、医療に多くの資金を投入するべきか否かではありません。

このように、田中氏の指摘はいずれも、一見正しいように見えるものの、実際には表面的な分析に過ぎません。問題の本質に言及しておらず、極めて偏った視点からの発言であるといわざるを得ません。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————————————————–
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
————————————————————————————–

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事