2020年1月5日 サンデーモーニング(中編)

2020年1月5日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年1月5日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① IR汚職における新たな5名の国会議員浮上について報道された部分
② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分
③ カルロス・ゴーン氏の国外逃亡について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 アメリカ軍による攻撃でイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官が死亡した。アメリカ軍はドローンを使ってミサイルを発射し殺害したという。イランのラバンチ国連大使は「イランヘの開戦に等しい」と批判し、アメリカに対し「軍事行動で報復する」と宣言した。一方、トランプ大統領は自らの指示で殺害を行ったことを強調。イランとアメリカは軍事衝突に発展しかねない事態となっている。
 先月29日、米国防総省はイランの支援を受けたシーア派民兵組織を空爆したと発表。これに対し抗議した人々が駐イラク米大使館に集結した。行動をエスカレートさせるデモ隊に対し、エスパー国防長官は「イランや支援組織による兆候があれば先制攻撃も辞さない」と述べるなど、緊張が高まっていた。ソレイマニ司令官殺害はこの直後だった。
 トランプ大統領は米大使館襲撃もソレイマニ司令官の指示だったとして、攻撃の正当性を主張したが、イランの首都デヘランでは大規模な反米デモが行われた。トランプ大統領は「今回の行動は戦争を避けるためで政権の転覆は望んでいない」とした一方、「我々は攻撃の標的を特定済みであり、必要な作戦を取る準備が整っている」と牽制した。駐イラク米大使館はすべてのアメリカ国民に対し直ちにイラクから退去するよう求めた。トランプ政権は中東に約3000人の兵士を増員する方針で、アメリカとイランの緊張が一層高まっている。

【アナウンサーによるパネル説明】
・昨夜、イラクのアメリカ軍が駐留する基地と米大使館付近でロケットが撃ち込まれた(最新情報)
・ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊の先鋭「コッズ部隊」のトップ
・アルカイダやイスラム国の掃討作戦で重要な役割を担い、イラクやシリア等で対外工作に手腕を発揮

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【コメンテーターの発言】
田中浩一郎氏(要約):過去40年間でアメリカがイラン軍のこのレベルの高官を殺害した事例はない。実は軍事的にアメリカはイランに助けられてきた過去がある。アメリカは殺害の成果を強調しているが、皮肉なことに多くの場面でソレイマニ司令官が指揮する部隊がアメリカ軍の軍事行動に貢献してきた側面がある。ソレイマニ司令官はタリバン・アルカイダ・ISなどの外敵からイランの安全を守る役割を担っていた。

寺島実郎氏(全文):これあのイラン人の心理としてはね、ちょうどあの山本五十六を殺された日本がですね、元帥の仇はきっと打つみたいな空気になっちゃったっていうこととね、すごく似てるなってことを思うんですよね。それで僕ね、このアメリカのメッセージ聞いてるとですね、これいつもですね、中東政策に関しては敵の敵は味方っていうロジックでですね、利用して捨てていくっていか、サダム・フセインもそうだったんだけども、全能の幻想でですね、自分たちが中東をコントロール制御できるんだとトランプも思いこんでるわけですよ。で、この、今回の出来事ももう一つ非常に重要だと思うのがイスラエルの存在で、イスラエルにあまりにもコミットしてね、支援してることをネタに得る政権を特にですね、で、そのイスラエルが革命防衛隊のシリアの基地を昨年の11月末に空爆したなんて出来事もですね、ひとつの伏線になってるんだろうなと思うんですけど、明らかに根、中東はもう既に準戦時体制だという言葉までが流れてますけれども、で、そういう中でね、仮に地上戦に入ったら、確かにアメリカは飛び道具ね、ミサイルとか空爆とかは強いんだけども、地上戦に入ったら、なぜ革命防衛隊が支えたかっていうところにつながるわけですけれども、第二のベトナムみたいなことになりかねないっていうかですね、で、そこで持ってきてもう一遍申し上げると、日本がそのタイミングでですね、調査研究を目的にペルシャ湾の外とはいえね、自衛隊を派遣するっていうわけですよ。このある種のずれね。これをですね、僕は驚きますね。

