2020年6月7日 サンデーモーニング(後編)

2020年6月7日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2020年6月7日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
①店舗の営業再開と東京アラートについて報道された部分
②黒人の暴行死について報道された部分
③コロナと貧困格差について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

③ 「コロナと貧困格差について報道された部分」について報道された部分
となります。

では、放送内容を見ていきましょう。

新型コロナウイルスの影響は現代社会が抱える深刻な問題にも暗い影を落としています。白人警察官による黒人暴行死事件を発端に、全米各地へと広がった抗議デモ。こうしたデモの背景にあるのは黒人差別だけではなく、社会に広がる深刻な格差の問題があります。アメリカでは低所得者の多い黒人の死者は10万人に54.6人と、白人の2.4倍です。 景気低迷や失業などから今後アメリカ社会では、最大7万5000人が絶望死するといった予測があります。イギリスでも貧困地域に住む人の死亡率が裕福な地域より2倍以上高いという報告があります。また、南米のブラジルやペルーでも貧困層を中心に感染拡大が止まりません。 世界食糧計画は中南米カリブ地域で今年中におよそ1370万人の社会的弱者がコロナの感染拡大で深刻な食料不足に陥る可能性があると警鐘を鳴らしています。またバングラデシュではミャンマーから逃れてきたイスラム教徒少数民族、ロヒンギャが暮らす難民キャンプで今月2日、初めて感染者の死亡を確認。衛生状態の悪い難民キャンプでは今後、一層の感染拡大が危惧されています。さらに、ユニセフは先月28日付で経済への悪影響で、年内に貧困な状況に置かれる子どもたちが最大8600万人増加するおそれがあるといった分析結果を発表しました。
スタンフォード大学ウォルター・シャイデル教授は著書「暴力と不平等の人類史」の中で歴史上、感染症・疫病は格差の縮小につながったこともあったと指摘します。14世紀半ばにヨーロッパを襲ったペストはその後、皮肉にも労働力を貴重なものに変え、 個人の賃金上昇、格差を縮める結果になりました。しかし今回の新型コロナウィルスの場合、高千穂大学・五野井教授は「当初 感染症は誰に対しても平等に襲いかかるものだと言われてきたが、ホワイトカラーワーカーでテレワークができる仕事の人たちはお金を稼げるが、三蜜を避けることができない人たち、そういう仕事をせざるを得ない人たちが実は一番感染症にかかりやすい」と指摘しました。
4日、アメリカのシンクタンクが発表した報告書によれば、ロックダウンが始まった3月中旬から新たな失業保険の申請者数は4300万近くに増加。FRBによる大規模な金融緩和策が株価を押し上げ、ビリオネアと呼ばれる富裕層の資産は5650億ドルと20%近く増加しました。格差が広がった状況について、五野井教授は「冷戦期においては自由主義・民主主義の陣営と共産主義の陣営、今でいえばリベラル対保守といった対立軸があったが、コロナ禍によって顕在化してきたのは『右か左か』ということではなく、持てる者と持たざる者『上下の対立』というのはさらに激化していく」と述べました。
30日ローマ教皇フランシスコは「世界で『貧困のパンデミック』を終わらせるよう行動しなければ(新型コロナで困難な)この時間が無駄になってしまう」とビデオメッセージを発表しました。コロナがもたらした貧困のパンデミック。私たちはそれにどう立ち向かっていけばいいのでしょうか。

【コメンテーター発言内容】
寺島氏(要約):マネーゲームの責任を、例えば株とか為替の取り引きに広く薄く税金をかけて、途上国だとかアフリカだとかの熱帯感染症対策の財源にするだとか、私がかねてから言ってきている国際連帯税なんて話が、日本においても真剣に取り上げられなきゃいけない。目の前の対策だけじゃなく、問題の本質を解決していくという発想が必要だろうと思います。

