2020年8月30日 サンデーモーニング(中編)

2020年8月30日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年8月30日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
①「風をよむ」にて安倍長期政権ついて報道された部分
②安倍政権の辞任について報道された部分
③黒人銃撃事件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 安倍総理の辞任について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
28日、安倍総理が持病の潰瘍性大腸炎の悪化により辞任すると表明しました。潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に炎症ができ下痢・血便・腹痛の症状が表れる指定難病。辞任のタイミングについて安倍総理は「コロナ禍において政治的空白を生み出さないようにする上で、このタイミングで辞任するしかないと判断いたしました。」と述べました。
今月2度目となる慶応病院への通院を行った月曜日に1人で辞任を決めたという安倍総理。そのタイミングについて、「今回はですね、とにかく(内閣改造)人事、国会の前に私は判断をしなければいけないと。それはずっとそのことを悩みに悩んだのでございますが、もう少し出来ないかという気持ち葛藤がなかったわけではもちろんないが、万が一にも同じようなことをしてはならないという判断をしたということであります。」と説明しました。
2007年の辞任は、施政方針演説の2日後に突然発表されました。政権を放り投げたとの批判を踏まえ、コロナ対策に一応のめどがついた今がタイミングだと判断したといいます。
7年8カ月に及んだ長期政権については「すべては国政選挙のたびに力強い信任を与えてくださった、背中を押していただいた国民の皆様のおかげであります。」と話しました。
2012年の発足以来国政選挙で5連勝するなど”安倍一強”を作り出した安倍政権。一方で森友学園や桜を見る会などの説明責任が問われていました。
辞任会見で政権の私物化との批判について問われた安倍総理は「政権の私物化はあってはならないことでありますし、私は政権を私物化したというつもりは全くありませんし、私物化もしておりません。まさに国家国民のために全力を尽くしてきたつもりでございます。」と述べました。
辞任のニュースは世界を駆け巡りました。中国・北京の街人は「突然の辞任ですね。阿部さんはいい首相だった。」と話し、28日韓国ソウルでは「もっと前に辞めるべきだった。韓国を混乱させたので。」との声がありました。2016年の就任以来、蜜月関係にあったとされるアメリカのトランプ大統領は、辞職の決断はとても厳しいものだったに違いない、彼は偉大な紳士だと称賛のコメントを寄せています。今後について、安倍総理は「治療によって何とか体調を万全とし新体制を一議員として支えて参りたい。」と述べました。

スタジオでは橋谷アナがフリップで支持率について説明。
発足直後から76%と高い支持を得て始まった第2次安倍内閣ですが2015年安全保障関連法案の強行採決によって初めて不支持が支持を上回りました。しかし、その後にあった参院選では経済の上向きもありまして改憲勢力を取り込んだことで3分の2の議席を得て圧勝します。再び支持率は回復していくんですが、今度は2017年モリカケ問題で支持率が当時の過去最低まで急落してしまいます。それでも同じ年の衆院選では、小池都知事率いる希望の党出現などによって野党が分裂したことで300を超える議席を確保し再び、圧勝します。2018年には財務省の文書改ざんの問題で支持率、再び急落するんですけれども、その後の参院選でも勝ちきりました。このように強硬な姿勢や疑惑で支持率が落ちても選挙ではこのように勝ち続けてきたわけなんですね。今年に入って新型コロナへの対応を巡ってまた再び支持率は急落しています。最新の世論調査でも不支持が支持を大きく上回っています。

【コメンテーター発言内容】
関口氏(全文):本当に選挙は強かったな。ある意味ではツキは持ってたかなという感じは僕はいつもしてましたが、秀征さん、どう受け止めていらっしゃいますか?

