2019年9月22日 サンデーモーニング(後編)

2019年9月22日 サンデーモーニング(後編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年9月22日放送回の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① サウジアラビア石油施設攻撃について報道された部分
② 福島第一原発の処理水海洋放出について報道された部分
③ 東電旧経営陣の無罪判決について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 東電旧経営陣の無罪判決について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
 現在、帰宅困難区域にある双葉病院の患者ら44人を死亡させたとして、東京電力の旧経営陣らを被告とする業務上過失致死傷の罪を問う裁判が行われた。禁固5年を求刑されていたが、判決は無罪だった。最大の争点は原発を襲った10mを超える津波を予見できたかについてで、震災の前東電の子会社は津波が最大で15.7mになると予測していたが、武藤元副社長は部下に対し外部の専門家に研究を依頼するよう指示しただけだった。このとき指示を受けた社員は、対策の保留という予想しない結論が示され、力が抜けたなどと証言。しかし東京地裁は津波による事故を予見できたとは認められないとの判決を下した。

【アナウンサーによるパネル説明】
東京地裁の判断
・被告3人に原発の運転停止を義務づけられるほどの予見可能性はなかった
・最大15.7mの津波予測のもとになった国の「長期評価」は、信頼性に疑いが残る
・事故前までに対策工事を完了できたか明らかでなく、事故回避には原発の運転停止しかなかった
・当時の法規制や国の指針は、絶対的安全性の確保までを前提としていなかった

【コメンテーターの発言】
浜田敬子氏(全文):そうですね、この判決、もちろんその個人の刑事責任を問えるかどうかって法の壁はあったと思うんですけれども、かなり事故調とかでは明らかになってなかったことが裁判の過程で明らかになってきたと思うんですね。私はいろんなこの、公判の中で明らかになった証言とかをみていると、これだけのその巨大な技術で、再び何かあれば人間の制御が非常に難しい技術扱ってる企業のトップとしての緊張感のなさとかですね、責任感の欠如というのが、非常に公判の過程で明らかになったにもかかわらずこういった判決が出てしまったということに、なんかもうやるせなさというかですね、もっと言えばその地域の方たちは福島の方たちはどんな思いでこれを受け止められたのかなということを感じました。一番感じたのはですね、この判決で絶対性安全性の確保まで前提としていなかった。ここがですね、でもその原発を受け入れた地域とか自治体の方たちは絶対安全だと言われて受け入れてたと思うんですね。なのでこれだけの技術をやっぱりその使う上にはやっぱり絶対的な安全性をどう確保するかということは前提としてなければいけないんじゃないのかと、非常にその判決にちょっとその部分はどうなのかというふうに、先ほどのあの弁護士の方もおっしゃってますけど、そういう印象を受けました。

幸田真音氏(全文):私もこの、やっぱり遺族の方の気持ちを思えばね、判決に怒りを感じられるのはもう当然だと思いますね。で、人間が核燃料とか核燃料を使った原子力発電というのは、ある一線を越えたらもうコントロールできないんだと人間にはもうコントロールできないものであるっていうことを認識していなかった。これがやっぱり一番の問題だと思うんですよね。で、企業、私も一応上場企業の経営陣の席に座っている立場の者の一人としては、この問題すごく注目していたんですけれども、企業ってもちろんその、株主なり投資家なりっていうことの、あるいは従業員のいろんな責任がありますけど、社会の公器であるっていう、その認識であるのがものすごく大事で、特にインフラを担ってる企業に関しては、その責任の自覚ってのはすごく大事だなと。自戒を込めてね、思っています。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

浜田氏(抜粋):そうですね、この判決、もちろんその個人の刑事責任を問えるかどうかって法の壁はあったと思うんですけれども、かなり事故調とかでは明らかになってなかったことが裁判の過程で明らかになってきたと思うんですね。私はいろんなこの、公判の中で明らかになった証言とかをみていると、これだけのその巨大な技術で、再び何かあれば人間の制御が非常に難しい技術扱ってる企業のトップとしての緊張感のなさとかですね、責任感の欠如というのが、非常に公判の過程で明らかになったにもかかわらずこういった判決が出てしまったということに、なんかもうやるせなさというかですね、もっと言えばその地域の方たちは福島の方たちはどんな思いでこれを受け止められたのかなということを感じました。一番感じたのはですね、この判決で絶対性安全性の確保まで前提としていなかった。ここがですね、でもその原発を受け入れた地域とか自治体の方たちは絶対安全だと言われて受け入れてたと思うんですね。なのでこれだけの技術をやっぱりその使う上にはやっぱり絶対的な安全性をどう確保するかということは前提としてなければいけないんじゃないのかと、非常にその判決にちょっとその部分はどうなのかというふうに、先ほどのあの弁護士の方もおっしゃってますけど、そういう印象を受けました。

要旨をまとめると、
・何かあれば人間の制御が難しい巨大な技術を扱う企業のトップとしての緊張感の無さ、責任感の欠如が後半の過程で明らかになったにもかかわらず、無罪判決が出たことにやるせなさを感じる。福島の方々はどんな思いでこの判決を受け止めたのだろうか。
・絶対的な安全性の確保を前提としていなかったことに大きな疑問を感じる。原発を受け入れた自治体は絶対安全だと言われて受け入れたはず。これだけの技術を使う上で絶対的な安全性の確保は前提にすべき。

というものです。

しかしながら、
・緊張感の無さ、責任感の欠如、被災者の心情といった要素は、「東電元経営陣が業務上過失致死傷の罪に当たるかどうか」とは別の話である。
・国際社会では「絶対の安全は存在しない」という考えのもと、国際基本安全規格にて安全とは「許容できないリスクがないこと(相対安全)」という定義がされている。原発を設置する際には危険性をゼロにする絶対安全を前提にすべきだという主張は非現実的で事実に基づかない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
幸田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

幸田氏(抜粋):で、人間が核燃料とか核燃料を使った原子力発電というのは、ある一線を越えたらもうコントロールできないんだと人間にはもうコントロールできないものであるっていうことを認識していなかった。これがやっぱり一番の問題だと思うんですよね。で、企業、私も一応上場企業の経営陣の席に座っている立場の者の一人としては、この問題すごく注目していたんですけれども、企業ってもちろんその、株主なり投資家なりっていうことの、あるいは従業員のいろんな責任がありますけど、社会の公器であるっていう、その認識であるのがものすごく大事で、特にインフラを担ってる企業に関しては、その責任の自覚ってのはすごく大事だなと。自戒を込めてね、思っています。

要旨をまとめると、
・核燃料や核燃料を使った原子力発電は一線を超えたらもうコントロールできないものだ、という認識の欠如が今回の原発事故において一番の問題だ。
・企業は株主や投資家のものだけではなく社会の公器であるという認識が重要だ。特にインフラをつかさどる企業はその責任の自覚が求められる。

というものです。

しかしながら、
・東電元経営陣の認識が今回の事故を引き起こしたわけではない。
・東京電力という会社に社会の公器であるという自覚が欠如しているという主張には根拠がない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での幸田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「東電元経営陣の無罪はおかしい、事故の責任を取るべきだ」「原子力発電は危険なので扱うべきではない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「東京地裁の判決なので法的に責任は問えない」「環境問題を考えれば原子力発電は必要だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① サウジアラビア石油施設攻撃について報道された部分
については前編の報告を、

② 福島第一原発の処理水海洋放出について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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