大宅氏(要約):政策決定者に対して現状把握をしてほしい。どこが一番困っているのかということで政策決定をしていただきたいが、マスク2枚だとかおうちでおくつろぎとかってズレまくり。同じ人とばっかり会議やっているからです。そうやっていたら、何が本当に一番問題で、どこから優先順位、政策を決めたらいいかができないと思うんです。そこをもう少しちゃんとやっていただきたいなと思っています。

竹下氏(要約):パソコンを使える人と使えない人の格差が問題視されていましたが、日本の子供たちも同じです。学校が休みだった3月、4月、5月、パソコンをうまく使える家庭の子どもたちはどんどん勉強している一方で、経済的理由でインターネットの通信回線の環境が整っていないという家庭もありました。今後は日本でも、デジタルの格差がもたらす教育の格差というのも問題にしっかりとした対策が必要になってくると思います。

青木氏(全文):格差がある、平等じゃないというのは、感染症に限らず、災害でも戦争でもそうですよね。金がある人は家にこもれるし、中にはプライベートジェットで別荘に行っちゃう人もいるくらいですから。一方で、こもれない人がいて、今回日本の場合だと、例えばスーパーの店員さんとかあるいは介護の方々とか、それから流通、宅配なんかに関わっている方々というのはなかなかこもれない。しかも気付いたのは、そういう人たちをこの十何年、20年ぐらい新自由主義でどんどん非正規労働に置き換えていったんですね。かつ同時に、医療とか社会保障をどんどん削減していった、それが不寛容を増長させて世界的に見るとトランプさんみたいな人を生み出したというところもあるわけなので。社会の転換というのはこれを機に必要。新自由主義から社民主義的な富の再配分とか、徴税のあり方とか労働形態とか、少し変えて行かなきゃいけないのかなと我々真剣に考えなくちゃいけないのかもしれませんね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):格差がある、平等じゃないというのは、感染症に限らず、災害でも戦争でもそうですよね。金がある人は家にこもれるし、中にはプライベートジェットで別荘に行っちゃう人もいるくらいですから。一方で、こもれない人がいて、今回日本の場合だと、例えばスーパーの店員さんとかあるいは介護の方々とか、それから流通、宅配なんかに関わっている方々というのはなかなかこもれない。しかも気付いたのは、そういう人たちをこの十何年、20年ぐらい新自由主義でどんどん非正規労働に置き換えていったんですね。かつ同時に、医療とか社会保障をどんどん削減していった、それが不寛容を増長させて世界的に見るとトランプさんみたいな人を生み出したというところもあるわけなので。社会の転換というのはこれを機に必要。新自由主義から社民主義的な富の再配分とか、徴税のあり方とか労働形態とか、少し変えて行かなきゃいけないのかなと我々真剣に考えなくちゃいけないのかもしれませんね。

要旨をまとめると、
・格差はどんどん広がっていき、近年の新自由主義で非正規労働者が増えた。同時に社会保障が削減された。
・このような格差の拡大が社会の不寛容を増長させ、トランプみたいな人を生みだした。
・新自由主義から社民主義的な富の再分配への変更、徴税の在り方や労働形態など社会の転換が必要である

というものです。

しかしながら、
・そもそもアメリカには正社員と非正規社員の区別がなく、いわゆるパートタイムとフルタイムの違いしかない。そのため、「ここ二十年で非正規労働者が増えてトランプ氏のような大統領が発生した」という主張は明らかに事実に反する。
・また、日本においても不本意に非正規社員として働く労働者の数は減少傾向にある事実があるのにも関わらず、言及しないことは政治的公平に反する。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「格差は是正しなければならない」「平等を目指すべきである」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「貧困は是正しなければならないが、格差は必ずしも生まれてくるのだから問題視する必要がない」「平等を目指すあまり、全体の利益が低くなってしまったら元も子もない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 店舗の営業再開と東京アラートについて報道された部分
については前編の報告を、

② 黒人の暴行死について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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