2020年4月16日 報道ステーション

2020年4月16日 報道ステーション

4月16日の報道ステーションのレポートです。

この日の報道ステーションから
① 安倍政権のコロナ対策に関する放送
② 医療体制に関する放送
の2つの論点からレポートをお届けします。

今回は後編です。
検証するのは以下の点です。

・様々な論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を確認します。

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【スタジオ】
森葉子アナウンサー:続いてはPCR検査についてです。自治体によってはテントを設置するなどして検査を受けやすくする取り組みが始まっています。国は1日2万件という目標を掲げていますが達成にはほど遠い現状があります。

【VTR】
(あわただしい市役所内の光景)

ナレーション(以下ナレ):鳴りやまない電話に奔走する職員。市役所内に、保健所が臨時に設置した対策本部です。

久留米市保健所保健予防課・石橋真弥課長(以下石橋課長)『この2カ月以上、この状態が続いていて職員も疲弊している』

ナレ:全国の保健所では聞き取った内容を担当者らで協議。新型コロナウイルスに感染の疑いがあると判断した場合指定の医療機関で診察を受けてもらいます。その結果を受け、PCR検査を行うかを決めています。

(電話聞き取りの様子)

ナレ:それでも、実施できる検査数は1日20件前後だそうです(久留米市の場合)。

石橋課長:なるべくPCR検査を受けていただきたい気持ちはある。病院の負担が大きくなるので必要な方にだけ病院につなぐ

ナレ:感染の経路が分からない人が増えた現在見逃されている人が感染を広げていることが考えられます。PCR検査の拡充は急務となっています。国の目標は1日2万件。しかし、今月13日は5000件あまりと達成には程遠い状況が続いています。
日本医師会・釜萢敏常任理事(以下釜萢理事)『2万件というのは検体が検査施設に届けられて処理できる(限度の)数が2万。(検査数が少なく)とどまっている理由はすべて帰国者接触者相談センターを介さないと、実質的に検査に結びつかない態勢が現状ではまだかなり見られるので相談センターと別に検査の流れを作ることは非常に大事』

ナレ:こうした状況を打破しようと東京都医師会は昨日新宿など都内20か所にPCR検査所を設置することを発表しました。独自の取り組みを始めた自治体もあります。

前田万里奈記者(以下前田記者)『患者はこのブルーシートの上を歩いてテントに入ります。そうすると電話で問診を終えているのですぐに検査が受けられます』

ナレ:PCR検査のために設置したウォークスルー型の医療用テント。

前田記者『検査の際は綿棒を鼻に対して真っすぐ入れます。そうすることで、粘液を拭い取るということです』

ナレ:所要時間は1人5分程度ということです。

墨田区保健所・西塚至所長『検査を受けたいという方の希望が2週間くらいに延びてしまった。それではいけないので1人5分程度大変効率よく運用しています』

ナレ:現在は週に3回、午前と午後2時間ずつ実施しています。1日あたり最大50人まで検査できるということです。

釜萢理事『一つとても大事なことは検査を受けた結果、陽性だった方がきちんと振り分けられて適切に経過観察が行われないとダメです。ご本人の生活を制限することになりますから行政権限のもと適正に執行されることが必要。そこの整備を早急にうまくやらないと(検査も)また滞ってしまう問題が起きる可能性がある』

ナレ:検査を希望しても受けられない。都内に住む40代の女性は搬送中の救急車で隊員から信じられない言葉を投げかけられました。

都内の40代女性『救急隊員の方が「コロナの検査のために救急車を呼んだわけじゃないよね」「ほとんどの方は受けられないですよ」と。37℃前後ですけど体中ずっと震えていたので息苦しさもあって「苦しい苦しい」と言いながら救急車に乗っていった』

ナレ:都内に住む40代の女性。PCR検査という言葉を全く発していないにもかかわらず突然、隊員からこう言われました。

都内の40代女性『救急隊員の方が「コロナの検査のために救急車を呼んだわけじゃないよね」「ほとんどの方は受けられないですよ」と言われた。なんで検査をしないんですか?と聞いたらお医者さんに言われたのが「やはり重症の人が優先だから」と』

ナレ:救急搬送された病院の医師からはとにかく自宅待機するようにと言われただけで病名も告げられませんでした。

都内の40代女性『コロナかもしれないしそうじゃないかもしれないけども、私の場合は家に小さな息子がいるので、家にいていいのかわからない』

ナレ:広島県に住む別の20代女性は保健所の担当者から「たとえ検査を受けられても対応は同じ」と言われたといいます。

広島県在住20代女性『39.5℃の熱が出ていて、(保健所に聞くと)「まだ20代で若いというのが理由でー」「どうしてもコロナの検査は後回しになる」「コロナの検査をしたところで(陽性でも)軽症という扱いになると」「どっちにしても自宅待機になるから」と言われた。しんどくても仕事に行かなきゃという人も多いと思うんですけども、それで広がっているんじゃないかと思います』

【コメンテーターによる解説】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):ここからは感染症学がご専門の昭和大学医学部二木芳人客員教授と中継をつなぎましてお話をお伺いします。二木先生よろしくお願いいたします。まず、東京都の感染者数からですが今日は新たに149人の陽性が確認されました。この数ですが、最多を更新することはなかったにせよ昨日よりは増えているということもありましてこの数字は、どういうふうに受け取ったらいいでしょうか。