田中優子氏(全文):あの、大統領選のために中東を利用してるんじゃないかと思ってしまうんですね。で、冷戦後常にその中東で敵を作り続けている。何かそういうふうに敵を作り続けてまた、あの本国からアメリカ軍をどんどん送り込んでいくって言う、この構造で軍産複合体みたいなところがより富を蓄積してるんじゃないかというふうに勘ぐってしまいます。何かそういう背景がある。それでそれがまた、その大統領選に影響を与えていくっていう、何か戦争を利用しながら権力を蓄えていくって言う、そういうアメリカの像が浮かび上がってきます。

安田菜津紀氏(要約):これまでのイラクを見ていると、イラク国内でのIS掃討作戦の中でソレイマニ司令官自身がシーア派の民兵組織を自ら指揮する場面もあったが、シーア派民兵によるスンニ派の市民に対する虐待も度々指摘されており、シーア派民兵に捕まるのを恐れて逃げられない市民もいる。彼らからすればソレイマニ司令官は迫害の責任を問われるべき人物であるが、今こうした形で米国がイランに対して緊張を高めてしまうと、こうした市民をまた戦争の巻き添えにしかねない。この状況に関し日本政府は沈黙したままだが、日本政府のスタンスも改めて問われてくる。

涌井雅之氏(要約):イラクをこれだけ不安定にしたのはアメリカ。アラビア半島はサウジの皇太子の問題を含めて非常に不安定。今は米軍が直接飛び道具で攻撃しているが、米国の代理戦争をイスラエルがやらされるということになると、とんでもないことになっていくという懸念がある。

青木理氏(全文):自由とかね、人権というものを掲げている世界最大の超大国のアメリカの全く別の一面。ある種ものすごい好戦的で世界で一番戦争してきたっていう国家だっていうところが、今回もいろんな、皆さんお話しされましたけれども、例えばあの、ウサーマ・ビン・ラーディン。アルカイダだって、そもそもはソ連に対抗するためにアメリカが利用して、それが手に負えなくなったらっていうことで今度、掃討作戦に乗り出したっていうことですからね。だからもう今回の司令官と同じようなパターンと言えないこともないですよね。だから、そういうそのアメリカという国の一面が良く見えてしまうところもありますし、それから、僕はやっぱり個人的に気になるのは、トランプさん、今年選挙じゃないですか。選挙を抱えてこれだけイランとの緊張関係を抱えて、まあある種利用をしながら、かつご自身、足元では弾劾でもう、こう火がついてるわけですよね。そういう状況の中で僕が一番気になったのは北朝鮮との関係。去年の年末までに何か北朝鮮はかなり期待をしてたわけですよね。ところがまあ、それどころではおそらくなかった面もあったと思うんですけれども、今年その米朝関係が、ようやくなんとか米朝が対話の局面には入ったんだけれどまたここで緊張にいくんじゃないかっていうときにこういうことが中東で起きると、果たしてこう、北、アメリカ・トランプ政権が朝鮮半島までどうやって見るというか見れなくなった場合が僕はちょっと怖いなというところも心配ですよね。

田中浩一郎氏(要約):(関口氏:最後に、田中さんの読みでもっと大きなことになるのかだけ教えてください。)今の段階では収まるようには見えないが、イランも大人の国家なのでむやみやたらなことはやらないと思う。しかしどこかでは何らかの報復を考えていると思う。それがいつどこで行われるのかは分からない。実は今回の事件でイラクも巻き添えになっているので、これがアメリカに矛先を向けたときにイラク戦争の後の混乱が再現されるかもしれないことをアメリカがどこまで分かっているのかということ。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、田中優子氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):それで僕ね、このアメリカのメッセージ聞いてるとですね、これいつもですね、中東政策に関しては敵の敵は味方っていうロジックでですね、利用して捨てていくっていか、サダム・フセインもそうだったんだけども、全能の幻想でですね、自分たちが中東をコントロール制御できるんだとトランプも思いこんでるわけですよ。で、この、今回の出来事ももう一つ非常に重要だと思うのがイスラエルの存在で、イスラエルにあまりにもコミットしてね、支援してることをネタに得る政権を特にですね、で、そのイスラエルが革命防衛隊のシリアの基地を昨年の11月末に空爆したなんて出来事もですね、ひとつの伏線になってるんだろうなと思うんですけど、明らかに根、中東はもう既に準戦時体制だという言葉までが流れてますけれども、で、そういう中でね、仮に地上戦に入ったら、確かにアメリカは飛び道具ね、ミサイルとか空爆とかは強いんだけども、地上戦に入ったら、なぜ革命防衛隊が支えたかっていうところにつながるわけですけれども、第二のベトナムみたいなことになりかねないっていうかですね、で、そこで持ってきてもう一遍申し上げると、日本がそのタイミングでですね、調査研究を目的にペルシャ湾の外とはいえね、自衛隊を派遣するっていうわけですよ。このある種のずれね。これをですね、僕は驚きますね。

