TBS「サンデーモーニング」、2020年5月17日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 救急の現場における抗体検査ついて報道された部分
② 「風を読む」にて新型コロナウイルスの出口戦略について報道された部分
③ コロナによる経済の影響と政府の支援について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
②「風を読む」にて新型コロナウイルスの出口戦略について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
日本では、39県で緊急事態宣言が解除されるなど、世界中が新型コロナからの出口を模索しているが、懸念も広がっています。アメリカの感染症対策センターの主要メンバー・ファウチ氏は12日、拙速な経済再開が第2波を招きかねないとの警鐘を鳴らしました。中国・武漢や、新型コロナ対策で高い評価を得ていた韓国でも160人以上の集団感染が発生しています。2月に独自の緊急事態宣言で感染を抑え込んだかにみえた北海道では4月に入り札幌市を中心にクラスターが発生、第2波への懸念があります。
第二波第三波と繰り返し押し寄せる感染拡大は、第一次世界大戦中の1918年春、アメリカから始まったとされるスペイン風邪でも起きていました。アメリカから軍艦でヨーロッパに向かう兵士によって世界中に広がった。さらに、当時対戦のさなかにあった国々はウイルス感染による戦力の低下が敵国に知られるのを恐れ情報を封印し、感染拡大に拍車をかける結果を招きました。世界中で4000万人、一説には1億人とも言われる死者を出しました。日本での犠牲者は、軍艦「矢矧(やはぎ)」での集団感染を含め、およそ38万人にも上りました。
春から夏にかけてアメリカとヨーロッパを中心に感染を広めたスペイン風邪は、夏場いったん小康状態に入ったあと、秋の訪れとともに再び欧米を中心に爆発的な感染をもたらしました。大正11年、内務省衛生局が出したスペイン風邪に関する報告書には、死亡率が高いなどと記されています。第2波の致死率は第1波の4倍以上になっており、ウイルスの変異によって高い病原性を獲得した可能性が指摘されています。世界各国が経済を支えるための出口戦略を急ぐ中、懸念する声も上がる第2波。新型コロナとのせめぎ合いはいつまで続くのでしょう。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):過去の話かもしれないけれど、日本の死者のほとんどは第2波の被害だったというから、これは何かの参考にしなければいけないと私は思います。
寺島氏(要約):新型コロナについては病原体が特定できており、対抗する道筋が見えているので、恐怖心を煽る形でスペインかぜを使わない方がいい。日本の科学ジャーナリズムの層の薄さを感じた。本当に世界の最先端の知見を共有していけるようなジャーナリズムの体制を作らないと大変だ、大変だだけでもってジャーナリズムが役割を果たしちゃうという、こちらのほうに懸念を持ちます。
・元村氏(全文):第2波の話がありましたけれども、前半の岡田さんの話を受けるとまだ日本は本格的な流行を迎えていないという考え方もできると思うんですね。今年は、去年の冬から今年の春にかけてのインフルエンザの患者がすごく少なかったということは報じられていますけれどもその分、抗体を持っている人が少ないために今年の冬にインフルエンザの患者も増えるんじゃないかと懸念されています。そんな中でダブル流行ということになると、本当にパニックになりかねないと思います。もちろん変異の可能性もありますし。そんな中で、じゃ、どうやって経済とのバランスをとっていくかというときに、やっぱり私たちも政治家も知事も考えなきゃいけないのは、この後、どんな世界になるのか、どんな世界にしたいのか、その具体的なイメージを描くことだと思います。病気を封じ込めても、経済困難の人が増えては元も子もないので、その辺りが本当に課題になると思います。
藪中さん(要約):コロナが引き起こしている新しい世界というのが1929年と非常に関係してると思うんですね。世界があのときは大恐慌になり、それが保護主義の世界になるんですね。今度はこれが、すごく内向きな自国中心主義になっている。そういう中で世界のリーダーがない、この新しい世界をすごく心配しています。
・松原氏(全文):先ほどスポーツのところでもPCR検査をやれるから再開できるとありましたよね。もし、その能力がないと第2波が来てもうちに閉じこもるしかなくなるわけです。経済も悪くなる。でも検査能力があれば隔離をして防ぐことができる。検査をすれば、能力が上がれば、検査を回すことができるかもしれないわけですね。ですから日本の弱点、今回検査もそうだしITもそう。いろいろな弱点が出ましたから、とにかくそれをですね、次に向けて話し合って準備をしておくべきだと思います。それを優先的に。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
