2020年4月5日 サンデーモーニング(後編)

2020年4月5日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2020年4月5日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① NY州の医療崩壊の危機について報道された部分
② 東京都の経路不明のコロナウイルス感染者の増加について報道された部分
③ 「風をよむ」にてグローバリズムの在り方について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題が或るのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風をよむ」にてグローバリズムの在り方について報道された部分
となります。では、放送内容を見ていきましょう。

【VTR要約】
新型コロナウイルスの影響で国と国との間にも変化が起き始めている。今年1月からケニアなどで大量発生したサバクトビバッタに農作物が食い荒らされる被害が拡大し、パキスタンやインドまで到達し中国もがバッタの襲来に備えるよう地方政府に要請しました。ベトナムやカザフスタン、ロシアが食料の輸出を停止し、世界的な食料供給網の停滞と価格高騰が懸念されています。国連食糧農業機関や世界保健機関などは共同声明で「国際市場で食料品不足が起きかねない」と警告し、英王立国際問題研究所は「すでに食料ナショナリズムが始まっている、この動きは今後さらに強まるだろう」と警鐘を鳴らした。食料ナショナリズムとは食料の他国への流出を抑え、自国を最優先にする姿勢をとることです。日本の食料自給率は先進国の中で最低となっており、世界的に自国最優先の空気が広がれば日本は苦しい立場になります。新型コロナウイルスはグローバル化した世界が目指す、自由なモノの流れを妨げる要因となっているのです。
またウィルス感染拡大を防ぐために相次いで打ち出された国境封鎖宣言により、グローバリズムの理念である人の自由な行き来さえ停滞する事態を招いたのです。訪日外国人客数が58.3%減、中でも訪日中国人客は87.9%減となりました。
さらに、モノ・ヒトとともにグローバリズムが掲げる自由なカネの動きにもコロナウイルスは影を落としました。グローバリズムの下、拡大した金融資本主義が後退すればその影響は日本にとっても深刻です。IMFのゲオルギエワ専務理事は「2020年と21年の世界経済の成長見通しは2009年度同じ程度か」などと述べました。ニッセイ基礎研究所の上席研究員の試算ではGPIFの1~3月期の運用は17兆円前後の赤字とする予測が出されました。ヒト・モノ・カネの自由な移動を目指すグローバリズムが、そのグローバリズムによって運ばれた新型コロナに揺さぶられるという皮肉な現実。グローバリズムが試されているのでしょうか。

【コメンテーター発言内容】
関口氏:本当に皮肉な話だね。

寺島氏(全文):まさに試されているんですけれども、日本はどうすべきかというときに、コントラストの数字を2つ言いたいんですね。国民に2枚マスク配るために200億円かかるんです。一方で、僕は衝撃を受けていますけれども、3月1カ月で中央銀行がETF買いというので株価を支えるために突っ込んだ金が1兆5000億円なんです。ですからこのコントラスト、株価を支えるということは頂上株式の大企業と資産家を支えるための1兆5000億使うわけです。ここで日本が考えなきゃいけないのは産業力の原点に返る、食料の問題含めてですけれども、やはり防護服にしろ人工呼吸器にしろ、PCR検査にしろ、何よりもマスクにしろ、例えば1億枚しかマスクを作れてないんですよ、日本は。それを4分の3、外部に依存している状況になっているやつを産業力を結集して国民を安心させるために、何カ月でここまで進めるという計画が本当の政策科学なんです。そういうことにわれわれの視界を持っていかなきゃいけないことを発言しておきます。

大宅氏(要約):今、世界中が自国が優先で動いている。国境も封鎖して鎖国状態です。これを許してしまっては絶対だめなんです。 やらなきゃいけないのは、新しい情報、いい情報があれば共有すること。時刻優先ではなく、国際的な協調というのを前面に打ち出してその役を日本は担わなくちゃいけないんじゃないかと思っています。

仁藤氏(全文):世界中の生産ラインと流通に影響が出ているということで、私たちが増設を準備しているシェルターでもトイレの便器が届かなくて使えないというようなことが起きています。食べ物についても、多くの人が輸入商品とか貿易に頼っている中で、輸出制限とか国境封鎖になって食料不足が起きれば、低所得な国だったり貧困家庭などで切実に食べ物が必要な人たちに行き届かなくなることが心配です。日本も自給率が37%と低いためそういう不安からパニックが起きると、支え合いじゃなくて、奪い合うになってしまう可能性もあると思うんですよね。そうならないためにどうするべきかということを具体的に示してもらわないと市民は不安を解消できないし、そういうことについてしっかりしていない今の政治というのを変えないといけないなと思っています。

