2019年4月24日 報道ステーション

2019年4月24日 報道ステーション

4月24日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では、金正恩委員長がロシア訪問についての報道がなされていました。

2月28日に行われた米朝首脳会談では合意まで到達することはなく、北朝鮮への経済制裁はいよいよ厳しくなっています。

4月28日、ソウル総合ニュースが伝えたところによると、北朝鮮は国民に自立経済を求める呼びかけを行いました。
ここからも北朝鮮の経済的苦しさが伺えます。

そんな中行われた、金正恩委員長のロシアへの訪問は、ロシアに制裁解除へ向けた助け船を出してもらう要請をする目的があると思われます。

この日の放送では、金正恩と首脳会談が行われていないのは日本だけであり、日本は蚊帳の外であると解説がなされていました。

そこで今回検証するのは次の2点です。
1.多くの論点を取り上げて放送がなされていたか
2.事実に基づいた報道がなされていたか
この2点について検証していきます。

まずは放送内容から確認していきます。

——-
【スタジオ】
徳永有美アナ:プーチン大統領との初めての首脳会談に臨む北朝鮮の金正恩委員長が、ウラジオストクに到着しました。

——–
【VTR】
ナレーション:日本時間午後5時過ぎ、特別列車でやって来た金委員長がウラジオストク駅に降り立ちました。ロシア初訪問を歓迎し、セレモニーも行われました。金委員長は時折笑顔も見せています。ロシア入りした際に立ち寄った駅では、大きなパンと塩で歓迎を受けました。大事な客人の富と健康を願うロシア伝統のおもてなしだと言います。ここで金委員長は、ロシア国営メディアのインタビューに応じました。

金正恩委員長:熱烈な歓迎を受け、今回の会談の成功を確信すると共に、あなた方の大統領との会談で地域情勢の安定に貢献できると期待しています。

ナレ:ロシア政府によりますと、歓迎を受けた金委員長は「ロシア訪問を夢見ていた。今後もロシアを訪れたい」と話したと言い、両国の友好関係を強くアピールしています。プーチン大統領との初めての会談でどんな話をするのか、注目の会談は明日行われます。

——-
【スタジオ】
富川悠太アナ:さあ後藤さん、明日の会談。どんなところに注目されますか。

後藤謙次氏:この会談、日本外交を揺さぶる可能性があるんですね。といいますのはプーチン大統領とは2008年から中断している6カ国協議。このメンバーじゃないんですが、この6カ国が北朝鮮の非核化を巡って会議をずっと続けてたんですね。これを再開しようという提案がある。その可能性が非常に高いんですね。これ見て分かりますように明日プーチン大統領と金正恩委員長が会うとですね、安倍総理だけが金正恩委員長と会ってない、そういう首脳になるんですね。つまり蚊帳の外に置かれる可能性が出てしまう。ただこの6カ国協議はですね、これまでも北朝鮮が時間を引き延ばす、時間稼ぎ、遅延行為に使われてたって事で、日本側は強く反対をするんですね。日本はあくまで北朝鮮の完全な非核化、これができるまでは制裁の緩和は認めない。これはトランプ大統領と一緒だから、これはないだろうと。こう言われてるんですが、一方でですね、政治の世界ですから、ここに安倍総理が入ってくる。つまり首脳会談も開かれることになると、金正恩委員長との直接会談が成立する可能性があるんですね。となると全く違うベクトルが働く可能性がある。少なくとも日本の外務省は、トランプ大統領がこういうマルチの会談が大嫌いですから、これをトランプ大統領にとにかく反対してもらって、このプーチンの提案を蹴飛ばしてもらいたい。そういう意味でですね、明日プーチン大統領と金正恩委員長の会談の中で6カ国協議のゆくえがどうなっていくか、そこを是非注目していきたいと思いますね。

富川アナ:プーチン大統領は非核化を巡ってどんな提案をしてくるのかということになりますね。
——–

放送自体は非常短いものでした。
金正恩委員長のロシアを訪問するというVTRと、後藤氏による注目すべき点の解説がなされていました。

今回解説されていた6カ国協議について簡単に触れておきます。

6カ国協議とは、北朝鮮の核開発問題に関して、米韓北中露日で直接会議を行う協議のことです。

2003年から2007年まで計6回開催されましたが、近年は開催されていません。

この協議が行われている間、米国の歴代政権は、北朝鮮に対して宥和的な対策をとってきました。
そのために、北朝鮮は核開発や、大陸弾道ミサイルの開発を進めてこれたのです。

その後北朝鮮は軍拡を続けて今に至ります。
北朝鮮をめぐる問題で日本にとって最悪のシナリオはアメリカ本土に届くミサイルだけを放棄し、それ以外の兵器はそのままであるということです。

このような状況となってしまえば、アメリカからの圧力が弱まり、日本として交渉を続けることになりますが、軍事力を持たない日本だけで交渉を続けるのは難しいでしょう。

中距離核についての米露の協定が破棄された今、北朝鮮だけの核戦力を抑止する正当性もないというのが現状です。

こういった中で、ロシアと北朝鮮が接近し、経済制裁解除を求める動きが加速してしまえば、北朝鮮は更なる軍拡を広めていくでしょう。

ロシアと北朝鮮の会談に関してのこういった論点を取り上げずに、日本が蚊帳の外であると、ただ放送をするのは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
————————————————

次に事実を曲げずに報道がなされていたかという点を検証していきます。

以下の後藤氏の解説を振り返ります。

————————————————
後藤氏:プーチン大統領と金正恩委員長が会うとですね、(6カ国協議の中で)安倍総理だけが金正恩委員長と会ってない、そういう首脳になるんですね。つまり蚊帳の外に置かれる可能性が出てしまう。
————————————————

「蚊帳の外」と言いますが、日本が北朝鮮の非核化に向けて関与していくことは非常に重要です。

アメリカとともに経済制裁を強めているこの現状で、日本が足を揃えずに、経済制裁を緩めてしまえば、経済制裁の効果も薄まります。

冒頭でも述べた通り、制裁の長期化による北朝鮮は非常に苦しい状況に追い込まれています。

失敗を許すことのできない北朝鮮にとって国民へ自立経済を促す北朝鮮の今の状況は大変苦しい状況であります。

この経済制裁を続けていくことは日本の非常に重要な役割です。

また、非核化には多額の費用がかかります。
すでに存在している核兵器を外に持ち出しての解体、またはウランの濃縮、ミサイルプログラムの解体など、非常に多くのことを行う必要があります。
これには数千億円以上の費用と10年間の時間が必要とされています。

この解体作業にかかる負担を日本が負担していくことは大変重要です。
それは軍事力を持たない日本にとっては経済的な面でのプレゼンスを高める必要があるからです。

こういった事実を提示せずに放送を行うことは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————
放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
————————————————

公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けてまいります。

報道ステーションカテゴリの最新記事