元村氏は今回の報道で、以下のように述べています。
元村氏(抜粋):第2波の話がありましたけれども、前半の岡田さんの話を受けるとまだ日本は本格的な流行を迎えていないという考え方もできると思うんですね。今年は、去年の冬から今年の春にかけてのインフルエンザの患者がすごく少なかったということは報じられていますけれどもその分、抗体を持っている人が少ないために今年の冬にインフルエンザの患者も増えるんじゃないかと懸念されています。そんな中でダブル流行ということになると、本当にパニックになりかねないと思います。もちろん変異の可能性もありますし。そんな中で、じゃ、どうやって経済とのバランスをとっていくかというときに、やっぱり私たちも政治家も知事も考えなきゃいけないのは、この後、どんな世界になるのか、どんな世界にしたいのか、その具体的なイメージを描くことだと思います。病気を封じ込めても、経済困難の人が増えては元も子もないので、その辺りが本当に課題になると思います
要旨をまとめると、
・岡田氏の話(南半球ではこれから冬になり、乾燥するのでコロナの流行が始まる。またコロナウイルスが南半球から北半球へ持ち出され、日本は感染が拡大する。)によれば、日本はまだ本格的な流行を迎えていない。
・今年の冬にインフルエンザとダブル流行してしまうとパニックになりかねない。
というものです。
しかしながら、
・そもそも、「冬を迎える南半球で感染が拡大し、そのウイルスが北半球へ持ち出される」という岡田氏の主張自体が事実に反する恐れがある。(詳細な検証はレポート前半をご確認ください。)
・その為、「日本はまだ本格的な流行を迎えていない」という元村氏の主張にも明白な根拠が存在せず、事実に反する恐れがある。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での元村氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):先ほどスポーツのところでもPCR検査をやれるから再開できるとありましたよね。もし、その能力がないと第2波が来てもうちに閉じこもるしかなくなるわけです。経済も悪くなる。でも検査能力があれば隔離をして防ぐことができる。検査をすれば、能力が上がれば、経済を回すことができるかもしれないわけですね。ですから日本の弱点、今回検査もそうだしITもそう。いろいろな弱点が出ましたから、とにかくそれをですね、次に向けて話し合って準備をしておくべきだと思います。それを優先的に。
要旨をまとめると、
・PCR検査をする能力がないと、コロナ第2波が発生し外出自粛をするほかなく、経済も悪くなる。
・検査能力が上がれば、隔離して防ぐことができ、経済を回すことができる、
というものです。
しかしながら、
・PCR検査能力を仮に拡大することができたとしても、医療従事者の人手が足りなければそもそもPCR検査を十分に行うことはできない。特に保健所の人員不足については、厚労省も指摘している緊迫の課題である。
・その為、「PCR検査能力が上がれば、隔離して防ぐことができる」という主張は、事実に反する恐れがあり、政治的に公平性を欠く。
・3密の回避や検温など、PCR検査以外にも、コロナウイルスの感染抑制できる手段は存在する。そのため、PCR検査のみを取り上げて、「PCR検査を実施できなければ、コロナウイルスの感染を抑制することができない」という松原氏の主張は政治的公平性を欠く。
・
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「PCR検査を増加させるべき」「コロナウイルスの第2波は発生する」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「PCR検査を増加させる前に、医療従事者の負担や、検査自体の精度についても再考すべきである」「第二波を発生させないために、感染防止策を講じながら経済活動と両立すべきである」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条(第3号「政治的に公平であること」、同)第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ コロナによる経済の影響と政府の支援について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 救急の現場における抗体検査ついて報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。