2018年9月13日 報道ステーション

2018年9月13日 報道ステーション

※自民党総裁選期間中のため、報道監視レポートを全会員の皆様に公開しております。

報道ステーション、9月13日の報告です。
この日最も多くの時間を割かれたのは外国人労働者関連の話題でした。
今回は北方領土に関して報じられた部分を検証していきます。
それでは詳しく見ていきましょう。

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小川彩佳アナ:続いてのニュースに参ります。昨日、ロシアのプーチン大統領が国際会議の場で、年内に、前提条件なしで平和条約を結ぼうと安倍総理に迫りましたけれども、今日ですね、今度はプーチン大統領の側近も日本側の決断を待つと語りました。相次ぐロシアの要求に日本側はどう対応するんでしょうか。
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【VTR】
ナレーター:先に発言したのは、安倍総理でした。

安倍首相:今やらないで、いつやるのか。我々がやらないで、他の誰がやるのかと、平和条約締結に向かう私たちの歩みを、どうかご支援を、皆さん、いただきたいと思います。力強い拍手を、聴衆の皆さんに求めたいと思います。ありがとうございました。

ナレーター:すると、プーチン大統領は突然、こう提案したのです。

プーチン大統領(字幕):いま浮かんだアイデアだ 平和条約を結ぼう 今すぐではなく 今年中に いかなる前提条件もなしで

ナレーター:日本政府の立場は、北方四島の帰属を確認した後で、平和条約を締結ぶというものです。しかし、プーチン大統領は、いかなる前提条件もつけずに、平和条約を結ぼうというのです。領土問題を事実上、棚上げするともとれる発言です。一夜明け、安倍総理は日本企業の関係者との懇談の場で。

安倍首相:この問題を、解決をしていく上においては、両国の国民の理解が進んでいく環境が整備されていくことが大切であり・・・

ナレーター:一方のプーチン大統領は、早速軍事演習に駆け付けました。

プーチン大統領(字幕):最新鋭の兵器や技術を装備し 軍事力を増強し 国際的な軍事協力を推進する必要がある

ナレーター:冷戦終結後、最大の規模で中国軍も初めて参加。アメリカや日本を牽制する狙いがあるとみられます。プーチン大統領の腹心、トルトネフ副首相も。

トルトネフ副首相:プーチン大統領の提案は 非常に明快で率直だ 日本側の決断を待つ

ナレーター:さらに、日本とロシアが2年前に合意した北方領土の共同経済活動についても、日本の投資が進んでいないとして、こう迫りました。

トルトネフ副首相:我々は日本側がどんな決断を下すのか待っているのだ 第三国は参加していないが 参加させるのはたやすいことだ

ナレーター:平和条約を早く結べと言わんばかりのロシアに、日本政府は。

記者:日本政府の基本方針と異なる立場の発言をプーチン大統領はされましたが、ロシア政府の方に抗議するような考えはないんでしょうか?

菅官房長官:政府としては領土問題を解決して、平和条約を締結するというのが基本的な立場です。そして、我が国のこうした立場については、ロシア側も承知しているわけでありますので・・・

ナレーター:午後帰国した安倍総理は、公明党の山口代表に対し、プーチン大統領の発言は、平和条約締結にかける意欲の表れと述べたということです。政府関係者は、棚上げとは認識していないとしています。

ナレーター:総理、総裁選も残り一週間となりましたが、意気込みをお願いします。

安倍首相:今後、これから全力を尽くして、全力で訴えていきたいと思います。

ナレーター:一方、総裁選で戦う石破氏は。

石破茂氏:プーチンさんにそういうことを言わせて、そしてみんなの前でそういうことを言われて、本当にそれでいいか。もっと、この領土問題に国家の威信をかけて、全力で向かっていかねばならない。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:こちらご覧いただきましょうか。北方四島ですね。これは、日本の固有の領土ですから、日本の基本的な立場としましては、北方領土の帰属を確認したうえで、平和条約を締結するという基本的方針は変わってきてはいません。ところが、プーチン大統領は、まず前提条件なしに平和条約を結ぼうじゃないかと。で、諸課題について協議しましょうと言っているわけですから、北方領土っていう言葉は出てきていない。となると、棚上げされてしまうんじゃないかという不安がですね・・・

