2019年3月10日 サンデーモーニング(前編)

2019年3月10日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年3月10日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 統計不正問題の「隠蔽の意図の質問」について報道された部分
② 「風を読む」にて日本の原発政策について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 統計不正問題の「隠蔽の意図の質問」について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
① 隠蔽の意図について
「特別監察委・樋口委員長が国会に呼ばれ、新たな事実が明らかになりました。」という言葉とともにVTRは始まる。
3月6日の参議院・予算委員会の映像が映し出される。立憲民主・小西議員が「“事実を隠す意図を持っていたのか“と質問をしたのか」という質問に対し、樋口委員長は「直接的に質問はしていない。」と答弁する映像が流される。さらに「委員長以外の委員はどうか」という小西委員による質問にも樋口委員長は同様の答弁を行い、隠蔽の意図について直接質問していなかったことが分かったと伝えられる。樋口委員長は30を超える厚労省審議会委員を歴任していたことが野党の調査により判明し、「厚労省と一体ではないか」と批判されているとナレーション。

② 法制局長官の発言について
 「一方、官僚の発言についても紛糾しました」という言葉とともにテーマが切り替わる。
安倍総理の答弁の長さに不満を示した野党議員が「国会議員が国会で行う質問は内閣に対する監督機能ではないか」と法制局長官に確認を求めたのに対し、横畠長官は「国権の最高機関・立法機関としての作用はあるが、声を荒げて発言するようなことまで含むとは考えていない」と返答する映像が流される。野党を揶揄するかのような発言に、野党は政治的発言だと反発し審議は一時ストップしたと伝えられる。その後、横畠長官は発言を撤回・謝罪したが、与野党から批判の声が上がっているとナレーション。続けて自民党・伊吹元議長が「これはもう大問題。思い上がっている」と批判する映像が流される。
法の番人と呼ばれる法制局長官は改めて謝罪したが、政治的発言で問題になるのは極めて異例だと伝えられ、VTRは終了した。

——-
【コメンテーターの発言】
目加田説子氏(全文):この統計不正問題では、これまで統計を用いて研究をしたりするさまざまな学者の学会などが危機感を発表しているんですね。で、今回、経済統計学会というところも声明を出していて、とても良い指摘をしてるんですけれども。その、戦時中の日本というのは、やっぱりその、統計。公的統計の機能というのがきちんと果たしていなかった結果、あの無謀な戦争に駆り立てたんだと。その反省から、戦後というは、真実性の確保を最優先に統計行政というのを行ってきたと。で、さらに言えば、何よりも大事なことというのは、その統計を取っている地方の職員であったり、調査員一人ひとりのたゆまぬその努力。さらに、何よりその被調査員である国民が調査に協力してきたということが大前提で成り立っているんだと。で、これまでの調査の不正なんかは、これまでの調査に協力してきた国民を冒涜する行為だというところまで言ってるんですよね。で、私その通りだと思うんですよ。これは今、VTRにもあったように、政治での戦争の分にするのではなくて、やっぱり野党与党と協力して、二度とこのようなことが繰り返されないためにどうしたらいいのかっていうことを真剣に議論してほしいなというふうに思います。

安田菜津紀氏(要約):昨年、財務省での公文書改ざん問題が発覚した際の追及と何が違うのかと考えてしまう。調査が細やかでなかったり、調査の客観性が保たれていなかったり、不適切な発言が繰り返されるなど、 “あってはならないこと”が常態化してしまっている。これまでも、こうした問題が発覚すると「膿を出し切る」という言葉が繰り返されてきたが、そもそも膿の正体は何なのか。その根本から指摘をする必要があると思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

目加田氏(抜粋):で、今回、経済統計学会というところも声明を出していて、とても良い指摘をしてるんですけれども。その、戦時中の日本というのは、やっぱりその、統計。公的統計の機能というのがきちんと果たしていなかった結果、あの無謀な戦争に駆り立てたんだと。その反省から、戦後というは、真実性の確保を最優先に統計行政というのを行ってきたと。で、さらに言えば、何よりも大事なことというのは、その統計を取っている地方の職員であったり、調査員一人ひとりのたゆまぬその努力。さらに、何よりその被調査員である国民が調査に協力してきたということが大前提で成り立っているんだと。で、これまでの調査の不正なんかは、これまでの調査に協力してきた国民を冒涜する行為だというところまで言ってるんですよね。で、私その通りだと思うんですよ。これは今、VTRにもあったように、政治での政争の具にするのではなくて、やっぱり野党与党と協力して、二度とこのようなことが繰り返されないためにどうしたらいいのかっていうことを真剣に議論してほしいなというふうに思います。

要旨をまとめると、
・今回の一件で、経済統計学会という学会が声明を出している
・曰く、「戦時中の日本は統計が機能しておらず、その結果無謀な戦争に駆り立てられた。戦後は真実の確保を優先して統計行政を行ってきた」
・「大事なのは統計を行う職員や調査員の努力、そして国民の協力であり、今回の件はそんな国民への冒涜だ」と主張しており、私もその通りだと思う
・与野党はこの問題を政治の政争の具にするのではなく、協力して再発防止に努めるべき
というものです。

しかしながら、
・統計を専門に行う学会は日本統計学会をはじめ多数存在しており、今回の発表が学術界全体の見解というわけではない。
・日本が太平洋戦争に至った背景は複雑で、統計機能の問題だけではない。また、今回の問題と戦前の統計体制とは何ら関係がない。
・この問題を政争の具にしているのは野党であり、与野党双方が政争の具にしているとして与党にも責任の一端を負わせようとしているのは政治的公平性に欠ける言動といえる。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での目加田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「“事実を隠す意図を持っていたのか“と質問がないことは委員会の中立性に問題があることを示している」「横畠長官の発言は思い上がりも甚だしい暴言だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「事実を隠す意図を持っていたのか、という質問に意味はあるのか」「事実が隠されているということを前提化する発言で事実と異なる」「こんな問題に散々付き合わされている側として当然の感想ではないか」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
②「風を読む」にて日本の原発政策について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事