4月16日の報道ステーションのレポートです。
この日の報道ステーションから
①安倍政権のコロナ対策に関する放送
②医療体制に関する放送
の2つの論点からレポートをお届けします。
今回は前編です。
検証するのは以下の点です。
・後藤氏の解説が政治的に公平なものであったか
長くなってしまうので、VTRと記者レポートは要約にてお届けします。(スタジオ解説は全文書き起こしです。)
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
政府はコロナ感染拡大に伴う現金給付措置を、困窮している家庭に対して一世帯当たり30万円から、国民全員を対象に一律1人10万円へ変更することを検討すると発表した。かねてから一律10万円の給付を求めていた野党からは、急激な方針転換に対する批判の声があがっている。
この方針転換の裏には、現金30万の給付では対象となる世帯の線引きが難しいとの批判が上がったためという経緯がある。そのため政府は、10万円の一律給付では所得に制限を設けないという考えだ。
【記者レポート】(要約)
政府は生活支援としての現金給付に際し、ばらまきになってはいけないということで現金30万円の給付を決定した。しかし手続きが煩雑であることや受け取れない人が出てくることから批判の声が多く上がっていた。その声に押し切られる形での今回の発表だが、閣議決定した方針を覆したことにより、今後、政権として安定的な判断ができるのか問われることになる。
方針の変更に対し、政府は給付のスピードを優先し、国会での審議を1週間遅らせて予算案を組み替えることで対処すると発表した。与党関係者からは5月中の給付の予定はなるべく崩したくないとの声が聞かれている(吉野真太郎記者)
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【コメンテーターによる解説】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):続いて、中継という形で政治ジャーナリストの後藤謙次さんにお話を伺います。後藤さんよろしくお願いいたします。後藤さん、お伝えしているように今日は大きな動きが2つありましたよね。まず、お伺いしたいのは先週、7都府県に出されたばかりの緊急事態宣言がなぜ、全国に拡大というタイミングが今なのかというところなんですがどうでしょうか。
後藤謙次氏(以下後藤氏):1つは、県境を越えた人の移動が非常に目立ってきたことがあったと思います。とりわけ北海道や沖縄ここから、東京から行った人が感染を広げるという可能性も非常に強くて、そういう道やあるいは県が、なんとか人の動きを止めてもらいたいこういう要請があったのが1つです。ただ、これまで都庁との調整でもめた休業要請ですね。これについては、2週間程度様子を見たいと言いながら約10日でこの方針転換をするという意味では制度設計が非常に甘かったといわれても仕方がないと思います。それと前後しますがVTRにありましたように一律10万円。この支給の根拠に岩手のように、感染者がゼロ。その県に支給するにはやはり、全国レベルで緊急事態宣言を出すということが必要だったのか。つまり、相反するような形になってしまうんですがそういうタイミングが今日だったということだと思います。
小木アナ:実はセットの部分があるということですがその一律10万円というこれも、30万円の困っている人にというところとは経済対策の意味合いも含まれてきますしちょっと趣旨も変わってきますがこれはなぜ転換したのか。その背景を、後藤さんはどう読み解きますか。
後藤氏:これは、さっき吉野さんがおっしゃったように30万円の給付が非常に評判が悪かった。VTRにもありましたが与党内では不評3点セットということがいわれていたんですねマスク、30万円それから動画。安倍総理が犬と戯れながらくつろいでいる動画が流れた。これによって政権の信頼度が非常に薄らいできた。今度、選挙を控えている中でなんとかこの局面を打開したいと国民世論に非常に敏感な自民党の二階幹事長がまず、のろしを上げた。それに対して10万円はもともと我々の主張だったと公明党が驚いて山口代表が官邸に飛び込んで昨日のぶら下がりでも総理に対して決断を促したと。一歩も後に引かないという強い意志を示したために総理としては、自民党も公明党も与党全体から異論が出た。これは撤収しなければならないというところに追い込まれたんだと思います。
小木アナ:肝煎りの経済対策として非常に大きな柱だったところを転換するわけですから政権運営という点では今後、影響はどうでしょうか?
後藤氏:影響は出ざるを得ないと思います。特にこういった危機に瀕したリーダーは言ったことを貫き通すぶれないということが1つの大きな要件だと思うんですがこれだけ大きな政策について途中で転換をしてしまうと政権の信頼度というところに疑問符がつくと思います。しかも、これまで安倍一強といわれてきて安倍総理が決めたことが全て政策として成立をしていた。それが、与党とはいえ横やりが入って方向転換せざるを得なかったという点ではこれまでの官邸の政策決定方針というのがやや揺らいでくる変えざるを得ないという点では非常に危機に瀕したリーダーとしての資質を問われる局面に入るんじゃないかと思います。
小木アナ:自分が決めたことを1回変えるということは今後も、やっぱりなかなか姿勢として定まらなくなってくる可能性もあるわけですか。
後藤氏:与党側もそれによってこの方針はおかしいということになればどんどん注文をつけていくことになりますからこれまでの政策決定の流れが大きく蛇行することは避けられないんじゃないかと思います。
小木アナ:後藤謙次さんにお話を伺いました。後藤さんありがとうございました。安倍総理は、明日午後6時から記者会見をする予定です。緊急事態宣言の拡大や一律10万円給付について説明するものとみられます。
【検証部分】
後藤氏の発言を簡単にまとめます。
緊急事態宣言の対象を全国に拡大した事情について、
① 人の往来を落ち着けるため
② 一律に10万円を支給する根拠とするため
と解説しています。
条件つき30万円給付の方針が転換された事情については、以下の不評3点セットがあったためとしています。
① 布マスク2枚配布
② 条件つき30万円給付
③ 安倍総理とペットの犬が映った動画
後藤氏は政策とは最も関係のない動画が国民の信頼低下に繋がったとしてます。
ちなみにテレビ朝日のグループ企業である朝日新聞が3300円で布マスクを販売していたことには触れていませんでした。
さらに後藤氏はリーダーとしての一貫性が損なわれたとして批判を加えています。
普段の後藤氏は安倍一強と批判を強めているのですが、今回は危機に瀕した時のリーダーとしての資質が問われると厳しく批判しています。
確かにリーダーたるもの、危機の時にこそ真価が分かるものでしょう。
実際、安倍総理のコロナ対策が満点の評価だとはいえないでしょう。
特に初期の経済対策はお魚券、お肉券の配布。補償なき休業要請、条件つき現金給付など対策としては不十分なものがありました。
しかし、重症者優先の医療体制の構築によって医療崩壊を防いだことや方針を改めて国民一律の現金給付に踏み切ったことなどは評価されてしかるべきです。
後藤氏は危機の時に方針を一貫させられなかったことをマイナスに評価していますが、その評価は正しいものなのでしょうか。
かつての日本は大東亜戦争で「非常時だから」と、方針を見直さずに戦線を拡大し戦争に突き進み、負けました。
政治家の評価は「方針を一貫させたかどうか」ということだけでなく、打ち出した政策によって評価を行うべきではないでしょうか。
政策の評価を行うでもなく、とにかく批判をするという姿勢は政治的に公平な解説とはいえません。
このような放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。