2019年2月24日 サンデーモーニング(前編)

2019年2月24日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年2月24日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
米朝首脳会談の開催について報道された部分
辺野古の県民投票と統計手法の変更について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 米朝首脳会談の開催について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
米朝首脳会談について
 労働新聞HPが映し出され、北朝鮮メディアが米朝首脳会談の日程を報道したことが伝えられる。続いてトランプ大統領の記者会見映像に切り替わり、意気込みを語る映像が流される。その後、トランプ大統領は非核化について、「これまでと違う考えを示した」と伝えられる。
CM後、昨年の米朝首脳会談の様子とともに、米朝は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む共同声明を発表していたと伝えられる。トランプ大統領の記者会見映像に切り替わり、トランプ大統領は「実験がないかぎり私は急がない」と柔軟な姿勢を見せたとアナウンス。北朝鮮の軍事パレード映像とともに、“大陸間弾道ミサイルの廃棄だけで満足するのではないか”という懸念が広がるなか、米朝実務協議が開始されたと伝えられる。ビーガン米特別代表の講演映像に切り替わり、トランプ大統領は朝鮮宣言の終戦宣言まで念頭に置いているとアナウンス。北朝鮮にも新たな動きがあったと伝えられる。

北朝鮮政府が発表した内部文書について
CM後、北朝鮮政府の内部文書が映し出される。文書には北朝鮮の食糧事情悪化について記されており、国際機関に緊急援助を要請していることがわかったと伝えられる。北朝鮮南部の住民たちの姿が映し出され、北朝鮮政府は「制裁によって農業分野も打撃を受けた」として、制裁は「野蛮で非人道的」と非難したとアナウンス。再びトランプ大統領の記者会見映像に切り替わり、制裁解除には北朝鮮による具体的な措置が必要であると指摘したと伝えられ、ホワイトハウスは“完全な非核化に応じるなら経済発展実現のため取り組む”との声明を発表していたとナレーション。元北朝鮮外交官・太永浩氏の会見映像に切り替わる。太永氏は「核兵器を絶対放棄しないだろう」と厳しい見方を示し、北朝鮮の狙いは制裁緩和で、中国との貿易再開だと話したと伝えられる。

「非核化への道筋は、不透明なままです」という言葉を最後に、VTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・昨年の米朝首脳会談での共同宣言後に非核化等の進展はなく、進展があったのは遺骨回収だけだった
・北朝鮮は経済制裁の緩和を求めており、アメリカは完全な非核化を求めている
・北朝鮮は制裁による食糧状況悪化を理由に国際機関に緊急援助を求めた
・トランプ大統領は、「(核・ミサイル)実験がない限り私は急がない」と歩み寄りの兆しを見せた
・安倍首相とトランプ大統領が電話会談を行い、拉致問題で協力を約束した

【コメンテーターの発言】
藪中三十二氏(要約・ボード説明):真の非核化のためには、「申告」が非常に大事。どんな核施設があり、核爆弾を何発持っているのかをハッキリさせた上で廃棄をさせるのが非核化交渉のプロセス。この第一歩が「申告」。しかし北朝鮮はこれをやると本当に核廃棄をさせられるので、絶対にそれを避けたいという狙いがある。そこで見せかけの非核化措置をとり、寧辺の核施設等を完全に廃棄した上で制裁解除を求め、平和宣言をするのが北朝鮮の狙い。しかしトランプ大統領はそれにOKしかねない怖さがある。トランプ大統領は個人的関係を大事にする。金正恩との関係は良いので絶対に成功すると言っている。70年続く朝鮮戦争をやめて平和宣言をすればノーベル平和賞だという話もある。北朝鮮が実験をやめれば、アメリカ本土の安全は守られる。しかし、見せかけの非核化措置で経済制裁まで解除してはダメだというのが今の日本の立場。日本はトランプ大統領対し、「まず申告させて甘い言葉にのってはいけない」と注文しなくてはいけない場面だが、私は相当心配している。安倍総理はトランプ大統領にこれを言ったのか分からない。トランプ大統領の頭に入ったのかというところももっと心配。2度目の首脳会談、僕は心配だなという感じがする。

寺島実郎氏(要約):注目しなくてはいけないのは、中国を経由していくことが発表になったこと。中国の影がある。この1年間で、中国にとって北朝鮮は「思うに任せる北朝鮮」に大きく変化した。中国は在韓米軍の圧力の段階的緩和と制裁緩和・解除を求めている。アメリカはICBMが飛んでこなければ、在韓米軍の削減をしてもいいと言いかねない。最も注意しなくてはいけないのは、制裁緩和の財源。戦後賠償の絡みで財源を日本に回そうという話が来かねない。アメリカに対する過剰同調でこの問題に向き合ってきた日本が、トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したと報道されたことで、日本の東アジアに対するスタンスの矮小さを世界に非常に印象づけてしまった。

目加田説子氏(全文):何としてでも、とにかく核実験にあたりミサイル実験が行われていた時代に逆戻りしないようにという意欲は感じて、まあ、トランプさんが急がないというふうにおっしゃっている背景っていうか、外囲としてはそういうことなんじゃないかということを期待したいというのがまず一つあるんですけれども。先ほどのボード解説の中で、「これではダメだ」という日本のことについてご指摘があったんですけれども、一番今気がかりなのは、日本の政治の反応だと思ってるんですね。確かにトランプさんと30分くらい会談をされたということで、そのときに拉致の問題であったり、あるいはこのミサイルの問題なども話題に出たのかもしれない、出たんだろうと推測するんですけれども、日本の独自外交と言いますか。その総理は何をしようとしてるのかなっていうところが、正直ずっととっても見えにくい。例えば予算委員会での審議も、野党もそういうことについて追及しない。ほとんどしてないですし、議論が起きていないのかなという感じがするんですね。で、先日トランプさんって、中距離核戦力全廃条約、INFからも撤退するって発表してますよね。そういうことが、アメリカの、例えばINFへのミサイル回帰というものが北朝鮮に対して非核化を求めるときに影響しないのかどうなのかというなことついて、日本はそういうマイナス材料も含めてどうするんだろうっていうことをアメリカに何を求めてるのか。それからアメリカ頼みじゃない日本の自主的な朝鮮に対する外交というものをどういうふうに組み立てようとしているのかということが全く見えてこないということは、私はとっても気がかりだと思っています。