田中氏(要約):一期目のことがあるから投げ出したと言われないためにも、記者会見を予告した。また来年の前半期にワクチンを全国民に配布する分を確保するということを放送しました。あんないいことを記者会見まで待てないはずない。投げ出したとみられないために、ワクチンのことは地ならしだと思いました。とにかく長年、国の統治の継続性の要であるわけですからご苦労さまでしたということは言いたいですね。

横江氏(要約):外交面で安倍さんのことを考えてみますと、日本ってどこにいるの?首相の名前も覚えられない?と言われていたところに、外交において存在感をみせたということを知らしめたことはすごく大きな業績だったと思います。日本は1回失敗したもうだめというイメージがあると思うが、そこで2回目首相になって、7年8カ月やったというところは日本にも2回目があるというところを見せてもらえたと思います。

目加田氏(全文):先ほどのフリップで、何か疑惑が生じたりして支持率が下がってきても、また選挙で勝って支持率が上がり、そしてまた何か疑惑があってもということを繰り返してきて、結局6回、国政選挙で勝ち続けたということで、安倍さんの長期政権、7年8カ月を支えたというのはこの選挙区制度にもあったのかなと改めて思ったんですよね。ですので小選挙区制というものが本来であれば二大政党制を前提にして政権後退が起きることを期待して導入した制度にもかかわらず、結局、万年与党、万年与党というような状況をどこかつくりだしてしまっている結果として、有権者がしらけてしまうというか自分たちの意思が必ずしも反映しないという状況を作り出してしまったので私はこの長期政権が終わったということをきっかけに、改めて今の現代の日本にどのような選挙制度がふさわしいのか考え直す機会にしたいなと思いました。

与良氏(全文):第1次政権のこともありますから安倍さんご本人はどうしても体調で辞めるということはしたくなかったと思うんですよね。私たちの取材でも日々、誰にも相談せずにどうするか葛藤していたようです。だから本当に無念だったとは思います。ただし、この7年8カ月というのはここでもう一度立ち直って冷静に総括して検証していかなくちゃいけないなと思うんです。1つだけ挙げると、僕はものすごく記憶に残っているのは2017年夏の東京都議選ですか。街頭演説で一部の聴衆が安倍辞めろというコールを上げたと、それを指さして、こんな人たちに負けるわけにはいかないと、(関口氏:ありましたね。)批判を浴びたんですが、安倍さんにとって、自分にとって敵なのか、味方なのか判断がものすごいあったんですね。これは日本だけじゃありませんけど、これが一種、敵か味方、賛成か反対か、簡単な分断につながっていったと思うんですね。国の指導者というのは極力一致点を見いだす、民主政治というのは、最後はもちろん多数決ですけど一致点を見出す努力というのをもう少ししてもらいたかったと。結果的にメディアも新聞も、テレビも激しく分断されたわけですよ。反安倍のメディアとみなされたり親安倍とみなされたりすべてのことについて、そっちが先になって、僕はたぶん反安倍だと思われていると思うんですけど、すべてがその図式で当てはめられて、これは絶対いけないんだと、公文書の改ざんとか、いうことについても何かすべて、反安倍、親安倍の図式になってしまったことがやっぱり元へ戻さないといけないなと思います。

青木氏(全文):一強長期って、そのとおりなんですけど、本当に一強だったのかと思うんですよね。選挙制度のせいだと思うんですが、自民党内の派閥もほとんど力を失っちゃった。党執行部の力が強まった、それから民主党政権が失敗だったかどうかの総括もしなくちゃいけないけど野党がとにかく多弱だと。 メディアも分断されて、つまり周辺が全部陥没しちゃったので何か一強に見えちゃったと。だから関口さんがツキとおっしゃいましたけど、ある意味、周辺が陥没したことのツキが一定の長期にしてしまったという気がするんですね。ということはつまり、やっぱり政治の恐るべき貧困の中で、この8年間、このあと出てくると思うんですけどいろんな戦後の矜持みたいなものが結果的に破壊されてしまった。だからこの8年間をこういう形で過ごしてしまったことが今後どうなるのか、きちんと総括して一歩前に踏み出さないと、この8年間取り戻せないくらいのいろんな負の遺産もあるんじゃないかということを今日考えてみたいと思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、与良氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

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1、目加田の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

目加田氏(抜粋)::先ほどのフリップで、何か疑惑が生じたりして支持率が下がってきても、また選挙で勝って支持率が上がり、そしてまた何か疑惑があってもということを繰り返してきて、結局6回、国政選挙で勝ち続けたということで、安倍さんの長期政権、7年8カ月を支えたというのはこの選挙区制度にもあったのかなと改めて思ったんですよね。ですので小選挙区制というものが本来であれば二大政党制を前提にして政権後退が起きることを期待して導入した制度にもかかわらず、結局、万年与党、万年与党というような状況をどこかつくりだしてしまっている結果として、有権者がしらけてしまうというか自分たちの意思が必ずしも反映しないという状況を作り出してしまったので私はこの長期政権が終わったということをきっかけに、改めて今の現代の日本にどのような選挙制度がふさわしいのか考え直す機会にしたいなと思いました。