要旨をまとめると、
・アメリカのメッセージを聞いていると、中東政策で味方を利用するだけして捨てる、中東を制御しているという全能の幻想を持っていると感じる。
・中東は準戦時態勢だが、地上戦になればミサイルや空爆などの飛び道具に特化したアメリカは苦戦するだろう。革命防衛隊相手では第二のベトナムになりかねない。
・ペルシャ湾外とはいえ、日本がこのタイミングで調査研究を目的に自衛隊を派遣するのはズレている。

というものです。

しかしながら、
・アメリカ政府が「中東で味方を使い捨てできる」「中東を制御している」と考えているという主張について、一切根拠がなく憶測の域を出ない。また、アメリカ政府の見解について「全能の幻想」などとするレッテル貼りは政治的に公平とは言えない。
・米軍の地上戦力は世界トップレベルであり、飛び道具に特化して陸上戦力では劣るとする主張は事実に即していない。また、ベトナム戦争での苦戦は地上戦力の不足ではなくゲリラ戦術などベトナム特有の原因が重なったもので中東でも同じことが起きるという主張は事実に即していない。
・日本が調査研究のために自衛隊の派遣を決定したのはここまで事態が緊迫する以前の話である。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、田中優子氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中優子氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中優子氏(抜粋):あの、大統領選のために中東を利用してるんじゃないかと思ってしまうんですね。で、冷戦後常にその中東で敵を作り続けている。何かそういうふうに敵を作り続けてまた、あの本国からアメリカ軍をどんどん送り込んでいくって言う、この構造で軍産複合体みたいなところがより富を蓄積してるんじゃないかというふうに勘ぐってしまいます。何かそういう背景がある。それでそれがまた、その大統領選に影響を与えていくっていう、何か戦争を利用しながら権力を蓄えていくって言う、そういうアメリカの像が浮かび上がってきます。

要旨をまとめると、
・トランプ米大統領は大統領選のために中東を利用している。
・冷戦後アメリカは常に敵を作り続け軍隊を派遣してきたが、この構造で軍産複合体が富を蓄積しているに違いない。それが選挙にも影響する。戦争を利用しながら権力を蓄えるアメリカの像が浮かぶ。

というものです。

しかしながら、
・トランプ米大統領がイランとの対立を大統領選に利用しているという主張には根拠がない。
・冷戦後のテロとの戦いはアメリカ側が引き起こしたものではない。また、この構造で軍産複合体が富を蓄えているという主張、ならびにそれが選挙に影響するという主張には根拠がなく、陰謀論の域を出ない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中優子氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「アメリカによるソレイマニ暗殺は問題だ」「トランプ米大統領は支持率目当てで過激な対応をしている」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「アメリカ大使館が陥落寸前まで追い込んだ上、ソレイマニの派遣で更に挑発をしたイラン側の問題だ」「ソレイマニは危険人物であり、トランプ米大統領の対応は妥当だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 米国によるイラン革命防衛隊司令官暗殺について報道された部分における
検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
③ カルロス・ゴーン氏の国外逃亡について報道された部分
については後編の報告をご覧ください

① IR汚職における新たな5名の国会議員浮上について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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