二木芳人教授(以下二木教授):先週の終わりに比べると少し数が減ったようにも見えますが中身を見てみますと感染源が不明の方が70%以上と結構、多いですよね。それと、少ないといっても150人近い方が毎日出ているわけですからこの傾向は大きくは変わらない。1日の数字だけ見ていくのではなく全体の流れを見ていく必要があると思います。さっきも出てましたが東京都の検査数が350程度ですからそうしますと、この数が一気に200、300となることはないわけなのでそういう形で見ていく必要がありますね。むしろ、私は最近全国の患者さんの増加を見ていくと毎日毎日500、600と出てまいりまして今日も9200くらいの数になっていますよね。明日にでも1万人という勢いもありますのでこういうことを含めて評価していく必要があると思っています。

小木アナ:だからこその全国拡大しての緊急事態宣言になるわけなんですが。それから先ほどVTRにありましたPCR検査なんですが今現在の流れというのはこうなっていまして保健所などの相談センターや専門の外来に非常に負担がかかるという中でこれは厚生労働省が各自治体に新たな流れとしてこういうふうなことを作っていこうという方針を出したわけなんですがまず、地域のかかりつけ医が必要だと判断すれば検体を採取する。その場所なんですが新たに設ける検査センターで行うということですがこの運営は各地の医師会が行うということが想定されているというんです。この流れというのは、二木先生うまくいくでしょうか。

二木教授:先ほどからVTRでも出ておりましたように医師が、検査をしたほうがいいという判断をしてもなかなか帰国者・接触者外来が受け入れられない状況がありますのでこういうシステムをとりますと必要な患者様に対して検査が、より提供しやすくなると思います。ただ、やはりセンターの運営は医師会さんのほうにお願いすることになりますから医師会の会員の先生方に随分、ご負担をかけることになると思いますので先生方のコンセンサスが得られることともう1つは、そういうところにおいでになるときに、きちんといわゆる個人防護具といいますかマスク、フェースシールドなどが提供されることが最低条件かと思います。

小木アナ:二木先生。ドライブスルー検査なども含めて動きが出ています。検体を採取する流れはスムーズになってきたとしても検査機関。ここが追いついていくのかという心配もありますよね。

二木教授:そのとおりです。先ほども出ていましたが保健所の業務というのがもう精いっぱいなんですね。決して彼らが検査を遅らせているとか絞っているということはなくていっぱいいっぱいでやっていると思うんですが、こういう形で今後患者さんからとる検査の材料が増えてまいりますとそれを処理する検査機関のキャパシティーといいますか能力も同時に上げないと結局、検査しても結果が出るまで随分待たされるということであまりいい結果にはならない可能性がありますね。そこは、やはり考えていかなければなりません。

小木アナ:ここまで二木先生にお話を伺いました。ありがとうございました。

【検証部分】
今回の報道ではPCR検査を増加させるべきだ、という論調で放送がなされていました。
PCR検査数がなかなか増えてこないことから、検査漏れの感染者が感染を拡大させている可能性が指摘されるなど、件数を増やす重要性について触れられていました。
確かに、PCR検査は増やすべきという意見は様々なところで取り上げられています。

しかし、PCR検査数をただ増やすことは望ましくないという意見も存在します。

下記の記事で日本感染症学会と日本感染環境学会は医療資源を逼迫させてしまうことから
軽症者へのPCR検査を推奨はしていません。

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 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府は7都府県だった緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した。日本感染症学会と日本感染環境学会は、感染症診療のあり方を変えていく必要があるとして、診療に携わる臨床現場などに向けて「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」を発表した。ポイントの一つが、軽症の患者に対してはPCR検査を勧めていないことだ。さらに、医療崩壊を防ぐために重症患者の治療に特化することを提言している。

(中略)

感染拡大初期から「風邪の症状だが、新型コロナではないか」といって検査を求める声が殺到したという事情がある。舘田理事長は「不安な気持ちは分かるが、治療法もなく、軽症でも入院が必要になるなど、医療資源を逼迫(ひっぱく)させてしまう可能性が学会では危惧されていた」と言う。
≪時事メディカル PCR検査、軽症者に推奨せず―新型コロナ 感染2学会「考え方」まとめるhttps://medical.jiji.com/topics/1614より抜粋≫
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また新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)では、オーバーシュートよりも先に医療崩壊が起きる可能性について指摘しています。

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いわゆる「医療崩壊」は、オーバーシュートが生じてから起こるものと解される向
きもある。しかし、新規感染者数が急増し、クラスター感染が頻繁に報告されている
現状を考えれば、爆発的感染が起こる前に医療供給体制の限度を超える負担がかかり
医療現場が機能不全に陥ることが予想される。
≪新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617992.pdfより抜粋≫
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つまり、PCR検査数を増加させ、医療資源をさらに逼迫してしまい医療崩壊を招いてしまった時こそ、感染が爆発的に拡大する恐れがあるのです。

以上からPCR検査をむやみに増加させてしまうことがコロナウイルス対策において、良いことなのかという論点については様々な意見があるのです。
様々な論点から放送すべきですが、この日の放送では「検査を増加させるべき」という報道ばかりでした。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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