TBS「サンデーモーニング」、2020年5月17日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 救急の現場における抗体検査ついて報道された部分
② 「風を読む」にて新型コロナウイルスの出口戦略について報道された部分
③ コロナによる経済の影響と政府の支援について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
①救急の現場における抗体検査ついて報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
水曜日、厚労省が抗原検査キットを承認し、公的医療保険の適用を決めました。抗原検査は体内に新型コロナの抗原があるかどうか調べるもので、鼻の奥の粘液をとり、30分ほどで結果が判明します。加藤厚労相は、「緊急性を要するようなところ、救急の現場で患者が運び込まれている。そういうところにおいて短時間で結果が出る利点がある。」と述べました。
京都第二赤十字病院では、救急搬送の半数近くが発熱や呼吸困難など新型コロナの感染が疑われる患者で、対策せずに治療を行うと医療従事者が感染し、そこから院内感染が広がるおそれがあります。日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授は、「外来の現場ですぐに結果がわかる。陽性にでた場合にはほとんど疑陽性がない。確定診断につながる。」と話し、京都第二赤十字病院の医師は、「非常にありがたいツールの一つだと思う」と述べました。しかし検査の精度から、陰性と出ても感染の可能性があり、感染防護の対応を取る必要があります。
東京都と大阪府は大規模な抗体検査の実施計画を発表しました。抗体検査とは、過去に新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べるものです。血液を採取し、検査キットに移し、試薬と混ぜ合わせる。検査時間はわずか15分です。検査を受け、陰性つまり過去に感染したことがないという結果が出た男性は、「少し安心。変わらず注意していきたい」と述べました。検査を行った村丘院長は、抗体検査について精度がまだい低いことに加え、今回の新型コロナの場合、抗体があっても再び感染しないという証拠はないと指摘しました。今後、検査の精度向上が望まれる一方、国や自治体が大規模に抗体検査を実施することによって地域での感染の広がりを把握し、対策につながることが期待されています。
スタジオでは水野アナが新型コロナウィルスの検査方法についてそれぞれ比較しながら解説を行った。PCR検査と抗原検査では、いま感染しているかを調べるものです。前者では、ウイルスの遺伝子の特徴的な一部を切り出して検査します。専用の機械がある施設に検体を送り、さらに検査そのもので4~6時間を要します。精度は70%程度です。後者は、ウイルスのたんぱく質を検出します。検体を採取したその場で、約30分をほどで結果が出ます。PCR検査の不足を補うことが期待されていますが、精度はPCR検査よりも低いため、次の方法が検討されています。
この抗原検査で陽性の場合は感染が間違いないので隔離します。抗原検査を行い、陰性と出たら、より精度の高いPCR検査で再度検査するというものです。日本医師会は、秋以降インフルエンザが流行ったときに有効だなどとしています。
抗体検査は抗体を検出し、かつて感染していたかどうかを調べる検査です。血液を採取して新型コロナの抗体の有無を調べると感染したかどうかが分かります。この抗体検査は無症状で自覚がない感染者も分かるため、感染の実態が把握できるとされていて、厚労省は来月から1万人規模の検査を始める方針を明らかにしました。こうした検査を組み合わせたり有効的に活用したりして、新型コロナの実態を把握することが求められています。
【コメンテーター発言内容】
岡田氏(全文):このコロナの場合は、この抗体を持っているから二度かかりはしないかといったら、言い切れないんですけれども抗体を持っていれば、かかった経験があるかないかというのは白黒がつくわけです。今回500人なんですけれども検査の結果が出てきまして、日本人が、今までの春、2〜5月、どれくらいの人がかかったのかなというのが見つかってきたんですけど、0.6%くらいじゃないかという数値が出てきたんです。つまり99%の人はかかっていないと。
ですから2月以降、たくさんの報道がコロナでございましたけれども、日本人は手洗いをしたり、それからいろんな対策をしたり、強制力はなくても、ちゃんと順守して自粛をして、オーバーシュートですとか感染爆発とか言われましたけどそれを免れて、ほとんどの人がかかっていない。そういう状態なんですね。それは、良かったことなんですけれども、じゃ私たちはこれから先をどう考えるかといいますと先ほど南半球でたくさん感染者が増えてきているということがありますけれども、南半球は、これから冬になりますよね、気温が低下して、そうすると南半球ではやって、夏場は室内で密になればクラスターが出るかもしれないですけど市中、街中で大流行というのは、日本ではあまりないような環境なんです。
