10月7日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送から、臨時国会の論戦と北朝鮮船と水産庁船の衝突事件に関する報道を2部に分けて取り上げます。
今回は北朝鮮船と水産庁船の衝突事件について取り上げます。
検証する点は以下の点です。
・後藤氏による日朝関係に関する解説
まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナウンサー:こんばんは。「報道ステーション」です。今日北朝鮮の船とみられる漁船と水産庁の取締船が衝突しまして漁船が沈んでしまったんですね。こちらは救助する際の写真なんですけれどもこのひときわ大きく見えているのが取締船。点のように見ているのが救命ボートや救命いかだです。
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):場所は日本のEEZ・排他的経済水域で近年、北朝鮮の船による違法操業が問題となっていました。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):北朝鮮の船とみられる漁船は急旋回して衝突したといいます。
(事故現場の画像)
ナレ:洋上に浮かぶのは水産庁の漁業取締船です。そして、その左前方点々とあるのは救命いかだや救命ボートです。
江藤拓農水大臣『大和周辺水域で午前9時7分ごろ、水産庁の漁業取締船「おおくに」が北朝鮮の船と思われる漁船と接触しました』
ナレ:現場は能登半島の北西およそ350km。日本海の中央にある大和堆周辺です。水産庁によると日本のEEZ・排他的経済水域に入ってきた北朝鮮の船とみられる漁船に対し取締船が立ち去るよう警告していたところ衝突したといいます。
江藤拓農水大臣『向こうの船が「急旋回」したためにぶつかったと承知している。取締船は人的被害はない。航行も問題がいない当該漁船は沈没した』
ナレ:急旋回してぶつかったということは相当近くにいたということでしょうか。漁船の乗組員は海に投げ出されました。取締船が救命いかだを出し、海上保安庁の巡視船も現場に向かいました。海上保安庁によるとおよそ60人が救助されたといいます。大和堆は周辺より水深が浅く、スルメイカなどが、よくとれる漁場として知られています。近年、北朝鮮の船がたびたび現れ違法操業が繰り返されていました。地元の漁協幹部は…。
Q.これまで北朝鮮隻をEEZ内で確認することは
白坂武雄氏(地元漁業組合参事・以下白坂氏)『数年前からうちの漁船は確認しています。ひどいときは行けば必ずいる状態』
(航行する船舶の映像)
ナレ:これは、先月撮影された映像です。北朝鮮の船とみられる漁船には大量のイカがつるされていました。そして、もう1隻の船はさびだらけ。かなり老朽化しているとみられます。
白坂氏『夜ライトをつけて漁をするんですけどその明かりの方へ無灯火の北朝鮮の漁船が近づいてきて、要は光で集めたイカを網でとると。当然スクリューにからまったり漁具にからまったりする危険があるんで』
ナレ:日本のEEZだけではありません。これはロシアの沿岸警備隊が撮影した映像です。北朝鮮の船がロシアのEEZで違法に漁をしたとして相次いで摘発したのです。インタファクス通信によるとロシアは1か月で570人以上の北朝鮮の乗組員を拘束したといいます。なぜ、危険を冒してまで遠洋で違法な漁をするのでしょうか。
石丸次郎氏(ジャーナリスト・以下石丸氏)イカ漁は主に中国に輸出されるもの。金もうけのためにイカ漁をやっているが(北朝鮮は)経済制裁を受けていて、海産物の輸出が全面禁止されている。2018年と今年の上半期はこのイカ漁は非常に低調だったが、今年6月中旬に周近平国家主席が北朝鮮に訪問したあとから中国側の輸出取締りがかなり緩んだ。中国に密輸で売れるというメドがついたので、この漁期の終りに駆け込みで日本のEEZまで来てるんではないかと』
ナレ:更に外貨を稼ぐためでしょうか。今年3月に出された国連の報告書によると北朝鮮が制裁に違反して中国に北朝鮮沿岸の漁業権を売っていたことが判明しました。自国の沿岸で中国漁船が操業した結果北朝鮮の船は追い出されるように遠洋に出ているという見方もあります。
石丸氏『北朝鮮近海で本当に水産資源が枯渇していると言われている。そのため沖へ沖へと出て行くしかない』
ナレ:海上保安庁によると今回、沈没した北朝鮮の船とみられる漁船の乗組員は自力で救命いかだに乗り込みました。そして事故後、付近から現れた仲間のものとみられる船に乗り移りそのまま現場から立ち去ったといいます。
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【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:北朝鮮の違法操業が近年増え続けているんですけど日本政府としては打つ手はないんでしょうか?