萩上氏(要約):新型コロナウイルスによって社会のいろんなことが変わるんじゃないかと言われているが、一方でもともとあった様々な価値観が強化される面でもある。日本は先駆けてもともとから食料ナショナリズムをあおっていた面はある。それが食料自給率という言葉を使って国民にもっと国産をと言い続けていた。本当は自給率は重要な数字ではなくて、自給力とかあるいは再分配数が重要になってくるんですけど、こうした数字に基づいて、食料ナショナリズムをあおると言うのは、新しいことじゃない、ただそう言ったものが今後どう加速するのか。もともとあったどの価値観が加速するのか、注目する必要がある。

松原氏:(要約):感染の危険から家族を看取れず、遺骨が戻ってくるだけというこの悲しみが世界中で起きている。グローバリズムと逆のことが起きているように見えますけどこの共通の体験・記憶というのは、ポストコロナ時代に人々を共感して結びつける、そういう方向に行く可能性もある、私はそんな風に信じたい。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、 寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、 仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、 この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):まさに試されているんですけれども、日本はどうすべきかというときに、コントラストの数字を2つ言いたいんですね。国民に2枚マスク配るために200億円かかるんです。一方で、僕は衝撃を受けていますけれども、3月1カ月で中央銀行がETF買いというので株価を支えるために突っ込んだ金が1兆5000億円なんです。ですからこのコントラスト、株価を支えるということは頂上株式の大企業と資産家を支えるための1兆5000億使うわけです。ここで日本が考えなきゃいけないのは産業力の原点に返る、食料の問題含めてですけれども、やはり防護服にしろ人工呼吸器にしろ、PCR検査にしろ、何よりもマスクにしろ、例えば1億枚しかマスクを作れてないんですよ、日本は。それを4分の3、外部に依存している状況になっているやつを産業力を結集して国民を安心させるために、何カ月でここまで進めるという計画が本当の政策科学なんです。そういうことにわれわれの視界を持っていかなきゃいけないことを発言しておきます。

要旨をまとめると、
・一般市民にマスクを配布するための予算200億円に対して、ETF買いによって大企業や資
産家を支えるために1兆5000億円もかけている。
・日本は4分の3の産業を外部に依存している状況で、国民を安心させるために何か月でここまで進めるということを示すべきである、

というものです。
しかしながら、
・日銀はETFを買う狙いとしては、「大企業や資産家だけではなく、金市場の不安定さが企業や家計の不安定化につながるのを防ぎ、国民の消費や設備投資などの経済活動を補助するものである」と説明している。
・その為、「大企業や資産家の為にETFを行いこれが国民生活にはつながらない」という寺島氏の主張は、事実に反する恐れがあり政治的にも公平ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。

仁藤氏(抜粋): 世界中の生産ラインと流通に影響が出ているということで、私たちが増設を準備しているシェルターでもトイレの便器が届かなくて使えないというようなことが起きています。食べ物についても、多くの人が輸入商品とか貿易に頼っている中で、輸出制限とか国境封鎖になって食料不足が起きれば、低所得な国だったり貧困家庭などで切実に食べ物が必要な人たちに行き届かなくなることが心配です。日本も自給率が37%と低いためそういう不安からパニックが起きると、支え合いじゃなくて、奪い合うになってしまう可能性もあると思うんですよね。そうならないためにどうするべきかということを具体的に示してもらわないと市民は不安を解消できないし、そういうことについてしっかりしていない今の政治というのを変えないといけないなと思っています。

要旨をまとめると、
・コロナによる生産ライン止めによって、食料不足が起きてしまう。日本は食料自給率が低くなってしまい、奪い合いが起きてしまうのではないか。そうならないために今の政治を変えないといけない。

というものです。

しかしながら、
・農林水産省は3月25日に、大手スーパーチェーンを通して、食料の安定的な供給を求めており、かつ現時点においてコメは6.2か月分、外国産小麦は2.3か月分の備蓄がされており、食料品の不足は発生していない。
・また、大手チェーンストアなどで構成される日本チェーンストア協会の理事も「食料品の生産も物流も止まっていない」という旨の発表をしている。
・その為、「食料不足が発生してしまい、奪い合いが起きてしまう」という仁藤氏の主張は事実から明らかに反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「コロナによって食料品が不足してしまう」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「食料品を輸出停止してしまう国は主に発展途上国であり、それらの国は自国民の為に食料を確保すために行うが、一方で先進国は食料品の輸出は主力産業なので輸出が停滞することは考えにくい」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① NY州の医療崩壊の危機について報道された部分
については前編の報告を、

②東京都の経路不明のコロナウイルス感染者の増加について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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