(北半球では)多少、流行の力が弱くなる。ただ南半球では大流行するだろうと。だけれども、季節が巡って11月とかになりましたら気温が低下して乾燥しますよね。そういう状況になったら今度は、南半球からインフルエンザのウイルスと一緒に北半球に帰ってくる。そうなったときに日本人はまだ、ほとんどがかかっていない。そうしたら大流行するんじゃないかということが強く懸念されるので、今、夏になって患者さんが減ってくると報道も減るだろうし、クラスターは多少出るかもしれませんけど、気が緩みますよね。今、緩めちゃいけないのは、秋冬に日本人だけでもインフルエンザだけでも1000万人くらいの患者さんが毎年出るわけです、冬に。それプラス新型コロナということになるわけです。同時だった場合に、同じような症状で病院に行くわけですね。ですから検査もやらなければいけないし、薬もたくさん用意しなければならないし、入院施設は、隔離施設は、病院はどうするのという対策こそ、今、夏の私たちに猶予が与えられたこの時期にやっておくことが必要で、逆にメディアの皆さんにも、患者さんがいないけれどもでも、秋冬に向けて国民啓発のためにもちゃんと報道を続けていただきたい。それはもしかしたら現状じゃなくて、予防だとか対策だとかウイルス学の知識とか、やり方はたくさんあると思うんです。行政の皆さん、それから政治の皆さんにはどうぞ、この夏に秋冬の対策を国民のためにやっていただきたいと思うんです。低温乾燥というのは何かといったら飛まつ感染がエアロゾルになりやすいということがあるので、もしかしたらマスクや手洗いや接触感染防止では十分じゃない状況が来るかもしれない。そこはよろしくお願いしたいところです。
関口氏:今度の第2波、第3波が来たときには?
岡田氏:余計、怖いということかもしれないですね。
関口氏:恐らく夏に向けて減っていくだろうけどそのときに、準備しなきゃいけないと?
岡田氏:そうです、医療と薬と私たちの気構えを準備しなきゃいけないので、忘れないでくださいということをお願いしたいと思います。
荻中氏(全文):今、岡田先生が言われたとおりだと思うんですけれどもね。日本は今から経済をもう一回再スタートしなきゃいけない、そこは非常に関心は強いと思いますけど世界的に見ても今の検査体制をものすごく強くするとか、次に備えていくことが大事だと思うんですね。不思議だと思われてるんです、今、世界で日本は。本当に不思議だなと、高齢者がいっぱいいると、どうも検査もほとんどしていないみたいだと。それでいて意外とうまくいっているというのは何なんだと、うまくいっているというのは死者が少ない。たぶん社会的なとか、文化的なことがあったのかなと。握手をするんじゃなくてお辞儀をするとか、いつもふだんからマスクをしてたとかね。手を洗うとか、あるんだろうけれどと言われてますけれども最後にいつも言われるのは、いや、運がよかっただけなんじゃないかという見方もあるんですね。大事なことは、次に絶対に備えておく。今から検査態勢とかを徹底的にしておかないと世界的に見て、ちょっと変な国だなと思われてもいけませんからね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、岡田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、荻中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、岡田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
岡田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
岡田氏(抜粋):このコロナの場合は、この抗体を持っているから二度がかりしないかといったら、言い切れないんですけれども抗体を持っていれば、かかった経験があるかないかというのは白黒がつくわけです。今回500人なんですけれども検査の結果が出てきまして、日本人が、今までの春、2〜5月、どれくらいの人がかかったのかなというのが見つかってきたんですけど、0.6%くらいじゃないかという数値が出てきたんです。つまり99%の人はかかっていないと。
ですから2月以降、たくさんの報道がコロナでございましたけれども、日本人は手洗いをしたり、それからいろんな対策をしたり、強制力はなくても、ちゃんと順守して自粛をして、オーバーシュートですとか感染爆発とか言われましたけどそれを免れて、ほとんどの人がかかっていない。そういう状態なんですね。それは、良かったことなんですけれども、じゃ私たちはこれから先をどう考えるかといいますと先ほど南半球でたくさん感染者が増えてきているということがありますけれども、南半球は、これから冬になりますよね、気温が低下して、そうすると南半球ではやって、夏場は室内で密になればクラスターが出るかもしれないですけど市中、街中で大流行というのは、日本ではあまりないような環境なんです。