要旨をまとめると、
・安倍総理の長期政権を支えたのはこの選挙区制度である
この選挙区制度は本来二大政党制を前提にしており、政権交代が起きることを期待して導入しているにもかかわらず、結局万年与党になってしまった。
・自分の意志が必ずしも反映されない状況である日本でどのような選挙制度がふさわしいか考えなおす機会である。

というものです。

しかしながら、
・選挙区制度が機能していないことに対して立証できていないため、「現在の選挙区制が万年与党の状態を作りだした」とは言えず、目加田氏の主張は事実に反する恐れがある。
・また、「選挙で国民の意思が反映できていない」と主張するものの、国民の投票によって政権交代が実現されたことは同選挙区制度であるのだから、一概に選挙区制度によって民意が反映されていないとは言えず明らかに事実に反する。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での目加田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、与良氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
与良氏は今回の報道で、以下のように述べています。

与良氏(抜粋):
第1次政権のこともありますから安倍さんご本人はどうしても体調で辞めるということはしたくなかったと思うんですよね。私たちの取材でも日々、誰にも相談せずにどうするか葛藤していたようです。だから本当に無念だったとは思います。ただし、この7年8カ月というのはここでもう一度立ち直って冷静に総括して検証していかなくちゃいけないなと思うんです。1つだけ挙げると、僕はものすごく記憶に残っているのは2017年夏の東京都議選ですか。街頭演説で一部の聴衆が安倍辞めろというコールを上げたと、それを指さして、こんな人たちに負けるわけにはいかないと、(関口氏:ありましたね。)批判を浴びたんですが、安倍さんにとって、自分にとって敵なのか、味方なのか判断がものすごいあったんですね。これは日本だけじゃありませんけど、これが一種、敵か味方、賛成か反対か、簡単な分断につながっていったと思うんですね。国の指導者というのは極力一致点を見いだす、民主政治というのは、最後はもちろん多数決ですけど一致点を見出す努力というのをもう少ししてもらいたかったと。結果的にメディアも新聞も、テレビも激しく分断されたわけですよ。反安倍のメディアとみなされたり親安倍とみなされたりすべてのことについて、そっちが先になって、僕はたぶん反安倍だと思われていると思うんですけど、すべてがその図式で当てはめられて、これは絶対いけないんだと、公文書の改ざんとか、いうことについても何かすべて、反安倍、親安倍の図式になってしまったことがやっぱり元へ戻さないといけないなと思います。

要旨をまとめると、
・東京都知事選で、安倍やめろコールを受けた時、総理はその聴衆に対して「こんな人には負けるわけにはいかない」と。安倍総理は自分にとって、敵味方意識が強く、政治やメディアの分断につながってしまった。
意見の対立する中で、一致点を見出す努力を少し見せてほしかった。

というものです。
しかしながら、
・安倍総理の敵味方意識が強いとは主張しているものの、「安倍やめろコール」をしていた集団は事実に基づかずデマを流し、選挙妨害をする団体であった背景を言わないのは、政治的公平性を欠く。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での与良氏の発言は政治的に公平でないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍政権は信頼できない政権」「安倍政権は一強体制で国民の意見が反映されていない」という立場に立った意見のみが出てきました。

杉浦みずき氏(抜粋): 2018年には財務省の文書改ざんの問題で支持率、再び急落するんですけれども、その後の参院選でも勝ちきりました。このように強硬な姿勢や疑惑で支持率が落ちても選挙ではこのように勝ち続けてきたわけなんですね。

など、こうした姿勢が顕著にみられる発言もありました。

ですがこの問題に関しては「文書かいざん問題などはマスコミや野党が安倍政権批判のためにでっち挙げたデマである」「長年の長期政権の実現は国民の信頼があってこそである」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 安倍政権の辞任について報道された部分
 検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ 黒人銃撃事件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 風をよむ」にて安倍長期政権ついて報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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