2020年6月4日 報道ステーション

2020年6月4日 報道ステーション

6月4日の報道ステーションのレポートです。
2020年6月4日で天安門事件から31年が経ちました。
天安門事件の解説がスタジオでなされると思われましたが、朝日新聞の梶原記者は天安門事件にほとんど触れずに、アメリカのデモについての話が始まるという少し奇妙な放送でした。
今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な放送であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ)主化を求めた運動が軍によって鎮圧されました天安門事件から今日で31年が経ちました。中国政府は当時の対応を正当化していますが香港ではコロナを理由に禁止された追悼集会が強行されまして人々が抗議の声を上げました。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):北京市内、今朝の様子です。

千々岩森生記者(以下千々岩記者):天安門広場の手前です。警察車両無数に配置されています。そして多くの警察官の姿が見えます。

ナレ:厳しさが増していく中国での規制。31年前の6月4日が1つの分水嶺でした。

(31年前の映像)

ナレ:中国本土では今も天安門事件はなかったことにされています。

千々岩記者:中国の今日の朝刊です。どこを見ても天安門事件の記事は一切ありません。その一方でこちらを見てください。アメリカの抗議デモのニュースです。実は中国メディア連日このニュースをトップ級の扱いとしています。

ナレ:六四という数字はタブーにほかなりません。

中国外務省・趙立堅副報道局長『中国政府が当時取った行動は完全に正しく、国の政治的な安定や経済の発展、社会の進歩を守って継続させた。(Q.正しかったというならなぜインターネットでは規制されている?)中国がどのようにインターネットを管理するかについて、我々は関連の法律にのっとって管理している』

ナレ:言論の自由、集会の自由を守る戦いが続く香港。議会では今日民主派議員の反対を押し切って国歌条例が可決しました。抵抗運動の1つとしてスポーツの試合などで中国国歌に対して行われてきたブーイングや替え歌はもうできません。香港では毎年行われてきた事件の追悼集会も今年は新型コロナウイルスを理由に警察が開催を許可しませんでした。中止は初めてのことです。強くなる締め付け。それでも、夜が近づくにつれ香港の人々は集い柵を乗り越えそして声を上げました。

(香港市民抗議の映像)

【コメンテーターによる解説】
森川夕貴アナウンサー:中国は香港に対して統制を強めているようですが天安門事件から31年が経ちますが、梶原さんどのようにご覧になりますか。

朝日新聞・梶原みずほ記者:まず、中国はこのコロナ禍ということで集会できないという状況を利用して国民の不満や批判そして学者ですとか活動家の言論というのを封じ込めようとしているわけですね。私はコロナというのは自分たちを映し出す鏡だと思っているんです。つまり、これまで内在していた根深い問題というものがここにきて浮き彫りになっていると思うんです。アメリカでも同じことがいえると思うんです。今、白人の警察官が黒人の男性を死亡させたことをきっかけに人種差別反対のデモというのがアメリカ全土に広がっているわけですけどもこの背景には、黒人のコロナによる致死率というのが人口比よりも高いということが関係しているわけですが30年ほど近く前にやはり人種間の対立というのが問題になって軍まで投入されたロサンゼルスの暴動がありましたよね。私はこの30年間アメリカ、中国の鏡というのが曇っていたと思うんです。これが、今世界中で、この数か月で40万人近くの人が亡くなるという事態になって皮肉にも自由だとか差別そして、人類の尊厳とは何かということ。そういったものが今、表面化している状態だと思うんです。これは我々米中だけの問題だけではなくて国際社会で先送りしてはいけないということだと思います。

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【検証部分】

天安門事件から31年が経ち民主化が進まない中国。

香港や台湾への北京政府の圧力は続いており、中国でアメリカ人や日本人などのビジネスマンが拘束されるというニュースはもはや珍しいものではなくなってきています。
ウイグルやチベットの弾圧も続いています。

21世紀に入ってもなお、公然と人権を抑圧している国の一つが中国です。

そんな中国の人権弾圧を象徴する天安門事件から31年を迎えたこの日。
天安門事件に関する朝日新聞・梶原記者のスタジオ解説は少し奇妙でした。
天安門事件へのコメントはほとんどなく、コロナ禍におけるアメリカでの騒動について解説を行ったのです。

正直言って、中国の天安門事件のような人権弾圧とアメリカで活発化しているデモ騒動は比較できるものではありません。
中国では政府などの公権力を相手にデモを行うことは、文字通り命がけであり、民主国のようなデモは基本的にできないからです。

天安門事件のことにはほとんど触れずに、アメリカの騒動の解説を行うことは政治的に公平なものとは言えません。
なぜなら中国当局は天安門事件をなかったことにしたいからです。
例えば中国版のツイッターである「ウェイボ」では天安門事件にまつわる発信を行うことはできません。
6と4の数字を一緒にして発信することすらできません。

天安門事件に関することだけでなく、中国当局にとって不都合な発信はできないのです。
中国に言論の自由はありません。

つまり梶原記者の真意はともかくとして、結果的に中国当局が望むような解説となっているのです。

ここで、天安門事件を簡単に振り返ります。

1989年の4月から中国学生たちは政治的・経済的自由を求めて天安門広場に集結していました。
自由を求める学生たちに対して中国当局は兵士と戦車を送り込みました。
そして6月4日、中国当局は武器を持たない学生たちに発砲し、数百人の死者を出す大事件となったのです。(死者数は公表されておらず、一説には万を超える死者が出たとも言われています。)

武装していない市民に対する政府による攻撃。これだけの大きな事件に梶原記者はほぼコメントしていません。
最近でも香港への国家安全法の導入など、天安門事件以外にも中国に関係するトピックは様々あったにもかかわらず、中国に関する解説をほとんどしていませんでした。

この日の放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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