2019年5月19日 サンデーモーニング(中編)

2019年5月19日 サンデーモーニング(中編)

サンデーモーニング、2019年5月19日分の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 丸山穂高議員の失言について報道された部分
② 景気動向指数の「悪化」について報道された部分
③ 「風を読む」にて米中の対立について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 景気動向指数の「悪化」について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
「今月で73か月連続の景気回復となり、戦後最長に並んだかもしれない」と語る倍首相の姿が映し出される。政府は戦後最長の景気回復が続いているという認識を示していたが、3月の景気基調判断が引き下げられ、この認識に疑問符が付くかもしれないと伝えられる。
 消費増税の延期について、安倍総理の側近である萩生田氏は、「景気悪化の基調判断が直ちに増税延期の判断基準にはならない」との考えを示したとアナウンス。
解散風が吹き始めた中で、消費税への対応、アベノミクスの真価が問われていると伝えられ、VTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
景気動向指数の推移についてパネル説明。
・第2に安倍政権発足時は「悪化」だったが、その後回復
・政府は、消費税率を8%に引き上げた際は一時的に消費が冷え込むが、景気後退とされず景気拡大が続いているという認識で、今年1月には戦後最長になった可能性が高いと主張していた。
・しかし、景気動向指数が中国経済原則等の影響で下がっていたことが分かり、6年ぶりに基調判断が「悪化」
・去年の秋以降から景気後退の局面に入り、景気拡大は途切れていたのではないかという指摘もある

【コメンテーターの発言】
原真人氏(全文):アベノミクスっていうのはですね、いろんな看板掲げててんこ盛りになってるんですが、その本質ってのは、私は日銀の一元緩和だと思います。それは何かと言うとですね、日銀が紙幣を刷りまくってですね、それで日本の財政を支えてると。だから安倍政権は消費増税を2回延期できたし、毎年その、100兆円という巨額予算を今も組めている。これだけ財政悪化の中でですね。しかし、それでは財政健全化上問題があってですね。今年は10月に消費増税が予定されてるわけですけども、私はだから、この政権は、延期をする公算が大きいのではないかと。なぜならば、それができるからだということです。そうすると幼児教育とか保育の無償化を今、予定してるわけですけれども、じゃあそれがどうなるんだっていうことですが、今、一元緩和があればですね、日銀に紙幣を刷らせて、借金をすることでそれが可能になるわけですね。消費増税を延期しても。しかしそれでは、財政健全化ということでは非常に問題があるし、そもそもその、日銀が政権の道具になってしまい続けてるわけですね。これは期間なことで、日銀は今、もう非常にカードを出し尽くして、次にもし本当の危機が来た時に、私は日銀にはもう何も本質的な対策を打つ手がないんだと思います。それは非常に心配しています。

田中秀征氏(要約):景気動向指数は経済指標を網羅してるわけではない。設備投資とか雇用の統計については、十分でない。明日公開されるGDPの速報値によって、どの程度のマイナスかがわかる。一番決定的なのは、その後に出る月例経済報告。これで「景気後退」の文字で出たとしたら、衆参同日選挙・消費税増税延期が現実味を帯びてくる。逆にいえば、月例経済報告は政府の公式見解なので、忖度が入って景気後退の文字は出てこないかもしれない。GDPの速報値で予想以上にマイナスが大きければ、いろんな政局の問題になり得ると思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、原氏のボード説明に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、原氏のボード説明に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

原氏:アベノミクスっていうのはですね、いろんな看板掲げててんこ盛りになってるんですが、その本質ってのは、私は日銀の異次元緩和だと思います。それは何かと言うとですね、日銀が紙幣を刷りまくってですね、それで日本の財政を支えてると。だから安倍政権は消費増税を2回延期できたし、毎年その、100兆円という巨額予算を今も組めている。これだけ財政悪化の中でですね。しかし、それでは財政健全化上問題があってですね。今年は10月に消費増税が予定されてるわけですけども、私はだから、この政権は、延期をする公算が大きいのではないかと。なぜならば、それができるからだということです。そうすると幼児教育とか保育の無償化を今、予定してるわけですけれども、じゃあそれがどうなるんだっていうことですが、今、異次元緩和があればですね、日銀に紙幣を刷らせて、借金をすることでそれが可能になるわけですね。消費増税を延期しても。しかしそれでは、財政健全化ということでは非常に問題があるし、そもそもその、日銀が政権の道具になってしまい続けてるわけですね。これは期間なことで、日銀は今、もう非常にカードを出し尽くして、次にもし本当の危機が来た時に、私は日銀にはもう何も本質的な対策を打つ手がないんだと思います。それは非常に心配しています。

要旨をまとめると、
・アベノミクスの本質は日銀による異次元緩和で、これは日銀が紙幣を大量に発行しているということだ。しかしこれでは財政健全化に問題がある。
・にもかかわらず安倍政権は増税延期をすると噂されている。増税を延期すると幼児教育や保育無償化といった施策を異次元緩和で実施することになるが、これでは財政健全化が達成されないし、日銀が政府の道具になり続けてしまう。

というものです。

しかしながら、
・国家財政が財政危機かどうかは、国の債務残高から国の保有資産を引いた純債務で判断する。
・日本の債務残高は確かに約1200兆円あるが、そのうち純債務は約400兆円で、そのうち日銀が借り入れている分(返済不要)が約300兆円あるので、事実上の債務は十分安全な圏内にあると言える。
・さらに、アベノミクスの量的緩和により日銀が国債を日本円で買い取ることで、日本政府が返さなくていい分(日銀の借り入れ分)の割合が増えることで、すでに日本財政は健全化しつつある。
・以上より、アベノミクスや増税延期が財政健全化に悪影響だとする主張は当たらない。
・また、そもそも日銀は政府のいわば子会社であり、政府の道具だとする批判は事実に基づかない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での原氏の発言は事実に基づかないだけでなく、である恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「予定通り増税を実施すべきだ」「アベノミクスで日本の財政は悪化している」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「今増税したら日本経済はダメージを受ける」「アベノミクスはデフレ脱却のために極めて正しい政策だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ 「風を読む」にて米中の対立について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 丸山穂高議員の失言について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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