2020年3月29日 サンデーモーニング(前編)

2020年3月29日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年3月29日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 医療崩壊が進むドイツと日本の医療体制について報道された部分
② 「風を読む」にてスタグフレーションについて報道された部分
③ 森友問題について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 医療崩壊が進むドイツと日本の医療体制について報道された部分となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
爆発的に感染が拡大し、医療崩壊の危機と向き合いながらもほかのヨーロッパ諸国に比べ低い致死率を維持するドイツ。その重要なカギを握る一つの要因がホームドクターと呼ばれる、かかりつけ医の存在です。医師は普段から患者の健康状態を把握しているため、電話で症状の相談を受けても重症化のリスクが高いかを判断できるという。感染が疑われるケースも患者と医者が直接会わずに検査や診察に振り分けることで医師の感染リスクを下げ医療崩壊を防いでいます。
またドイツ保健省は、たくさんの検査を行い全体状況を把握することで感染の対策が立てやすくなる。と考えています。ドイツの検査数はこれまで週に16万件でしたが現在は推定で50万件に達しています。一方、日本の検査数は最近の1週間では9337件にとどまっています。
日本でもベッドや医療機器などが不足する医療崩壊が危惧されています。北海道にあるクリニックでは一般の患者と時間を分けて、感染した疑いのある人の診察を受け入れている。クリニックでは保健所に相談の上、患者から検体を採取し、PCR検査につなげている。陽性が判明したことはないが、医師が「検査が必要」と判断しても保健所が拒否したケースもあったという。今の検査体制では十分と言えないのではないか、感染爆発の瀬戸際を迎える中、医療体制が問われています。

【コメンテーターの発言】
堀氏(要約):8割の方は自然に治る。そういう方々は自宅療養や自宅待機でやり過ごすことができる。しかし、2割の方々は入院の医療が必要で、その方々の検査を確実に実施することで救命をする、日本なりのポリシーがある。もし検査不足で医療危機が起きていれば、比例して死者数も多くなるはずだが、今そういったことはみられていない。全体動向を把握するというドイツの考え方とは方法が違うということだと思います。