後藤謙次氏:そうですね。あるいは二島返還で、もう決着させようと。

富川アナ:日ソ共同宣言に盛り込まれていた二島返還。

後藤氏:そうですね。(二島返還)で、終わらせようというプーチン大統領の思惑があるのかもしれないですね。昨日、日本政府はやや不意打ちを食らってですね、混乱をしてたんですが、今日ようやく考え方を整理しようということになったんですね。それはプーチン大統領の発言の良いとこ取りをしようと。つまり平和条約交渉をしようと、いうところがですね、2016年から止まってるわけです。それをプーチン大統領の方から言い出したんだから、ここはやろうと。しかもこれは、正式な首脳会談で持ち出した話じゃないので、日本側の、つまり帰属問題を決着して、平和条約交渉という順番は変えられないと。その態度を貫こうということなんですが、プーチン大統領は期限を切ってきましたね。年内にということで、年内にやらないとドアは閉まるぞ。こういう言い方もしてるわけですから、今度日本側は、ドアが閉まったら困るのはどっちだというようなカードも突き付けながら進めていくということですが、まあ政府高官によれば、これは年中行事だと。つまり、交渉が煮詰まってくると、いろんなことを難癖をつけて、交渉自体を先延ばししていくと。またそのスペースに入ってきちゃったのかなという気がしますね。

富川アナ:その2年前の新しいアプローチといって共同経済活動をするっていっても、そこが進んでいないから、イライラしてこういうふうに言ったっていう可能性も。

後藤氏:その可能性も大いにあると思いますね。

富川アナ:じゃあどうするのかというところなんですが、辛抱強くやるしかないのかもしれないんですけれども、あの、石破さんが語気を強めていましたね。これに関して。

後藤氏:おそらく、プーチン大統領の発言に何の反応もできなかったと。これでいいのかという意味なんでしょうけれども、まあ安倍さんにしたらですね、今回確かにウラジオストックで、点数を上げに行こうといったところで不意打ちを食らってですね、やや失点をしてしまったという印象は拭えないと思うんですね。ですから、これは安倍総理の今度の総裁選では、外交の安倍だということが自民党の多くの議員が押した理由だったんですが、そこにやや揺らぎが出てきたということは、まあ総裁選に影響はないにしても、政権全体の安倍さんに対する信頼感って問題では、影が差してくる可能性があると思いますね。

富川アナ:あの、明日から論戦が再開されますから、この対ロシアの問題もしっかりと・・・

後藤氏:日本政府はやってもらいたいと思いますね。

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【検証部分】
今回の放送の問題点は、スタジオでの富川アナと後藤謙次氏のやり取りが放送法違反に抵触する可能性があるということです。詳しく説明していきます。
この日のスタジオにてこんなやり取りがありました。
富川アナ:じゃあどうするのかというところなんですが、辛抱強くやるしかないのかもしれないんですけれども、あの、石破さんが語気を強めていましたね。これに関して。
後藤氏:おそらく、プーチン大統領の発言に何の反応もできなかったと。これでいいのかという意味なんでしょうけれども、まあ安倍さんにしたらですね、今回確かにウラジオストックで、点数を上げに行こうといったところで不意打ちを食らってですね、やや失点をしてしまったという印象は拭えないと思うんですね。ですから、これは安倍総理の今度の総裁選では、外交の安倍だということが自民党の多くの議員が押した理由だったんですが、そこにやや揺らぎが出てきたということは、まあ総裁選に影響はないにしても、政権全体の安倍さんに対する信頼感って問題では、影が差してくる可能性があると思いますね。
富川アナ:あの、明日から論戦が再開されますから、この対ロシアの問題もしっかりと・・・
後藤氏:日本政府はやってもらいたいと思いますね。

まず、今回の話題は10日から13日にかけて開かれている東方経済フォーラムでの安倍首相とプーチン大統領の記者会見に際して、ロシアのプーチン大統領が「領土問題ありきではない平和条約の締結」を主張したことが話の大前提にあります。
そもそも、この東方経済フォーラムはロシアが各国政府に経済協力を要請するために毎年同じ時期に開かれており、正式発表こそ9月に入ってから行われましたが、昨年も参加したことなどから開催前から安倍首相の参加は濃厚とされていました。また、この会議に北朝鮮の金正恩委員長も招待されていたことから、実現こそしませんでしたが、日朝首脳会談が開催されるのではないかという観測は今年の米朝首脳会談後から出ていました。したがって、後藤氏が言うような「点数を上げに行く」という表現は「そ外交の実績をアピールするために、急遽総裁選前に安倍総理が訪露したのではないか」と視聴者が考えてしまう、いわゆる印象操作につながりかねないと感じました。
そしてプーチン氏の発言自体がロシアによる日本政府への揺さぶりという意見もある中で、自民党総裁選挙の相手候補である石破氏の発言を取り上げたうえで「安倍さんに対する信頼感が揺らぐかもしれない」と発言した後藤氏の態度は公平中立を保ったものと言えるのでしょうか。

したがって今回の放送は、放送法第4条2項「政治的に公平であること」第3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。

今後も監視を続けます。

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