2020年11月22日 サンデーモーニング(後編)

2020年11月22日 サンデーモーニング(後編)

11月22日のサンデーモーニングのレポート後編、東京オリンピック・パラリンピック開催の是非について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
新型コロナウイルスの先行きが不透明な中、来年の東京オリンピック・パラリンピックの実施をめぐり世論が割れている。12月16日にはIOCのバッハ会長が来日。バッハ会長は菅総理や小池知事、森会長と会談し、観客を入れての開催に前向きな姿勢を示した。国士館大学の鈴木教授によれば、今回の会長の来日は12月で委員会との契約が切れる日本のスポンサー企業に対する「来年必ず実施する」というメッセージだという。東京大会の予算は去年末の時点で1兆3,500億円。鈴木教授は、今回のコロナ問題はあまりに商業化した近代オリンピックを見直すいい機会なのではないかと語った。

——-
【コメンテーターによる解説】(一部要約)
寺島実郎 氏:近代オリンピックを見直すいい機会にすべきだと思います。カギはやっぱりWHOとIOCという2つのスイスにある機関。WHOがパンデミック宣言を解除しないと世界的にこういうものをやるという機運というのは盛り上がらないだろうなと。前提として日本は、年内にこの問題を制御しようとしている実績を見せなきゃならない、非常に重要なタイミングだと思いますね。(要約)

ジャーナリスト 安田菜津紀 氏:今の状況を見ると、開催ありきでいいのかと思います。来年開催したとしても、コロナを封じ込めない医療体制が脆弱な国は参加がかなわないこともありえ、経済力が事実上の線引きにもなってしまいかねない。オリンピックは数合わせでいいのか、それは平和の祭典と呼べるのか、改めてそこに立ち返らなければならないのではないかと思います。(要約)

毎日新聞論説委員 元村有希子 氏:政治のリーダーの言葉をずっと注意深く聞いていると思い出してしまうのが2013年の安倍さんが誘致をしたときの原発の、福島原発、アンダーコントロールだと見栄を切って東京に引っ張ってきたわけですけど、あのときに国民が全員驚いたということがありましたよね。今度、菅さん、安倍さんの継承で人類がウイルスに打ち勝ったあかしとして開催をすると。どちらも政治のリーダーの決意を述べるという意味ではそうなのかもしれませんけど、あまりにも国民の感情と乖離しているというところで、こういうリーダーに信頼してついていけるかというところにやっぱり疑問符がつく。コンパクト五輪と言いながら膨大にお金が増えている。復興五輪と言いながら、東北にほとんど配慮がないという、そうしたことを全部今までの小さな積み重ねがたくさん疑問符で出てくるような、それにコロナが追い打ちをかけている。かなりの逆境なので、IOCとの綿密な打ち合わせ、心合わせというのが本当に必要になってくると思います。

ジャーナリスト 青木理 氏:全世界的にワクチンが間に合うのか微妙で、観客をいれない方法をとるとしても、収入が減るので予算の問題が出てくるんですね。コロナ対策で財政的に余裕を失っている中、オリンピックの開催は政治利用されています。商業化・政治利用じゃない、アスリートのためのオリンピックなら考えてもいいと思うんですけど、果たしてできるんだろうかってことですね。(要約)

【検証部分】
今回の報道では、東京オリンピック開催の是非について議論が行われました。この報道の中で問題となるのは、元村氏の発言が一面的な認識に基づいているという点です。

元村氏は、招致の際に、安倍元総理が福島はアンダーコントロールだとしたことを「見栄を切っ」たと評価し、この発言に対して国民全員が驚いたとしています。さらには復興五輪と言いながら、被災地である東北に配慮がないと指摘しています。これらの内容について順に検証します。

まず、福島はアンダーコントロールだという安倍元首相の発言についてです。元村氏は「見栄を切った」としていますが、実際に原発は管理できているという指摘もあります。
原発事故の影響はいまだに続いていますが、現在では事故の影響が以前に比べ拡大しているような事例はありません。例えば放射例物質は、事故から一定期間で拡散が収束しています。そして招致の時点では既に日本中のほとんどの地域では放射性物質の危険なしに生活できるようになっており、今後危険が高まる可能性も極めて低い状態となっていました。
また放射性物質による海洋汚染についても、堤防や水中カーテンによって影響を一定程度抑えることができています。そして水揚げされた水産物に対して放射性物質の測定を行い、万が一にも安全基準を満たさない水産物が揚げられた場合には、出荷することができないようになっています。
オリンピック・パラリンピック招致における安倍氏の発言は、外国政府や外国人選手、観光客を想定して、日本に来ても安全か、健康に害はないかという不安を拭うための発言と考えられます。福島の事故について詳しく知らない人は、情報不足のために漠然とした不安を抱いている可能性があります。そのような人々に対して、通常の生活を送るうえでは全く心配がいらないということ、危険な地域に立ち入りさえしなければ通常通りの観光やスポーツ観戦ができるということを発信する必要がありました。そのような点から見ると、安倍氏の発言は正しいといえます。
そしてこのような理由から、元村氏の「国民が全員驚いた」という指摘についても、全くの誇張であるといえます。

また、元村氏は東北に配慮がないという指摘もしていますが、こちらも一面的な見方と言わざるを得ません。
実際に東北では、宮城県がサッカーの会場に、福島県が野球、ソフトボールの会場になるなど、東北での競技開催が決定していました。
このような東北での開催による影響として、まず地域へのインバウンド消費が考えられます。観戦、もしくは観光に訪れる人々が、その地域で消費を行い、経済の活性化につながります。とくに東北の特産品などは、東北の産業の再興に大きく寄与すると考えられます。
さらには、競技開催のために地域で雇用が創出されることも期待できます。試合の開催のために多くの人、物資、産業が動員されることにより、さらなる地域経済の活性化が期待できます。
このような点を考えると、東北での競技開催により、東北の経済や産業のさらなる活性化が見込めます。これは復興五輪としての位置づけに合致しており、東北への配慮がないという指摘はあたりません。

元村氏の指摘は、今挙げたような事実を無視し、一面的な見方に基づいて東京オリンピック・パラリンピック招致に関しての批判をしています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————————————————–
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
————————————————————————————–

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事