(北半球では)多少、流行の力が弱くなる。ただ南半球では大流行するだろうと。だけれども、季節が巡って11月とかになりましたら気温が低下して乾燥しますよね。そういう状況になったら今度は、南半球からインフルエンザのウイルスと一緒に北半球に帰ってくる。そうなったときに日本人はまだ、ほとんどがかかっていない。そうしたら大流行するんじゃないかということが強く懸念されるので、今、夏になって患者さんが減ってくると報道も減るだろうし、クラスターは多少出るかもしれませんけど、気が緩みますよね。今、緩めちゃいけないのは、秋冬に日本人だけでもインフルエンザだけでも1000万人くらいの患者さんが毎年出るわけです、冬に。それプラス新型コロナということになるわけです。同時だった場合に、同じような症状で病院に行くわけですね。ですから検査もやらなければいけないし、薬もたくさん用意しなければならないし、入院施設は、隔離施設は、病院はどうするのという対策こそ、今、夏の私たちに猶予が与えられたこの時期にやっておくことが必要で、逆にメディアの皆さんにも、患者さんがいないけれどもでも、秋冬に向けて国民啓発のためにもちゃんと報道を続けていただきたい。それはもしかしたら現状じゃなくて、予防だとか対策だとかウイルス学の知識とか、やり方はたくさんあると思うんです。行政の皆さん、それから政治の皆さんにはどうぞ、この夏に秋冬の対策を国民のためにやっていただきたいと思うんです。低温乾燥というのは何かといったら飛まつ感染がエアロゾルになりやすいということがあるので、もしかしたらマスクや手洗いや接触感染防止では十分じゃない状況が来るかもしれない。そこはよろしくお願いしたいところです。
要旨をまとめると、
・日本が抗体検査をしたところ、99%の人が抗体を持っていない。
・南半球ではこれから冬が来て、乾燥しコロナウイルスの感染拡大が早まる。
・冬になると、インフルエンザウイルスと一緒にコロナウイルスが北半球へ持ち込まれ、日本人は抗体を持っていないため、感染が爆発的に流行する。
というものです。
しかしながら、
・乾燥している2月ごろには日本にもコロナウイルスが持ち込まれていたのにも関わらず、結果として他国に比べて感染を抑え込むことができていた。
・また、高温多湿なブラジルやシンガポール等でも、コロナウイルスは発生しており、また南半球に位置するオーストラリアはコロナウイルスの感染が収束している傾向がある。
・そのため「乾燥し、寒い地域・気候であると感染が拡大する」という岡田氏の主張は現状と矛盾しており、事実に反する恐れがある。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での岡田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、荻中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
荻中氏は今回の報道で、以下のように述べています。
荻中氏(抜粋):今、岡田先生が言われたとおりだと思うんですけれどもね。日本は今から経済をもう一回再スタートしなきゃいけない、そこは非常に関心は強いと思いますけど世界的に見ても今の検査体制をものすごく強くするとか、次に備えていくことが大事だと思うんですね。不思議だと思われてるんです、今、世界で日本は。本当に不思議だなと、高齢者がいっぱいいると、どうも検査もほとんどしていないみたいだと。それでいて意外とうまくいっているというのは何なんだと、うまくいっているというのは死者が少ない。たぶん社会的なとか、文化的なことがあったのかなと。握手をするんじゃなくてお辞儀をするとか、いつもふだんからマスクをしてたとかね。手を洗うとか、あるんだろうけれどと言われてますけれども最後にいつも言われるのは、いや、運がよかっただけなんじゃないかという見方もあるんですね。大事なことは、次に絶対に備えておく。今から検査態勢とかを徹底的にしておかないと世界的に見て、ちょっと変な国だなと思われてもいけませんからね。
要旨をまとめると、
・コロナの第2波に備えていかなければならない。
・日本は高齢者が多く、PCR検査もほとんどしていないに、感染が抑えられているのは握手をしないでお辞儀することやマスクの着用など文化的な要素によって感染が抑えられたという見方もあるが、運が良かっただけではないか。
・今から検査体制を対策しておかないと、日本が世界的に見ると変な国に思われてしまう。
というものです。
しかしながら、
・「日本は文化的な風習により感染が抑え込まれた」という主張は、欧州系メディアが憶測で報道したのが始まりであり、これを明白に証明する事実は存在せず、事実に反する恐れがある。
・日本政府は新型コロナウイルス対策に際して、対策本部を設置しクラスターの抑制等、様々な施策を実行した。その為、「運がよかっただけである」という荻中氏の主張は事実に明らかに反し、政治的公平を欠く。
・
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での荻中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「PCR検査を増加させるべきである」「抗体検査や抗原検査を推進すべきである」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「抗体の保持者が7割を超えなければ自然免疫を獲得したとは言えず、感染状況が比較的落ち着いている日本で検査を行う意義がない」「疑陽性のリスクについても考えるべきである」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」にて新型コロナウイルスの出口戦略について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ コロナによる経済の影響と政府の支援について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
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