TBS「サンデーモーニング」、2020年6月21日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 「風を読む」にてコロナバブルついて報道された部分
② 河合夫妻の公職選挙法違反問題について報道された部分
③ 外国人観光客の減少について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 「風を読む」にてコロナバブルついて報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
新型コロナによる不況が生活を直撃する中株価は不思議な動きをしています。
16日のニューヨーク株式市場。ダウ平均株価は前日に比べ500ドル以上上げ、2万6289ドルで取り引きを終えました。3月下旬の1万8000ドル台と比べおよそ3カ月で7000ドル以上も上昇しています。また東京株式市場でも16日、株価は大幅に上昇。前日より1000円以上高い2万2582円となり、3月中旬からおよそ3カ月で6000円も値を上げました。
街行く人は「株価だけ実体経済とかけ離れていて上がっているのでなんかおかしいと思う。」と話しました。
水曜日、経団連の発表によれば大手企業の夏のボーナスは平均で6%のマイナス。大幅に減額された企業やゼロになった企業もあるなど、経済の苦境は続いています。こうした中、住宅金融支援機構には住宅ローンの支払いに困った人からの相談も急増しています。
民間エコノミストによれば、今年4-6月期のGDPは前の期と比べ、実質で年率23.02%のマイナス成長と、戦後最悪の水準になると予測。冷え込む経済の実体とかけ離れた株価の状況、それはアメリカも同様です。
16日、FRB・パウエル議長は「生産や雇用の水準は、パンデミック前の水準を大きく下回っている。」と述べました。アメリカ議会予算局は、4-6月期のGDPを年率マイナス39.6%と戦後最悪の落ち込みになると予測し、失業率も4月に14.7%とやはり戦後最悪の水準に。景気後退により経済格差が一段と拡大するおそれがあるとFRBは警鐘を鳴らしました。
経済は危機的状況にあるのに株価が上がる、コロナバブルとも言われる状況です。その仕組みは日本の場合、まず日銀が金融緩和という形で銀行などが保有する国債や投資信託を買い上げて、銀行側に資金を提供します。銀行は、この資金を企業や個人に貸し出しますが、現状はそれが大量に余り、株式市場に流れていると専門家は言います。
帝京大学・宿輪教授は「銀行は企業や個人にお金を貸し出そうとして目一杯やっている。しかし新型コロナの影響でお金をあまり使わない。日銀は企業や個人が必要な金額以上に大量に資金供給していて、余ってしまってその分が株式市場に流れている。これがコロナバブルと言われるもの。中央銀行が株を直接買うというのは禁じ手。ただ日銀が異次元を超えるような金融緩和をやっていて、間接的に株式の投資信託という形で保有をしている。(2019年には)日本の上場企業の5割の大株主に日銀はなっている。異常ということがいえるのではないか」と述べました。
それでも16日、日銀は金融政策決定会合を開き、現在の景気を極めて厳しい状態にあるとの認識を示したうえでなお大規模な金融緩和策の維持を決定しました。
中央銀行が株価を支える状況は海外も同様です。アメリカではFRBが10日、金融緩和の長期的な継続で景気を下支えするとしています。しっかりした経済の裏づけがない中での現在のコロナバブル。しかし、過去を振り返ればバブルには常に崩壊の危険性が伴います。2000年にはITバブルが崩壊し、2008年にはアメリカの住宅バブルが崩壊し、リーマン・ショックに襲われました。
宿輪教授は「今の金融緩和というのは応急処置。これから本格的な経済改革の政策を打たない限り、このバブルは崩壊する可能性が高くなる」と話します。皮肉にも世界中にまん延する新型コロナがもたらしたバブル、今後その崩壊が懸念されるのです。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):コロナでもって経済が停滞しているのに株価だけがやたら上がる。 あれは私にはよく分からない。
寺島氏(要約):金融の世界はインフレ化し、実体経済の世界はどんどんデフレ化していく。経済界の責任ということも考えていく必要がある。今後新しい産業というものをどのように起こしていくか。例えば医療産業だとか防災産業だとか。世界にこれから売り込めていくような産業を興すぐらいの気持ちを語るべき日本の産業界は、自粛してリモートワークしてましょうというところに閉じこもっているがこれからわれわれが議論しなきゃいけないことは、このポイントだと思いますね。
目加田氏(全文):先ほどの金融バブルで、潤っている人というのはごく一部で大半の方たちはコロナで非常に厳しい状況に追いやられているということだと思うんですね。その格差がすでにあったものがコロナによってさらに拡大されていくことが懸念されると思います。そういうときだからこそ私たちは、税金の使い方、本当に何に税金を使うべきなのか、われわれの生命、財産を脅かしているものは北のミサイルなのか、ウイルスの脅威なのか、どこを予算を配付しなければいけないのか。ポストコロナの時代というのは原状回復ではいけないと思うんです。新しい時代のビジョン、本来であれば変わらなければいけなかったところ、なかなか変わらなかったところは、パンデミックなどは変化を加速されると指摘されていますので、これを機に新しいビジョンを持って、ポストコロナの時代を考えていく構想力が必要だと思います。