青木氏(全文):たぶん両方考えなくちゃいけなくて、まず中長期的な話なんですけれども、パンデミック、感染症、風土病が世界的な爆発を起こすというのはたぶんこれからも何度も襲ってくることを考えると今回のケースをきちんとよく見ておかなくちゃいけない。例えばスペインとかイタリアで医療崩壊が起きたのはどうやら財政難で医療体制をカットしたり、社会保険をカットしたことが医療崩壊の原因になっていると。一方でドイツというのはかなり緻密な医療体制で致死率を抑え込んでいる。それから今回、韓国なんかはMERSの教訓でかなり検査態勢を早期に充実させた、台湾はかなり早期に抑え込みに成功した辺りをきちんと見て、今後の日本の社会保障、医療保障の体制を見なきゃいけない、特に日本の場合、世界一の高齢化率ですし、どうも国の借金もすごいということで病院をカットしようという動きもあったのでそこをどうするかというのを長期的にはみなきゃいけない。
それから短期的には、2つの正しさの対立だと思っているんですね。1つは疫学的に言えば、完全にシャットダウンしたほうが感染は止まるわけですね。 ところが経済的に見ると、こんなのシャットダウンしたら大ダメージで下手したら死人が出るじゃないかという話になる。両方とも多分正しいんですね。この正しいのを調整しなくちゃいけないというのは、まさに政治の役割なんですよ。その政治が、先ほどどなたかが信頼できるのかという話をしていましたが、今回見ていると、例えば東京都なんかもワンテンポ遅いんですよね。ひょっとしたら僕の先入観かもしれないんだけれども、オリンピックの延長が決まるまでほとんど東京都の小池さん何かの動きが見えなくて突然出てきてロックダウンみたいなことをおっしゃるんですが、これってひょっとしてオリンピックのために検査も抑えていたんじゃないだろうかとか、あるいはあんまり危機感を煽らないようにしていたんじゃないだろうかとか疑念を僕は持つんですね。こういうことをしていると、信頼というものが行政や政治に対して持てなくなる。だから今回、よーく目を凝らしてこの政治は果たして信頼に値するものだろうかというのを、僕ら考えなくちゃいけない、じーっと目を凝らして見ていなくちゃいけないところがある気がします。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):たぶん両方考えなくちゃいけなくて、まず中長期的な話なんですけれども、パンデミック、感染症、風土病が世界的な爆発を起こすというのはたぶんこれからも何度も襲ってくることを考えると今回のケースをきちんとよく見ておかなくちゃいけない。例えばスペインとかイタリアで医療崩壊が起きたのはどうやら財政難で医療体制をカットしたり、社会保険をカットしたことが医療崩壊の原因になっていると。一方でドイツというのはかなり緻密な医療体制で致死率を抑え込んでいる。それから今回、韓国なんかはMERSの教訓でかなり検査態勢を早期に充実させた、台湾はかなり早期に抑え込みに成功した辺りをきちんと見て、今後の日本の社会保障、医療保障の体制を見なきゃいけない、特に日本の場合、世界一の高齢化率ですし、どうも国の借金もすごいということで病院をカットしようという動きもあったのでそこをどうするかというのを長期的にはみなきゃいけない。
それから短期的には、2つの正しさの対立だと思っているんですね。1つは疫学的に言えば、完全にシャットダウンしたほうが感染は止まるわけですね。 ところが経済的に見ると、こんなのシャットダウンしたら大ダメージで下手したら死人が出るじゃないかという話になる。両方とも多分正しいんですね。この正しいのを調整しなくちゃいけないというのは、まさに政治の役割なんですよ。その政治が、先ほどどなたかが信頼できるのかという話をしていましたが、今回見ていると、例えば東京都なんかもワンテンポ遅いんですよね。ひょっとしたら僕の先入観かもしれないんだけれども、オリンピックの延長が決まるまでほとんど東京都の小池さん何かの動きが見えなくて突然出てきてロックダウンだみたいなことをおっしゃるんですが、これってひょっとしてオリンピックのために検査も抑えていたんじゃないだろうかとか、あるいはあんまり危機感を煽らないようにしていたんじゃないだろうかとか疑念を僕は持つんですね。こういうことをしていると、信頼というものが行政や政治に対して持てなくなる。だから今回、よーく目を凝らしてこの政治は果たして信頼に値するものだろうかというのを、僕ら考えなくちゃいけない、じーっと目を凝らして見ていなくちゃいけないところがある気がします。

要旨をまとめると、

・これからコロナ以外の感染症でもパンデミックが起こることを考えなければいけない。海外では、例えばスペインやイタリアなどでは財政難で医療体制・社会保険をカットしたことが医療崩壊の原因を招いているが、一方ドイツは緻密な医療体制で致死率を抑え込んでいる。
・感染症の対策と、経済活動の自由は相反するものであるから、これらを調整するのが政治の役割であるが、その政治の対応が遅く、小池氏は、突然出てきてロックダウンとかいう。これはもしかしてオリンピック開催のためにPCR検査数を抑えていたのではないではないか。

というものです。

しかしながら、
・「ドイツは緻密な医療体制数で、致死率を抑え込んでいる」という青木氏の主張は、ドイツはPCR検査の検査数が日本と比べて多いからであり、死亡者数で比べると日本の圧倒的に少ない。実際に、外務省の発表によれば、ドイツは1万人あたり死者数が15.3人であり、それに対し日本は1万人あたりの死者数は0.68人である。よって、あたかもドイツの医療体制が進んでいると主張する青木氏の主張は、明らかに事実に反しており、また政治的に公平ではない。
・「五輪を延期するために、検査を抑えるのではないか」という青木氏の推測には、根拠が何一つ提示しておらず、事実に反する恐れがある。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「PCR検査数をより多く増やすべきである」「このままでは感染爆発が発生してしまう」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「医療崩壊を防ぐためにも、PCR検査は本当に必要な人に限るべきである」「感染者数、致死率、人口比あたりの死亡率などを総合的に勘案し判断していくべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
②「風を読む」にてスタグフレーションについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 医療崩壊が進むドイツと日本の医療体制について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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