後藤謙次氏(ジャーナリスト):非常にEEZの境界の付近なんですね。しかも北朝鮮の漁船がどんどんやってくると。手が回らないのが実情と言ってもいいと思います。とりわけ、大和堆については韓国との漁業権の問題も生じて非常に複雑な海域であることは間違いないです。今回のケースについても与党幹部は仮に違法操業なら身柄を拘束して事情聴取をすることも考えられたんですが今回は一応北朝鮮側に返したことになっていますよね。その判断について、恐らく取締船が独自に判断したとはなかなか考えにくいんですね。今後の日朝関係を考えたうえでかなり高度な判断をした可能性は否定できないと思いますね。ただ、日本海の漁業権をめぐっては韓国も北朝鮮もロシアも中国も出てきてさまざまな漁業権をめぐるいさかいが続いているわけですからいったん、ある時期には話し合いによって決着をすると。そういう枠組みを作るということを努力する必要があると思います。でないと、この問題はどんどん繰り返されることになると思いますね。
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【検証部分】
今回検証する発言は以下の部分です。
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後藤謙次氏(ジャーナリスト):非常にEEZの境界の付近なんですね。しかも北朝鮮の漁船がどんどんやってくると。手が回らないのが実情と言ってもいいと思います。とりわけ、大和堆については韓国との漁業権の問題も生じて非常に複雑な海域であることは間違いないです。今回のケースについても与党幹部は仮に違法操業なら身柄を拘束して事情聴取をすることも考えられたんですが今回は一応北朝鮮側に返したことになっていますよね。その判断について、恐らく取締船が独自に判断したとはなかなか考えにくいんですね。今後の日朝関係を考えたうえでかなり高度な判断をした可能性は否定できないと思いますね。ただ、日本海の漁業権をめぐっては韓国も北朝鮮もロシアも中国も出てきてさまざまな漁業権をめぐるいさかいが続いているわけですからいったん、ある時期には話し合いによって決着をすると。そういう枠組みを作るということを努力する必要があると思います。でないと、この問題はどんどん繰り返されることになると思いますね。
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この発言の問題点は以下の点です。
・様々な論点からの解説がなされていなかった可能性がある
後藤氏は、今回の北朝鮮漁船と水産庁取締船との衝突事件が起きた海域は北朝鮮や韓国などの他国との漁業権で問題がある地域であるから話し合いで解決する場所を設けるべきだと解説しています。
しかし、漁業権に限らず、北朝鮮と対話することが可能なのか、北朝鮮はどういった国なのかという点を見る必要があります。
北朝鮮に拉致された日本国民は数百人にのぼるとされており、日本は拉致被害者奪還すべく、交渉を続けています。しかし拉致被害者は帰って来ず、日本人の人権は侵害されたままです。
また度重なる北朝鮮によるミサイル発射に対しても日本はアメリカなどと連携し、経済制裁といった手段を取るなどして北朝鮮に抗議を重ねています。
しかし、ミサイル発射についても北朝鮮はやめる姿勢は見られません。
つまり北朝鮮との対話は課題の解決には繋げることが難しいのです。
そして今回事件が起きた、排他的経済水域の境界に近いとはいえ、海域に関しては日本の排他的経済水域であり、北朝鮮と日本のどちらに問題があるかなどは議論する必要もありません。
また議論が必要と言うのであればどういった議論をするべきなのか、解説が必要でしょう。
このような解説は以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。