高橋氏(要約):格差や社会的な分断がますます広がり、その時政治の真価が問われると思うんですが、今の政治を見ていると社会的弱者に目配りした政策ができているか心配です。私たちは今政治家がどういう言動をしてどう振る舞い、どこに目を向けて政治を行っているかしっかりみておかなければならないと思います。
涌井氏(要約):ポストコロナの時代は今までと違う世界が来るだろうという予測があります。例えば、テレワークやリモートワークによって、いかにITが脆弱なのかはっきりしてきた。保健所ですらファックスで手書きで送る、給付の申請でも、デジタルの世界は全然だめ。教育の世界なんか本当に悲劇ですよ。すなわち政策の重点というものが新しい時代に社会変革していく構造ができていない、ここに注目すべきだと思います。
青木氏(全文):こういう状況でもマネーゲームで潤う人がいて世界的にも、また富の集中が進んだというデータがあるんですね。だから持つ者はさらに持つ、持たざるものはどんどん持たない、苦しくなっていく。確かに政治の出番なんですけれどもしかし、日本でも政権に近い企業とかがね、われわれの税金を困っているときにお金を途中でピンはねして食い物にする状況が起きていることを考えると、政治の出番ってよけいなことをしないでくれと言いたい気分になってきちゃう。しかも、国会を閉じてしまっているわけですね。本来は格差を是正するための努力を政治がやらなくちゃいけない時期に機能していない。次の選挙で我々は何を選ぶのかというのは、考えなきゃいけないと思わせられますね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
目加田氏(抜粋):先ほどの金融バブルで、潤っている人というのはごく一部で大半の方たちはコロナで非常に厳しい状況に追いやられているということだと思うんですね。その格差がすでにあったものがコロナによってさらに拡大されていくことが懸念されると思います。そういうときだからこそ私たちは、税金の使い方、本当に何に税金を使うべきなのか、われわれの生命、財産を脅かしているものは北のミサイルなのか、ウイルスの脅威なのか、どこを予算を配付しなければいけないのか。ポストコロナの時代というのは原状回復ではいけないと思うんです。新しい時代のビジョン、本来であれば変わらなければいけなかったところ、なかなか変わらなかったところは、パンデミックなどは変化を加速されると指摘されていますので、これを機に新しいビジョンを持って、ポストコロナの時代を考えていく構想力が必要だと思います。
要旨をまとめると、
・コロナバブルで潤っているのはごく一部の人で、大半の人は厳しい状況になる。そして格差はどんどん拡大する。
・私たちは税金の使い道について考えないといけない。
というものです。
しかしながら、
・「一部の人は潤い大半の人は厳しい状況にである」という目加田氏の主張は、具体的にどこの層が厳しい状況であるか示さず、またそれらの人が現在どのような経済状況なのか明示していない。その為、根拠に乏しく事実に反する恐れがある。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での「目加田」氏の発言は(政治的に公平でなく、また)事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条(第2号「政治的に公平であること」、同)第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):こういう状況でもマネーゲームで潤う人がいて世界的にも、また富の集中が進んだというデータがあるんですね。だから持つ者はさらに持つ、持たざるものはどんどん持たない、苦しくなっていく。確かに政治の出番なんですけれどもしかし、日本でも政権に近い企業とかがね、われわれの税金を困っているときにお金を途中でピンはねして食い物にする状況が起きていることを考えると、政治の出番ってよけいなことをしないでくれと言いたい気分になってきちゃう。しかも、国会を閉じてしまっているわけですね。本来は格差を是正するための努力を政治がやらなくちゃいけない時期に機能していない。次の選挙で我々は何を選ぶのかというのは、考えなきゃいけないと思わせられますね。
要旨をまとめると、
・コロナの状況下で富の集中が起こり、格差が拡大している・
・このような状況を解決するのが、政治である。しかし、日本でも政権に近い企業がお金をピンハネしている状況を考えると、政治は余計なことをしないで欲しい。
・しかも、国会は閉じてしまっていて、機能していない。
というものです。
しかしながら、
・政権に近い企業がどこの企業であるのか明示されておらず、青木氏の主張は陰謀論に過ぎない。そのため、事実に反する恐れがあり、政治的に公平ではない。
・一方、マスメディアと電通が癒着している問題については言及せず、政治的に公平ではない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「コロナによって格差は助長される」「コロナ禍により、ますます弱者は経済的困窮になる」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「株価が維持されていることによって経済維持されている」「弱者を救済するために持続化給付金などの経済政策が存在している」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 河合夫妻の公職選挙法違反問題について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 外国人観光客の減少について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。