浜田敬子氏(全文):先ほどその、中国との貿易が中止になってることでダメージのことが報道されましたけれども、先日その北朝鮮に詳しいジャーナリストもすごくそれを心配みたいで。あの報道によると、月に1600円程度、人民から徴収までしてるというので、相当やっぱり経済状況も深刻だと思うんですね。これに対してやっぱりその人道的に何もできないっていう状況も何とかしなくてはいけない一方で、それをアピールすることで、アメリカのトランプさんの個人的なレガシーを作りたいという思いと。私気になるのは、今回韓国の文在寅大統領もどういう役回りを果たすんだろうと思ってるんですけれども、多分大統領も自分も支持率があまり良くない中で、やっぱりその、北朝鮮との国交正常化とか、朝鮮半島の平和というものが、自分の支持率がUPするのであれば、ここにのってしまう。みんな政治家が自国ファースト・自分ファーストになって、どんどん自分の手柄を立てるために、こういう外交を利用しているように見えてしまう。そこに対して日本の安倍政権は、肯定も否定もしてませんけども、ノーベル平和賞をトランプさんに推薦したという報道も流れて、一体その日本というのは、さっき目加田さんもおっしゃったようにどういうスタンスでこれに向かっているのか。日本だけが蚊帳の外に置き去りにされている感じがしてならないですよね。

松原耕二氏(要約):これから起ころうとしていることは、藪中のおっしゃる通りだと思う。ビーガン特別代表は講演で、すべての申告もまだ先で良いと言っている。事実上、北朝鮮の望む段階的非核化を受け入れようとしている。そういう意味では金正恩ペース。アメリカは民主国家だが北朝鮮はそうじゃない。民主国家は国民の機嫌を取らなければいけない。北朝鮮は少々飢餓があっても(国民を)押さえつければいい。だから、交渉事はより急いだ方が足元を見られる。これがまさに今のトランプさんだと思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

目加田氏(抜粋):一番今気がかりなのは、日本の政治の反応だと思ってるんですね。(中略)日本の独自外交と言いますか。その総理は何をしようとしてるのかなっていうところが、正直ずっととっても見えにくい。(中略)で、先日トランプさんって、中距離核戦力全廃条約、INFからも撤退するって発表してますよね。そういうことが、アメリカの、例えばINFへのミサイル回帰というものが北朝鮮に対して非核化を求めるときに影響しないのかどうなのかというようなことついて、日本はそういうマイナス材料も含めてどうするんだろうっていうことをアメリカに何を求めてるのか。それからアメリカ頼みじゃない日本の自主的な朝鮮に対する外交というものをどういうふうに組み立てようとしているのかということが全く見えてこないということは、私はとっても気がかりだと思っています。

要旨をまとめると、
・米朝の駆け引きに安倍総理の独自性が見えない
・例えば、トランプ米大統領がINFから撤退を表明した際に日本はアメリカに「北朝鮮の非核化に悪影響だ」と指摘すべきだった
・米国頼みでない、日本の自主的な朝鮮との外交をどのように組み立てるのかが見えてこない
というものです。

しかしながら、
・北朝鮮のような不安定な国家と外交を進めるうえで国際協調による圧力は必須ともいえる要素である
・したがって、日本は韓国による制裁措置違反に代表される国際協調の輪を乱すような独断行動をとるべきではない。以上より「日本の自主的な外交がないことが問題だ」という主張は明確な誤りである。
・INF条約破棄については中国を巻き込んだスキームの再構築が目的であり、北朝鮮とは全く別の問題である。したがって北朝鮮の核保有を正当化するものではない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での目加田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

浜田氏(抜粋):みんな政治家が自国ファースト・自分ファーストになって、どんどん自分の手柄を立てるために、こういう外交を利用しているように見えてしまう。そこに対して日本の安倍政権は、肯定も否定もしていませんけども、ノーベル平和賞をトランプさんに推薦したという報道も流れて、一体その日本というのは、さっき目加田さんもおっしゃったようにどういうスタンスでこれに向かっているのか。日本だけが蚊帳の外に置き去りにされている感じがしてならないですよね。

要旨をまとめると、
・政治家が自国ファーストになって、自分の手柄を立てるために外交を利用しているように見える
・日本の安倍首相はどういうスタンスでこれに向かうのか
・日本だけが蚊帳の外に置き去りにされている感じがしてならない
というものです。

しかしながら、
・外交で成功したら手柄として見られることは確かにあるが、進め方に明らかな問題があるなどという場合でない限り手柄を立てることだけが目的だという証明にはならない。
・あらゆる政治的動きを無条件に批判ができる言説で、視聴者に事実と異なる認識を与える恐れが高いといえる。
・日本はアメリカをはじめ国際社会と連携して北朝鮮問題に対応しており、日本が蚊帳の外だという主張は誤りである。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ米大統領の北朝鮮への態度には大きな問題がある」「事態が北朝鮮ベースで動いている」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「トランプ米大統領は北朝鮮の出方次第だという姿勢を崩していない」「北朝鮮は国際協調の包囲網の範囲内で動いている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 辺野古の県民投票と統計手法の変更について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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